第2話 勘違い【佐藤視点】

「ちょっと?!なんで?!え?!どういうこと?!」


私は半ば発狂するようにして部室の中の資料を漁っていた。

探してるものがある。部員のリスト表だ。


「今の条件に当てはまるの私しかいないんだけど……なんで?どういうこと?好きな人って私のことじゃないの?」


学年を間違えた?

好きな子の学年くらい覚えてるはず。


名前間違えなんてもっとありえない。

毎日顔を合わせるならクラスメイトで横の席の私でしょ?


「え?あれで告白終わったってわけじゃないよね?明らかに本番があるような素振りだったもんね」


なにより、私の手を離したのがおかしい。

本当に私のことが好きならあの場面で手を離すわけが無い。


「本命は私じゃなかったしかありえない。やばいやばいやばい!東條くんに嫌われる!めちゃくちゃな占いしちゃって怒られちゃう!」


正直いってこの占い部でやってる占いなんてオカルトだし、なんの意味もない。ただの雰囲気だけのもの。

なんの効果もない。

告白なんて成功するかどうかなんて保証できない。


そうしていたらやっと部員表が見つかった。


目を通していく。


「佐藤、さから始まるのは私しかいない。下の名前を見てもさから始まるのは他にいない。いや、でも、これはないよねって人は一人だけいるけど……」


そのとき、ガチャっ。

部室の扉が開いた。


「ごめんなさい部長。委員会遅れてしまって」


扉から入ってきたのは東條 紗奈。

東條くんの妹……同学年だけど。


この子だけは唯一私以外にさっきの条件に当てはまる人。


そのときだった。


ピコピコ。

紗奈ちゃんのスマホが鳴ってた。


「部長、ごめんなさい。メッセージ見ますね」


(おしとやか、大人しい、同学年、"さ"から始まる、占い部、毎日会う、関係が壊れる、この子なら全部当てはまる)


メッセージを見終わった紗奈ちゃんに聞いた。


「誰からのメッセージ?」


にこって笑って案の定の答え。


「お兄ちゃん。知ってますよね?東條 拓也。私のお兄ちゃん」

「な、なんてメッセージきたの?」

「部活終わったら教えて欲しいって。2人で遊びに行きたいって来ましたよ?いつもこんなメッセージしてこないのに」


やばい!

確定だ!これ!


「他には?」

「ちょっといいところの食事予約したって。変ですよね、私誕生日でもなんでもないのに」


頭を抱えた。


確定だ!これ!


あの人妹に告白するつもりだ!!!!!!


「私だと思ってた。やばいほんとにやばい」


紗奈ちゃんに目を向けてすがりついた。


「どうじよぉぉぉぉ……紗奈ちゃん。めちゃくちゃな占いして誰かを傷つけるかも……」

「え?部長?なんの話しを?」

「あのね!私に告白すると思って占いで『告白していいよ』って言ったら別の人に告白するんだってその人」

「えぇと、話が見えません」

「うえぇぇぇぇぇぇん嫌われる嫌われちゃう!!!!」


泣いた。

声に出して泣いた。


「私の初恋だったのに……グスグスこんな終わりやだよ」

「部長?」


私はここから巻き返す方法をそれでも考えた。


「紗奈ちゃん。お兄ちゃんのアカウント教えてくなれない?」

「なんで?まぁいいですけど。お兄ちゃん通知切ってるかもですけど」

「お願い……ほんとにやばい」


私はそうして東條くんの連絡先を教えて貰ってメッセージを送った。


私:ごめん東條くん。占いの件忘れて。占い結果変わったから


意外とすぐに返事が届いた。


東條:そうなの?


私:ごめん。だから告白やめて。やばいかも


(妹に告白なんて普通成功しないよ……思いとどまって)


東條:分かった。やめる


しかし、神の返事が来た。


そこで紗奈ちゃんのスマホが鳴った。


「部長、お兄ちゃん。サイゼの予約キャンセルしたらしいです。どうしたんですかね?」


ズコッ!


力が抜けて転けた。


(いいとこってサイゼかい!)


「サイゼ食べたかったなー私好きなんですよねーサイゼ。いいところですよねサイゼ」


(サイゼで喜ぶ彼女だ。彼女の見本だ)


私はそんなことを思いながら女子力の違いに悲しくなってきた。


それで紗奈ちゃんは聞いてきた。


「部長好きな人いるんですか?」

「え、うん」

「誰なんですか?」

「紗奈ちゃんのお兄ちゃん」


答えておく。


「私のお兄ちゃん?」

「うん。私にも優しくしてくれて。他の女子に掃除押し付けられた時とかも手伝ってくれるの」


だから気があると思ったのに。

絶対私だと思ったのに。


私が悩みを打ち明けると紗奈ちゃんはこう言った。


「今度お兄ちゃんも誘って3人で遊びに行きませんか?部長もそのときお兄ちゃんに告白しましょうよ」

「いけるかな……」


にやっと笑った紗奈ちゃん。


「そのおっぱいで押せばいけますよ」

「中身を見てほしいかも」

「でもそのおっぱいは兵器ですよ?部長」


こうして私は今度3人でお出かけすることになった。

だがその時また紗奈ちゃんのスマホが鳴った。


それを見て紗奈ちゃんは私に頭を下げた。


「ごめんなさい部長。今日そういえば予定があったんですよ」


そう言って部室を出ていく紗奈ちゃん。

私はポツンと残された。


「美容院……行こうかな。お母さんに頼んで、お金貰おう。いいとこ。中身見て欲しいけど、外見もいい方がいいだろうし」


私はお金さんにメッセージを送った。


私:お母さん。ちょっといいところの美容院行きたい。お金欲しい


お母さん:近くの床屋カットやめてくれるのね!お母さん感動しちゃった!どこいく?!お母さんの知り合いがいるお店に行こっか?学校の前まで向かいに行くから、帰りに行きましょ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る