#10
んー?まだ眠いよ…いつものように一度ぎゅっと自分の手を握り、お布団を探してみる。
あれぇ?蹴飛ばしちゃったかなぁ
眠い目を擦り、んー!!と伸びをし、目をあける。
え…?見た景色を信じたくなくて、もう一度目を擦ってから再び目をあける。
私はどこかふわっとした黄色みたいなオレンジ色みたいな世界にいた。
どこ?ここは。
1番に足元を確認すると、ふわふわした雲があって地面がどうなっているのか見えない。
地面が見えないなら周りから情報を得ようとばっと顔を上げあたりを見回すと、
今までに見たことのない景色が広がっていた。
私が今いるのはふわふわした場所。
でも少し右を向くと何人かが登っている、ゴツゴツとした岩場がある。
他にも、小さい子が多く遊んでいる、公園のようなもの。
おじいさんが少し悲しげな表情で座っている、大きい木の下にあるたくさんのベンチ。
私より小さそうな女の子がキラキラした顔で頑張って覗こうとしている、大きめの双眼鏡のようなもの。
ここからは見えないけれど、多分もっといっぱいあるだろう。
その中で1番目立つのは真ん中にある大きな道路のような大きな動く地面のやつだ。
真ん中の道路は一方で通行で、少し風が吹いている。
歩いていく先には、金色に光っていて何があるかは分からない。
それなのに、そこを歩いている人はみんな笑っている。
満足していそうな、穏やかな笑みを浮かべながらゆっくりと歩いていく老夫婦。
楽しそうに犬と触れ合い、笑いながら引っ張られていくおじいちゃん。
昔からの友人なのか、おしゃべりに花を咲かせるおばあさんたち。
本当にたくさんの人がいる。
……あれ、私何してたんだっけ?
確かカイとシュークリーム食べに行こうとして…
「__うぁあっ!!」
「いっ__!いたいっっ__!!!」
途端に頭が痛くなり、私はその場にしゃがみこんでしまった。
頭痛は増し、息は荒くなる。座ることも出来ず、思わず自分の体を地面にたおす。
はぁ、はぁ、はぁ。
しばらくするとその頭痛はおさまってきてようやく体を起こす。と、
その瞬間、テレビで聞く走馬灯のように自分の今までの生活が倍速どころではないスピードで、脳内に流れ込んでくる。
脳が処理しきれる量じゃないのだろう。突然何も考えられなくなる。
すると突然、脳内の霧が晴れたかのようにスッと私は理解した。
ここが天国と地上の間だということを。
多分私は、電車とぶつかって死んだんだ。
天国に来たらどうなるの?
もうカイに会えないの?
そんなことを考えていたら、涙が止まらなくて、
でもカイのことが心配すぎて、なかなか天国へ行く決断ができなかった。
そのとき、私は声をかけられた。
「何?迷ってんの?そんなちっちゃな体で?」
振り返ると謎の男性が。しかもそこそこかっこいい。
その男の人は帽子を深くかぶっていてあまり顔が見えない。
私はなんて返事したらいいか分からなくて、俯いて黙っていた。
__図星ってとこか。そんな私を見た男の人は
「地上に戻る方法がないわけではないんだけどなぁ」
と、わざとこっちに聞こえるように呟いた。
「ッ⁉︎」
それにまんまと引っかかってしまった私は、ハッと顔を上げてしまう。
男の人は、ふっ、と笑ってこちらを見た。
「地上、戻るか?」
サラサラな毛並み、ふわっふわの尻尾、ぴょこんとたっている可愛らしい耳。
しばらく歩いて連れて行かれた場所には、何人か、ううん。何匹かキツネがいる。
そのキツネさんたちはニコニコ笑いながらおしゃべりしてる。
「あ、あの人どーなった?ベンチで休んでた人」
「今日は見かけてないねぇ」
「あ、あたし行ったの見たよ!笑ってたから後悔はなさそう!」
「ならよかったぁ。結構長い時間いたから心配だったんだよねぇ」
よかったねぇ、ほんとよかったよ。という内容は分かんないものの、どこかあたたかい会話が聞こえてくる。
混乱している私をよそに、男の人はキツネさんたちに声をかけた。
「集合!!!」
「はいっ!」
キツネさんたちは男の人の前に綺麗に並んで、犬でいう「おすわり」をした。
その中で先頭に立ったキツネさんが「全員います!」と返事をすると男の人は満足そうに頷いた。
なに!?ここのキツネさんはおしゃべり出来るし、人の言ってること分かるの!?
さっきよりさらに混乱している私をみて、キツネさんは声をかけた。
「オーナー、この子は新入りですか?」
「あぁ、コイツは今日からここで働く新入りだ。結構チビだから誰か面倒みてやれよ。」
え?私働くの?!そんな心の声が外に聞こえるはずもなく、気づけば私は従業員用っぽい奥の部屋まで連れて行かれた。
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