ブリッツふたたび

■■■ 119、ブリッツふたたび ■■■@..Z


「ただいまー」

<・・・おかえりー>


┏━━━━━━━━━━

┃ RULED SPIRITS

┃  .■■C■■

┃   .■∴∴■

┃    .∴@■

┃ > Continue <

┃  Create World

┗━━━━━━━━━━


 昨日のつづき。山羊キメラ倒したとこから。


「たしか毒喰らってたよね?」

<うん。でも、回復で耐えてたら、消えちゃった。自然治癒するみたいだね>

「そっか。じゃあ問題なし?」

<うん。もう問題なし。先に進めます>

「これさー。この細い山道さー」

<うん>

「こういう道しかないんだったら、攻めるの難しいよね。大軍勢いても」

<そうだね>

「ゾロゾロ並んで歩いてもさ、道の端っこでドラゴンが待ってりゃいいわけじゃん」

<順番に1人ずつ倒せばいいだけだもんねw>

「そう。この先、そうなってんじゃねーかなーって、いま思ったんだよw」

<あー>

「なんかこのゲーム、罠地形っつーか、待ち伏せっぽい配置多いからさ」

<ローグライクってなってるわりにね>

「そうそう」


 などと話しながら、前進する。

 ゴブリン偵察班は前回3人死んで、残り5人。

 主力は、ゴブリンシールズ9人、@太郎班8人、マナベース班10人が健在。合わせて32人だ。


「ゴブリン1人先行で、残りは待機ね」

<はい。出す前に食事させてもいいかな?>

「いいんじゃね?」


 @オガ太郎は掘った:

