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「2人の親が刑事だなんて知らなかったよ。だから『ミステリー倶楽部』なんだ。未解決事件を解明するとか、随分リアルだと思ったんだ」


「親が刑事だからじゃないよ。あたしが興味あるから。屋上の殺人事件だけど、カッとなって殺害するなら、わざわざ首を絞めて気絶させて、水溜まりで溺死させる必要なくない? そのまま絞殺すれば終わったのに」


「花子さん、偶然そうなっただけだよ。犯人は絞殺したつもりだった。だけど彼女はまだ微かに息をしていた。突然降り出した豪雨で、偶然水溜まりに顔が沈みそのまま亡くなってしまったんだ」


「そうかな。屋上の排水溝に詰まった泥、あれは明らかに何処かから持って来た泥だよ」


「陰陽師さんどうしてそんなことがわかるの? 校庭の土かもしれないよ」


 木更津は不思議そうにそう問いかけた。


「屋上に砂が上がることがあっても、粘土質の泥が大量に屋上にあるなんて不自然だよ。みんな上靴履いてるんだよ、ありえないよ」


 太郎はポンと自分の手を叩く。


「成る程! さすが花子さん。だけど何のために泥をわざわざ持ってくる必要があったのかな?」


「太郎、それがわかれば警察はいらないよ。ただ……」


「ただ? 何だよ」


「痴情の縺れより、怨恨の気がする」


「怨恨……? 彼女のブラウスは乱れてたし、スカートが捲れて下着もチラっと見えてたし……。怨恨とは思えないよ」


「太郎はエロいな。そんなとこしか見てないの?」


「そ、そうじゃなくて……。たまたま目に入っただけ」


「あたしは赤い靴が気になったんだ。上靴をわざわざ赤に染めてあった。あれは彼女の血で染まったわけじゃない。彼女は絞殺、もしくは溺死だから」


「ひゃああ、花子さん怖いこと言わないでよ。だったら誰の血なんだよ。え、絵の具じゃないの? それともペンキ?」


「人の血液か塗料かは鑑識が調べないとわからないよ。取り敢えず解剖の結果が出れば、死因が絞殺か溺死かハッキリする。溺死ならこの殺人事件はカッとなり衝動的に殺害したのではなく、緻密に計算された計画的犯行だ」


「計画的犯行……?」


「だとしたら犯人は?」


「太郎、犯人はこの学校にいる。放課後に教師や生徒以外の人がウロウロしていたら、すぐに目につくだろ」


 木更津がハッとしたように目を見開いた。


「陰陽師さん、今日は園芸業者が校内で作業してました。もしかして犯人は園芸業者の1人では?」


「木更津君、それ本当? 園芸業者が美人女子高生を屋上に誘い出し、暴行しようとして抵抗され殺害したなら、推理は成り立つよ。花子さん、きっとそうだよ」


 太郎は本当に単純な男だ。

 犯人が園芸業者なら、何らかの原因で長靴に粘土質の泥が付着していても説明はつくが、衝動的な犯行に赤い靴は必要ない。


「太郎、上靴はどう説明するの? あたしにはまだ納得いかないな」


 あたしはジグソーパズルのピースをパチンと嵌め、パズルに浮き上がるドクロを見つめた。

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