幹太のプレゼント

■■■ 75、うみのさん、たのみますよ ■■■@..Z


 沈んだ船は見つけたものの。

 見下ろす海は、シャチだらけ。

 Killer Whale と人の呼ぶ。『殺人クジラ』だ。ウヨウヨだ。


「これどうしたらいいの?」

<やっつけちゃえばいいんじゃないですかね?>

「俺の常識的に言ってさー、人間ってシャチに敵わないんだけどw」

<やってみなきゃわかんないよ。これゲームだし>


 @Happyは石を投げた: ミス。

 殺人クジラは潜った:

 殺人クジラはとびはねた:

  :

 @Happyは石を投げた: ザブーン。殺人クジラは回避した。

 殺人クジラは潜った:

 殺人クジラは潜った:


<全部潜っちゃった>

「賢いね」

 海面から『殺人クジラ』──シャチどもの姿が消えた。

 こっちは陸地なんで、反撃は喰らってないけど・・・。

<水中で待ち伏せですかねー>

「水に入った途端に襲われるやつだね」

<むむむ>


 岸辺に立ち尽くす@6人。

 女オーガの@FuGrKoを筆頭に、ハーフエルフ、ゴブリン、ダークエルフと、異種族だけの6人パーティーだ。


「@海乃ってなんかできなかったっけ?」

<@海乃ちゃんは、『泡の冠』『素潜り』『魚をなだめる』ですね>


 @Umino。『神殿:海』スキルもちのハーフエルフ。

 死んだ@Umioの妹っつー設定らしい。出身地も種族もちがうんだけどねw


「泡の冠はBuffっつーか、防御呪文だったよね」

<そう。精神支配を防ぐ>

「素潜りは」

<素潜りボーナスがつく>

「潜ったら喰われるっつーの」

<じゃあ『魚をなだめる』しかないね>

「俺の常識的に言ってさー、シャチって魚じゃねーんだけど」

<まあそうだね>

「ダメじゃん」

<やってみなきゃわかんないよ>

「そだね。やってみっか。他にないし」

<そこそこMp食うから連発はできないけど、いい?>

「じゃあシャチが顔出すの待とっか。『潜ってるから無効です』とか言われたらヤだし」

<はーい>


 6人はその場で待機させて、しばらく他の方面の@軍団の世話をしてもらう。

 カメラを戻してみると・・・


<出てきた>


 殺人クジラ、また海面に、ウヨウヨと。


「んじゃー、@海乃さん、頼みますよ」

<はーい>


 @Uminoは唱えた: 『海の神に従うものよ、怒りを鎮め、応えたまえ・・・』

  殺人クジラは中立になった。

  殺人クジラは中立になった。

   :

  殺人クジラは友好的になった。


「効いたわw」

<効いたねw>


 友好的になった殺人クジラ、1頭。@Uminoに近付いて来た。


 ~∧~∧~~~~

 ..~~∧~~~

 @..∧~~~~

 @@.F~∧~~


 殺人クジラは鳴いた: 『キュー! キュー!』


「大丈夫なんだろーか」

<わかりませんねぇ>

「ってか魚判定かい。シャチなのに。わかんねーよこんなの」

<頭文字がFだから、もしかしてとは思ってましたけども>

「F?」

<FishのFかなーって>

「言えよーw」


 @Umino。殺人クジラに隣接してみる。

 大丈夫。

 で、風花さんがあれこれ試してみたところ・・・


<乗れますね、これ>

「乗れるとは」

<騎乗。馬みたいに>

「マジで!」

<万が一ありますので『素潜り』使いますね。詠唱。成功。乗ってみまーす>


 @Umino。殺人クジラのいるマスへ、踏み込む。


 合体!


 画面上、殺人クジラのFが消えた。@Uminoがそこへ移動。

 @に下線がついた。


<アンダーバーが『騎乗中』って意味らしいですね>

「潜れるんかな?」

<泳いでるって判定になってるから、行けるんじゃないかな? はい、行けました!>


 ■~~~~~~F~~F~~~~~O

 ■=@==========■■■■

 ■========F====■Z=

 ■============Z=■■


 画面が横から見た図に切り替わる。このゲーム、水に潜るとこうなるんだよね。

 @海乃さんは画面左のほうにいる@です。


<右に見えますのが、沈没した戦艦“ヒッポカンプ”でございまーす>

「Z居るがなw」


■■■ 76、Z軍団員 ■■■@..Z


<Zombie 36ro──あー、このゾンビ、@軍団員ですね>

「そっかー・・・。そうだよなー、みんなゾンビになってるよなー」

<ルールですからねぇ>

「Pizza様もゾンビになっちゃったかー・・・」


 Z軍団じゃん。

 がっかりだよ。ちょっとエロい妄想とかしてただけに! これは言えないけど!


