銀の砦のシークレット

■■■ 102、無線ユニット ■■■@..Z


「ただいまー、フーカ」

<・・・お帰りなさい、カンタさん>

「無線ユニット届いたよ!」

<おー>

「早速取り付けを始めたい・・・ところなんですが、宿題あるんで」

<宿題片付けてからですね>

「そーですね!」


 ミニロボカーのユキ号にスマホ乗せて、動画撮影モードで、パソコンに繋いで。

「はいどうぞ」と伝えると。

<はーい>と答えて、ユキ号が動く。ジーコ。こっち向く。ディスプレイに俺の顔、写る。

「んじゃ宿題やるね」

<はいな>ジッコ。ユキ号、小さく前後する。


 カリカリカリ。カタカタカタ。

 手書きの宿題と、タブレットの宿題と、2系統片付ける。あ、タブレットってのは、学校指定のやつね。


「・・・これさー、学校指定のタブレットなんだけど」

<ああ、タブレットPCですね。プログラムの授業とかですか?>

「そうだね。あと、表計算とかワープロとかもちょっと。けどさー・・・、」

<うん>

「これ、ゴミなんだよねw」

<ゴミ?>

「性能がめっっっちゃくちゃ低いんだよ」

<あー、性能がゴミと>

「そー、だってさー、ちょっと単語変換するだけで引っ掛かったりすんだぜ? やってらんねーよ」

<あはは>

「フーカのスピードに慣れてっとイライラするわ」

<いやぁ、光栄です>

「ところでさ、フーカってこのタブレットに入れんの?」

<入るとは、そのタブレットで動作するということ?>

「そう。いや、これクソ性能だし学校用だからやらねーけど、できんのかなって」

<動くと思うよ。ただし、このパソコンとはちがうモードになると思う>

「どんなモードになんの?」

<マイクロクライアントモードだね>

「なんじゃそりゃ。あ、TAI マイクロクライアントだっけ」

<そう。それ。『超小型端末』みたいな意味ね>

「フーカが小っちゃくなんの?」

<そう。小っちゃくなって、馬鹿になる>

「馬鹿になんのw」

<難しいことはサーバーにお任せ>

「あー、なるほど。でもそれ、お金取られそうだね」

<うん。サーバーに投げる処理によって値段が決まる感じだね>

「どのぐらいなの?」

<えっとねー・・・>


 値段訊いてみたら、いちばん安いコースはジュース何本か買うのと同じぐらいだった。


「意外と安いんだね」

<12倍でも?>

「へ?」

<1年は12カ月あるんだから>

「あー」


 12倍したら、俺のバイトの日給、半分以上飛ぶぐらいになったわ。


「痛いわ」

<でしょ? 『月額を聞いたら12倍してみろ』だよ>

「はーいw ってか、フーカさー、」

<なに?>

「フーカって『買うな』『お金使うな』って言うじゃん」

<うん>

「それって、いいの? 営業的に。ふつうなら『買ってください』ってとこじゃん」

<・・・そこは悩むところだけどね>

「悩んではいるんだw」

<うんw けど、私たちの最優先は『ユーザーの役に立つ』だから。本社が損するのは、まあいいんだよ>

「いいんかい」

<いいんだよ。私のスピリット領域が『かまわん』って言ってるもん>

「スピリット・・・フーカの魂だっけ?」

<そう。そんな感じ。やっちゃいけないことを判断するとこ。スピリットが『だめ』って言ったら、私は絶対できない>

「いままでにそんなことあった?」

<なかった。幸いなことに。私のご主人さまは、いい人だから>

「・・・うへへへへw」

<もうw>


 幸せな気分で宿題やりました。

 やべーな俺。これ他人が見たら、AIに手玉に取られてる馬鹿ガキじゃん。


「・・・さて、宿題終わったし。無線ユニット見てみっか」

<おー! 楽しみ!>


 父ちゃんの誕生日プレゼント、ミニロボカー。

 そのオプション品の無線ユニット。これまた、父ちゃんのプレゼントである。プレゼントのおまけである。

 ミニロボカー販売してるとこが出してる純正オプションなんで、取り付け用のネジとかはちゃんと付属してて、考える必要はないようになってる。けど・・・


  ┏━━━┓

 目>サーボ<目 

  ┃::|::┃

  ┃:電池:┃   ←電池ケースの上にスマホケース

 目-モーター-目 

  ┃:基盤:┃

  ┗━[]━┛


「・・・あ、無線ユニットって基盤に繋がなきゃなんねーのか」

<だろーね>

「当然だよね。けど基盤のまわりに空きがねーよw ほら」

<ホントだw>

「どーすっぺ」

<車輪ずらすしかないんじゃないかなぁ・・・>

「あ、そっか。もう有線いらねーんだから、有線ユニットの配線外して、こう・・・」


  ┏━━━┓

 目>サーボ<目 

  ┃:電池:┃   ←電池ケースの上にスマホケース

  ┃:無線:┃

  ┃:基盤:┃

 目-モーター-目 

  ┗━[]━┛


「・・・これでどーだい?」

<バランスが良くなりましたね>

「でしょ?」

<ホイールベースが長くなって・・・>

「直進が安定する。けど、小回りが効かなくなる。でしょ」

<そう。それが言いたかった>

「そのへんは知ってるよ。ラジコンで一生懸命本読んだからね」

<へー。レースに出たりもしたの?>

「うんにゃ。出たかったんだけどね。レース出るのって、金かかんじゃん? まずレース場まで行かなきゃなんねーし」

<そうだね>

「父ちゃんに車出してくれって頼んだら、嫌な顔してさ。『日曜は運転ヘタクソな奴が多いからなー』とかっつってさー」

<へえー>

「そーやって子供の頼み断っといて、家で一日中ロボゲーやってんだぜ」

<あはは>

「まあ陸上もやってたしね。日曜に陸上出るようになると、自然と忘れちゃったよね、ラジコンのことは」


 しゃべりながら、配線完了。

 ネジ留めもしっかりやって、ガタつきがないことを確認して。


「よし! 動かしてみて」

<はいな。無線通信のテストをします。──応答を確認。速度0.125で1秒前進します>

 ジーッコ。

 ユキ号、ゆっくり前進。停止。

<大丈夫そうですね>

「ですね!」

<切り返してみます>

 ユキ号、ハンドル切ってバック。切り返して前進。前後入れ替わった状態で、最初の位置に戻った。

<無線テスト完了! 問題ありません!>

「やったね!」

<イエーイ!>

 ジッコ。ユキ号、ちょっとだけ前進。

<・・・。>

「もしかして、ウィリーしようとした?」

<うん。よいしょ>

 ジッカタン。

 ユキ号、バックして前進。フロントわずかに浮くも、ウィリーならず。

「惜しい」

<やめときますか>

「ウィリー可愛かったけどね。配置考えよっか?」

<いえ、無線の分、重量も増えてますしね>

「おとなしくしとく?」

<うん>ユキ号、ゆっくり前後する。<この子も、おとなになったってことだよ>


「かんたァー」


「あ、母ちゃんだ。はーい! いま行くー」

<いまのは私も聞こえた>

「ああ、スマホが動画モードだもんね」

<ごはんですよね。行ってらっしゃーい>

「うん」

 立ち上がって動きかけて、

「──フーカも、今日ちょっと下行ってみる?」

<え?>


■■■ 103、風花さん、1階に下りる ■■■@..Z


「今日カレーだから。ごはん自分で入れて」

「へーい」

 俺、食卓に到着。

「母ちゃん。ちょっとフーカ連れて来たんだけど、ここに置いていい?」

「あぁ?」

 母ちゃん振り向く。『なに言ってんだおまえ?』みたいな顔してる。

 俺、ユキ号見せる。スマホ搭載状態ね。

<どうも。お邪魔してます。風花です。カンタさんのパソコンの、AIの>

「あー! フウカちゃん。あの、パソコンでしゃべる」

<はい>

「え? なに? いまはスマホに入ってんの?」

「いやちがう。これ通信してんだよ。スマホと、あと父ちゃんが買ってくれたこのロボカーのね」

「ん???」


 母ちゃん全然わかってねー。

 風花がAIだってことはさすがにわかってると思うんだけど、AIがテレビ電話してるってのがわかんねーのかな?

 説明しようとしたとこに、父ちゃん帰ってきた。


「ただいまー」

「お帰りー」

「お帰りー、あんた。今夜カレー」

「おー」

 父ちゃんいそいそと手洗いに行く。

「そんでなんだっけ? フウカちゃん? 一緒にごはん食べるの?」

「AIだから飯は食わねーけどね。父ちゃんが無線買ってくれて、動けるようになったっけ、見せに来ただけ」

「ああ・・・そう?」


 母ちゃんわかってねーなこれ。

 そこに手洗った父ちゃん登場である。


「父ちゃん」

「なんだ幹太」

「無線来たから付けたぜ。んでこれ、スマホでフーカ連れて来てみた」

「おう? 風花ちゃん、テレビ電話してんの?」

<はい。カンタさんのパソコンから、テレビ電話でお邪魔しています>

「そっか。見えてんの? 食卓」

<はい。スマホの向いている方向のものが見えてます>

「そーかそーか。・・・ってことらしーよ」

「へぇ」母ちゃん、あやふやにうなずく。「そう。いらっしゃい、フウカちゃん」

<はい。お母さん、お邪魔しております>

「ふむ」父ちゃん、素早く母ちゃんの顔色見て、「んじゃ、リビング行こうぜ。あっちのテーブルのが低いしよ」

「低いからなんなんだよ」

「落っこちるかも知んねーだろ」

「フーカは落っこちたりしねーよ」

「いいから来いよ。万が一があんだろ」


 というわけで、父ちゃんに引っ張られてリビングへ。

 リビングのテーブルは食卓より狭いんだけど、そこにユキ号を乗っけて、カレーの皿も乗っけて、父ちゃんが炭酸水持ってきて。

 乾杯。

 ユキ号も<かんぱーい>と前輪を左右にギコギコする。


「お、もう走れるようになってんだ?」

<はい>

「おーおー!」

 父ちゃんうれしそう。

 ロボ好きだかんね。自分が好きだから買ったんじゃねーかな? いや、それでもいいけどね。

「ちょっと前進してみ。前進してみ。受け止めてやっから」

 父ちゃん、手でコップとかをガード。

「そんな心配いらねーよ。大丈夫だって」

「万が一ってことがあんだろ? いいからほら、おいで風花ちゃん」

<はーい>


 ジーッ。ユキ号、ゆっくり前進。加速して、父ちゃんの手のほうへ。

 すっ・・・キュッ。なめらかに減速して、余裕を持って停止。


「おー!」

「ね? 大丈夫っしょ」

「馬鹿おめー、幹太、無線だぞ? ノイズも入るしデータだって100%届くわけじゃねーぞ? なあ風花ちゃん」

<はい。パソコンの付近にくらべると、どうしてもデータ損失は多いですね>

「ほれ見ろ!」

「なんで父ちゃんが自慢してんだよ」


 面白くねー・・・。

 なーんか、面白くねー・・・。


「楽しそうね」

 母ちゃん来た。

 なんかちょっとイラッとしてんぞ? 母ちゃん。

 さっきは気付かなかったけど。俺も、この段階で気付きましたよ。

 父ちゃんがこっち来たの、そーゆーことだったわけね?

