第5話繋がってた

俺がアップした動画によって午後の授業はなくなった。


そっこー炎上したからだ。

教師陣がそれの対応に追われてて授業どころじゃないらしい。


警察にもけっこうな通報がいったらしい。


「ネットって怖いねー」


俺はそう言いながら佐藤と歩いてた。


一緒に帰りたいって言ったからだ。


「ごめんね。私のせいで殴られちゃったし」

「別にあいつを退学させられそうなら御の字だよ」


そのとき、ふと思い出した。

お礼を言っておきたかった。


「昨日相談に乗ってくれてありがとね」

「え、あ、うん。どうだった?」

「ダメだった」


将来的にはいけそうだったけど、今は無理だったな。


でも悪い結果じゃないから後悔はしてない。


「ご、ごめんね」

「なんで謝るの?」

「私勘違いしてた。東條くんが私のこと好きなんだって。だからさ。あんなデタラメな占い結果言っちゃった」


そう言われて昨日の会話を思い出すとたしかに勘違いされても不思議じゃないような会話だった。


それで昨日の会話内容を思い出していた。


(まさか、俺が昨日佐藤に告白してたらOKもらえたってことなのかな?)


たぶんそうなんだろうけど。


ってことは


(もしかして俺の事好きなのか?)


でもなんで?好かれる理由とか分かんないんだけどな。


そういえば今日佐藤がなにか言いかけてたのを思い出すな。


あれひょっとして俺に告白しようとしてた?


そしてもしかして今も?


(佐藤はかわいいけどな)


今も街を歩いてると佐藤はジロジロ見られてる。

道を歩けば誰もが振り返るような美少女。


そんな佐藤に告白されたら俺も頷きそうだけど。


(でも俺には紗奈がいるんだよな)


紗奈のことには決着が出てない。


ここで佐藤と付き合ってしまえば紗奈は悲しむかもしれない。


(気付いてないフリをしよう)


そうして道を歩きながら俺は言った。

そろそろお腹すいて来た。


「どっか行く?」

「サイゼ行かない?」

「なんでサイゼ?」

「サイゼで喜べるようになりたいから」


よく分からないけどリクエスト通りサイゼに行くことにした。


今日は昼飯まだ食べてないし。


中に入るとさっそく注文していくことにした。


そのとき佐藤が話しかけてきた。


「そういえば東條くん、私の下の名前知ってる?」

「すまん知らない。女子のこと下の名前で呼ぶ機会ないし」

「そうだよね。私の下の名前は彩奈って言うの。彩奈って呼んでくれない?」

「あ、彩奈……?」


紗奈以外を下の名前で呼ぶのは初めてで慣れないな。


彩奈は俺の呼び方を聞いて喜んでた。


「女の子の下の名前呼び慣れてない感じいいよね。東條くん付き合ったことある人いる?」

「いない」


ってか。


「じゃあ彩奈も俺の事下の名前で呼べよ?」

「た、た、たたた、拓也くん?」


困惑しているらしい。

お互いそんな変わらない状況に見える。



ランチを終えて外に出てきた。


「じゃあね拓也くん。また明日?でいいのかな?学校行けそうになったら会おうね」


そう言って彩奈は家の方に帰っていった。


俺も家の方に帰ることにした。

既に紗奈が帰っていたので扉をノックした。


「紗奈?」

「ひゃぁっ?!なんですか?兄さん」

「なんでそんなに驚いてるんだ?」

「な、なんでもありませんよ」


中からなにか紙を片付けるようなクシャクシャした音が聞こえた。


勉強でもしてるのかもしれない。紗奈は真面目だから。


そのとき。紗奈が扉を1枚隔てて座ったのがなんとなく分かった。


「兄さん。もしもの話ですけど、私たちの血が繋がっていたとしましょう」

「うん」

「兄さんは私のこと諦められますか?」

「それならもう仕方ない。周りの目もあるし」


正直今ですら周りの目は気になるけど。

腐っても家族なわけだし。


その質問になんの意味があるのか知らないけど紗奈は扉を開けてきた。


そしてスマホのチャットを見せてきた。


「両親に聞きました。彼らが言うには血は繋がってるらしいです」

「そっか。じゃあ俺が聞いたのはなんだったんだろうな」


俺はそう言いながらリビングの方に向かっていったその時だった。


「兄さん」

「ん?」

「私は兄さんが好きです。付き合ってください。私はもう血の繋がりとかどうでもいいです」


大真面目な顔をしてそう言ってくる。


「私の彼氏になってくれませんか?私はもう自分の欲望に忠実になることに決めました!」


俺はその言葉に首を横に振った。


「無理だ。血が繋がってるなら無理だよ。俺はもう紗奈のこと妹として見るから、紗奈もそうしてくれ」


そう言いながら歩いてるとついてくる紗奈。

ぎゅっと抱きついてきた。


「お兄さんに甘える妹くらいはいますよね?」


スーッ。

俺の股間に手を当てる。


「お兄さんの体を触る妹もいますよね?」

「それは無理がある。抱きつくくらいまでにとどめておいてくれ」

「ぶー」


そう言ってくる紗奈だった。


そうか。

血が繋がってた、か。


俺は血の繋がりが確定して諦めることができたけど、紗奈は逆に自分の欲望に忠実になってしまった。


俺はこれからどうしたらいいんだ。


彩奈にでも占ってもらうか?この先のこと。

妹が俺を諦めてくれないんです、って。


それもいいかもしれない。

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