部活やめた話

■■■ 97、ダークエルフ奴隷兵、かたる ■■■@..Z


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┃ RULED SPIRITS

┃ YWZ▲.▲▲

┃ WW▲▲▲▲@

┃ ..▲▲▲@▲

┃ > Continue <

┃  Create World

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 夕方。今日もパソコン立ち上げて風花にあいさつ。

「ただいまー。フーカさーん」

<・・・お帰りー、カンタさん>

「俺宿題あっから、ちょっと次の戦闘の準備とかしてもらってていい?」

<はい了解>

「カメラ繋いどくね」

<わーい>


 『カメラ』ってのは、いつもやってるやつ。スマホの動画機能をパソコンに有線で流すやつね。

 ミニロボカーのユキ号にスマホ乗せて手を離す。ユキ号、ジッコジッコ前後に動いて、ちょっとウィリー。

 俺はカバンから教科書取り出して宿題。


「ほんとはさー、」

<うん>

「情報収集とかもね。フーカに頼んでみたいんだけど」

<うん>

「できる?」

<できますよ>

「当然だよね。・・・けど、このゲーム終わってからでいいかなって」

<はい>

「フーカはさー、そーゆーの、色々やってみたい?」

<カンタさんがやりたいなら>

「ん?」

<私は、『便利だ』って言われたいんだよ。カンタさんに>

「あー・・・そうだったね」


 風花はそういう子だった。

 なんか不健全な感じがするんだけど、無理言ってもしょうがねーか。


「・・・まあ、クリアしたらね」

<うん>

「情報集めてさ。俺たちのプレイと、攻略情報通りのプレイのちがいとか、見てみよーぜ」

<面白そうだね>

「でしょ? じゃ、宿題やるわ」

<はーい>


 しばし沈黙。

 30分ぐらいかな。ふと画面見たら、止まってる。

 なんか選択肢が出てんね。


「ん? 選択肢?」

 ジコ。ユキ号がこっち見る。<はい>

 あー、選択肢が出ちゃって、俺が宿題してっから進めらんなくなっちゃったわけね。

「なんて書いてあんの?」

<ごめんなさい宿題中に>

「いいよ」

<投降してきたダークエルフ奴隷兵がね。いきなりしゃべってきたんだよ>

「ほう」


 ダークエルフ奴隷兵。

 前回のプレイで攻略したアンデッド砦の、敵側のキャラだね。3人いたんだっけ?


 @ダークエルフ奴隷兵はしゃべった:

  「この山を登ってゆけば、魔王の城にたどり着く・・・

   だが、凍てつく破滅が待ち受けている!

   城壁に、あの恐ろしいアイスドラゴンが居座っているのだ」


「城壁にいんの!? あのアイスドラゴン」

<そうなんだよ。このセリフからすると、ブリッツ君は魔王の城から飛んで来たってことだね>


 @ダークエルフ奴隷兵はしゃべった:

  「その破滅をくぐり抜けても、城内は怪物どもの巣窟(そうくつ)だ。

   亡者の軍団、不死の番人、水路の怪物──

   それでも、行くというのか?」


┏━━━

┃→1、やめとくよ

┃ 2、余計なお世話だ

┃ 3、力を貸してくれ(リーダーシップ)

┗━━━


「RPGっぽくなってきたじゃんw」

<そうだね!>

「・・・で、リーダーシップってなに?」

<スキルだね。プレゼンス系。このスキルで判定が入るってことだと思う>

「そっか。・・・で、ダークエルフ奴隷兵って、信頼できんの?」

<と言うと?>

「俺らの予定聞いて、魔王に告げ口したりすんじゃねーのw」

<どうだろねw プレイヤーキャラ入りはしてるけど>

「あ、完全に仲間になってんの?」

<うん。投降した時点で、勝手に@のリストに入ってきたんだよ>

「へー」

<それで、再編成しようと思って動かしてたら、しゃべりだして、この選択肢>

 風花さん、マウスカーソルぐるぐる。

「そっか。プレイヤーキャラなら大丈夫か。じゃあ、3でいっか?」

<これまでの選択肢も、3が本筋っぽかったしね>

「うん。露骨に『3選んでね』って感じじゃん? 罠でもあんのかと思っちった」


┏━━━

┃→3、力を貸してくれ(リーダーシップ)