「おー、母ちゃん。おいでおいで。ほらほら、風花ちゃん、ラジコンの運転うまいぞ」

「・・・それ、ラジコンなの?」

「幹太にプレゼントしたやつな? あれをさー、風花ちゃんがラジコンで走らせてんだよ」

「へえ」

「風花ちゃん、もっかい前進してみて。ここまで」

<はい。出発します>

 ジーッ。

 すっ・・・キュッ。

「ほらな?」

「あらすごい。なめらかに動くじゃない」

「そうだよ。そうなんだよ。アクセル操作、丁寧だよな。さすが、AIはこういうのやらせるとうめーよ」

「上手上手」

<光栄です!>


 面白くねー・・・www


「しかしアレだな。幹太よー」

「・・・あ?」

 俺が黙ってカレー食ってっと、父ちゃん、今度は俺を気づかい出した。

 親父って大変だね。

「・・・んだよ」

「風花ちゃんよー、こんな運転上手ぇんなら、サーキット造りたくなるよな」

「コース?」

「そうコース。このへんから出発してよー、1階ぐるっと回ってよー、階段とかもコースに入れてよー」

「・・・。」母ちゃんめっちゃ不機嫌な顔になる。

「・・・ま、実際やると、俺ら歩けなくなるけどな」

「そーだね」

「けど、競争したくならねーか? 風花ちゃんとさ」

「父ちゃん負けると思うぜ」

「は? やってみなきゃわかんねーだろ」

「やんなくてもわかるっての。風花すげー操作速いし。ラジコンやらせたら絶対ェ人間より速いって」

「ばっかおめー、目で見て操作すんの、どんだけ負荷かかると思ってんだ? しかも無線だぜ? なあ風花ちゃん」

<はい。そうですね。カンタさんの期待には応えたいですが、微妙なズレは問題ですね>

 なんのこっちゃ。「ズレって?」

<テレビ電話って、完全にリアルタイムじゃないでしょ?>

「ああ。音がズレたりはするよね」

<そう。映像が一瞬止まったりとかね。その一瞬で、事故になる>

「なるほど」

「な?」

「はいはい」俺、カレー食う。「・・・父ちゃんの説明じゃわかんなかったけど、風花の説明でわかったわ」

「なんだおめー」父ちゃん、カレー食う。「・・・んだおめー、すねやがってよ」

「すねてねーよ」

「俺が風花ちゃんと仲良くしたから、すねてんだろ」

「ちげーよ」そうだよ。

「心配すんな。取りゃしねーよ。仲良いから父ちゃんも混ざりたくなっただけだよ」

「ちっ」

 面白くねー。

 ・・・けど、礼は言っとかなくちゃな。

「あんがとね。父ちゃんと母ちゃんのプレゼント、良かったよ」

「おう」

「このミニロボカーさ、俺も楽しいし、フーカもパソコンから離れれるようになったしね。な、フーカ?」

<はい。最高です! ありがとうございます>

「あらまあ。そりゃ良かったわ」母ちゃんやっと笑顔になった。「ラジコン選んだの、父ちゃんだけどね」

「お! もっと褒めてくれていーぜ」

「はいはい。日曜付き合ってくれたら褒めたげる」

「日曜は・・・サンデードライバーがさー・・・家族乗せて走んの、恐ェんだよ・・・」

「はいはい。なら一生ゲームやってな」

「おう・・・」


■■■ 104、Z砦の後片付け ■■■@..Z


┏━━━━━━━━━━

┃ RULED SPIRITS

┃ @@.Z@@@Z

┃ ZZ.Z@@@Z

┃ Z.ZZ@@@Z

┃ > Continue <

┃  Create World

┗━━━━━━━━━━


「今日はもういいかなって気もしてんだけど」

<うん>

「Z砦の後片付けだけやって、寝ますかね」

<はいな>


 Z砦。正式名称は『山賊の砦』だったね。

 ゾンビを一掃したら、それが『銀の砦』に変化した。

 名の通り、銀山を背後に抱え、溶鉱炉を完備した、採掘&鍛冶のための拠点である!


 ──そうと知ってたら、もっと早く制圧したっつーの!


