#15


新学期、俺の隣は空席だ。

制約とかなんとかで、俺以外のやつには記憶すら残らないらしい。

少し悲しいけど、まぁなんとかなるだろう。

だって俺はもう1人じゃ無いから。

湊もいるし、他に友達だってできた。

アイツも見てるし。

俺は知っている。アイツにはもうこっちで会うことができない。

でも、アイツは今もどこかで俺たちのことを見守っているってことを。

「いつまでも待ってるからさ、また会おうね」

って言ってたから。

花火が打ち上がっている時に、ギリギリ聞こえてるか聞こえないかの声量で。

もしかしたら、独り言のようなものだったのかもしれない。

でも、今まで彷徨ってたアイツが心を決めたんだ。

それなら、俺も前を向くしかない。

もうアイツが後悔しないように。あっちでもこっちでも彷徨わないように。

だから俺はもう、怖くない。

そんなことを考えていたとき、湊から話しかけられた。

「なぁ、今日の放課後、第二回ゲーム大会せえへん?」

「あぁ、受けて立つ。」

俺は挑戦的な笑みで湊を見ていた。

その湊もまた、俺のことを煽るような手招きをしている。と、

「そこ!話さない!」

先生から叱られた。

俺と湊は肩をすくめ笑っていた。

なぁ、これでもう、大丈夫だから。

俺はどこかで見ているであろうアイツに向けてそう、報告した。

そのとき、教室から見えた空は、俺たちを暖かく包み込んで、笑っているように見えた。


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