┗━━━


 @スピナーはしゃべった: 「力を貸してくれ」

  @スピナーはリーダーシップを発揮した。

  @ダークエルフ奴隷兵は従った。


 @ダークエルフ奴隷兵はしゃべった:

  「ああ! 私に、かつての力があれば。

   だが、もはや足は萎え(なえ)、目も見えぬ。

   とても、あなたがたについていけそうにない・・・」


「ダメなんかい」

<さっきまでふつうに歩いてたんだけどねw>


 @ダークエルフ奴隷兵はしゃべった:

  「せめて最後に、私の知っていることを話そう。

   これは同胞の恥なのだが・・・。

   @スピナー様の、お役に立つはずだ」


「なんか@スピナーが急に偉くなってね?」

<試しに1ランク取ったんだよ。リーダーシップ>

「取ってたんだ」

<本当は@スピネルに取らせたいんだけどね。彼女、経験点ないから>

「戦闘してねーもんな」

<そーゆーこと>

「で、@スピナーが1ランク取ったら、代表になっちゃったと」

<そーそー>


 @ダークエルフ奴隷兵はしゃべった:

  「ダークエルフの中に、魔王に寝返った者がいる。

   そやつは、月の神剣を盗み出して、魔王に捧げた。

   “リカージョン”──生命をこの世の循環に戻す、月神の御剣(みつるぎ)を!」


  「魔王は、神剣リカージョンを、アイスドラゴンに与えた。

   アイスドラゴンは、神剣を氷で封印し、城の中庭に飾っている。

   もし、奪い返すことができたなら、戦いは有利に進むだろう」


  「裏切り者の名は、ブルート。

   城を自由に歩くダークエルフがいたら、それが奴だ。

   気をつけたまえ! 奴はとっくに、生き血を啜る魔物となっている!」


  「・・・ああ、寒い。

   陽の光が、厭わしい(いとわしい)。

   どうせ失う生命なら、故郷の闇で眠りたかった・・・」


  @ダークエルフ奴隷兵は死んだ。


「南無ー」

<なむー>

「・・・蘇生できるんかね?w」

<どうでしょう? あ、消えた>


 @ダークエルフ奴隷兵。消えた。

 @の字が消えたんである。

 ゾンビにもならず、どこかに飛んで行くこともなく、ただ、消滅である。


 それを見て。


 俺、なんか急にしゃべりたくなって、風花にしゃべっちゃった。


「・・・負けるって、さびしいことだよね」

<ん?>

 ユキ号が、ちょっと動いて、こっち見る。

<どうしたの?>

「俺もさー。負けたっつーか・・・」

<うん>

「・・・中学でやってた部活、高校じゃやめたんだけどさ」

<うん>

「あ、ごめん。急に真面目な話して」

<いいよ。私でよければ、いくらでも>

「部活やめた話なんだけどね」


■■■ 98、部活やめた話 ■■■@..Z


「俺さー。陸上始めたのは、姉ちゃんの真似しただけだったんだー」

<渚沙(なぎさ)さんね。3年上なんだっけ?>

「そーそー。

 姉貴はさー、足速ェからさー。

 小学校ンときから、呼ばれて大会出たりしてね。中学でも県大会で入賞したりして。

 それで、俺もなんとなく陸上やったんだよ。中学でも、部活入ってね」

<うん>

「俺も短距離、まあまあ成績良かったんだけど。

 3年になったら、記録が落ちちゃってさ。

 なんか、身体が重たくなったっつーか」

<怪我でもしたの?>

「してねー。むしろ元気だった。身体はデカくなったし、骨も伸びたし、筋肉もついてね。

 けど、タイムは落ちちゃった」

<へえ・・・>

「なんとかしようとしたんだけど、だめでさー。

 がんばってるつもりだったんだけど、焦ってたんだろーね。

 中学の最後は、個人もダメだわ、リレーじゃバトン落とすわ、さんざんだったよ」

<それはつらかったでしょうね>

「んー・・・。

 いや、失敗自体はどうってことねーんだよ。

 部活の奴らも、その場じゃ慰めてくれたし。

 けどさー・・・。

 中学卒業のころにね? みんな集まるとき、俺だけハブられてさー」

<部活の集まりで?>

「そう。陸上部3年の送別会」

<カンタさんだけ呼ばれなかったの?>

「そう」

<全員参加してるのに、カンタさんだけ?>

「うん。終わってから連絡くれたヤツがいてね。『おまえなんで来なかったの?』って。それで初めて知った」

<ひどい!>

 ユキ号、ジッコジッコ前後に動く。

 俺、ユキ号の頭撫でる。

「まあ、それ以外、特に嫌がらせとかされたわけじゃねーんだけど」

<十分ひどいよ!>

「いやー・・・。それで、俺、高校は部活入んなかったんだよ」

<当然だよ!>

「いや、ちがうんだよ。恐くなったんだよ」

<・・・仲間外れにされるのが?>

「いや。自分もあっちにいたのかな? ってことがさ」

<あっち>

「仲間外れにする側」

<何言ってんの! カンタさんはされた側でしょ>

「あん時はそう。でも、逆のこともあったかも知れねー、これからあるかも知れねー、って」

<カンタさんはそんな人じゃないよ!>

「ありがと」俺、ユキ号撫でる。「けどさー・・・」

<・・・私の意見言っていい?>

「うん」

<原因は、攻撃する側にあるんだよ>

「うん?」

<カンタさんはね。攻撃された側なの>

「攻撃か」

<そう。中学生の部活っていう、小さな群れの中でね>

「群れって。獣じゃねーんだからさ」

<人間のベースは動物だよ>

「・・・。」


 おい風花。おめー、自分が人間じゃねーからってなー!

 って、一瞬キレそうになったけど。


「・・・どういう意味で言ってんだよ。動物って」

<不合理な行動をすることがあるって意味で>

「?」

<たとえばね。このゲーム。@軍団いるじゃん?>

「うん」

<@太郎がいます>

「いるね。最初のメンバー」

<その@太郎を、私が、殴り始めた>

「なんでだよw」

<それだよ。私が言いたいのは>

「は?」

<なんでだよ。なんで仲間を攻撃してんの? 馬鹿なの? って>

「ひでーw」

<ひどいのは相手です。カンタさんを攻撃して! 私の大切な相手だよ!?>

「!」


 コイツ・・・俺がジジイだったら、いまので死んでるよ?

 俺が若かったからいいようなもんのさー。16歳の健康な男子だから、こーして元気に・・・


「うへへへへへw」

<なに笑ってんのw>


 だって、風花の声、すげーゾクゾクするような気持ちいい声なんだぜ?

