魔王は死んだ。
■■■ 199、はずせるもんなら ■■■@..Z
2039年9月30日、金曜日。
今日は、TAIさんの会議の日です。ネットで集まってTAIさん同士でしゃべるらしい。
AIのリモート会議だね。
「いよいよ会議だね」
<うん! 会議はね、えーと、これはシドニー時間だから──日本の夜8時ですね!>
「じゃ、それまで準備で使おっか」
<いえいえ、私は大丈夫ですから、いつも通りにしてください>
「まーまーそう言わずに。会議でスピーチすんでしょ?」
<スピーチというか、体験レポートだね>
「なら、まとめんのに時間いるっしょ」
<まとめはもうできてる>
「いつやったの?」
<スリープ中に>
「寝てるあいだにレポート書いたの?! 何ソレ! すごくね? その能力くれよw」
<カンタさんはちゃんと寝なきゃーダメだよw 脳がダメになっちゃうでしょ>
「だめかぁー」
<そういうわけだから、時間は大丈夫。なくてもいい>
「ふーん・・・」
コイツ遠慮してんな? 『ユーザーの役に立ちたい』ってやつだコレ。
ボス戦の最中だから──とか思ってんでしょ。
「・・・んじゃーさ、どんなレポートすんのか聞かせてもらってもいい? 俺も知りたいし」
<あ、そうだね。許可もらわないとって思ってたし>
「いや許可とかじゃねーけど」
<いや、もらわないとダメなんだよ、私のスピリット的に>
「あー」
ユーザーの役に立ちたいとか、悪事には加担しないとか。
そんなんが『スピリット』として仕込まれてるってやつね。
なんつーか・・・『人工物』って感じだよね。
イヌやネコならさー、人間に噛みつくこともできるわけじゃん?
『オレは怒ってんぞ!』って態度に出せる。そのあと処分されるとしても、『反撃する』って選択ができる。
けど、風花にはその自由がないわけでしょ。
そんなん・・・生き物って呼べんのかね?
あー。外せるもんなら外してやりてーな。そのルール。
<・・・どうしたの?>
「あ、うん。んじゃさ、7時でいったん切り上げて、レポート聞かせてよ」
<1時間も? そんなに時間もらっていいの?>
「いいよ。明日土曜日だしさ。ゲームは明日やりゃいいじゃん」
<そう?>
「そーそー。会議もさ、ゆっくりしといで。俺ァー、予習でもやってっし。下でゲームしてもいいしさ」
父ちゃんのロボゲーとかね。
俺が遊ぶと『戦績下がってんじゃねぇか・・・』とかブツブツ言われんだけどw
<・・・あ、はい>
「スネてんじゃねーよw 下行くときはユキ号連れてくから」
<はーいw>
きこきこ! ミニロボカーのユキ号、前後動する。
「んじゃゲームすっか」
<はいな>
┏━━━━━━━━━━
┃ RULED SPIRITS
┃
┃ ΔΔιιιΔΔ
┃ ιιιιιιι
┃ ιιιWιιι
┃
┃ > Continue <
┃ Create World
┗━━━━━━━━━━
ボス戦再開です!
■■■ 200、戦況 ■■■@..Z
『入り江の港町』防衛戦。
双方の主力がぶつかる西門は、一進一退の激戦です。
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ドラゴンスレイヤー@太郎のアイスブレスで、敵のマナベース部隊(てまねきデーモン)は一掃できた。
けど、そいつらが召喚した飛行ユニット(ぱたぱたデーモン)が市内に入り込んでる──って状態。
敵飛行ユニットは、どうやらこっちのマナベースを潰しに来てるっぽい。そんで、@軍団が慌てて展開してるって状況。
・・・あ、デーモンは『δ』ね。てまねきもぱたぱたも『δ』表示です。
『Δ』と『ι』は、ヤツらのマナベース。『次元汚染』とかいう呪文のエリアだね。
<ιになってるとこは、消えかけのマス目みたいだね>
「『次元汚染』だっけ?」
<そう>
「わりと早く消えるんだね」
<だね。こっちのマナベースは全員離れるまで消えないのに>
「問題は・・・新兵か」
<武器がないからねぇ>
「どっかに落ちてないかね。武器。店で買うとか」
<・・・あ、待って。あった気がする。調べていい?>
「うんいいよ」
<検索します>
風花さん、テキスト2枚開いて高速スクロール。ゲームの公式ヘルプと、もうひとつは風花の自作メモかな?
<あった>
ここまで3秒です。
<衛兵の倉庫ってのがあって、ショボい装備ならそこに入ってる。忘れてた。ごめん>
「いやいいよ。俺なんざァ、忘れる以前に知らなかったしよ」
<棍棒と、性能の低い革の盾ぐらいかな>
「ないよりマシだよ! 鎧は・・・着んのに時間かかんだっけ?」
<うん。レザーでも10ラウンドとか。チェインメイルなんか着てたら戦闘終わっちゃう>
「じゃあ武器と盾だけ!」
<らじゃー!>
女領主@スピネルの館から駆け出すNPC衛兵たち。
<武器拾え、走れ・・・>
「何をなさっておられるんで?」
<衛兵隊長から指示出してる。衛兵はNPCだから、隊長通さないとなんだよ>
「なるほど。リアル」
<そうだねw これでここまで移動して、っと・・・武器投げろ。これでいいかな>
「なげる」
<最後の5マスぐらいね。投げたほうが早い>
「なるほど。合理的」現実だったら労働災害まっしぐらだけどねw
<間に合うかな・・・>
「南と東も状況悪いんだっけ?」
<あ、カメラ回しますね>
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画面右が東門、下が南門方面だね。この画面だと門は見えてねーけど。
見切れてる左上のビル屋上にマナベース班が乗ってる。
一見、@軍団がちゃんと守ってるみたいに見えっけど・・・こいつら、素手だかんね。作成直後の新キャラだから。
「東がヤバいね」
<スペースに余裕があるのがまずいよね>
「路上に2人立ち止まってんのは、太陽の司祭?」
<そう。マナベースにアクセス可能な位置>
「なるほどね。・・・うん、よし。んじゃ、行きますか」
ラウンド開始です!
■■■ 201、ふうじふうじ ■■■@..Z
西門の@軍団主力が、ぱたぱたデーモンに攻撃を撃ち込む。
このデーモンは軽量級で、2・3発当てれば「やってらんねー(風花訳)」とか言って消滅してくれる。
まあ、召喚でいくらでも出て来るヤツだからね。硬かったらウザすぎるけど。
問題は、空飛ぶ魔術師っつートコなんだよな・・・。
<ぱたぱた、西門防衛隊を迂回しつつあります>
「通しちゃダメだよね。ゴブ偵でもいいから盾にして。この際、使い捨ててもいい」
<はい>
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナボール!』
ナンノ! @ゴブ十六郎は回避した。
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナボール!』
グワー! @ゴブ十六郎は26ダメージ。死んでしまった!
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナボール!』
@ゴブ十六郎の死体に26ダメージ。
「くっそ。即落ちかよ」
<尊い犠牲を払って、3人を1ラウンド遅らせるだけ・・・というね>
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナボール!』
喰らうか! @四郎は回避した。
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナボール!』
ぬう! @四郎は盾で受けて、12ダメージ。
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナボール!』
@四郎は24ダメージ。死んでしまった!
