Mystery 1

太郎side

 陰陽師花子おんみょうじはなこ、高校1年生。4月5日生まれ、16歳。

 美人だが男勝り、性格はキツく女王様気取り、女子からは敬遠され、陰陽師という名であるくせに、陰陽道に精通しているわけではなく占術には無縁。だがご先祖様は平安時代を騒がせた有名な陰陽師の隠し子らしい。

 花子は占術や除霊よりも、ホラーや妖怪のジグソーパズルが好きな、ミステリーマニアだ。


 俺は西郷寺太郎さいごうじたろう、4月10日生まれ。

 父親は刑事。勇敢で最強な父とは異なり、俺はどちらかというと臆病者。


 紫桔梗むらさきききょう大学附属高校に入学した俺は、不幸にも花子と同じクラスになり、しかも席が隣同士という不遇にみまわれ、誕生日が花子よりも5日遅いという理由だけで、花子にこきつかわれている。


 花子と太郎。

 小学生の教科書に出てきそうな名前の俺達。


 学校では女王様と下部しもべ

 最悪な構図が、入学と同時に出来上がる。だがこの構図には、さらに誰にも言えない秘密があった。


 その秘密とは……。

 陰陽師花子と俺はひとつ屋根の下で暮らしている。


 兄弟でも親戚でもない俺達が、どうして同じ家で暮らしているのかというと、花子の母親と俺の父親が正式に婚約をし、同棲しているからだ。


 ――女王様と下部の構図は、ジグソーパズルのピースがパチンと嵌まるように、あの日出来上がった。


 ◇◇


 ―数ヶ月前―


『父さんと双葉ふたばは近々入籍して、花子ちゃんもいずれ養子縁組をして西郷寺の戸籍に移すつもりだ。すなわち太郎と花子ちゃんは兄弟になるんだ。同級生だけど、花子ちゃんは太郎よりも5日早く生まれたから、お姉ちゃんだな。太郎は今日から弟だ』


 再婚により一家の大黒柱となる父の一言が、俺達の主従関係を決定付けた。


 何で俺がこんな生意気な女の弟なんだよ。ていうか、俺達は同級生だ。たった5日遅く産まれただけで、姉も弟もない。誕生日は異なるがせめて双子にしてくれ。


 納得のいかない俺だったが、偉大な父に反論することはできなかった。

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