こだまブースト

■■■ 106、銀の砦の地下室にて ■■■@..Z


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┃ RULED SPIRITS

┃ ■<@.■

┃ ■.☆.■

┃ ■...■

┃ > Continue <

┃  Create World

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「──さて」

<はいな>

「昨日のつづきですが」

<銀の砦の地下室からですね!>

「テレポートポイントがあったんだよね」

<そう。『テレポート出口』という魔方陣。どこから繋がってるのか? 本当に使えるのか? 一切不明>

「魔王んトコに繋がってんじゃねーかっていう」

<うん。私はそう推測してます>

「となると、不安ですわね」

<あばれレイスとか出て来られたら困りますわね>

「あばれレイスw」


 ゲームは進めず、止めたまんまで2人でしゃべる。

 こうやってのんびりしゃべれるのは、コマンド方式のRPGならではだね。


<埋めちゃいます?>

「埋めれんの?」

<『埋める』ってコマンドはないけど、穴を掘るとか、魔方陣の上に壁を造るとか、何かできるんじゃないかなって>

「完全に潰しちゃうわけだね」

<そう>

「二度と使えなくなるわけだよね」

<うん>

「もったいねーな」

<まあそうだね>

「うーん・・・警報かなんか、設置できないかな?}

<罠? わかった、ちょっと探してみる>


 風花さん、ゲーム内ヘルプ見る。

 罠の項目を探し出し、読んで、把握して、教えてくれる。超速い。ほんとスゲー。


<ありますね。音が出るだけの罠>

「お、トラップあるんだ。ダメージ与えるようなやつもあんの?」

<うん>

「いいね! 造っとこっか」

<けど、トラップのスキル取ってる子がいないんだよねw>

「ありゃ」

<えーっとねぇ・・・>


 風花さん、こっちが特に指示してないのに、キャラ作成画面に切り替え。

 スキルをチェックしてくれてるようです。

 話が早いね。融通が利くようになってる。学習してくれてるってことだろーね。


<・・・うん、取れるね。この砦でも、罠キャラ作成できますね>

「よし、作ろう!」


 というわけで、キャラ作成しました。

 素早さ一本の人間・男。

 スキルは、罠と採掘です。


<採掘も取るの?>

「うん。罠仕掛けたら、その後はこの砦で、銀のインゴットを造ってもらう」

<あ、なるほど。見張りを兼ねて、この砦で長時間作業させるわけですね?>

「そう。ま、見張りっつーよりか、やられ役だねw」

<知覚スキルないからね。不意討ちされたら、なむーだよw>


 『テレポート出口』に、罠を設置。

 ロープを引っ掛けると音が鳴るようにしました。


「音だけじゃ意味ねーか? 気付いても、こいつ攻撃能力ねーし」

<じゃ、落石トラップも造っとこうか。組み合わせ連結して>

「組み合わせ?」

<うん。罠はね、トリガー・連結・効果、の3種類を造って繋げるんだよ>

「ほう」

<トリガーは1つだけで、そこから複数の効果に連結したりもできるんだー>

「ほうほう! 面白いね! じゃあ、てんこ盛りにしてみよっか!」

<いいね>


 2人で調子に乗って造れるだけの罠効果を作成。

 足元のロープを引っ掛けたが最後、全部の罠が一気に発動するようにしておきました!


「よーし。これで何が来ても瞬殺だよ」

<だね!>

「そんじゃ、あとは銀のインゴット造っててください」

<らじゃー!>


 風花さんがあれこれと設定。

 カメラが切り替わって、銀鉱山のほうへ飛ぶ。これは・・・荷物の運搬を設定してんのかな?