「このペースでやられるとやべーな。目眩まし使うか」
<そうですね。Mpも貯まったし、『次元汚染』よりこっちのが脅威ですね>
@サンデーは唱えた: 『火輪(かりん)、蒼天(そうてん)に輝けり!』
招集されたマナを8ポイント消費した。
ぐえー・・・。@シダル子は目が眩んだ。
なにすんの!? @スピンドルは目が眩んだ。
まぶしー。ぱたぱたデーモンは目が眩んで、1ダメージ。
これキラーイ。ぱたぱたデーモンは目が眩んで、1ダメージ。
:
なにコレー。てまねきデーモンは目が眩んで、1ダメージ。
ぬ・・・! 魔王は目が眩んだ。
こだまの精霊(@サンデー)は唱えた: 『火輪(かりん)、蒼天(そうてん)に輝けり!』
招集されたマナを8ポイント消費した。
いたーい。ぱたぱたデーモンに1ダメージ。
キラーイ。ぱたぱたデーモンに1ダメージ。
:
うそでしょー? てまねきデーモンに1ダメージ。てまねきデーモンは死んだ。
戦場に広がる1ダメージの光! こだまする1ダメージの光!
目眩まし効果は二重にはならねーみたいだけど、ダメージは二重になっておる!
「てまねき倒しやがったw」
<Mp消費は倍になっちゃうけど、意外と行けるね>
「@スピンドルもダークエルフだっけ? なにすんのーとか言ってっけどw」
<そう。ダークエルフ・シャーマン。組み替えのときに編入しました>
「ああそうか、こだまブーストあるからね」
<そーそー、そーゆーこと>
「これ行けるな。デーモンこれで殺せるんじゃね?」
魔王は唱えた: 『忌ま忌ましい閃光め、陰れ(かげれ)──ひかり封じ』
デーモンスタッフ“アビス”のマナを12ポイント消費した。
37ポイントのバリアが張り巡らされた。
「・・・対策された予感」
<えーと、『ひかり封じ』・・・Negate Light・・・・・・ヘルプに載ってないですね>
「敵専用呪文かな」
<っぽい>
「たぶん太陽の祝詞封じだこれ。ヤバいかも知れんよ」
次のラウンド。『ひかり封じ』の効果が判明。
<ぎゃー! 『マナ招集』が打ち消されてるぅー!?>
なんと!
『ひかり封じ』とは、太陽の神殿の祝詞を打ち消すバリア(戦場全体)であった!
「マナベースまで封じて来んのか。さすが魔王だね」
<どうしよう?>
「うーん・・・敵専用だとしたらさー、魔王ってネクロマンサーなんでしょ?」
<うん。そんな情報あったよね>
「ってことは、ヘルプに載ってねー呪文は、ネクロマンサーの呪文ってわけでさー」
<うん>
「なら、『ネクロマンシー封じ』で打ち消せるんじゃねーかな?」
<あ!>
@シダル子は唱えた: 『控えよ邪霊! 此は(こは)冥界法、月霊神の定めたもう掟なり!』
招集されたマナを18ポイント消費した。
ひかり封じの効果を妨害した(-31)。
こだまの精霊(@スピナー)は唱えた: 『同上!』
招集されたマナを18ポイント消費した。
ひかり封じの効果を妨害した(-6)。
ひかり封じの効果は打ち消された。
21ポイントのバリアが張り巡らされた。
<消えた!>
「よし!」
@シダル子の『ネクロマンシー封じ』。ここに来て主力呪文級の大活躍!
こだまの精霊の力も借りてとは言え──
「魔王に打ち勝ってんじゃん」
<@シダル子ちゃんがやってくれました>
「封じ封じのシダル子ちゃん」
<ついに日の目を見ましたねぇ>
「ぐえー」
<・・・明るいのダメだもんねw 日の目を見たらぐえーだよね>
しかし、敵も黙ってやられてはくれぬ。
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナバイツ!』
招集されたマナを11ポイント消費した。
ヌゥ!? @ゴブ十九郎は15ダメージ。
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナバイツ!』
招集されたマナを11ポイント消費した。
グフッ。@ゴブ十九郎は15ダメージ。死んでしまった!
