19
――翌日、登校すると、教室では『被疑者逮捕』の話で持ちきりだった。ニュース速報でも流れていたから、騒ぎになるのもムリはない。
「おはよう、陰陽師さん、西郷寺君。被疑者逮捕されたね。やっぱり朝田さんと付き合っていた男子だったんだ」
「木更津君おはよう。やっぱり?」
木更津の『やっぱり?』に、俺は少し気になった。
「昨日あれから平田の自宅に行ったんだ。そしたら情報を聞きつけたマスコミが複数自宅の外に待機していたし、刑事らしき人や警察官もいて物々しい雰囲気だったからさ」
「木更津君、平田の自宅がよくわかったね」
「桜美工業高校に中学校の時の友達がいるんだよ。偶然平田と同じクラブで、住所を教えてもらったんだよ」
「平田は部活やってたんだ。不良だから帰宅部かと思った」
喫煙やバイクの補導歴。
部活をしてる人物とは思えないな。
ネットニュースで平田は『少年A』として報道された。だが平田は朝田さん殺害容疑を否認しているらしい。
被疑者逮捕で学校に平穏が戻ったが、屋上には黄色いテープが張られ、今も立ち入り禁止だ。
今日の部活は花子の気まぐれにより中止になり、花子は俺を残してサッサと下校した。
放課後俺は木更津と2人で学食で缶珈琲を飲む。木更津は相変わらず売店のおばちゃんと仲良しだ。売店の壁には真新しい時計が掛けられていた。
「おばちゃん、新しい時計だね」
「そうなんだよ。壊れていたからね、やっと学校に買って貰えたんだ。予算も厳しいからなかなか買って貰えなくてさ。みんなにも不自由かけたね。でも最近の子はみんな腕時計や携帯電話を持ってるから困らないよね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます