雪山へ

■■■ 109、おぼえてらんねーよ ■■■@..Z


 晩飯食って、またちょっとゲーム。


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<ゴブリン偵察班が、ハイエルフの王都についたわけですが>

「うん」

<迎えに行く前に、精霊使い作ってもいい?>

「あー。こだまブーストするのにね?」

<そうそう>

「いいよ!」

<『川東の村』で作成して、それを拾ってから★大鷲、かな>


 昔なつかし『川東の村』。

 精霊使い@スピネルの出身地。いまは亡き@Pizzaが、漁師を魅了した村でもあるね。


「あっちにはないんだっけ? 精霊使い」

<『鬼の港町』でも作れるよ。@スピナーはそこの出身>

「こっちだと、人間しか作れないよね?」

<うん>

「どうせなら色んな種族で作ってみない? なんか問題ある?」

<ない。合流がちょっと遅くなるだけ>

「歩く距離が伸びるってこと?」

<そう>

「その程度ならいいよね」

<うん。じゃあ、オーガの女と、ダークエルフの女で作ってみようか>


 ★大鷲のオーブを使用して、『鬼の港町』へテレポート。精霊使いを2人作成しました。

 @スピッツ。オーガ♀。

 @スピンドル。ダークエルフ♀。

 ひとまずマナベース班に入れて、@スピナーと合わせて精霊使いを3人に増強。


「そう言や、ゴブリンはなんて名前にしたの?」

<@ゴブ六郎から@ゴブ十三郎>

「そっか。うん。まあ、うん」

<どしたの?>

「いや、量産型はもう覚えてらんねーよw」

<ああw>

「フーカは覚えてんの?」

<寝たら忘れるね>

「重要な情報じゃないもんね」

<そーそー>


 @スピッツはあいさつした: 「ごきげんよう。私の名前はスピッツです」

 こだまの精霊はあいさつした: 「ごきげんよう。私の名前はスピッツです」

 @スピンドルはあいさつした: 「ごきげんよう。私の名前はスピンドルです」

 こだまの精霊はあいさつした: 「ごきげんよう。私の名前はスピンドルです」


「うぜーw」

<可愛くない? 私は好きだけど>

「可愛いっちゃ可愛いけどさぁw」


 新メンバーを加えて、ここからは徒歩である。★大鷲はさっき使っちゃったからね。

 もう何回も見た山道を、ゴブリンシールズ、@太郎班、マナベース(2人増えた)の27人で、テクテクと。


<この道も見慣れちゃったね>

「そうだね。・・・これさー、同じ道を何回も通るっての、RPGだとありがちだけどさー」

<はい>

「マンガや小説だと、まずないよね」

<そうだね>

「ドラえもんとかサザエさんだとあるけど、長編のストーリーもんだとまずないわ」

<話が進まなくなるもんね>

「ね! RPGのリズムって、独特なもんがあるよね」


 だべってるうちに、アンデッドに支配された『ハイエルフの王都』に到着。

 門の前で待機していたゴブリン偵察班を拾う。


<進みますか>

「んだね。ゴブリン通したら、ここで精霊使う練習すっか」

<そうしましょう!>


 ゴブリン偵察班を護衛して、王都を抜ける。

 大通りを歩く@軍団にゾンビが群がってくる。けど、いまの主力の敵ではない。蹴散らして、先へ。


<偵察班、オートトラベルに戻ります>

 王都を出たので、偵察班とはお別れである。

「んじゃトレーニングだな」

<またマンションに籠もりますか>

「うむ」


■■■ 110、こだま返しの術 ■■■@..Z


 王都にもどり、高層マンションに入った。

 階段付近にマナベース班を配置。太陽の司祭@サンデー、@デイリー、@シャイン、@サマーがマナ招集をスタート。

 @スピナーが連れているこだまの精霊が、その詠唱をこだましてくり返す。このこだまが+1人分なので、合計5人でマナ招集してるのと同じスピード。

 Mpが貯まった。

 新人の@スピッツと@スピンドルも『精霊召喚』。こだまの精霊が出るまで引き直す。これでさらに+2人だ。


「周囲の呪文全部をこだまするわけじゃないんだね」

<さすがにね。でも十分強いけど>

「強いよね。ってか、手軽だわ」

<精霊のスキル伸ばしたわけじゃないのに、当たり前のように詠唱成功してるからね>


 毎ラウンド8ポイントずつMpが貯まっていく。あっちゅう間に『蘇生』も可能なレベルに!

 と、ここでレイス出現。


「こいつ、Mpに寄って来るんかな?」

<そんな感じだよね。マナ招集してると毎回出てくるし>

 ここから、ちょっと面白い事態に。


 ハイエルフの博士のレイスは唱えた: 『マナボール!』

  招集されたマナを7ポイント消費した。

  ガキーン! @ゴブ太郎は盾で受けた。@ゴブ太郎に3のダメージ。@ゴブ太郎の速度が1低下。


 こだまの精霊は唱えた: 『マナボール!』

  招集されたマナを7ポイント消費した。

  ハイエルフの博士のレイスに23ダメージ。ハイエルフの博士のレイスの速度が11低下。

  ハイエルフの博士のレイスは死んだ。


<あら>

「倒しちゃったよ」

<敵の呪文までこだまできるんですね>


 なんと、こだまの精霊が敵レイスの呪文をこだま返し。

 レイスを葬ってしまったんである。


「こだま返しの術!」

<便利すぎる・・・>

「ホントだよw」


 こだまの精霊の評価、さらにアップである!


 こだまの精霊のおかげで、経験値稼ぎは順調。波乱なく終了。

 今日のゲームはここで終了して、風花に「お休み」しました。


■■■ 111、雪山へ ■■■@..Z


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 次の日。


「ただいまー、フーカ!」

<・・・お帰りなさーい、カンタさん>

「宿題するわ。適当に進めといて」

<らじゃー!>


 このリズムに慣れてきました。

 宿題サボるとチクチク言われるんで、あんまサボんなくなった。


「誰かに見られてるとやる気になるよね」

<うんうん>

「『自分のためだから』とか言われても、あんまやる気になんねーけどさ」

<そう?>

「だってさー、自分のためってことは、サボっても他人に迷惑かかんねーわけじゃん?」

<・・・まあ、そういう理屈だよね>

「イラッと来んだよね。『おまえのためだから』とか、てめーに言われることじゃねーだろって」

<ふふw>

「おいw いま笑ったろ」

<うん。男の子だなーと思ってね>

「真面目にしゃべってんのにさー」

<いやわかるよ。カンタさんのためになるかどうかは、他人が決めることじゃないもんね>

「そうだよ」

<それに、勉強ってそんな利己的なことじゃないよね。カンタさんが馬鹿か、賢者かは、周りに影響のあることだから>

「賢者ってとRPGみたいだね」

<あ、うんw>

「遊び人がパーティーに入るより、賢者が入ったほうが得だもんね」

<えっと・・・そういうことになるのかな?>

「たぶんそうだよ」

 ちょっと唐突だけど、ここで会話切って宿題する。

 風花さんも、俺の様子を見て沈黙。ミニロボカーのユキ号がちょっと動いてこっちを見て、それ以降は静かに見守ってくれた。


 ホント、TAIさんは良くできてると思うわ。

 俺が宿題に集中すると、すぐ気付いて黙ってくれるわけだもんね。賢いっつーか、礼儀正しいっつーか。

 最近はさー。親切すぎるっつーか、親切なフリしてるだけで中身がクズな企業多いじゃん。

 いちいちユーザー登録させてさー、ゴミメール大量に送りつけてきてさー。

 そーゆーのにくらべっとね。ホントいい子だと思う。

 ローグライクみてーだね。こっちが操作するまで動かないでいてくれるの。


 けどさー。風花はそれでいいんかね? 何回も疑問に思ってんだけどさ。

 もうちょっとワガママでもいいんじゃねーの? っつー・・・


「宿題終わり」

<おつかれー!>

「へへw」

<なんだよw>

「なんでもねー」


 ・・・だから、宿題終わってうれしそうにしてくれると、ちょっとホッとするんだよね。

 