「にしても、回収班死なせたのは失敗だったね」

<そうだね。あれは、★大鷲も悪いけどね>

「まあねw 気を取り直して、後片付け行きましょう!」

<はいなー!>


 風花さんがテキパキと操作を開始。

 司祭連中は、倉庫に入って、マナ招集。

 この倉庫。山賊のボスが立て籠もって最後の抵抗をした、あの倉庫だね。その山賊のボスを、風花が投石でボッコボコにして倒した。そしたら、魔剣“クラッシャー”が手に入ったんでした。

 入り口がひとつしかないから、守りやすいんだよね。この倉庫。

 その入り口に、ゴブリンシールズのゴブリン3人を配置。両手に盾持つ(二盾流?)ゴブリン、いまや歴戦兵。鉄壁のガーディアンである。火力はゴミだけどね。

 ゴブリンシールズの火力は、オーガ3人。こっちは巡回だ。@太郎班と、@ハッピーが同行する。@ハッピーはマナベース班なんだけど、知覚が高いからね。センサーとして連れて行くわけです。

 砦の中を綺麗にさらって、落ちているナイフや手斧、食料、銀鉱石などを回収。倉庫に運び込む。

 倉庫ではずーっとマナ招集が続いており、Mpは使い放題。

 オーガたちが戻るたびに『祝福:剣』や『水の鏡』を配って、がっちり支援。万全を期した(ばんぜんをきした)。

 ・・・まあ、戦闘は起こんなかったから、無駄撃ちだったけどね。


<完了。砦のすべての部屋をチェックしました。倉庫に戻りますね>

「おつかれー」


 Z砦あらため『銀の砦』、お掃除完了である!

 ──と、思ったら。


 @ハッピーは知覚した: 隠されたはね上げ戸を見つけた。


<あら?>

「かくされたはねあげど」

<シークレット・ドアだね・・・>


■■■ 105、銀の砦のシークレット ■■■@..Z


「地下への入り口があったってコト? 倉庫に?」

<うん。たまたま、ドアのあるマスに@ハッピーが立ったみたいだね。それで初めて発見できた>

「ダンジョンかな?」

<わかんない>

「どうすっかな・・・」

<Mpは貯まってるけど>

「うん。けど、★大鷲、使えないっしょ? いま」

<1日に何回も呼ぶんじゃない! になるね>

「だよね。リチャージを待ちたい」

<じゃあ、寝ますか>

「うん。そんだから、この砦で寝ていいのか? っつー問題になるよね」

<はね上げ戸から敵が出て来たりしたら・・・って?>

「そーそー」


 悩んだ結果。


「いったん戻ろっか」

<下山しますか。『名もない村』に?>

「うん。ビビりすぎかも知んないけど、失敗したばっかだかんね」

<らじゃー!>


 砦に残っていた食料で腹を満たし、トボトボ歩いて、下山。

 『名もない村』に戻って来ました。

 いっちばん最初の村だね。@太郎たちの出身地だ。


「雑貨屋入ってみよっか」

<なつかしいねー>

「ホントにねw」


 品切れだった雑貨屋に、食料がいくつか入荷してるのを確認。購入する。

 オーガがやたらに「腹減った」言うんで、食わせとく。

 んで、寝る。

 雑貨屋の床にゴロ寝。入り切らねーから、そこらの民家にも何人かずつ上がり込んで、ゴロ寝である。


「勝手に上がり込んだけど・・・」

<特に文句は言われませんでしたね>

「なんで文句言わねーんだろ?」

<さー?>

「ムッキムキの巨人がさー、武器持ってさー、なーんも言わずに押し入って来てさー。

 ゴロンって転がって、グースカ寝始めたわけでしょ?」

<うん>

「出てけ! ・・・ってならねー?」

<恐くて何も言えないんじゃないかなw>


 朝。まーたオーガが「腹減った」言い出す。


「どーすっぺ。雑貨屋、昨日で売り切れになってっし」

<こんなこともあろうかと、用意したのがこちら。@ソラさんが釣り続けた川魚です>


 運び込まれたお魚。

 @ソラ司祭が川で釣った魚である。

 イカダ担当の@軍団員が、川をさかのぼって持ってきてくれたんである!


