第3話撃沈した
俺は妹の紗奈が帰ってくるのを待ってた。
ガチャっ。
「ただいまー」
帰ってきた紗奈を誰よりも早く迎える。
「おかえり、紗奈」
「ただいまお兄ちゃん」
笑顔でいてくれる。
俺はそんな紗奈をねぎらう。
「疲れただろ?学校」
「疲れないよ。楽しいから」
そう言って部屋に行く紗奈に俺は言った。
「なぁ、映画借りてきたけどさ。見ない?いっしょに」
普段映画なんて見ないけど面白いと教えてもらった映画を借りてきた。
【ハロウィーーーーン】
仮面を被ったヒョロヒョロの男が連続殺人していくホラーだ。
「それ、怖いですか?」
「怖くないよ(大嘘)」
見せてしまえば俺のものだからとりあえず見るように誘導していく。
やってることが『先っちょだけだから』って言うヤリチンと似てる気はするけど。
「お兄ちゃんと映画見るの久しぶりですねー楽しみー」
「今から見る?」
「はい」
「ご飯どうする?」
「見ながら食べましょうよ」
ということなので俺はご飯を持ってきて紗奈の部屋に入ることにした。
ホラー映画で発生する特有のドキドキを恋愛によるドキドキだと錯覚させてしまおう大作戦を始める。
ローテーブルに食事を置いて紗奈と並んで映画を見る。
序盤はつまんないので紗奈と雑談をする。
「なぁ、紗奈って好きな奴とかいるの?」
「いきなりですね。いませんよ?お兄ちゃんは好きですけど。結婚するならお兄ちゃんみたいな人かなーって」
「まじで?」
「ホントですよ。でも家族ですから」
ということで紗奈は悩んでるらしい。
(打ち明けたらどうなるんだろうな。血が繋がってないって)
以前、深夜のリビングで親が知gつながっていないことを話してた。
動揺するだろうか。
たぶんするよな。
いきなり言われても。
とりあえずもう少しジャブを打っていくことにする。
「もし、血が繋がってなかったら?」
「それでも家族ですよ。お母さん達は許さないでしょ」
たしかに、それもあるか。
俺がそう思ってると紗奈は真面目な顔で呼んできた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「私のことひょっとして好きなんですか?」
「好きだよ」
ジャブだ。ジャブ。
軽い感じに答える。
「へへへ。嬉しー」
満更でもなさそうな紗奈。
そのあとしばらく映画を見てたら主人公たちが化け物に襲われて逃げるシーンになっていた。
逃げた先でヒロインと見つめあってた。
「なぁ紗奈?」
「なんですか?」
正直ここまでめちゃくちゃ悩んだ。
いくか行かないか。
佐藤にはいくなって言われてるけど、俺は進むことにする。
前に進まなければ成功も失敗もない。
(家族という関係を終わらせよう)
俺は紗奈の目を見て言った。
「紗奈、好きなんだ。紗奈のこと。俺と付き合って欲しい」
これ以上ないくらいストレートな言葉を選んだ。
「えっ……」
カシャン。
手に持っていたフォークを落とした紗奈。
映画の主人公も同じように告白していたが振られていた。
なんかフラグになりそうな気はしたけど。
希望は捨てずに紗奈の言葉を待った。
「ほ、本気ですか?」
「当たり前だ。本気で言ってる」
紗奈は俯いた。
それからこう言った。
「家族ですよ?私たち」
俺は最後の切り札をここできることにした。
「紗奈は知らないだろうけど俺たちは血が繋がってない」
紗奈が目を丸く見開いた。
「えっ……」
「紗奈は両親の娘だけど、俺は引き取られたらしい。どこか違うとこの子なんだ」
「ど、どこでそれを?」
「前に両親が夜中に話してるのを盗み聞きした」
紗奈は黙った。
「もう一度言う。付き合って欲しい。俺からの言葉はそれだけ」
紗奈は決意したように俺を見た。
「うれしいです。けど、家族です」
そう言って立ち上がった。
「私はそんな話知りません」
肩から力が抜けた。
これは
(撃沈したってことか)
「分かってはいたけど、やっぱつらいな」
「こめんなさい」
俯いてそう答えてくる紗奈。
チラッと見えた映画の中のふたりはいい感じにまた見つめあってた。
そこで結ばれてた。
でも現実はそうもいかないだろう。
俺はそう思いながら映画を消した。
もうクライマックスも終わったし見なくてもいいから。
「邪魔したな。紗奈」
そう言って部屋を出ていこうとした時だった。
「兄さん」
呼び止められて紗奈の方を見た。
「ん?」
チュッ。
紗奈から俺にキスをしてきた。
軽い一瞬だけのもの。
「私から今返せる返事はこれだけです」
「紗奈……」
「続きは私たちの血の繋がりがないことが確認されたときにと思いますけど、どうでしょう?」
俺からも紗奈にキスをした。
「兄さん、私も兄さんのことが好きです。でも……今は」
「それもそうだよな」
この子からしてみれば今まで兄貴だったやつとこれ以上はできないんだろう。
もちろん俺だってそうだし。
「変なこと言って悪かったよ、ははは」
そう言うと目を伏せてこう言ってきた。
「ぜんぜん変ではないと思います。それに兄さんが好きって言ってくれて私はとてもうれしく思っていますよ。家族じゃなかったらきっと受け入れてましたから」
俺はこの時思った。
俺はシスコンでこの子はブラコンだったんだって。
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