<崖から銀の鉱石を投げ落とす設定にしてたけど、こっちで精錬するなら投げちゃダメだからね>

「ああ、なるほどね」

<今後は歩いてこっちに運ばせるようにします>

「おっけー。──んで、あとなんだっけ?」

<偵察する、って話だったかな>

「偵察」

<アンデッド砦の──こっちじゃなくて、魔王の島のほうのね──砦の先に、魔王の城がある。ドラゴンがいる。ってことで>

「あー、いきなり主力が行ったら全滅しかねないから、偵察しよーぜ! っつったね、そう言えば」

<そうそう>

 ジッコジッコ。ミニロボカーのユキ号(無線化済み)、前後移動。

<提案ですが>

「はいな」

<ゴブリンを偵察員にするのがよいと思います>

「向いてるんだっけ?」

<うん。素早さがちょっと高いので、『隠密』スキルが高くなる。お腹ポイントの持ちがいいので、長時間活動できる>

「なるほど! んじゃ、ゴブリン偵察班っつーことで!」


■■■ 107、ゴブリン偵察班 ■■■@..Z


 キャラ作成画面へ。

 集落は『鬼の港町』を選択。

 魔王の島にある、オーガの港町だね。ゴブリンシールズの出身地だ。


<素早さ特化キャラで、隠密だけ上げる方向でいいですかね?>

「いいんじゃないかな。・・・あ、待って。崖登ったりするのに、スキルって必要?」

<『登山』ってスキルがあるね>

「系統は?」

<『隠密』スキルと一緒。素早さ系>

「じゃあそれも1レベルだけ取っとこう。また崖登ったりすることがあるかも知んない」

<あー、初期に登ったねぇ>

「でしょ?」


 いっちゃん初めのころ。何していいかわかんなくて、四方八方に偵察出して。

 崖にぶつかったから、登っちゃえ! って登らせたんだよね。何人も転落死したけど。


「あれもスキル取っとけば死なずに済んだのかなー」

<かな>

「かわいそうなことしたよね。できもしないことを、無理にやらせてさー」

<済んだことはしょうがないよ>

「ドライだねw」

<ゲームだからね。偵察員、何人作ります?>

「いっぱい作ってもいいわけだよね? 経験値は期待してないし、特攻偵察になりそうだし」

<うーん、どうかな?>

「ダメ?」

<『隠密』スキル、数値的には100%にできるんだけどね。絶対成功じゃないと思うし>

「・・・どういうこと?」

<えっとね。実際のゲームで、隠密行動って、100%成功すると思う?>

「あー。いや、たまには失敗すんじゃね? こっちが100%でも、相手が気付いたりして」

<でしょ? 仮に、10%の確率で気付かれるとして・・・>

「成功率90%ね?」

<そう。1人で行けば、90%で安全に抜けれる」

「うん」

<ところが、これが2人になると、成功率は81%に下がるよね>

「両方成功しなくちゃなんないから、90%を2回通らないとダメってわけだね」

<そうです>

「つい最近やったわ。確率統計」

<ちょうどよかったね。その方式で、8人だとどうなるか? 16人だと? ってことだよ>

「90%の8乗、16乗だよね。・・・暗算はできねーけど」

<私奴(わたくしめ)にお任せを。90%の8乗は43%。16乗は18%でございます。あ、少数切り捨てでね>

「ずいぶん下がるね・・・」


 風花の言いたいことはわかった。

 人数増やすと、成功率が激減するよ! ってことだね。

 けどさー・・・


「・・・そこはさー、間隔あけて歩けば済むことじゃね?」

<む>

「1人が前に出て歩くっしょ? 残りは後ろで待ってりゃいいわけじゃん」

<あー。そっか。そうだね。りょーかい! ──では改めて、何人作ります?>

「100人とか?」

<ひさしぶり!>

「あ、やっぱ8人でw」

<・・・は?>

「いや、アイスドラゴン君に目ェ付けられそうだなと思ってさ」

<ああー! はいはいw じゃあ8人ね。素早さ特化、『登山』スキル1だけ取って、あとは『隠密』>

「そうです!」


 ゴブリン偵察班の誕生である!


<食料はどのぐらい持って行く? 荷物が重いと『隠密』が下がりますが>

「なら、行きの分だけ。かわいそうだけど」

<わかりました>


 8人のゴブリン男子。

 帰る望みのない片道偵察に、出発するのであった。


■■■ 108、こだまブースト ■■■@..Z


<片道偵察班、オートトラベルに入りました>

「主力チーム動かしとくか。★大鷲さんは呼べるんだったよね?」

<うん。『名もない村』で一日休んだから、もう呼べるはず>

「片道偵察班も、★大鷲で運んでやりゃよかったね」

<あー・・・ごめん、思いつかなかった>

「いやいや、こっちこそ」

<いやいや>

「済んだことはしょうがないよね」

<だね!>

「じゃ、食料持って、ハイエルフの王都に飛ぼっか」

<先回りして、片道偵察班にご飯食べさせてやるわけですね?>

「そーゆーこと」


 主力チーム。

 ゴブリンシールズ、@太郎班、マナベース班の25人。

 ふたたび、徒歩で下山。『名もない村』に入る。

 そこでお魚を積み込む。@ソラ司祭(ハーピーの司祭さんね)が送ってくれたやつだね。

 で、★大鷲のオーブを使用。


 神代の大鷲は舞い降りた: 「私を呼んだかね? 望む所に運んでやろう」


┏━━━

┃どこに運んでもらいますか?

