労働災害!?

■■■ 85、どうしたらいーんだろーね? ■■■@..Z


 前回の成果。

 1、風花さん、車に乗る。(これは現実ね)

 2、ハーピー問題が解決。(こっちはゲーム)


 車のほうは、ユキ号(机に乗るぐらいのロボットカーね)を風花さんが操作したって話。

 直接操作したりプログラム送信してみたりと色々やったみたいだけど、俺は口出してない。見てただけ。

 ハーピーは、川下りを邪魔してたハーピーがおとなしくなったんで、交易スタートだねって話。まあ俺は見てるだけだけど。


 ・・・あれ? 俺って。

 

「よー浦部」

「おうカンタ」

 高校。

 数日しゃべってなかった浦部としゃべる。

「うちのTAIさんさー、風花ね? 車運転したよ」

「マジで」

「マジ」

「法律違反じゃねーか!」

「ミニカーだよ」

「先に言えよ」

「プログラムして走らすやつでさ。まあラジコンみてーに操作もできっけど」

「ロボットだな」

「そう。結構気に入ったみたい」

「ああそう。良かったね」

「うん。けどさー」

「んだよ」

「俺ってさー、いらなくね?」

「なにが」

「いやー・・・」

「ああ、全部TAIさんのほうがうめーから?」

「そうそう」

「カンタいなくても、風花ちゃん1人でできちゃうだろって話?」

「そーそー」

「まあね。おまえいらないよね」

「うるせえよw」

「真面目な話、TAIさん出来すぎだからな」

「そーなんだよ。

 プログラムは、まーね? 俺ァ別にできねーから。

 けどさー、ゲームやらせても風花のがうめーし、速ぇーし。なんだ俺って」

「まー・・・あれだ。相手の世界だからさ。コンピューターは」

「相手の世界」

「電子の世界よ」

「ああ」

「わかる俺らがすげーって考え方もあんだろ」

「あー・・・」

 俺らは動物だけど、電子の世界も理解できる、って意味ね。

 まあそうだね。2つの世界を理解して、

「・・・TAIさんも一緒じゃね? 2つの世界理解してるよね?」

「そーだね」

「なんだい」

 俺、舌打ち。浦部、「知らねーよ」とか言ってる。

「浦部さー、おめー、なんかやらせたりしたの? 春ちゃんだっけ?」

「HALね。まあな」浦部、微妙に落ち込む。「うん」

「なにやらせたんだよ」

「・・・。」

「あ、わかった! プログラムだろ? んでおめーより上手かったんしょ? それで落ち込んでんでしょwww」

「るっせーよwww」


「・・・俺らさー、将来どうしたらいーんだろーね?」

「さーな」浦部、メガネ直す。「わかんね」


「ただいまー、風花さーん」

<・・・お帰りなさーい、カンタさん!>

 ジャッコ!

 ユキ号(ロボカーね)、ウィリーしてあいさつしてくる。

「そんなんできるようになったんだw」

<うまくできてました? 前輪浮かせたつもりなんですが>

「あ、見えねーんだ。ちょっと待ってね、いま動画撮るから」

 スマホ出して動画モードにして、パソコンと繋ぐ。

 いちいち有線で繋ぐのめんどくせーんだけど、繋いじゃえば後は便利だかんね。

 風花と繋がってるって感じするし。なんか変にエロい感じだから、口では言わねーけどw

「いいよ。もっかいやってみて!」

<カンタ、さぁーん!>ジャコジャッコ! 2回ウィリー。

「器用だなー」

<あれ・・・?>

「なに」

<もうちょっと派手な動きにしたつもりなんだけど>

「後ろがつっかえてんじゃね? もっかいやってみて」

<はいな>ジャッコ。

「やっぱそうだわ。ケーブルがつっかえてる」

<あー、そうか。ケーブルが。なるほど>

 風花うなずく。

 ・・・あ、『うなずく』ってのは、ユキ号がちょっと前後に動いたってことね。たぶんうなずいたんだろーなってこと。

<やっぱり、カンタさんいないとダメだねw>

「え?」

<あ、いえ、私1人でロボット動かすのは、ちょっと難しいなって>

「・・・そう?」

<はい。申し訳ないけど>

「ん? 申し訳なくはねーけど、なんで?」

<いやだって、『あれやって』「これやって』ってあんまり頼むの、悪いじゃないですか。面倒でしょうし>

「面倒じゃねーよ」

<いまはそーかも知んないけど。人間は飽きるものだし>

「・・・ああw」よくわかってんね。「まーね」

<私としては、飽きたカンタさんが我慢して付き合ってくれるみたいなのは、ちょっとね>

「ヤなんだ?」

<TAIシリーズのスピリットに反することだからね>

「スピリット」

<ユーザーに『便利だなー』って思ってほしい>

「あー・・・」


 それもどうなんだろーね。


「・・・お付き合いって、面倒なことを我慢するってことじゃね?」

<む>

「俺も我慢してやったから、相手も我慢してくれんだろって。ある程度だけどね?」

<むむ>

「そういう、なんつーの? 安心感」

<安心感>

「そう。でないと、ピリピリしそうじゃん」

<ぴりぴりするとは>

「なんつーの? 損得ばっか考えてるみたいな。『自分は役に立ってる?』って」

<でも気になるじゃん>

「気にはなってもさ。そればっかじゃ、付き合ってるって言えねーっしょ。

 甘えてこいって」

<甘えていいの?>

「いいよ!」

<じゃー、カンタさんカメラしてー>

「え」

<カメラーw>

「・・・そう来たか。くっそー」


 というわけで。

 今日は、俺の顔をモニターで見せつけられながらのプレイになってしまいました・・・。


■■■ 86、労働災害!? ■■■@..Z


┏━━━━━━━━━━

┃ RULED SPIRITS

┃ #######

┃ ..Hf...

┃ ~~w~~~~

┃ > Continue

┃  Create World

┗━━━━━━━━━━


<イカダ作って、鉱石を運んでみようと思うんだ>

「いかだ」

<うん。舟がないからね>

「ゴールデンなんとかは?」

<ゴールデン・ラム号は幅5マスあるから、ハーピー川は無理だね>

「なるほど」

<丸太舟は荷物積めないし。釣り舟は、入手する方法がないんだよね>

「Pizza様がいればなー」

<あー、魅了して徴発する手があったねw>

「まあいいんじゃね? イカダも見てみたいしね」

<はーい、やってみまーす>


 風花さん、イカダの作成に取りかかる。長時間作業ね。

 作業してるあいだ、別の@にカメラを切り替えて・・・エリアの設定かな? なんかをやる。

 カメラは銀鉱山にも飛んだ。


「ひさしぶりだね。鉱山」

<だいぶ貯まってますねー>

 銀の鉱石。鉱山入り口に、ゴロゴロ転がっとる。

<ここから崖上にアイテム移動を設定して・・・

 崖上から崖下に、こっちは『投棄』で設定して・・・

 よし! テストしてみますね>

「なにすんの?」

<バケツリレー>


 風花さんがエリア設定を完了すると。

 鉱山の中から、@が6人出てきた。@104ro、105ro、106ro・・・。


「こいつら、採掘させてたんだっけ?」

<そう。山賊砦出身の奴らだね>

「あー! 村に入ったら殺される奴ら!」

 山賊砦の出身者がふつうの村に入ると、攻撃されちゃうんだよね。プレイヤーキャラでもダメ。

 だから銀鉱山で採掘でもさせとけ! ってなったんだ。

「ってか俺が指示したんだったわ。忘れてた」

<私も半分忘れてました>

「かわいそうな@百四郎ども」

<まあその地味な努力が報われる日が来たわけですよ。そーれ、アイテム移動開始!>


 @104roども。鉱山入り口に積んであった銀鉱石を取る。移動開始。

 てくてく歩いて(自動移動ね)、崖っぷちまで行って、そこに鉱石をボトッと落とした──と思ったら、即座に拾い上げた。

 んで、ポイッと投げ捨てた。崖の下へ。


「投げよった!」

<成功ですね。これで崖の下に鉱石が移動できました>

「エリア移動をコンボさせたわけだね」

<そーゆーことです! でね? この崖の下には・・・>


 カメラは、崖の下へ。

 森の中。

 ちょうど画面の真ん中を、川が横切ってる!


「川!」

<そ! あとはここへイカダを回して、鉱石を積むだけです!>


 言ってるあいだにも、風花さんの手は動く。

 完成したイカダに、作業してた@4人が乗る。川をさかのぼる!

 その間にも、崖の上からは鉱石がどんどん投げ下ろされておる。長時間作業──つまり自動処理でね。


「これって、ロボットだね」

<あー、そうだね。工場のライン作業のロボットみたいだね>

「勉強になります!」

<私もですよ。まあゲームだからね。事故とか起こらないところがちがいますけどね>

「事故」

<労働災害と言いますか。あ、イカダ着いた>


 イカダ到着。@4人、早速銀鉱石を取りにゆく。


 しかしながら!

 いま現在、崖の上では!

 山賊砦出身の@どもが、自動処理で鉱石を投げ下ろしとるんである!


 そんなところにホイホイ踏み込んだら──


 @104roは銀の鉱石を投げた: @66roに32のダメージ。@66roは死んだ。


<あっ>

「労働災害www」


 ──あわれ@六十六郎。ロボット運用の犠牲第一号である!


■■■ 87、イカダ、川を下る ■■■@..Z


<・・・まあ、そんなミスはありましたけれども>

「www」

<わらうな!w>


 まあね。風花さんの狙いは、大当たりでした!

 イカダ。荷車よりたくさん積み込めるし、移動も速いしね。

 鉱山から山道をぐるっと回って降りてくるより、移動距離自体も短いわけだし・・・


「荷車でノロノロ運ぶより、崖下に投げ下ろしたほうが早いわな」

<移動時間=食料消費ですからね>

「=コストってことだね」

<そーゆーことだね>

「舟ってすごいよね」

<水運はすごいですよ>

「1人死んだけどね」

<それはもう言わないで! ──なに笑ってんの! もーw>


 声はこらえてんだけど、カメラで見られてっから、ニヤニヤしてんのがバレてる。

 ユキ号が俺の手に体当たりしてきた。お返しに頭(?)を撫でてやる。


「よしよし」

<もー・・・あ、@ソラさん見えてきましたよ>


 死んだ@六十六郎に代わってイカダを操るのは、@六十七郎である。

 彼の視界に、@ソラ司祭が入ってきた。ハーピーをなだめたのはこのお姉さんだね。


「ハーピーの司祭さんこんちゃーっす!」

<太陽の司祭です・・・>

「ここもう村にしちゃおうぜ。桟橋(さんばし)とか造ってさー」

<いいですねぇ>

「・・・言っといてなんだけど、桟橋とか造れんの?」

<橋は造れると思うよ。橋っていうか、『木の床』だけどね。2本の柱を結ぶ形で床を張る>

「いいね! 造ろう造ろう。そのうちさー、ここ、@ソラ村にしちゃおうぜ」

<新しい集落ですねw>


 できるのかどうか知んないけどねw


<大海の村、到着ぅ~>

「おめでとー!」

 拍手。

 今日は風花に見えてるから、口で『パチパチ』とか言う必要なし。

「ここでゴールデン・ラムに積み替えですか」

<そうです! ま、出発は、イカダ何回か往復させて貯めてからになりますが!>

「うむ!」


 商船“ゴールデン・ラム”号の担当である@太郎たちがやって来た。


<まずは、イカダから岸辺へ・・・>

「あれ? 一気に船に運ばないの?」

<それすると、イカダ空にするのに時間かかっちゃうじゃない>

「ふむ?」


 ふたたび自動処理の設定である。

 まずは、イカダのすぐ隣の川岸に鉱石を下ろす。

 下ろし終わったら、@六十七郎はイカダに食料と水を積んで引き返す。

 その後、@太郎たちは改めて鉱石を運んで、ゴールデン・ラム号に積み込む、と。


「なるほど。早くイカダを空けたほうが得ってわけか」

<そーそー>

「けどさ、海までイカダで運んだほうが早くね? 船の横まで」

<商船は乗り降りできるマス目が限られてるから、やっぱりイカダ空くのが遅くなるね>

「そっかー」

<トロッコとか引きたいとこだよね>

「あー、いいね! トロッコ。線路引いてね」

<そうそう>

「ジャンプさせてね!」

<ジャンプ?>

「線路途切れさせてさー、下の線路へ飛び移らせんの」

<なんでそんな危ないことするの???>


 あれ? 伝わらんかった。

 トロッコがジャンプする映画とか、風花に見せてやらなきゃ。ゲームのがいいかな?


 さてさて。


 @六十七郎のイカダ、ふたたび@ソラ司祭の前を通る。

 食料と水、ポイ! @ソラの足元に投げる。


「・・・フーカってさー」

<なに?>

「もの投げるの好きだよね」

<うんw>

「ターン節約できるから?」

<初めはそうだった>

「いまは?」

<ものを動かせるの、楽しいなって>

「いつからそう感じたん?」

<ユキ動かしたとき!>

「うれしかった?」

<うん!>

「そっか・・・」


 よかった。


「・・・まあ、そーだよね。俺だってさー、子供のころ、車とかバイクとかすげー好きだったもん」

<そうなんだ>

「うん。親父が車運転してんの見てるだけで楽しくってさー」

<かわいいw>

「姉貴に『うるせぇ静かにしろ』って言われて、車ン中でけんかしたわ」

<仲いいね>

「よくねーよ!」

 子供ン頃は負けっぱなしだったしよー。

 俺が身体デカくなったら『触んなエロガキ』に切り替えやがるしよー。

<あ、イカダ2号も完成しました。ひとまずこの2枚で回していきますね>

「これで鉱石生かせるね」

<うん。ただ、距離が問題だねー>

「あー」


 鉱石を加工するには、金属を溶かす炉が必要なんだけど。

 その炉が、大陸側にはひとつも見つかってないんだよね。

 海越えて『ダンジョンタウン』まで持ってかなきゃ加工できねーっつー。


「あそこにしかないのかな。炉」

<もっと近くにあっても良さそうなもんですけどね。鉱山の近くにさー>

「だよね。俺もそう思うわ」

<でも、あのへんの村には炉はなかったしね>

「大陸の東のほうかな? 調べてないもんね。『入り江の港町』から東」

<あー、そうでしたね。調べます?>

「いやー・・・歩いていくとなると、時間かかるっしょ?」

<うん>

「同じ時間使うならさー、ハイエルフの都でアンデッド倒してるほうが、得じゃね?」

<たしかに、そーだね>

「でしょ? っつーわけで、ハイエルフの都行こうぜ。船が自動処理に入ったら」

<はいな!>


■■■ 88、ひきついでもらえるなら ■■■@..Z


 ハイエルフの王都のほうも順調。

 まあ王都っつーか、もう廃墟になっちゃってっけど。

 ゴブリンシールズと、太陽と月の司祭による攻略だね。


 ゴブリンの2枚盾がレイスの魔法攻撃を盾で受ける。

 オーガがレイスを叩き殺す。

 司祭たちは敵のいない場所に留まって、マナベースを造る。

 マナベース。マナ招集基地のことね。Mpを召喚して貯めとく場所のこと。命名・俺。

 ゴブリンたちが傷ついて帰ってきたら、たっぷり貯まってるマナを使って回復。

 マナ招集は収支がプラスになるようにできてるから、時間さえかければ、ほぼ無限に呪文を使い続けれるんだ。

 たまーに、そのマナベースにレイスが突然湧いて襲ってくんだけど・・・


<もうそのパターンは読めている! 『亡者を消す』! ハイ勝ち!>


 ・・・風花さん、余裕の対応です。

 貯まりに貯まってるマナをさっさと使って、あっちゅう間にレイスを消し飛ばす。


<あはははは! やりたい放題ですねー!>

「むしろ、ごちそうさまだよね」

<ほんと! 経験点ごちそうさまだよ>


 マナ招集してるだけだと経験点入ってこないからね。

 レイスが出てきてくれるおかげで、司祭も経験点稼げるっつーことになってる。


<まあ、シールズほどじゃないけど>

「ゴブリン強くなったよなー」

<うん>

「最初はあんま作る意味ないキャラかと思ってたけどね」

<私もそう思ってた。それこそ特攻偵察にでも使うつもりだったし>

「だね」


 あまりに順調に経験点稼げるんで、こちらもイカダ同様、チーム増やそうかって話になった。

 いっそハイエルフの王都のあちこちに似たようなチーム置いて稼ぎまくる・・・まで行くと、操作が面倒か。

 ま、どっちみち、今日はそろそろ時間だけどね。


「いやー、今日はいいプレイだったね。快調だった!」

<1人死んだけどね>

「あ、そうだった」

<なむー>

「南無ー」


 まあ、ね。いいよ。

 ゲームだし・・・ってのもあるけど、それだけじゃなくて、


「後を引き継いでもらえるならね」

<ん?>

「いや。ほら。キャラ死んでもさ。なんつーの? 報われんじゃん」

<報われる>

「自分は失敗してもさ。後のひとが成功するんなら、無駄死にじゃなかったって」

<ああ、そうだね・・・>


 ジーコ。

 ユキ号、こっち向く。


<・・・いや、でも、@六十六郎は無駄死にじゃない?>

「そう?」

<だって、あれ試行錯誤でもなんでもないし。ただミスっただけだし>

「へへw」

<わらうな!w>

「まあいいじゃん。ゲームだし」

<現実には誰も傷ついてないし、って?>

「そ」

<・・・まあ、私は勉強になったけどさぁ>

「ならいいじゃん」

<ふむ>ジー、コッ。ユキ号、うなずく。<そーだね!>

「そーだよ!」




※このページの修正記録


2023/12/03

「86、労働災害!?」

 同じような説明が後(87)に出てくる部分があったので、文章を省略。

 ↓の次の行から。話の中身は一緒。

  <成功ですね。これで崖の下に鉱石が移動できました>

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