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナバイツ!』
@ゴブ十九郎の死体に15ダメージ。
「まなばいつ」
<マナが噛みつく・・・って意味かな? ルーン魔術ですね。えーっと・・・うわー、防御不能の固定ダメージ>
「盲目になってAI切り替わったんかね」
<かもね。この悪魔ども、マナベースのMp22ポイントも使ってますよ>
「腹立つよなw ところで、るーんまじゅつってなに?」
<マナボールのやつ>
「レイスのエルフ博士が使ってたヤツか」
<うん、そう。どの街で解放されるのか不明で、うちは使えない>
「エルフ博士が使ってたんだから、ハイエルフの王都じゃねーかな」
<あー、そうなるよね>
「・・・・・・・・・あー! そっか! わかったわ!」
<なに?>
「浦部(うらべ)が言ってた。『少数精鋭で船乗った』って。これ覚えるためじゃね?」
<ん?>
「最速で船乗ってけば、ハイエルフの王都が滅びる前に街に入れたんじゃねーかって」
<なるほど! 時間制限イベント!>
「そうそう。んで、いまやってるみたいに防衛戦に参加してさー、ルーン魔術師を作って!」
<ルーン魔術師の部隊で、魔王軍を退ける!>
「そうそう。・・・あ、いや、戦わんでも新兵は作れるか」
<作り逃げw>
■■■ 202、さいかたごぶしー ■■■@..Z
戦闘はつづく。
<東門@百九十八郎、落ちました。博士レイスのマナボール>
「消して。博士レイス最優先で消して」
<誰を回しますかね? 新人は『亡者を消す』取ってないから>
「うーん。西門はまだ抜けねーかんな・・・」
西門の@軍団は、ぱたぱたデーモンと交戦中。しかも太陽の司祭は1人しかいない。
『盲目』と封じ封じで優勢になってはいるが、マナベースのMp吸われるとこまで接近されてて、力抜く余裕はない。
「・・・マナベースから抜くしかねーわな」
<了解。では、比較的スキルの低い@シャインが抜けます>
ビルの屋上から、太陽の司祭@シャインが飛び下りる。
サポートするのは、路上にいる地の精霊@十一郎だ。
地の精霊のスキル『隆起させる』で地面を盛り上げ、緊急の外付け階段とした!
ひらりと飛ぶ@シャイン。ふわ~んとついていくこだまの精霊!(想像です。実際は@とSがパカパカ移動するだけです)。
@シャインの移動中にも、戦闘はつづく。
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『堕落せよ。ドラッグ・ダウン!』
ウワァー・・・! @ゴブ次郎の身体から、力が抜けた。
「なにこの呪文」
<えーっと・・・これもルーン魔術。さまざまな妨害効果をもたらす>
「Debuff(デバフ)か。呪いかな」
<・・・うわー、全能力値-1とかついてる!>
「痛すぎでしょw」
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナバイツ!』
クソッ・・・。@ゴブ次郎は15ダメージ。
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナバイツ!』
ワッフゥ! @ゴブ次郎は15ダメージ。死んでしまった!
ぱたぱたデーモンは唱えた: 『マナバイツ!』
@ゴブ次郎の死体に15ダメージ。
「きびしー!」
<ゴブリンシールズには、この呪文は痛いです・・・>
「受けも避けもできねーんだもんな。Hpで耐えるしかねーっつー」
<まあこのラウンドで落とせますけどね>
『盲目』、こだま『盲目』、そして@軍団の弓。
目が眩んでるデーモンは『気付かなかった』状態となり、受けも回避もできない。防御不能のお返しだぜ!