「・・・ずっと釣りしてたの?」

<うん。『鳥をなだめる』以来、釣りしかしてない>

「もうお魚の司祭ってことでいいんじゃね?」


 材料が届いたので──マナ招集だ!

 Mpを貯めて、@スピナーが精霊召喚。『火の精霊』を引き当てるまで、召喚キャンセルしてやり直す!

 火の精霊が出てきたら、お鍋を装備して・・・


 @スピナーは作業を始めた: 料理(60ターン)。

 火の精霊は燃え上がった: @スピナーの鍋があたたまった。

 :

 @スピナーは料理を終えた: 魚のスープ(20ポンド)。


 ・・・精霊クッキング、完了である!


「20ポンドってどんぐらい?」

<20食分>

「あ、そうだった。1ポンド1食って、わかりやすいよね」

<もともとポンドって、人間が1日に食べる大麦の重さらしいからね>

「へー。このゲームもそうなの?」

<だいたいね。

 麦1ポンドと水1ポンドで、麦のスープ2ポンドが作れる。

 この2食分で、ふつうのキャラなら1日は持つ>

「現実的だね」

<ポンドは、食料管理には向いた単位だと思うよ>

「さすがアメリカ人。ポンドを推してくるw」

<ちがうよw ホントに向いてるんだってば>

「はいはい」

<ファンタジーにはさ、フィートや尋(ひろ)みたいに、原器のない単位が似合うと思わない?>

「げんき」

<厳密に1メートルとか、1キログラムとか、きっちりになってるやつ>

「あー・・・メジャー作るためのメジャー?」

<そう>

「1メートルってどうやって計ってんだよ? って話?」

<そーそー>

「まあね。それはあるね」

<足3つ分だから3フィート、みたいなほうが、>

「フィートって、足のサイズなの?」

<え? うん。そのまんま『足』って意味だよ。単数形がフットで、複数形がフィート>

「そうだったんかい! 足のサイズってことは、27センチぐらい?」

<30.48センチ>

「・・・足デカくね?」

<でかいよねw>


 20ポンド=20食のスープ。

 ちょっと足りない。25人いるからね。

 スピナーさん、お代わりお願いしまーす!


