#9


「ふぅ、この辺でいいかな」

彼女は独り言のようにそう呟いた。

「なぁ、お前なんなんだ?」

俺は聞いた。その声は自分でもびっくりするぐらい低くて、警戒心MAXだ。

それから、彼女は少し時間をおいて、

「今から、全部話すよ」

と言った。そして彼女は話し始めた。

「私は転校生として、高校に来たよね?

 本当は転校生なんかじゃないの。」

「私は、もう死んでいてでもこの世界に未練というか、後悔というかが残ってた。」

「だから、私はこの世界に戻ってきたんだ。」

俺は静かに頷いた。彼女はそっと息を吐いた。

「その後悔は、『幼馴染をおいて天国にきてしまったこと。』」

「その幼馴染はね、私が死んでから、人と関わろうとしなくなったんだ」

「お母さんが注意しようが『俺の勝手だろ!』って叫んで、ずっと独りでいた」

「だからそれをなおすのが今回こっちにきて私がやらなきゃいけないこと」


「ねぇ、もう人と関わるの怖くない?」


彼女はそういった。まさかこんなに心配をかけているとは思わなかった。

俺はアイツが天国から戻ってきてしまうぐらい、心配をかけたらしい。

にしてもなんでだよ。なんでっ___!

溜めていた思いが一気に溢れ出てきた。

謝罪とか、後悔とか、心配とか、感謝とか、不安とか、全部_____

「ごめんっ!ごめんっ!

 俺があの時、公園から連れ出さなきゃ!お前は死んでなかった!」

「俺があの時、もっと早く気づけたら!もっと早く逃がせたら!」

「お前は無事だった_!

 普通に中学生になって、高校生になって_!」

「普通に青春して!パートナー見つけてっ__!」

「全部全部、俺が奪った___。

 俺のあさはかな行動のせいでっ___!」

「ごめんっ____!」

俺は泣き崩れた。

こんなので俺のしたことが許されるはずはないけど、どうしてもいいたかった。

お前が死んでから、お前のことはどれも言い出しちゃいけない空気で、謝罪することも、後悔してることも何も口に出せなかった。

そんな中、自分の過ちを認めて、再び人と関わるなんて無理だった。

この罪悪感は一生背負っていくしかなくて、

もう二度と、大切な人を失いたくなかった。

「っ__!」

俺の頭に小さな、温かい手が置かれた。

その手の主は彼女で、彼女は静かに涙を流していた。

「ごめんねっ___」

彼女は言った。

「私が弱かったせいでずっと罪悪感を感じさせてた。」

「私が死んだせいで人と仲良くなることがトラウマになった。」

「私のせいで、楽しめるはずだった人生、楽しめなかった。」

彼女はふっと俺の目を見て、言った。

「そう思っていたけど、おんなじ気持ちだったんだね」

彼女は涙を流しながら笑った。

俺も、目に涙を溜めながら、笑った。彼女も責任を感じているとは思わなかった。

「あぁ、そうだな。生きてる次元が違っても、考えてることは一緒だ」

「やっぱり、幼馴染なんだなぁ」

彼女がそう言うと、また涙が出てきた。

でも今度は悲しくない。嬉し泣きか?

なんなんだ、俺の幼馴染は。

「普通、死んだヤツが幼馴染が心配で戻ってくるものか?」

俺は苦笑まじりに聞いた。

大変だったんだよ?と、彼女は語った。



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