太郎side

13

 ―ミステリー倶楽部、部室―


 花子はニタニタ笑いながら、不敵な笑みを浮かべた。


 こんな笑みを浮かべている時は、何やら企んでいるに違いない。


「陰陽師さん、俺に頼みって?」


「昨日殺害された朝田さんなんだけど、周辺を調べて欲しいの」


「調べるって?」


「あたしが聞き込みすると、女子も敬遠するし。太郎だと誰も相手にしないでしょ。やっぱりイケメンの木更津君じゃないと、女子も口を開かないよね」


「花子さん俺だって、そこそこイケてると思いますけど」


「底底だろ? かなりの低レベル、どん底だ。焦げ付いた鍋の底ってカンジ」


 思わずムッとした俺は次郎を掴む。


「次郎、何か言ってやって。俺のことを焦げついた鍋の底だってさ。俺は父さん似なんだ。中学の時はこれでもモテたんだからな」


「中学に他に男子はいなかったの? おじさん似だなんて図々しい。モテ期はもう終わったな」


 花子のやつめ! 俺は父親似なんだよ。

 俺のモテ期を勝手に終わらせんな。


「陰陽師さん、それで何を調べればいいの?」


「朝田さんの友達関係とか、最近トラブルはなかったかとか。彼氏がいたかいないか。聞き出して欲しいの」


「それくらいなら、簡単だよ。1組に中学の同級生がいるから聞いてみる。まるで刑事の聞き込みみたいだね。陰陽師さん事件について何かわかったの? もう自殺の可能性はないってことだよね?」


「いや、別に。家庭内で母と事件の話はしないことにしてるから」


 嘘ばっかり。

 毎日事件の話ばかりだ。


「そうか、何も進展ないんだ」


 花子は父から聞いた話を木更津には一切しなかった。父との約束通り、極秘情報は同好会の部員である木更津にも一言も洩らさなかった。

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