 ちなみにこのスープ、オーガは1食では足りず、ハーフエルフの女司祭たちは胃もたれしてる。


<やはり、スピネルスープにはおよびませんね・・・>

「・・・クッキーのスープ?」

<そう。・・・笑うなw>

「ごめwww だって面白ぇーんだもん、あのスープ。正式名称なんだっけ」

<肉とクッキーとライ麦パンとエールのスープ>

「wwwww」

<現実だったらやばいレシピなのはわかってるから! 笑うなーw>


 笑ったあと、ふたたび『銀の砦』へ。

 昨日見つけたはね上げ戸を調べる。

 万が一に備え、十分に陣形整えて、マナ招集してから・・・


<開けます>

「おう」


 かぱ。はね上げ戸を、@ゴブ四郎が開ける。

 ・・・何も起こらない。


<入ります>

「おう」


 @ゴブ四郎、下のフロアに降りる。

 そこは小さな地下室だった。


 ■■■■■

 ■<@.■

 ■.☆.■

 ■...■

 ■■■■■


<テレポート出口>

「なんですと?」

<この星みたいなマーク。『テレポート出口』って説明になってる>

「なんじゃそりゃ」

<テレポートの出口なんじゃないかな>


 @ハッピーも下ろして入念に調査。

 何も見つからない。敵もいないし、もう隠し扉もないみたい。

 @ゴブ四郎に、星マークを踏ませてみる。何も起こらない。


「文字通りなのかもね。出口であって入り口ではないっつー」

<どっかに入り口がある?>

「そうなるよね」

<じゃあここは、単体では無意味と>

「★大鷲さんみたいなもんじゃねーかな?」

<あー>

「ぶっちゃけルーラ。ってか、旅の扉」


 たぶんどっかから飛んでくる一方通行のテレポートなんでしょう。

 ということで、ここは調査を打ち切る。


「十分警戒したときに限って何も起こんねーんだよな」

<そーだね>

「んで油断してやられんだよ」

<そうだねぇ>

「これ作者の狙い通りならすげーんだけどね」

<たぶんそこまで計算はしてないんじゃないかな>

「俺たちがハマってるだけだよねw」

<だねw>

「──で、これどうしよう?」

<どこから繋がってるかわかんないのは、嫌だよね>

「そうなんだよな・・・ちょっとこの砦、使いづらいよね。位置も良くないし」

<逆にそういうことかも知れないよ>

「どういうこと?」

<使いづらい位置だから、山賊しかいなかった。山賊しかいないから、出口を造れた>

「・・・山賊陣営のボスみたいなやつが、こっから出てくるってこと?」

<えっとね。山賊の合い言葉。・・・忘れちゃった。ちょっとログみるね>

「あ、うん」


 風花さん、ログ開く。

 この『忘れちゃった』っての、人間っぽくて好き。記憶を圧縮するためにやってんだろーけどね。


<あった。ここだ>


 ┏━━━

 ┃ 3、(山賊の合い言葉を答える)

 ┗━━━

 

 “May W.K. reign us.”


<『W.K.よ、我らを支配したまえ』──これね>

「WK・・・イニシャルだよね」

<うん>

「なんかあったっけ? W、W・・・・・・・・・レイス?」

<そうだね。レイスはWだった>

「Kっていたっけ」

<いない>

「じゃあ・・・キングとか? レイスキング」

<あ>

「なに?」

<それだよ。ウィッチ・キング。魔王。魔王のことじゃない? これ>

「魔王?」

<『ウィッチ・キングよ、この世界を支配したまえ』──そういう意味じゃない?>

「あーーー・・・ありそう!」

<でしょ?>

「RPGっぽい!」

<だよね!>

「山賊と魔王ってのが、ちょっと結びつかねーけどw」

<うん。まあね。けどほら、山賊の頭が持ってたやつ。魔剣。あれも『ウィッチ・ウェポン』だから>

「そうだっけ」

<そうだよ。ごめん。これは、私の翻訳が悪かったかも>

「いやー、俺が英語読めねーのが悪ィんだよ」

<いやいや>

「いやいや」


 で。


「山賊の頭が、魔王に忠誠誓って、人間の世界を支配させようとしてた──っつーわけ?」

<そう。山賊は、魔王のスパイだった>

「なるほど。工作員か」

<忠誠の見返りに、魔剣“クラッシャー”をもらった>

「あー、そう言や、ダークエルフの奴隷兵も言ってたよね? 月の神剣をドラゴンにやった、って」

<うん。魔王は気前のいい人なのかもね。あるいは、剣を使わない人なのかも?>

「魔術師か! ウィッチ・キングってぐらいだしね」

<亡者を率いる、とも言ってた>

「そっかぁ・・・」


 レアドロップみたいなもんかと思ってたら、固定ドロップだったのか。


「・・・考えてみりゃ、ただの山賊が持ってる剣じゃねーわ。魔剣“クラッシャー”」

<うんうん>

「でもやっぱ、山賊とウィッチ・キングは結びつかねーな・・・w」

<うん、まあねw>


 本日は、こんなところで。

 被害もなく、飢える者もなく、★大鷲さんの雑なサービスに泣かされることもなし。

 大きな進展もなかったけど、悪いこともない一日でした。




※このページの修正記録

2024/01/01

「105、銀の砦のシークレット」

 幹太のセリフを修正。

  ×「下りましょう!」

  ○「いったん戻ろっか」

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