17
◇
その日の夜、父は夜勤で張り込み。父と入れ代わるように双葉さんが帰宅していた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
双葉さんは家ではピンクや赤のフリフリのロリっぽいワンピースを着て、レースやリボンがふんだんに使われたヒラヒラしているエプロンをつけている。
学校で見た凛とした黒いスーツ姿の刑事とは、真逆のキャラだ。同一人物とは思えないが、本人曰く、日頃凶悪犯ばかり追っているから、家では気分転換を兼ねてリラックスしたいらしい。
俺はそんな双葉さんを見ていると、逆に全然リラックス出来ないけどね。
「母さん、造園業者どうだった? 怪しい人物はいた?」
「犯行時間、作業員は全員校庭にいたのよ。トイレ以外は校舎に入っていないわ」
「トイレを使用した人物はわかってるの?」
「校舎内に入ったのは2人。20代の男性と、30代の男性。使用したのは1階のトイレだと証言してるし、生徒も複数目撃してるからシロね」
「アリバイ成立か。もしも作業員に成り済ました男が人目を避けて屋上に上がったとしたら?」
「作業員に成り済ます? 成る程……それは想定外だったわ。でも作業員の服装で屋上まで誰にも見られず上がることが出来るかな?」
双葉さんは包丁を握ったまま頬に手をあて、首を傾げる。キラリと光る刃先、これこそホラーだ。
美しい顔を切りそうで、危なっかしくて見ていられない。
「方法はある。非常階段があるよ」
「非常階段は外階段だから、もしも犯人が使用したらグラウンドで部活している生徒から見えるわ。目撃者が一人くらいいても何ら不思議はない」
「そうだよね」
「実はね、朝田さんは養子だったのよ。最近家庭内不和だったらしいの」
「家庭内不和?」
「朝田さんにボーイフレンドができて、義父と口論したみたい」
「義父と口論か。ボーイフレンドって他校の男子だよね」
「花子、よく知ってるわね。さあ2人とも手を洗いなさい。夕食はカレーだからね」
双葉さんの夕食はいつもカレーだ。チキンカレー、ポークカレー、ビーフカレーに、茄子とひき肉のカレー。カツカレーに、ハンバーグカレーと微妙にアレンジを加えているが、全部カレーに変わりはない。
インド人もびっくりだよ。
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