「マジで言ってるの? 花子さんってかなりの変わり者だし。女王様気取りで暴君だし、最悪だよ」


「西郷寺君と陰陽師さん、名前で呼びあうなんて、もしかして付き合ってるの?」


「ま、まさか!? 花子さんが付き合ってるのは、次郎だよ」


「あはは、西郷寺君って真面目だと思っていたけど面白いこと言うね。なんだ、付き合ってないんだ」


「俺達は……えっと、幼なじみ。そうそう幼なじみなんだよ。だから名前で呼びあってんだ」


 木更津は売店のおばちゃんからジュースを受け取り、コーラを俺に渡す。


「幼なじみなんだ。陰陽師さんて魅力的だよね」


「魅力的? 花子さんが魅力的? 花子さんと付き合うくらいなら、次郎と付き合った方がまだマシだよ」


「あはは。やっぱり面白い」


 俺は真面目に話しているのに木更津は爆笑している。俺はジョークなんて言ってないのに。


 2人で階段を上っていると、バタバタと上階が騒がしい。女子生徒の怯えた悲鳴と先生の怒鳴り声がした。


「どうしたんだろう?」


「何かあったのかな?」


 血相を変え階段を駆け降りる男子に、俺達は問いかけた。


松坂まつざか君、何かあったの?」


「大変だよ! 屋上で女子が死んでる!」


「死んでる? まさか、冗談はよせ。ここは学校だよ」


「本当なんだってば!」


「嘘だろ……!?」


 俺達は階段を駆け上がった。屋上の入り口はすでに野次馬が集まり、複数の先生が生徒を制止していた。


 屋上のドアが開き第1発見者である、1組の生徒達が先生に連れられて出て来た。


 その時……見えたんだ。


 さっき突然降った豪雨で、屋上は濡れていた。屋上に溜まった水溜まりに女子の顔は浸かり、うつ伏せで死んでいた。


 彼女は長い髪の毛。

 体は細く華奢な体形。


 足には……。

 なぜか赤い靴。


 俺達の上履きは1年は白に赤いライン。2年は白に青いライン、3年は白に黄色いライン。上履きは赤い靴ではない。


 スクールシューズも黒の革靴だ。


 俺の目には……。

 真っ赤な靴は上履きが血に染まったように見えた。


 俺は4階に駆け降りた。

 化学準備室のドアを勢いよく開ける。


「花子さん! じ、事件です!」


 花子の瞳の奥が、水を得た魚みたいにキラリと光った。

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