<まあそうがっかりしないで>

「あ、はい」バレてら。

<どうします?>

「そーだねー・・・。魔剣、回収できそう?」


 魔剣“クラッシャー”。山賊の頭から奪って、Pizzaのものになったやつね。

 当たれば即死! めっちゃ強い剣である。壁に穴掘ったりもできる。

 これを回収に来たわけなんだけど。


<近付いてみますか>

「大丈夫かな」

<わかんないけど。ま、@海乃は新兵だからね>


 おっと。出たよ鬼軍曹。

 風花さんは、新兵の生命には価値ナシって判断なんだよね。

 俺は、なんかトラップあるんじゃねーかなーって疑ってんだけどね。あんま死なせっとね。


「・・・ま、いいか。悩んでても始まらねーし。釣ってみてくださいな」

<1匹ずつね>


 @海乃(&殺人クジラ)、船に近付いてはサッと離れる。

 何回かくり返す。ゾンビなかなか反応しない。


<速いね。倍速っぽい>

「移動速度?」

<うん。気持ちいい>

「そりゃ強いわ」マス目戦闘ゲームで移動速度は絶対だよね。「息継ぎもいらないのかな?」

<いらないんじゃないかな。@海乃のぶんのゲージしか出てないし>

「強ぇー」

<さすがは海の司祭ですね!>

「そういやゾンビも沈んだまんまだよね」

<だね。呼吸してないってことかな?>

「ゾンビだもんなー」

<ねー>

「あのエロ領主の館でさー、水中からゾンビ出てきたじゃん?」

<ああ、びしょ濡れゾンビ>

「そうそう。あれもさ、こういうことだったのかもね」

<あー。水から上がる必要ないもんね>

「そうそう。飯もいらないだろーしさ」

<なるほどね。──あ、釣れましたよ>


 ■~~~~F~F~~~~ZZZZO

 ■==F======ZZZ■■■■

 ■======@=Z====■ZZ

 ■==============■■


「全部来てんじゃんw」

<大漁だねー>

「フーカ隊長余裕ッスね」

<こっちのが速いんだもん。試しに殴ってみますね>


 殺人クジラは噛みついた: Zombie 36roに31ダメージ。Zombie 36roは死んだ。


「つよ」

<強いですね。もういっちょ>


 殺人クジラはキックした: Zombie Sailorに37ダメージ。Zombie Sailorは死んだ。

 @Uminoは攻撃した: ゴボゴボ。水の抵抗でうまく動けない。

  :

 殺人クジラは噛みついた: Zombie 78roに31ダメージ。Zombie 78roは死んだ。


「これもう殺人クジラだけでよくね?」

<だねw>


 鎧袖一触(がいしゅういっしょく)である!

 ・・・って、調子に乗ってゾンビをばんばん倒していると。


<Pizza様来ました>

「来たか」

<クラッシャー持ってる。しかもゾンビじゃない>

「え?」


               Yeller Pizza

 ■F~F~~~~~~~~~Y~ZO

 ■=F=======Z==■■■■

 ■======@==Z===■==

 ■==============■■


<Yeller Pizza>

「いぇらー」

<『叫ぶやつ』──かな。新種のアンデッドだね>


■■■ 77、Yeller Pizza ■■■@..Z


 得体の知れないアンデッド、イェラーとなって現れたPizza。

 右手に魔剣“クラッシャー”をかまえて、彼女が取った行動は・・・


 Yeller Pizzaは叫んだ: 「定めからは逃れられぬ!」

  @Uminoは聞こえなかった。

  殺人クジラは聞こえなかった。


「は?」

<効果なし>

「どーゆーこと?」

<水中にいるから、かな>

「ゴボゴボゴボってなって、何言ってっかわかんねー! ってこと?」

<たぶん>

「Pizzaがなんか叫んでんのに・・・」

<@海乃は『え? すみません、いまなんか言いました?』>

「Pizzaが『おまえも兄の後を追うがよい!』とか叫んでも・・・」

<@海乃は『ごめんなさい、聞こえません』>

「ひどいw」

<いやー、@海乃司祭、強いですね!>

「強いっつーか、ホームグラウンドボーナスっつーか」

<ま、やってしまいますね>

「しょうがないね」


 殺人クジラはキックした: Yeller Pizzaはパリーした。殺人クジラは砕け散った(魔剣“クラッシャー”)