  玄武岩の岩は砕け散った(魔剣“クラッシャー”)。


「なにしてんの?」

 食事っつったのに穴掘ってるよこの子。

<いや、キャンプ場造ろうかなって思ったんだよ>

「あー・・・」30人が待機できる場所ね。5×6マスとかね? なるほどー!「・・・穴掘りたかっただけでしょ?」

<いや! ・・・まあ、壁崩すのは好きだけどw>

「フーカって、地形変えるの好きだよね」

<うん>

 ミニロボカーのユキ号が、ジッコ、って動いてこっち見た。

<なんでだろね? 楽しいんだよ>

「楽しいのはわかる」

<あ、わかる?>

「わかる。マップが変化すんのはさ。楽しいよね」

<そうなんだよ!>


 キャンプ場も確保できた。

 キャンプファイアー(※火の精霊のことです)で温かい飯とする。


<あれ・・・>

「どったの?」

<なんかオーガたちが異常に空腹なんだよ。他のメンバーとくらべて>

「オーガだからじゃないの?」

<種族のちがいは計算して食料持ってきたはずなんだけど、その計算と合わないんだよ>

「なんでだろ?」

<なんでだろね? ヘルプ見ます。・・・あ、わかった。『シークレット:パワー』の副作用だ>

「なんじゃそりゃ」

<オーグマンシーの、筋力をアップする呪文ね。効果が続いているあいだ、空腹係数がアップするって>

「へー」

<これオーガには使わないほうがいいかもね>

「そうなの?」

<筋力アップは+3なのに、空腹のほうは掛け算で悪化してるっぽいからね・・・>

「なるほどー」


 なるほどとか言ってっけど、例によって俺はよくわかってません。

 食料の管理は風花任せなんで、どのぐらい減ってるかとか、食料どんだけ持って重量が・・・とか、全然わかってねー。


<まあいいや。★大鷲が回復するまでは持つから大丈夫です>

「了解」

<では偵察出しますね>

「おう!」


 @ゴブ九郎、寒中、山道を先行である。


「かわいそうだね。偵察員。1人ぼっちで」

<そうだね>

「現実なら給料上げてやりたいとこだけど」

<このゲーム、給料はないもんねw>

「金持たせてやりゃ良かったかな。気持ちだけでも」

<回避%が落ちるよ。金貨も重さあるからね>

「あ、んじゃダメだわw」


 あわれ@ゴブ九郎。給料もなしに特攻偵察である。

 やがて。


<城壁見えて来ました>

「お! 次の砦かな?」

<いや、これは──このシンボル群は>


□□□□□□□□........□□□□□□□□

_______□w□++++□□□_______

_______ww_______________

______www_______________

_______ww_______________

______llww_lll__________

______nDDVDDDtttttt_____ Ice Dragon “Blitz”

_____nllww_lll__________

____n___www_____________

____H____www____________

___hHh____ww____________

___hmh_□□□++++□□□_______

□□□□□□□□........□□□□□□□□

      ..................

      ............▲▲▲▲..

      ...........▲▲▲▲▲▲.

        ........▲▲▲▲▲▲▲▲

         ......▲▲▲▲▲▲▲▲▲

           ....▲▲▲▲▲▲▲▲▲

             ..▲▲▲▲▲▲▲▲▲

              @▲▲▲▲▲▲▲▲▲ Gob9ro

               .▲▲▲▲▲▲▲▲


 城壁の上に、英文字の塊(かたまり)が。

 1文字だけの@に対し、圧倒的にデカい。一体何文字使ってんの!? ってぐらいデカい。巨大生物!

 その名も──


<アイスドラゴン“ブリッツ”>

「ブリッツふたたび!」


■■■ 120、1人目:アイスブレス ■■■@..Z


「とりあえず操作ストップね」

<はい>


 ここで長考である。


「遭遇しちゃったね」

<しちゃいました>

「距離がありませんな」

<はい。角曲がったら、いたので>

「このパターン多いね!」

<ほんとにねw 距離が欲しい>

「これさー、めっちゃ分厚い城壁だよね。ブリッツ君丸ごと乗ってんしょ? 城壁に」

<うん。1マス5フィートと仮定すると、20メートルぐらいの厚さだね、これは>

「すげー。学校のプールなみ」

<まさに要塞だね>

「でさ、ブリッツ君がいるってこたァー、魔王の城だよね? これ」

<そうなるね>


 どうやら、魔王の城に到達したようですな。


「道は合ってたわけだ」

<他のルートだとどうなったんだろうね>

「そこも気になるね。けど、とりあえずは、@ゴブ九郎がどう死ぬか? だ」

<死ぬ前提なんだw>

「そりゃーね。これもうどうやったって死ぬっしょ。残り数ラウンドをどう使うかって問題だよ」

<なるほど>

「うーむ・・・もう気付かれてるよね?」

<たぶんね。相手に『寝てる』とかの表示がないからね>

「ブリッツ君は空飛べるんだったよね」

<ログ見ますね。・・・うん、初回は空飛んでた。

 空襲からのブレス・右前足・左前足・噛みつき・右後足・左後足・吠える。7回連続攻撃>

「ふむ」


 走って逃げても無駄と。


「じゃ、突っ込みますか」

<門に突っ込む?>

「そう」

<飛び込めたら助かるかも知れないもんね>

「まあそうだね。期待はしてないけどw」

<では操作再開します>

「うむ! 行きなさいフーカさん!」


 @ゴブ九郎、門に向けて突進である!

 結果は。


 アイスドラゴン“ブリッツ”はブレスを吐いた。

  @ゴブ九郎は凍りついた。@ゴブ九郎は死んだ。


「南無ー」

<なむー>


 次行ってみよー!