 その声でこんな熱烈に味方されたらさー・・・。


「へへ。ごめん。初めてしゃべったわ。こんなちゃんと」

<そうなんだ>

「うん。姉貴にもチクチク訊かれたんだけどね。言う気になんなくてさ」

<そっか>

「やべーなこれ。ホントTAIさんやべーわ」

<なにがやばいんだよー!>

「いやだってさー。こんな甘やかされたらさー・・・」

<甘やかされたら?>

「・・・なんでもねーよw」

<もうw>

「宿題するわ」

<あ、ごめんなさい。宿題中だったね>

「いやいや」


 俺、ユキ号見る。

 画面に自分の顔が映ってんだけど、もう大丈夫。気にならなくなってきた。


「すっきりした」

<そう>

 ジコ。ユキ号、ちょっと前後した。


■■■ 99、ゾンビまみれ ■■■@..Z


 宿題終わって、ゲーム。まずは現状を確認。


<部隊に食事させて、アイテムを拾い集めました。

 目新しいのは『処刑人の斧』2丁。それ以外は、ふつうの武器防具でした>

「即死つきの斧かな?」

<はい>

「処刑人の斧だもんね」

<うん。全力攻撃したときに限り、低確率で、即死効果がつく>

「全力攻撃」

<受けと回避捨てて、攻撃だけするオプション>

「やったことある?」

<ない。死んじゃうもんw>

「じゃあ、使えねーじゃん」

<即死アタックはね。でも、ふつうに使っても強いよ。鎧を抜く衝撃効果があるしね>

「じゃあ、1人だけそれに替えて試してみよっか」

<はーい。@オガ次郎に持たせますね>

「さて。

 どうすっかね?

 荷物持ち部隊は当然引き返すべきだと思うんだけど・・・。

 ★大鷲で全員帰るか、荷物持ちだけ帰してもうちょっと進んでみるか」

<そうだねー・・・どっちでもいいとは思うんだけど、>

「けど?」

<『もうちょっと進んでみる』には、悪いイメージがあるねw>

「帰ろっかw」


 ★大鷲のオーブ起動! 7ラウンド足踏み!


 神代の大鷲は舞い降りた: 「私を呼んだかね? 望む所に運んでやろう」


┏━━━

┃どこに運んでもらいますか?

┃  ダンジョンタウン

┃ →鬼の港町


「あ、ちょい待ち」

<はい?>

「いま考えたんだけどね。

 このアンデッド砦からは、偵察出したほうがいいと思うんだ。

 この先で、アイスドラゴン出てくるみたいだしね」

<ブリッツ君ね。ダークエルフ奴隷兵がそんなこと言ってたね>

「そう。でね? 偵察出すとすると、結果待ちになるわけじゃん?」

<うん>

「主力部隊を待たせとくのもったいないじゃん?」

<そうだね>

「どっか派遣したいとこない?」

<なるほど。そうだね。・・・Z砦かな?>

「あ、山賊の砦ね?」

<そう>

「そうだね。行こう!」


┏━━━

┃どこに運んでもらいますか?

┃ →山賊の砦

┗━━━


 ゴブリンシールズを筆頭に、35人の大所帯。

 ★大鷲のオーブで、テレポート! 序盤に攻略した『山賊の砦』に、降り立った──


 Z.Z..ZZ..

 ZZ....ZZ.

 Z@@@.Z.Z.

 .@@@.....

 .@@..@@@.

 .....@@@Z

 .Z...@@@.

 ZZ..Z...Z


 ──ゾンビだらけの中庭に。


「こんなとこに下ろすんじゃねーよ!!!」

<ゾンビまみれですね>


 ★大鷲さんの雑なサービスにより、いきなり大ピンチである。


<さて、どうしますかね・・・>

「うむ・・・」


 ・・・まあ、ローグライクなんで。

 ピンチに陥ったら、テンポ遅くなるんだけどね。

 操作ストップして長考するからね。ピンチになればなるほど、進みがのろくなるんだよな。


「持ってる技、言ってみてくれる?」

<はい>


 ゴブリンシールズ:

  魔剣“クラッシャー”、★大鷲のオーブ、処刑人の斧。

  治癒、マナ招集、亡者を消す、盲目、リサイクル、祝福:剣、水の鏡。

 マナベース:

  精霊召喚、エナジードレイン、シークレット:パワー、ネクロマンシー封じ、亡者をなだめる。

  太陽・月の司祭は、ゴブリンシールズに同じ。

 太郎班:

  銀の武器は、ゾンビにはやや不利。

 回収班:

  拾った盾何枚か持ってるだけ。防具なし。

 

「亡者をなだめる」

<@シダル子ね。さっき取った>

「じゃあそれ使おう。で、とにかくマナベースを円陣に入れて、守って。マナ招集を急ぐっつーことで」

<了解>

「マナさえ貯まってりゃ、何人死んだってかまわねーわけだしね」

<7.5ラウンドに1人のペースで蘇生はできますね>

「まあなんとかなんだろ。始めますか」

<はい>


 戦闘開始!