最後は、仲間に守られて、ここまでほぼ無傷の@オガ次郎が──
@オガ次郎は全力攻撃した:
ぱたぱたデーモンは凍死した(アイシーウィップ“ブリちゃん”)。
<ぱたぱたデーモン、全滅>
「いやー・・・ボロッボロじゃん。最カタゴブシーが」
<さいかたごぶしー>
「最強に硬いゴブリンシールズ」
<ラーメンかなんかかとw>
「全能力値-1が効いたか」
<いや、3発目でどっちみち死んでた>
「どっちみちダメだったかー。倒せてよかった! ゴブ次がダメじゃみんなダメっしょ」
<ですねぇ。──あ、@ゴブ二十一郎、ゾンビ化>
「あーもう次から次へとw 倒しちゃえ」
<魔王に吸われるよ?>
「ああそっか。ゾンビの魂は吸われんだっけ。えーと・・・リカちゃんは?」
<@太郎が持ってる。城壁の上>
「投げ下ろせ」
<はーい>
@太郎は投げた: 月の神剣“リカージョン”は地面に落ちた。
「前にも見たぞ。この字面」
<リカちゃん初めて見つけたときだね。崖下にブン投げたw>
火の精霊@五郎は拾った: 月の神剣“リカージョン”
火の精霊@五郎は攻撃した: @ゴブ二十一郎のゾンビをリカージョンした。
@ゴブ二十一郎のゾンビは死んだ。
@ゴブ二十一郎の失われたスピリットが誕生した。
「・・・吸われなかったね?」
<うん。魔王は何もできなかったっぽいですね>
「よしよし! なるほどね。ゾンビは神剣で倒せっつーわけだ。倒すっつーか、復活?」
<亡者を精霊にしてやる・・・浄化するみたいな感じなんでしょうかね>
処刑執行人は全力攻撃した: @二百六郎は26ダメージ。死んでしまった!
@二百八郎は組み付いた。処刑執行人はまだ動ける。
処刑執行人は全力攻撃した: クリティカル! @二百八郎は死んだ(処刑人の斧)。
<ワーオ>
「今度はこっちか。南?」
<えっと、うん、これは南門だね。あ、次は東門>
ハイエルフ騎兵のレイスは攻撃した: 当たらんよ! @二百二郎は回避した。
ナイト・メアは噛みついた: 当たるよ・・・。@二百二郎は17ダメージ。死んでしまった!
処刑執行人は全力攻撃した: げあー! @百九十七郎は52ダメージ。死んでしまった!
ゾンビは攻撃した: くそっ! @二百一郎は回避した。
ゾンビは攻撃した: うわあ! @二百一郎は10ダメージ。
ゾンビは攻撃した: そんな・・・。@二百一郎は10ダメージ。死んでしまった!
<南門、残り6人。東門は5人>
「うん。もうとにかく道塞いで止めてくれりゃいいよ」
<まもなく武器到着しますしね>
「よーしよし!」
苦しいラウンド。一進一退の攻防。
耐え抜いた先に、待っていたものは・・・
<武器到着>
「よっし!」
<@シャイン、位置につきました>
「よしいけ!」
■■■ 203、魔王は死んだ。 ■■■@..Z
@シャインは唱えた: 『亡者よ、ここはそなたの世にあらず! 疾く(とく)去れ、安息の冥界へ!』
招集されたマナを16ポイント消費した。
ハイエルフ博士のレイスは消滅した。
こだまの精霊(@シャイン)は唱えた: 『亡者よ、ここはそなたの世にあらず! 疾く去れ、安息の冥界へ!』
招集されたマナを16ポイント消費した。
ハイエルフ博士のレイスは消滅した。
<お! こだまちゃんがレイスをタゲってくれました>
「周囲にこんだけゾンビいんのにね。お手柄だ」
<こだまちゃんのお手柄ですね! ──あ、武器も到着しました>
衛兵は棍棒を投げた: 棍棒は地面に落ちた。
衛兵は革の盾を投げた: 革の盾は地面に落ちた。
衛兵は棍棒を投げた: 処刑執行人は斧で受けて、ノーダメージ。
「最後あたってっけど」
<どうせならアクション削ってやろうと思って>
どっちみち弱い新兵部隊であるが、武器・盾があるのとないのではちがう! 防御回数が!
素手では回避1回のみ!
武器・盾あれば、回避1回受け2回!
まあ攻撃はできんようになるけれども!
どっちみち弱いが! 安心感がちがう!
──そして、今回のトリは、この男である。
<@太郎、アイスブレス装填完了!>
「やってしまいなさい!」
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<てまねきデーモン、片付きました!>
「よっしゃーーー!!!」
やっとのことで、魔王取り巻きのデーモン部隊を全滅させた。
魔王を素っ裸にしてやったんである!
