ペルスピクス

@Gogobo_Nishiusagi

色々犬々

 人間には色というのが見えるらしい。僕からしたら遠い存在の彼らは、僕が想像もしないものを持っている。なんとも羨ましい。それなのに彼らときたらいつも浮かない顔をする。いや、わざとそうしているのかもしれない。色というものは憂鬱なものなのだろうか?でも、ご主人を見ているとそうとも思えてくる。

 ご主人は色が見えない。幼いときに泣きすぎて、感情病という病になったらしい。それでもご主人は、僕を散歩に連れて行ってくれる。友人と遊ぶときはいつも笑顔で笑っている。それはもう屈託のないくらいに。でも普通の人は、ご主人が色が分からないのが、分からない。彼らは色が見えているくせに。

 やはり、色というものは憂鬱なものなのだろう。だって彼らよりもご主人の方が幸せそうだ。でもそんな色というものに、ますます興味をそそられる。

 たまにご主人を可哀想な生き物として見てくる奴らがいる。そんなことやったってしょうがないだろう。ご主人はそういう人間なのだ。でも、そういうことがあった日にはご主人は決まって、

「色が見えたら便利なんだろうな。」

と呟く。絶対にそんなことない。見えない方が幸せなこともきっとある。きっと色というものは、見たくないものを、無理やり見せてくるのかもしれない。でも大切なことは見せてくれないのだろう。だから彼らは浮かない顔をするのだろう。でも一応、

「ワン!」

と一言言っておく。

 それでも、僕みたいな犬でも分かる確かなことは、きっと色が見えても見えなくても、ご主人は幸せに生きるのだろう。ご主人が顔を上げたので、僕も顔を上げた。夏の青空が上にあった。

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