18

 俺達は自分の部屋に行き、制服を着替えて食卓につく。双葉さんの服装とは対照的に、花子は着古した黒いジャージの上下だ。


 女子高生らしいキャピキャピした色気なんて微塵もない。元々、花子に色気なんて求めてないけどあまりにも酷すぎる。


 夕食は皿になみなみとつがれたカレーライス。もはやライスが見えない勢いだ。


 美容のためにと、毎回付け合わせに野菜サラダとヨーグルトがつく。


 刑事という神経を使い多忙を極める職業。その双葉さんが食事を用意してくれるだけで感謝しないとな。双葉さんが夜勤の日は、全て俺が料理をしなければいけないんだから。


「「いただきます」」


 今日はチキンカレー。

 カレーにもチキンが入っているのに、さらにルーの上には唐揚げつきだ。しかも5個も乗っている。大食い選手権じゃないんだから。


 どうせなら、カレー味ではない唐揚げを食べたいと思っているのは、俺だけだろうか。


桜美工業高校おうみこうぎょうこうこうに通う男子なんだけどね、ちょっと素行に問題があって、喫煙やバイクで補導歴があったのよ。だから被害者の義父も交際に反対したんだと思うわ」


「補導歴? 交際相手は不良だったの?」


「そうね」


「彼が朝田さんを殺害したと思う? 被疑者なの?」


「彼はその時間に自宅にいたと証言しているわ。でも両親は仕事で不在、他に証人もいない」


「それなら完全にシロとは言えないね」


「殺害方法が猟奇的で、痴情の縺れにしては不自然っていうか、血に染まった上靴が何を意味するのか気になるんだよね」


「ウエッ」


 俺の脳裏に死体が甦り、思わず嘔吐えづく。


「太郎! 汚いな! 吐くならトイレ!」


「ごめん。大丈夫だから」


 俺が悪いのか? 俺はまともだよ。

 食事中に『血に染まった』とか言うからだ。


 双葉さんの携帯電話が突然鳴り、さっきまで和やかだった双葉さんの顔付きが刑事の顔に変わった。


「首を切断された猫の死体? わかりました。すぐに行きます」


 双葉さんはスクッと立ち上がり、エプロンを外した。


「母さん?」


「被疑者確保。桜美工業高校、平田誠二ひらたせいじの自宅周辺の空き地の地面から、猫のバラバラ死体が発見されたわ」


「それって、朝田さんの彼氏だよね?」


「そうね。容疑は否認しているみたいだけど。ごめん、後片付け頼むわね」


 双葉さんは部屋に入ると、数分でロリっぽい洋服を脱ぎ捨て、黒いスーツ姿で現れた。


 刑事、陰陽師双葉の凛々しい姿だ。

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