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 化学準備室を出ると、周辺が騒がしかった。屋上に通じる階段には黄色いテープが貼られ立ち入り禁止になっている。


 警察官が屋上に出入りする姿を階下から見上げて、俺達も犯人逮捕に協力するつもりだった。


 この学園で殺人事件だなんて、犯人を絶対に許さない。


 始業のチャイムが鳴り、俺達は7組の教室に入る。みんなは事件のことで、完全に落ち着きをなくしていた。この状況で授業に集中しろなんて、所詮ムリな話だ。


 犯人の目的も犯人像もわからない、見えない恐怖に怯えていたんだ。


 生徒の間ではいつの間にか、『犯人は造園業者』という噂が広まっていた。


 学園の中に殺人犯はいない、そう思うことで恐怖から逃れたい一心だった。


 昼の休憩時間、木更津は急いで昼食を平らげて教室を出た。


 1組の女友達に被害者のことを聞き出すためだ。俺も7組の女子にさりげなく聞き込みをする。


 朝田未那は学園でも目立つ美少女だった。彼氏がいれば人目につくはずだ。


「朝田さんって、この学校に彼氏がいたのかな? 君たち知らない?」


「やだ、西郷寺君何の真似? 朝田さんは殺されたんだよ。犯人は造園業者なんだよ。まるでこの学校に殺人犯がいるみたいじゃない。気持ち悪いから、変なこと言わないで! ミステリー倶楽部だなんて刑事にでもなったつもり? 学校の空気読みなさいよ。変人!」


 俺の父が刑事だとは知らない女子生徒に、奇人変人扱いされ俺はあっさり退散だ。


「太郎は刑事の才能ゼロだな。まあ、期待もしてなかったけど。情報収集は木更津君に任せるしかないね」


「……すみません」


 花子のヤツ、自分は何をするわけでもなく俺を小馬鹿にして、そんなに木更津がいいのか。マジでウザい。

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