Mystery 2

花子side

「事件?」


 次郎を抱えて化学準備室を飛び出すと、階段をドカドカと上がる複数の靴音がした。


 その揃った足並みに、階下を見下ろすと複数の警察官とスーツ姿の刑事の姿が見えた。刑事は勿論、あたしの母、双葉と太郎の父、一郎いちろうさんだ。


 母はストレートの長い黒髪をした美人。

 黒いスーツがとてもよく似合う。家では真逆の服装でレースのフリフリがついた、ロリっぽい洋服ばかり着ているから別人にしか見えない。


 太郎の父は超イケメンで、着崩したスーツは男のフェロモン全開で、刑事というよりも、どちらかといえばホストに見えなくもない。


 どちらにしろ刑事の2人は、家にいる時よりもめちゃめちゃかっこいい。


「やぁ、花子ちゃん。学園内で事件だってな」


「うん、そうみたい」


 あたしは次郎を太郎に渡し、おじさんの後に続く。次郎を渡されて「うわっ」と悲鳴を上げた太郎、とても刑事の息子とは思えない。


 刑事と警察官の登場に、教師と生徒は緊張した面持ちでスーッと道を開けた。


 階段を上がると屋上に続くドアがある。あたしは何くわぬ顔で警察官に紛れドアを通過し、屋上へと出る。そこには無残な遺体が横たわっていた。


 目はカッと見開いたまま、苦痛に歪んでいた。


「自殺にしては顔が苦痛に歪んでいるね」


「たぶん絞殺だろう。首に絞められたような鬱血がある。遺体を解剖しないとはっきりとした死因はわからないが、胃に雨水があれば、首を締められ瀕死の状態で水溜まりに顔を沈められ、溺死した可能性もある」


「こんなに少ない雨水で、溺死?」


「見ろ、屋上の排水溝に泥が詰まってた可能性がある。殺害当時は一時的な豪雨により今よりも雨水が溜まっていたに違いない」


 確かに屋上の排水溝の周りには、砂や土ではなく泥が不自然に散らばっていた。

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