<あっ!?>

「あー、そういう剣だったわwww」


 あわれ殺人クジラ。

 キックしたのが運の尽き。

 魔剣“クラッシャー”でパリー(受け流し)され、即死判定喰らってしもーた。


「いやー、勇者Pizza様、強いですねw」

<うわーん!>

「まーいいじゃん。@海乃は生きてるし。『素潜り』は、泳ぎボーナスもあるんでしょ?」

<そうだった!>


 『水泳』スキルはどっちも習得してない。

 『水泳』は筋力系なんだけど、2人とも筋力伸ばしてない。

 つまり、どっちも全然泳げない。

 けど、@Uminoには『素潜り』の水泳ボーナスがある。これで判定に成功して、陸へ逃げ延びた。

 Yeller Pizzaはなかなか判定に成功しないみたいで、まだ海中でモタモタしてる。


<やっぱり@海乃のほうが強いですよ!>

「そーだねw」


 しかし。

 モタモタしとったYeller Pizzaが、海面に顔を出したかと思うと・・・


 Yeller Pizzaは叫んだ: 「逃がさぬ! 破滅を受け入れよ・・・」

  やなこった! @FuGrKoは抵抗した。

  @Happyは麻痺した。

  @Gob4roは士気喪失した。

  オコトワリジャ! @Gob5roは抵抗した。

  カエレ! @CyDarKoは抵抗した。

  @Uminoは麻痺した。


<・・・。>

「見どころのある攻防ですねw」

<チッ、しぶとい女だぜ!>

「www」

<あ、この叫び声、魅了ポイント消費して撃つみたいですね>

「みりょうポイント」

<カリスマ系のMpだね>

「そんなのあんだ」

<Mpが3つに分かれてるんですよ。呪文、祝詞、魅了ね>

「へー」

<ま、無限に連射されることはないと。ならば勝たせてもらいますよ!>

「どうすんの?」

<石投げるに決まってっじゃないですか>


 投石投石投石!

 数ラウンドで麻痺も解けたので、@海乃も投石!


 Yeller Pizza、北の海に沈む(二度目)。


「南無ー」

<なむー>

「叫びはヤバいかと思ったけど、楽勝だったね」

<@軍団って誰も泳げませんからね>

「Pizzaが水泳取ってたらヤバかったね」

<あ、それは大丈夫。Pizzaカナヅチだから>

「うん?」

<水泳取れないんだよ。あの子たち>

「経験点入れても?」

<経験点が入れれないんだよ。水泳みたいな、後から解放されるスキルはね。

 @海乃みたいに、出身地に水泳があれば行けるんだけど>

「あ、じゃあPizzaたちは『神殿』スキルとかも取れないんだ?」

<そうそう>

「へー」

<『名もない村』の子は、追加スキル一切取れないってことだね>

「そうなんだ!」


 初期村の子、ちょっとかわいそうだね。


「・・・ま、そうでないと@100人とか作ってゴリ押しできちゃうもんね!」

<それはやったじゃんw>


 ま、ともかく。

 Yeller Pizzaとゾンビの群れ、駆除完了である!


<投石をたたえよ!>

「あと殺人クジラね」

<殺人クジラもたたえよ!>

 

 @海乃司祭、初戦を見事に飾ったのであった!


「・・・あとは引き揚げ作業だよね」

<クラッシャー、また沈んじゃいましたからねぇ>

「これさー。立ち去ったらさー。消えちゃうんかね?」

<アイテム?>

「うん。『野外はセーブしてないかも?』って話、したじゃん」

<したした>

「消えたらやだなw」

<そうだね。いまから行っとく?>

「@海乃1人だけっしょ? 潜れるの」

<うん>

「途中で『素潜り』切れたら・・・」

<溺れるねw>

「やめようぜ。安全策で行こう」

<じゃあ、この6人はこのまま現在地でキャンプ。新規隊員を送り込む、ってのはどう?>

「それで行こう!」


 というわけで。

 クラッシャー捜索班は、ここでキャンプ! 海底サルベージの準備を整えるのでありました。


「あ、そろそろ晩飯の時間だわ」

<ここで終わっときましょうか。キリもいいですし>

「だね」


 今日のゲーム、ここまでである!