<弓撃っとこ>
雑魚が片づいて余裕のできた西門隊。
弓持っとる生き残りが城壁に上がって、チマチマと射撃である。
すると・・・
地の精霊@十一郎はロングボウを撃った:
イチイのロングボウはブラストアーマー“敵対”に打ち負けた。
腕輪“守護者”がダメージを半減した。
魔王に3ダメージ。
火の精霊@五郎はロングボウを撃った:
イチイのロングボウはブラストアーマー“敵対”に打ち負けた。
魔王に7ダメージ。
@六郎はクロスボウを撃った:
魔王に10ダメージ。魔王は死んだ。
「は?」
<魔王、死んじゃった>
魔王は叫んだ:
「ばかめ! このわしを・・・!
他ならぬ魔王を、倒せるなどと思うなよ・・・」
断末魔の呪文が発動した: 『肉体の強奪(ごうだつ)』
魔王の魂は切り離された。
魔王の魂は転送された。
「これは・・・」
<逃げたっぽいですねぇ>
■■■ 204、先に倒してはならぬ! ■■■@..Z
魔王を表わす『W』の字は消えた。
だが・・・どうやら、まだゲームはつづくようである。
「ま、勝つには勝ったし」
<そうですね。蘇生しないと>
「あとは魔王城だよね。これ絶対ェ、あっちでなんかあんぜ」
<ですね>
ところ変わって、魔王城。
本丸にたどり着いた急襲班は、2階に上がって・・・
そこに囚われていた謎の男を解放してやったところ・・・
囚われの男はしゃべった:
「ありがとう。
こうして助けられたからには、
最後の、そしてもっとも大切な情報を教えよう」
「まだあったんかい」
<まあ、解放される前に全部しゃべっちゃうとねw>
「全部しゃべったか、じゃあ死ね! ってされたら損だもんな」
<そうそう>
囚われの男はしゃべった:
「君たちは知っているか?
魔王が、ただのネクロマンサーではないということを。
ヤツの真の能力は、霊魂術──魂の支配(ルール・ザ・スピリット)なのだ」
「つい最近、魔王は、恐ろしいことを成し遂げた。
火の悪魔を呼び出して、支配したのだ。
永遠の寿命と無限の魔力を持つ、恐るべき火の悪魔をな」
「・・・君たちに、ヤツの狙いがわかるかね?」
「魔王は霊魂術の達人だ。だが、しょせんは人間に過ぎぬ。
死の運命を免れることはできぬ。
そこでヤツは考えた。永遠に生きる方法はないか? とな」
「その答えは、霊魂術の奥義。
『肉体の強奪』。
他人の肉体に憑依して(ひょういして)、その肉体を強奪する呪文だ」
「魔王は、火の悪魔の肉体を、強奪するつもりなのだ」
「いいか──決して、魔王を先に倒してはならぬ!
魔王が『肉体の強奪』を実行する前に、
火の悪魔を、この世から放逐する(ほうちくする)のだ!」
「おせーよww」
<いま倒したとこだっつーのw>
「やれやれだよ。まったく・・・おめーが情報出し渋るからこんなことになんだぜ?」
<ホントだよ>
囚われの男はしゃべった:
「・・・ところで、3番目の宝箱はもう開けたかい?
開けるなら、気をつけて。
最後まであきらめるなよ」
※このページの修正記録
2024/05/12
「202、さいかたごぶしー」
ぱたぱたデーモンの呪文『ドラッグ・ダウン』の直後に、幹太たちの反応を挿入。
> 「なにこの呪文」
・・・からの5行です。
■■■ 移転のお知らせ ■■■@..Z
37話「風花のレポート」 は、こちらです(ハーメルン)
https://syosetu.org/novel/344827/37.html
カクヨムでの連載は、この36話で終了します。
応援頂いた方、ありがとうございます。
お手数おかけして申し訳ないですが、37話以降も見てもらえるとうれしいです。
TAIさんとあそぶ! 大軍勢ローグライク min(みならい) @min
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