┃  鬼の港町

┃ →ハイエルフの王都

┃  関所の砦

┗━━━


「関所の砦?」

<アンデッド砦じゃないかな? 関所とは言ってなかったけど>

「あそこ飛べるようになったんだ!」

<うん。便利になったよね>

「うむ」

<どうする?>

「ハイエルフの・・・あ、ダメだわ。あそこもやべーよ。レイスいるじゃん」

<いますね>

「★大鷲さんに頼んだらさー、雑にド真ん中に下ろされてさー・・・」

<あー! レイスまみれになっちゃうw>

「そうだよw 関所の砦に飛ぼう。・・・あー、・・・あいや、うん。飛ぼう」

<ん?>ミニロボカーのユキ号、ちょっとカーブ。<なーに?>

「いや、安全第一で行くなら、関所の砦に飛ぶのは1人にしたほうがいいか? って思ったんだけど」

<・・・ああ、食料を1人に持たせてね?>

「そう。けど、それ逆に、襲われたら速攻やられて★大鷲なくなっちゃうから、ダメだわって思って」

<了解。じゃあ、主力全員、関所の砦に飛びますね>

「うん。レッツゴー!」


 アンデッド砦あらため、『関所の砦』へ。

 門の内側に放り込まれる形でテレポート。


「地形セーブされてんね」

<みたいだね>


 城壁が崩れたまんまになってんだよね。“クラッシャー”でぶっ壊したとこ。

 敵の姿は、まったくなし。問題はなかった。


「気にしすぎだったね」

<いいじゃん。ローグライクらしいよ>

「そう?」

<あれこれ考えてから、一手指す、みたいな感じで>

「たしかに」

<あの、ちょっとMp消費して、テストしてもいいかな?>

「いいよ。なんのテスト?」

<精霊のつかいみち!>


 風花さん、マナ招集をスタート。

 Mpが貯まったら、@スピナーが精霊召喚。

 何回か引き直して、呼び出したのは・・・


  S Echo Spirit

 @ Spinner


 ・・・エコー・スピリット。『こだまの精霊』である。


「役に立たない子だw」

<そう、けど、なんか使い道がないかなーって>

 @スピナー、まずは、あいさつしてみる。しかし・・・


 @スピナーはあいさつした: 「ごきげんよう。私の名前はスピナーです」

 こだまの精霊はあいさつした: 「ごきげんよう。私の名前はスピナーです」


 ・・・やはり、こだまが返ってくるだけである。

「相変わらず、こだまだなー」

<うーむ・・・何をどうすればいいんだろう、この精霊・・・>


 悩んでるあいだも、太陽の司祭たちはマナ招集をしてる。

 で、@スピナーの行動が終わって、司祭の行動順になったところで・・・


 @シャインは唱えた: 「天空の女神のスカートのように、聖なるスピリットよ集まりたまえ・・・」

  招集されたマナを1ポイント消費した。

  @シャインはマナを2ポイント招集した。


 こだまの精霊は唱えた: 「天空の女神のスカートのように、聖なるスピリットよ集まりたまえ・・・」

  招集されたマナを1ポイント消費した。

  こだまの精霊はマナを2ポイント招集した。


<あれれ?>

「真似した?」

<した。司祭の祝詞を、こだま返しにした>


 ・・・なんと! こだまの精霊!

 太陽の司祭が唱えた呪文まで、こだま返しにしてくれよった!


「これやまびこじゃん!!!」

<はい?>

「やまびこのぼうし。ドラクエで、呪文が二重発動するやつだよ」

<へー>

「強ェじゃん・・・これつえーじゃん!」

<うん。これは強いよね>

「@スピナーが行動して・・・ってわけじゃないよね? 精霊が自分でやってんだよね?」

<うん。むしろ、指示はできない。@スピナーとは別々に動いてる>

「つええ! もっと呼んで、こだまの精霊!」

<それは無理かな。精霊は、一度に一体しか呼べないんだよ>

「なんだ、そっか」

<精霊使いを増やせばいけるんじゃないかな>

「そうだね。これは・・・元祖精霊使いさんも、現役復帰かなw」

<領主やってる@スピネルね。前線に呼ぼっかw>

「そのぐらい強ェーよこれ。ね?」

<うん。びっくりだよw>

「いやー・・・、こだま君もさー、『使えねー』とか言って悪かった。ごめんねw」

<あはは>

「いやホント」

<戦術に組み込みましょう>

「うん。『こだまブースト』と名付けよう」

<はいな>

「フーカさん、やったね! お手柄ですよ」

<光栄です!>


 こだまブースト。新たな戦術の誕生である!

 こだまの精霊、その評価、鰻登り(うなぎのぼり)となったのである。


<・・・あ、ゴブリンがハイエルフ王都に到着しました>

「お」

<迎えに行かなくっちゃね>

「迎え?」

<ハイエルフの王都はさー、ゾンビだらけだから・・・>

「あ、そっか。偵察班は戦闘できねーもんね。護衛してやんなきゃ、死んじゃうわw」

<そうなんだよ。『隠密』で抜けれるかも知れないけど──>


「かんたァー、ごはーん」


「ありゃ。タイムアップだ」

<行ってらっしゃーい>ジッコジッコ。ユキ号前後する。

 俺、そのユキ号を引っ掴む。「おめーも来るんだよ!w」

<きゃーw>


 というわけで、ゲームはいったん終了です!

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