■■■ 121、2人目:噛み付き ■■■@..Z


 次。@ゴブ十郎。角の手前でストップ。ブリッツ君に視線が通んない位置ね。


「これ、道の左右ともに崖になってんだよね?」

<そうですね。左は断崖絶壁。右は登りの傾斜かな>

「崖に入って移動できる?」

<できる。右のほうがイージー。左は険しいから落ちる可能性が高い>

「じゃあ右行くか」

<でも右は登りだからね。たぶんブリッツから視線通っちゃうよ>

「死じゃん」

<うんw>

「じゃあ左か」

<崖に身を隠す形で低い位置を移動していくことはできると思う。落ちるかもだけど>

「『登山』スキルを信じよう」

<伸ばしますか?>

「あ、伸ばせるんだっけ?」

<山羊キメラ戦でちょっと経験入ってるからね。2にはできる>

「じゃあ『登山』2を信じて行ってみよー!」


 @ゴブ十郎、山羊キメラ戦の経験点で『登山』スキルを2にアップ。

 左手の断崖に下りる。

 1段低い位置に下りることで、ブリッツ君に視線が通らなくなる、というわけだね。

 この状態のまま、横方向に移動する形で城壁を目指す。


「ボルダリングっつーやつだな」

<命綱なしのね>


 @ゴブ十郎、わずか2ランクの『登山』スキルで、決死のボルダリングである。


<おっと、危ない。ちょっと滑落しました(かつらくしました)>

「よく止まれたな」

<判定がギリギリ失敗だと『滑り落ちた』になるみたいだね。1フロアだけ落ちる。そこに掴めるものがあれば助かる>

「なかったら?」

<死だね>


 @ゴブ十郎、2回滑落しつつも、ボルダリングに成功する。


<城壁に到達しました>

「見えねーけど」

<視線通ってないからね。でもこのマスで合ってるはず>

「ここで上がると視線が通る?」

<いや、城壁の角で視線切れるはず。ブリッツ君からは見えない位置だよ>

「さすがフーカ。じゃあ上がろう」

<光栄です! 上に参りまーす>


 @ゴブ十郎、這い上がる。

 断崖が城壁に変わった。さらに這い上がる。


「城壁上がれるってすげーな」

<たぶん石とか木とか組み合わせた壁なんじゃないかな? 日本のお城にもあるような>

「あー。ちょっと斜めになってるやつね? 隙間とかもいっぱいあって」

<そうそう>

「たしかに、あれなら登れなくはないか」


 @ゴブ十郎、這い上がる。

 ロクに育成もしてもらえず、いきなり実戦投入されたゴブリン兵。

 それも特攻偵察という、完全な使い捨ての役目である。

 だが、一寸の虫にも五分の魂。彼は、ついに城壁を登り切った! 初めて魔王の城の城壁を踏む身となったのである!


 □hh______

 @mHHnnnDD

 □hh______


「ブリッツいるけど」

<いるね>

「移動してきた?」

<首をこっちに伸ばした・・・って感じかな>


 アイスドラゴン“ブリッツ”は噛みついた。

  @ゴブ十郎は回避した。


<避けたw>

「やるぅwww」


 なんと@ゴブ十郎、最初の攻撃を回避である。


「走って走って!」

<中を見てみたいですからね>


 城壁の内側は見えないんだよね。外からじゃ、視線が通らないから。

 誰かが城壁を越えないと、中がどうなってるか全然わからないわけだ。

 それを知るために、@ゴブ十郎に生命を使ってもらおうってわけ。


 アイスドラゴン“ブリッツ”は噛みついた。

  @ゴブ十郎は回避した。

 アイスドラゴン“ブリッツ”は噛みついた。

  @ゴブ十郎は回避した。


 ・・・死までの、わずかなラウンド。

 @ゴブ十郎は城壁を走り続け、城壁の向こう側の光景を、視界に収めた。

 そこにあったのは。


 .........

 .........

 ....†.... Lunar Blade "Recursion" (Freezed)

 .........

 .........


