12
「太郎、あたし珈琲。ミルクたっぷりにしてね。トーストはかためじゃなくてふわふわに焼いて」
「太郎、俺も珈琲おかわり。ブラックにしてくれ」
「はいはい。わかってますよ。俺はカフェのメイドか」
太郎はパジャマの上に、母のレースがふんだんにあしらわれたフリフリのピンクのエプロンをつける。
冷蔵庫からトマトジュースを取り出しコップに注ぎ、それを飲みながらあたしとおじさんの話に聞き耳を立てている。
「靴の赤い色だけど。どうやら人間ではなく動物の血らしい」
キッチンでガタンと音がして、太郎が「ウエッ」とえずいた。
「
「衝動的な犯行ではなく、計画的な犯行だよ」
「あたし、朝田未那の交友関係や交際相手を調べてみるよ」
「そうか? 頼むよ。警察が学校に乗り込み生徒を尋問するよりも、花子ちゃんならみんなが自然に話をしてくれるだろうからな」
「あたしに任せて」
太郎はトマトジュース片手に、まだ「ウエッウエッ」とえずいている。本当に情けないヤツだ。赤いトマトジュースではなく牛乳でも飲んでろ。
あたしは太郎の飲みかけのトマトジュースを奪い、一気に飲み干す。
「殺人事件の話をしながら、よくトマトジュースが飲めるね。俺にはムリだ。血を連想してしまう。花子さん殺害現場を連想しないの?」
「しないよ。トマトは血じゃないし野菜だ。バカみたい」
仕方なく自分で珈琲を入れて、おじさんにも珈琲のおかわりを持って行った。
「花子ちゃんありがとう」
このおじさんにあの息子だなんて、本当に有り得ない。
太郎はきっと突然変異だな。
――朝食を終えて、太郎と一緒に登校した。学校までは自転車通学。紫桔梗大学附属高校は学校の隣に学生寮がある。
駐輪場は寮との境にあり、入寮している木更津と出くわす。
「陰陽師さん、西郷寺君おはよう」
「おはよう。木更津君、部室で早朝ミーティングするけど時間いい?」
「ミーティング?」
「昨日の殺人事件のことで、イケメンの木更津君に頼みがあるんだ」
あたしは木更津を呼び止め、3人で化学準備室に向かった。
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