第6話 ピュア
翌日から学校が再開することになった。
教師の対応も済んだらしいから。
ちなみにこの日は当然のように荒尾は来ていなかった。
まぁ、これるわけないよな。
そんなことで学校に来ていて放課後になった。
彩奈が声をかけてきた。
「拓也くん今日は暇?」
「まぁ、ボチボチって感じかな」
俺の日常ルーティーンなんて登校して家に帰ると自家発電して終わりだ。
それだけのつまらない日常だったんだけど、最近は佐藤がよく話しかけてくるようになったので華がある。
「ねね、今日は占い部にこない?」
そう言われて考えていると、なにかを察したのか言ってきた彩奈。
「紗奈ちゃんは委員会で来れないって。だからふたりきり♡」
「そうなのか。なら行ってみようかな」
「うん、行こ」
俺はそう言われて彩奈について行くことにした。
部室までくると彩奈が話しかけてきた。
「なんか占いたいこととかある?」
「その前に聞きたいけど俺と紗奈のことは知ってるの?」
口ぶりからしてなんとなく知ってそうだなぁとは思ってるけど一応聞いてみることにした。
「知ってる」
そこで彩奈は続けてきた。
「あの時部室で言ってた好きな人のこと私だと思っててそれであんな占い結果話したの」
(やっぱりそうなのか)
俺はそう思って背もたれに持たれた。
それから彩奈はたぶん俺に好意を抱いてるのかな?
なんとなくそう思う。
最近の対応とかも考えてさ。
聞きはしないけど。
で、俺は彩奈に占ってもらうことにした。
「あのさ。最近紗奈のやつが俺に寄ってきてさ」
「困ってる?」
「や、困ってるわけではないんだけど。でもやっぱり俺たち家族だしっていうのがあるわけよ」
「うんうん。家族間の恋愛はあんまりよくないよね」
「でしょ?タブーなのは分かってんだよ俺も。だからさ俺はもう諦めたわけだし紗奈にも諦めて欲しいんだよ」
そう言うと頷きながら彩奈は言った。
「私と付き合えば解決しないと思わないかな?拓也くん」
「はぁっ?」
目を見開いた。
俺が彩奈と?
聞いてみることにした。
「なんで?」
「私達が付き合ったら紗奈ちゃんも諦めるんじゃないかなって思って。そしたら健全な関係に戻れるでしょ?」
紗奈は大人しいしおしとやかなやつだ。
たしかに俺と彩奈が付き合っていることを聞けば恐らく黙って引き下がるだろう。
でも、だ。
「俺はピュアでさ。どうせ付き合うならその先、結婚とかも考えてるんだよ」
簡単な言葉使うと一穴主義ってやつなんだろうか?
俺は一途でさ。
「彩奈にその覚悟はあるわけ?」
「めっちゃある!」
ダン!
机を叩いて俺を見てきたけど。
(あぁ、俺と彩奈が付き合う、か。どうなんだろうな)
俺の方にその覚悟はない気がする。
俺が彩奈と結婚、その景色を考えられない。
「この案は却下させてくれ。生半可な気持ちで彩奈と付き合いたくは無い」
「むっ。男の子って押せばいけるんじゃないの?」
「俺以外ならいけるんじゃない?下世話な話するなら男ってやりたがりだからな」
「ED?」
「違うよ」
毎日発電してるから俺はもう学校にいる間は特になにも思わないだけだ。
彩奈が聞いてきた。
「そうそう。次の休みって開いてる?」
「俺の予定が詰まってるとお思いで?俺の予定帳なんて基本真っ白だよ」
「じゃあさ。今度遊びに行こうよ」
目をぱちくりさせた。
まさか向こうから誘われると思わなかったからだ。
俺は男友達にすら遊びに誘われたことなんて滅多にないのに、女子に誘われると思わなかった。
「でも、どこに」
「お家デート?」
「誰の?」
「私の家来る?」
「ほいほい男を家にあげるな。ご両親も心配するだろ?」
「でも、家来ないとゲームできないよ?」
「ゲームすんの?」
「うん」
「なんの?」
「シーぺックス。あ、ちょうどいいじゃん。紗奈ちゃんもくればトリオでいけるよ!」
俺は思い出してた。
「あいつとゲームやる気にはならんかな」
「どして?」
「ゲームやると人格変わるんだよ」
「どんな風に?」
「言いたくない」
バイク乗ったら人格変わる人と同系統だ。
まぁお前誰?みたいなレベルでは変わらないけど。
「あいつとゲームはやんない方がいいよ。俺もやんないし。誘ってくるけどやらないようにしてる」
「そんなに人格変わるんだ」
「あの子ゲーム内じゃ友達0だから。これで意味分かるでしょ?」
ってことでこの誘いはお流れになった。
「じゃあどこ行く?」
「どっかブラブラ歩くだけでもいいんじゃない?紗奈はそれで喜ぶよ」
「うーん。じゃあ行き当たりばったりで行く?」
「それもまた一興ってやつじゃない?」
結局決まりきらなかった。
今度の休みはそんな感じで行くことに決まった。
「あ、ゲーセンにはなるべく近寄らない方向で」
「どして?」
「紗奈が紗奈じゃなくなる」
「どういうふうに変わるの?」
「破壊と虐殺の申し子に変わる」
ということで今度の休日の予定は決まったけど。
本題も聞いておこう。
「紗奈のやつは俺の事諦めそう?占いで分かんない?」
そう聞いてみると逆にこう聞いてきた。
「夢のないこと言うけど私たちが本当に占いなんてしてると思ってる?」
「はぁ?」
「ただのオカルトだよ?これ。私たちはただ心理学的な観点から物事を見て結果を計算してるだけに……」
そこまで言われて察した。
「分かった。もう分かったから占い界に喧嘩を売るのはやめよう」
俺がそう言った時チャイムが鳴った。
校内に残っている生徒は帰るようにってやつ。
「はぁ、帰るか」
ガタッ。
立ち上がった。
部屋を出ていこうとすると彩奈から声をかけられて振り返った。
ピラッ。
机に座った彩奈がスカートを摘んで捲ろうとしてた。
「見たい?女の子の聖域」
「俺以外にやるなよ?それ。自殺行為だぞ?」
「やらないよ」
そう言ってやめてカバンを持って俺の横にきて聞いた。
「興味無いの?」
「ないことは無いけど、ほら言った通りだよ」
俺はそう答えて部室を出ていくことにした。
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