「神剣?」

<はい。ルナー・ブレード“リカージョン”──月の神剣ですね>


 そして、メッセージ。


<『敵の城砦を発見しました:魔王の城』>


■■■ 122、魔王の城 ■■■@..Z


「ここか! 魔王の城」

<来ましたね>

「来ましたね! @ゴブ十郎、おまえはよくやったよ」


 アイスドラゴン“ブリッツ”は噛みついた。

  @ゴブ十郎に128ダメージ。@ゴブ十郎は死んだ。


 @ゴブ十郎は死んだ。

 カメラは強制的にカット。@ゴブ十一郎の視点に切り替わっている。キャンプ場の光景だね。

 ・・・けど、プレイヤーはもう見ちゃったもんねw


「中、見えたね」

<広かったですね>


 城壁の内側は、平原でした。

 いや、雪原だな。雪の積もった平地ね。

 そん中に、町みたいなのが広がってた。石造りの建物が並んでてね。

 『入り江の町』とか、『ハイエルフの王都』みたいな感じ。城壁の内側に町があるのね。


「お城って言うからさ、でっかい建物がポツーンと建ってるんだと思ってた」

<城砦都市って感じでしたね>

「だね」

<地形的には、盆地かな? 中央に向けてゆるやかな下り坂になってたね>

「盆地の城砦都市かー」


 で、その城砦都市の・・・正門前広場かな? 門くぐってすぐの広場ね。

 そこに月の神剣“リカージョン”が突き刺さってた・・・ってわけだね。


「あれを回収しろと」

<厳しいですよね。ドラゴンが完全に見張ってる感じだったし>

「うん」


 ゲームは停止したまま、風花とあれこれしゃべる。

 このゲームはこのタイミングがいちばん楽しいかも。

 戦闘はね。風花に任せてっから。楽しくないってことはないけど。そんなん言ったら、風花傷つきそうだしねw

 まあ、見てるだけだからね。ロボゲーやってる父ちゃんのほうが楽しそうだなー、とは思う。

 けどさ、その戦闘が終わったあとに『次どうする?』ってなる、この時間が楽しいんだよね!


「誘い出す手はあるかも知んないけどね」

<誘い出す>

「@Pizzaがやられたみたいにしてさー」

<商船を囮(おとり)にするの? “ゴールデン・ラム”をやられたら、食料も銀の武器も運べなくなるよ>

「そうなんだよな・・・剣一本を取るためにしては、犠牲がデカすぎるよね」

<そうだね。あ、★大鷲で運ぶ手はあるか>

「ああw 怒りそうだけどね。『ワシは輸送機じゃない!』って」

<あははw>

「船でなくても、大軍勢で歩いてたら釣れるかも知んないけど。それこそ100人ぐらいで、山道をゾロゾロとね」

<あー、ありそうだね>

「うん」

<やってみる? 私はいいけど>

「保留かな」

<保留ですか>

「ゲーム的にはいい手だと思うんだけど、できるだけ犠牲出さないように作戦立てたいんだよね」

<ふむ>

「前にも言ったけどね。『死んでもいいや』ってプレイするより、死なないようにプレイするほうが楽しいじゃん」

<たしかに。緊張感あるもんね>

「そーゆーことです!」

<じゃあ・・・残りゴブリン3人で同時突入っていうのは?>

「偵察班の?」

<そう。3人同時に出して、誰か1人でも神剣に飛びつけたら勝ち>

「ふむ・・・そうだね。それで行こっか」


 思ったより食料の消費が激しいとか言ってたからね。

 あと、現実的にもそろそろ晩飯の時間だし。


「あと1回トライしたあたりで、たぶん晩飯の時間になるしね。ちょうどいいかも」

<では、やるとしますか>


■■■ 123、3~5人目:なげた ■■■@..Z


 @ゴブ十一郎、十二郎、十三郎が出発。

 魔王の城手前の曲がり角まで来ていったんストップ。


<ではまず、十一郎がボルダリングします>

「うむ。ゆけ十一郎!」

<なんとか成功・・・城壁に近付いたところで、十二郎が右手の傾斜へ『登山』開始>


 まだ試してない右手のルートを試す。

 このルートは、『登山』スキルで判定しなきゃいけないうえに、ブリッツ君から視線が通ってしまうというハズレルートである。

 当然、ブリッツ君は反応しましたね。


<ブリッツ、こっちを見ました>

「迫力あんねw 首がガクガクッて動くの」


 何十文字もの文字群で表現されてるブリッツ君。

 頭の部分(Hとかmとかの塊)が、ガクガクガクと移動して、回転して、@ゴブ十二郎のほうを向いた。


<十一郎、城壁に登りました。十三郎も突入します>

「いけいけー!」


 ゴブリン3人、3方向からの突撃である!