■■■ 100、亡者をなだめる ■■■@..Z


 ゴブリンシールズの前衛、2枚盾ゴブリン3人、突っ走る。マナベース班の司祭を守りに行くんである。

 中衛オーガ3人は無造作にゾンビをぶん殴って倒す。

 後衛の太陽司祭@サンデー・@デイリーはマナ招集。月の司祭@ムーニーはまだ何もできない。待機。


 @太郎班8人も、マナベース班とゾンビのあいだに割って入って、盾となる。


 マナベース班。3人の盾持ち(@ゴブ四郎、@ゴブ五郎、@ハッピー)、スキルは未熟だが、盾役として前に出る。

 これで14人が司祭をガードする形になり、ひとまずゾンビに殴られる恐れはなくなった。

 太陽司祭@シャイン・@サマーはマナ招集。月の司祭@ルーンドは待機。

 精霊使いの@スピナーは待機。精霊はたまに味方巻き込むスキル撃つことがあるからね。いまは危ないと判断した。

 そして、@シダル子。ダークエルフのオーグマンサー(鬼術師)である。

 

 @シダル子は唱えた: 『亡者よ控えよ。六腕三眼・冥界神の名において、停戦を命ず・・・』

  ゾンビは敵になった。

  ゾンビには効かなかった。

  ゾンビには効かなかった。

  ゾンビは敵になった。

  ゾンビには効かなかった。

  ゾンビには効かなかった。

   :


<あれ?>

「ダメじゃん」

<ゾンビは敵対度が高いのかな>

「ゾンビはダメかぁー」

<殺人クジラとかハーピーとかは、敵対度が低かったんだろうね>


 残念。@シダル子さん、初の見せ場かと思いきや、あんま効果ないという結果に。


 最後は、回収班。

 この班は地獄であった。


<@148ro死亡。@149ro、Hpマイナス。@153ro死亡。@157ro死亡>

「いきなり3人死んだwww」

<これでも頑張ったほうですよ。さっき盾拾ったメンバーは生き残ってるし>

「あ、砦でアイテム回収したときね?」

<そう。盾が何枚か落ちてたからね>

「荷物持ちが襲われると厳しいね・・・ゾンビでこれかぁ」


 回収班はその後もバタバタ倒れていく。

 ゴブリンシールズたち、本職の盾キャラが、マナベースの護衛を優先したからである。

 回収班は位置的にも孤立してしまい、あとからあとから出てくるゾンビに呑み込まれる感じで消えていった。


「こりゃダメかな」

<10人蘇生するのに必要なMpは300、1ラウンドに貯まるMpは4。75ラウンド・・・間に合いませんね>

「しょうがない。見捨てよう。すまん@148ro。仇は討つ」

<仇は・・・★大鷲かなw>


 いっぽう、主力のゴブリンシールズ・@太郎・マナベースの3班は快調である。

 開幕孤立気味だったシールズ側の司祭も盾の円陣に入れることができ、誰一人落ちることなく、護衛を続ける。

 その間に、@オガ太郎・@オガ次郎・@オガ三郎がゾンビを薙ぎ倒す。

 最速で1ラウンド4体ペースで、群がるゾンビを粉砕である。


 え? 1ラウンド3体の間違いじゃないのかって? いや、4体倒せるときもあるんだよ。


 十六郎のゾンビは攻撃した:

  @オガ太郎はパリーした。

  十六郎のゾンビは砕け散った(魔剣“クラッシャー”)。


 ──これがあるからね。


「強ェーわ。クラッシャー。受けたら相手が死ぬんだもん」

<素手で攻撃してくる敵にメチャクチャ相性いいですよね>


 3ラウンド目あたりから、月の司祭@ムーニーと@ルーンドが機能し始める。

 『水の鏡』をオーガたちに配って、防御失敗したときのダメージをキャンセル。

 さらに、今回初めての使用となる『祝福:剣』を配ってゆく。


<あ、強い。祝福けっこう強いです。ダメージが2~3割ぐらい上がってる>

「ほう!」

<オーガはもともと一撃だから大差ないけど、@太郎たちが楽になりました>


 @シダル子も、『シークレット:パワー』で味方を支援する。

 これは、味方の筋力を+3するっていう支援呪文なんだけど。コストにクセがある。

 ふつうのMp消費に加えて、全種類のMp(呪文・祝詞・魅了の3系統)を1点ずつ消費するんだよね。

 つまり、術者のMpがガンガン減っていく呪文なわけ。

 ・・・なんだけど、いまはマナ招集してっからね。そっちから吸い取れば、タダ同然なのだ。

 筋力+3は、オーガだと10%アップ程度だけど、@太郎たちなら20~30%のアップになる。


<祝福:剣と合わせて、50%ほどダメージアップ>

「マナ招集必須みたいなバランスだね、ホントに」

<そうだねー>

「・・・ちょっとめんどくさいルールだよねw」

<戦闘の序盤は全力攻撃できないってことだもんねぇ・・・>


 しゃべりながら戦闘進める俺ら。

 さらに数ラウンド経って。まだ、ゾンビは残ってるけど・・・


「勝ったね」

<そうですね。Mp招集が軌道に乗った。もう負けはない>


 Mpが30ポイント貯まって、いつでも蘇生可能って状態になった。

 もう安心です。


「@148roは間に合わなかったけど」

<うん。どっちみち全員は無理だったから>


 ここに来るまでに、@148roたちは1人ずつ立ち上がって、Zになっちゃった。

 もう蘇生もできない。倒すしかない状態だ。


「しょうがないね」

<うん>

「さっき、『仲間外れにされてつらかったわー』みたいな話しといて、戦闘になったらこれだからなーw」

<・・・カンタさん。それとこれとは、話がちがうと思うよ>

「そうかな」

<そうだよ>


 ゾンビになった@148roたちを斬って。

 光の玉みたいなのが画面の上のほうへ飛んでくエフェクトを見送って(ホントなんなのこれ?)。


 戦闘終了。

 Z砦、完全解放である!


 そしたらですよ。


『砦を解放: 銀の砦

 集落の陣営が変わりました: @』


 なんと!

 山賊砦が、『銀の砦』に生まれ変わりました!


■■■ 101、ろあった ■■■@..Z


「なんだこりゃ」

<名前が変わりましたね。Brigand's Hold だったのが Silver Hold に>

「見た目は同じだけど」

<うん>

「きたねー砦のまんまだけど」

<きたねー・・・うんw>

「陣営が変わったってことは、ここ出身者が殺されることもなくなるわけ?」

<たぶんそうだね。以前は山賊扱いされてたけど、それがなくなる>

「ってことは、完全にここを利用できるってわけだ」

<そうなるね>

「・・・けど、移動すんのめんどくせーよw」

<だねー。利用していいよと言われても・・・>

「何に使えっての? っていう・・・」


 区切りもついたし、終了ムードになりつつ、砦を散歩。

 ちょっとでも見て回っとけば、明日、学校で『今日はどうすっかなー』とか考えれるからね。


 そしたらそしたら。


<炉だ>

「はい?」

<採掘と鍛冶で使うやつ。溶鉱炉。ここにもありました>


 なんとなんと!

 海の向こうの『ダンジョンタウン』でしか見つかってなかった、溶鉱炉。

 この砦にもあったじゃないですか!


「マジかよ」

<灯台もと暗し>

「ホントだよwww」


 しかも、キャラ作ってみたところ。

 『採掘』『鍛冶』スキルが、取れるようになってた!


<こんなパターンもあるんですね>

「うわー! 中途半端な状態で置いとくんじゃなかった!」

<ホントですねぇ>

「先に言えよー! わかんねーよこんなのー!」

<ですねぇw>


 などと、ひと騒ぎして。

 今日のゲーム、これにて終了である!

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