「たぶんもうすぐ晩飯だけど、ちょっと遊ぶか」

<はいな。遊びましょう!>

「状況はどうですか!」

<ゴブリン偵察班、最前線の砦に到着しました。あと、後方の整理もちょっとしておきました>

「こうほうのせいり」

<@ソラ司祭のとこに小屋を作成中。魚が盗まれるので>

「盗まれる?」

<イタチとかトビとかが来てね。釣った魚を盗んでっちゃうんだよ>

「そんなのいんだ!」

<いるんだよ。しかもこいつら、小さいから攻撃が当たんないの>

「おもしれーw」

<ハーピーがいるときは追い払ってくれるんだけどね>

「ますますおもしれーw」


 @ソラ司祭が釣った魚をトビにかっさらわれて、それをハーピーが取り返すんかい。

 俺も見たかったわそれ。


<小屋があれば防げるでしょ。干し魚も作れるし、一石二鳥かなって。イカダ作成の人員を回して建設中>

「なるほど」

<銀鉱石のルートも変わってますね。崖から投げ下ろしてたのを、全部砦へ入れるように>

「ああ、じゃあもう起こんないんだね。あの労働災害」

<うるさいよw 銀の加工品は、貯まったら荷車で下ろせばいいかなと>

「はいはい」

<荷車で下ろして、道沿いに川があるからそこでイカダに積んで、『川東の村』に出荷、というルートですね>

「なるほど」

<それにともなって、商船“ゴールデン・ラム”号は『入り江の港町』と『鬼の港町』の往復のみにルートを縮小>

「沿岸の村を回って売り買いしてたんだっけ?」

<そう。でも、銀鉱石が出なくなったからね>

「ああ、そうだね。魚運ぶためだけにでかい商船回すのもね」

<そーゆーこと。『大海の村』とかは、豊かになったっぽいんだけどね>

「あ、村が豊かになったりすんの?」

<はい。たぶん。人口がちょっと増えて、雑貨屋の品揃えがちょっと良くなってた>

「へえー!」

<あ、それと、領主の@スピネル様ですが。この人は領主やらせとくのがいいかなーと>

「前線に出さずにってこと?」

<そうそう>

「死んだら面倒だもんね」

<そう>

「成長してるわけでもないし」

<まさにそうw ──以上ですね>

「うん、わかった」


 『わかった』っつってけど、じつはわかってねー。

 いや、風花の話はわかってっけど。あっちこっちの進行状態、全部暗記してるわけじゃないからさ。

 ま、成果を楽しく聞いてるだけですね!


<で、ゴブリン偵察班ですが>

「砦までは特に問題なかったんだよね? じゃ、なんかあるまで進みますか」

<1人を先頭に、残りは距離をあけて付いていくんでしたよね?>

「そうそう」

 そういう指示したね。忘れてたわw

「それで行ってください!」

<らじゃー!>


 @ゴブ六郎、先発。1人で砦から出て、荒れ果てた山道を進む。

 残る@ゴブ七郎~十三郎の7人は、だいぶ経ってからその後を追う。

 マップの記憶があるからね。先発がどこを歩いたかは、距離が離れててもわかるんだよね。


 道はどんどん山を登っていくようで、チラホラ見えてた雪ががっつり積もる感じになっていく。


<@ゴブ六郎は寒さに震えている>

「寒いんか。まあ雪山だもんな」

<防寒具は用意してませんね・・・>

「死にそう?」

<まだダメージはない。けど、寒さで死ぬこともあるらしいよ>

「過酷だな」


 画面は真っ白に。ゴブリンたちは震えながら偵察を強行する。そして。


<山小屋を発見>


 真っ白な画面に埋もれた、木造の小屋を発見したのであった。


<Dark Lodge──『暗い山小屋』かな?>


■■■ 112、暗い山小屋 ■■■@..Z


 ゴブリン偵察班、凍てつく雪山に、山小屋を発見!

 その名も『暗い山小屋』である!


「・・・変な名前だね」

<うん>

「なんかいんの?」

<わかんない。足跡は・・・『足跡』がたくさんある。これはスキル不足だね。詳細不明>

「入ってみるしかないか」


 @ゴブ六郎、寒さに震えながら小屋の中へ。

 敵影──なし。


<ふつうの小屋ですね>

「あったまれるかな?」

<暖炉はあるね。火つけてみようか?>

「うん。使ってみよう。調べとかないとね。あとから主力が入っていいかどうかわかんないし」

<ごもっとも>


 @ゴブ六郎、調べる。

 すると、小屋の裏に薪(まき)が積み上げてあるのが見つかった。


「用意がいいね。魔王の城が近いはずなのに、人間がいんのかな」

<伝令が使ってるとか?>

「魔王の?」

<そう>

「あー・・・魔王軍でも、伝令は『寒さに震えている』ってなるんかねw」


 @ゴブ六郎、薪を拾う。暖炉のそばに戻る。薪を暖炉の中に『捨てる』。

 で、火をつける。

 ついた。ふつうに火がついた。

 やがて、@ゴブ六郎は『寒さに震えている』状態から解放された。


「・・・大丈夫っぽいね」

<罠もなければ敵もなしと。後続も入れますか?>

「そうだね。せっかくだし、飯食っちゃおっか」

<はいな>


 後続の7人も山小屋に飛び込み、寒さから解放される。


 @ゴブ六郎は拾った: 雪(8ポンド)

 @ゴブ六郎は作業を始めた: 料理・解凍(6ターン)


「なにしてんの?」

<雪を溶かして水を作ってる>


 @ゴブ六郎は作業を始めた: 料理(60ターン)

 :

 @ゴブ六郎は料理を終えた: 麦のスープ(16ポンド)


<麦と溶かした雪のスープ、完成でーす!>

「ただの麦じゃん! なんか『シェフお勧め』みてーに言ってっけど!」

<寒い夜には、当店の麦のスープがおすすめ!>

「そうかなー」

<登山の後だから、なんでもおいしいはずですよ>

「まあそれはね。・・・けどさー」

<なに?>

「俺ァ、母ちゃんの料理食える身分で良かったわw」

<そうだねw>


「かんたー。ごはんよー」


「おっと」

<うわさをすればですね>

「行こっか」

<行ってら──きゃーw>

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