 結果は・・・


 アイスドラゴン“ブリッツ”はブレスを吐いた。

  @ゴブ十二郎は凍りついた。@ゴブ十二郎は死んだ。


 アイスドラゴン“ブリッツ”は噛みついた。

  @ゴブ十一郎は回避した。

 アイスドラゴン“ブリッツ”は尻尾を振った。

  @ゴブ十三郎は回避した。


<十三郎、門に突入しました>

「よし! かなり避けるね、ゴブリン」

<素早さ特化で作成したのが功を奏した(こうをそうした)形ですね。スキルなしでも回避%が高いという>

「そっか。──これ、ブリッツ君はイライラしてんだろーなー」

<全然当たんねー! って言ってるよ>

「俺かよ!w」


 @ゴブ十一郎が必死の回避でブリッツを引き付けるあいだに、十三郎は門の内部に駆け込んだ。

 中はトンネルになってる。トンネルの先は“リカージョン”の刺さってる正門前広場だ。

 ・・・が。

 あにはからんや! トンネルは格子門で塞がれておる!


<あれ。通れないや>

「あちゃー。そりゃそうか。門を簡単に通すわけないよね」

<ですね。・・・これはダメだ。外から入り直すしかない>


 風花さんがカメラを動かして周囲を見るが、スイッチは(当然ながら)こちら側には存在しない。

 やむを得ず、@ゴブ十三郎は外に出て、城壁をよじ登る。

 この間に十一郎は城壁を走り抜け、広場へ飛び下りるが・・・


 アイスドラゴン“ブリッツ”はブレスを吐いた。

  @ゴブ十一郎は凍りついた。@ゴブ十一郎は死んだ。


<ダメか!>

「ブレス吐かれると終わりだね」

<でも、連発はできないようですね。まだ可能性はあるかも知れない>


 城壁を登った@十三郎。ブリッツのしっぽの先を駆け抜ける。

 最初のラウンド、ブリッツのしっぽアタックが飛んで来るが、回避。

 次のラウンド、しっぽが追いつけず攻撃なし。

 さらに次のラウンド、右後足の蹴り。これも回避。


「・・・もしかしてさー、ドラゴンも、隣接してる相手にしか攻撃できないんかね?」

<うん?>

「いや、初めて対戦したとき、7回攻撃来たじゃん。だから全部位で攻撃してくんのかと思ったらさ」

<あー・・・そうだね。しっぽに隣接してるとしっぽ攻撃が来るけど、1マスでも離れてると、来ない>

「だよね」

<船のときは、船が大きいから、フルに攻撃喰らっちゃったのかも>

「そっか。そうだよ。船に覆い被さるような位置になったら、全部位が隣接できるもんね」

<回避%の高いオーガなら殴り倒せるのかな?>

「いやブレスあるからねw」

<あ、そっかw>

「でもそうだね。“クラッシャー”があれば・・・」

<勝てるかも知れない>

「うん」


 しゃべってるあいだに。

 @ゴブ十三郎は広場に飛び下り、“リカージョン”に隣接した。

 ここでイベント。

 剣のところに、半透明の光が発生した。


「この光、アレじゃん」

<ゾンビ倒したときのアレだよね>

「そうそう。ゾンビ倒したら飛んでくやつ。人魂みたいなアレ」

<あ、メッセージ出ましたね。

 『剣が輝き、氷が溶け──ルナー・ブレード“リカージョン”が、あなたの手に収まった』>


 @ゴブ十三郎は拾った: 月の神剣“リカージョン”。

 アイスドラゴン“ブリッツ”はしゃべった: 「私の宝に触れるな! 愚かな人間め!」


「しゃべりよった!」

<ブリッツ君はお怒りの御様子です>

「だねw お気に入りだったんだなー。──けどこれ、オメーのもんじゃねーんだよ」

