#6
それから、俺とレイは一緒に帰っている。
レイの引っ越し先は俺の家に近かったらしく、
お互い近いのに、1人で帰るのも__。というのが俺たちの考えだ。
湊はニヤニヤしてこっち見てたけど。あとでシメるか。
そんなこんなで、レイと一緒に下校するのも少し慣れてきたかな?
というある日、レイは俺に聞いた。
「ねぇ、もし誰でも会いたい人に会えるってなったら__
誰に会いたい?」
俺は少し悩んでから、こう答えた。
「幼馴染。」
「今は会えないの?」
そう聞かれたとき、レイになら話していいと思った。
こいつなら受け入れてくれる。
こいつなら俺のどうしようもなく行き場の場がなかったこの想いも、
アイツに届きそうな、そんな気がしたから。
だから俺は、まだ誰にも言ったことがないアイツの話をした。
「俺の幼馴染は、俺が小学生の時に死んだ。
母さんたちと俺たちとで公園に来ていたとき、
『冒険だ!』とか馬鹿なこと言って、
2人だけで、いつもの__、この前行ったスイーツ屋さんに行ったんだ」
レイは前を見ながら真剣な顔でうなずいていた。
「家からあそこ行くにはこの踏切渡んなきゃなんなくて、
そこで俺たちは、電車にはねられた。
はじめての2人でのお出かけってはしゃいでたんだろうな。
遮断機が降りてきてるのにギリギリまで気づかなくって。
やっと気づいて逃げ出そうとしたときにはもう遅かった。」
レイは黙って話を聞いている。
本当は話すつもりはなかったけど、余程溜まっていたんだろうな。
止まらなかった。
「そのあと、俺もアイツも救急車で運ばれたよ。
それなのに、俺は助かったのに、アイツは助からなかった。
俺は交通事故のショックでなかなか起きなくて。
アイツが死んだとき俺はまだ寝てたんだってさ。
で、その事故に遭ったのが、ここの踏切」
そう言って、俺は踏切の端の方に置かれている花束と少しのお供物を見た。
アイツの母さんがほぼ毎日、アイツのために置いているものだ。
「なんで俺、寝てたんだろうな。
アイツだって辛かったはずなのに、
なんで俺はそばにいてやれなかったんだろうな。
なんで俺だけ生き残ったんだろうな。」
俺はそれから人と仲良くなるのが怖かった。
仲良くなっても、またアイツみたいに死んでしまうかもしれない。
そう考えたら友達なんて作らない方がマシで、今までずっと1人だった。
「なんで__、本当になんでなんだろうな。」
綺麗な夕日がフィルター越しに輝いて見える。
唇を噛んで必死に耐えたけど、涙声で俯く俺はとてもみっともなかったと思う。
ここまで話して、やっと気がついた。
「悪い、話しすぎた。忘れてくれ。」
そういうと、西陽に照らされた彼女は目に光るものを浮かべながら一度首を縦に振っただけで、その後は何も聞いてこなかった。
夕焼けの空が俺たちを包む。その綺麗な景色を見ているだけで、少し気が楽になる。
それからは、最後に別れるときの「ばいばい」以外、お互いに口を開くことはなかった。
少々、話しすぎた自覚のある俺は、それがありがたかった。
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