<リカージョン、アイテム欄に入りました>

「よっし!」


 月の神剣を抜き取りました。


<とは言え──だね>

「こっからどうするか? だよね」


 操作ストップ。またしても長考である。


「そろそろブレス来るでしょ?」

<うん>

「そしたら十三郎死んで、“リカージョン”も取り戻されちゃうよね」

<だねぇ。うーん・・・>

「困ったなー」

<@ゴブ十三郎の能力では、どうしようもないですね>

「神剣の能力は?」

<えっと・・・

 『月の神剣“リカージョン”: ゾンビを破壊し、そのスピリットを解放します』

 剣としての性能も高いですね。これまでで最高かな>

「クラッシャーより?」

<うん。%、ダメージ、パリーのすべてが最高。まあクラッシャーは破砕があるけどね>

「さすがは神剣ってとこだね!」

<けど、状況を打開できそうな能力じゃないよね>

「うむ。ゾンビいねーし」


 広場にいるのは@ゴブ十三郎とブリッツ君だけである。

 人影もなし、怪物もなし、ゾンビの姿もなし。


「神剣にテレポ能力ありゃいいのになー。★大鷲さんみたいな」

<一発で解決だねw>

「★大鷲さんが取りに来てくれねーかなー」

<輸送機じゃないって言われるよw>

「だなーw」


 などと、脱線してしゃべってるうちに。


<・・・あ>風花が思いついた。<投げてみようか?>

「うん? どういうこと?」

<投げるんだよ>

「神剣を?」

<うん>


 @ゴブ十三郎は投げた: 月の神剣“リカージョン”は地面に落ちた。


 アイスドラゴン“ブリッツ”はブレスを吐いた。

  @ゴブ十三郎は凍りついた。@ゴブ十三郎は死んだ。


■■■ 124、今日はこんなとこ ■■■@..Z


 放り投げられた月の神剣。

 城壁を飛び越えて、虚空(こくう)へ。

 何十フロアも落下し続けた挙句、谷の底の地面に落ちた──らしい。

 城壁のせいで視線が通らないんで、どこに落ちたかはわかんなかった。


 @ゴブ十三郎は死亡。

 これにて、ゴブリン偵察班は全滅である。

 十三郎が死んだため、カメラは強制切り替え。ゴブリンシールズたちのキャンプ場へ戻った。


「南無ー」

<なむー>

「けどまあ、成果はあったよね」

<うん>

「どこに落ちたかわかんないけどね・・・」

<そこはほら、ボルダリングであのへんまで行って、下を見ればいいんだよ>

「あ、そっか」

<回収さえできれば、★大鷲さんで帰れるわけだし>

「なるほど。そっか。そうすっと、思ったより大変じゃないかもね」

<そうそう>

「よし。じゃあ明日はそっからだな」

<はいなー。セーブしとく?>

「そうだね。今日はこのへんで」


 ゲームをセーブ、終了。

 パソコンはそのまま。


「モニターもつけとく?」

<私のことなら、モニターは消えても画面は見えてるよ>

「あ、そうなんだ。じゃあ落としとくか」


 モニターの電源だけ落として、1階へ。

 リビングでだらける。ミニロボカーのユキ号も一緒にだらける。

 母ちゃんが「かんt──あれ。いるの」っつったところで食堂へ移動して、飯と。


「次回は神剣探索だね」

<そういうことだねー>

「おやすみフーカ」

<おやすみ、カンタさん>


 今日はこんなとこですね。

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