<カード描くのに、画像処理ツール使わせてもらっていいですか?>

「どうぞどうぞ!」


■■■ 78、幹太のプレゼント ■■■@..Z


 1階へ。

 キッチンで父ちゃんと母ちゃんがなんかしゃべってた。


「ああかんた。降りてきたの」母ちゃん。「ご飯もうすぐだから」

「へーい」

 リビング入ってソファでだらける。この前、姉貴がだらけてたソファね。

 父ちゃんが隣に来た。

 ぼそっと、「渚沙(なぎさ)、やっぱ陸上やめるってよ」

「へぇ」


 姉ちゃん、結局やめんのか。

 まあ、やる気なくなってる感じだったかんなー。未練はあるけど、って感じだった。


「まー、大学の部活は本気でやるとこらしーからね」

「うむ・・・」父ちゃん、あんま納得してないっぽい。「でさー。幹太。おまえに伝言頼まれてよ」

「なんだよ」

「私はやめるけど、幹太はなんかやったほうがいいぞ。・・・だと」

「は?」なんだそれ。「部活やれっての? いまから?」もう夏休みも終わって、2学期なのに?「やだよ」

「部活とは言ってなかったけどな」

「じゃあなんだよ」

「なんだろな」


 父ちゃんがテレビつけた。

 なんかしょうもねー番組見るんだろーなと思ったら、ゲーム始めやがった。

 いっつもやってるロボットのやつだ。


「父ちゃん、ロボ好きだよな」

「ん? ああ」

「姉ちゃんもたしか好きだったよな、これ」

「ん? おう」父ちゃんなんか装備いじってる。「ロボはいいぞ」

「ロボはいいけどさ。難しすぎんだよ、これ」

「慣れだよ」

「慣れんのが難しすぎんだよ」

「そーかなー」

「そーだよ」


 姉貴もこれある程度やれんだよな。あいつ絶対中身男だよ。小学生ぐらいの。


 しばらく父ちゃんが暴れるのをボケーッと見る。

 3Dで派手なエフェクトがガンガン出るから、映画の戦闘シーン見てるみたいな感じになる。

 見てる分にはいいよな。3D。速すぎて何が何やらわかんねーけど。


「ロボ造りてぇー」プレイしながら父ちゃん。

「は?」

「ガンダムとか造ってみたくね?」

「はぁ・・・」


 なんでロボット造る話になんのかわかんねーけど。

 造ってみたくね? って言われたら、


「・・・まーね。造ってみてーよね」

「だろ? かんたもプラモ好きだったよな」

「子供ンときね」

「中学だっけな。やめたの」

「部活やってっと時間ねーかんなー。日曜も練習とか大会あったりするし」

「まあ・・・そーだな。父ちゃんも部活、むかし・・・あっ」

「死んでらw」


 父ちゃんのロボの足元で爆発。ガクッてなった直後、弾ブチ込まれて爆発。


「くそ。地雷踏んだわ」

「速すぎてわかんね」

「なんつーか・・・あれだろ。なんかひとつ、しっかりやっとけってことじゃね?」

「え?」

「渚沙だよ。渚沙がおまえに言いたいこと」

「ああ。なんかってなに? 勉強とか?」

「いやー、勉強なんか、予習復習だけやっときゃー・・・」


 父ちゃん、またロボいじり始めた。

 足外してホバーにしてんのかな? 地雷にイラッと来たんだろーねw


「・・・目標だよ。勉強よりさー」

「目標」

「なんつーの? 『俺ァ、これ絶対ェやってみせんぞ』っつー」

「はぁ。人生の目標?」

「そこまでじゃねーやつ」

「どこまでのやつだよ」

「2・3年ぐらいかかるやつだな。その程度のしんどさのやつ。何年何月何日から始めましたって、記録してさ」

「はぁ」

「したらよー、できても、できねーでも、成長すっからよ」

「すんの」

「する」父ちゃん出撃。「自分の中で勝ち負けつくじゃん?」

「つくの」

「つく。2年もやったのにダメだった! なんでだよ! みたいにさ」

 父ちゃん戦闘開始。「あ、くそ。止まっ」ビルの角からうっかり飛び出して被弾。ホバー壊れた。落下。地雷ドーン。

「くっそー! なんでだよ」

「南無ー」

「ちくしょー」

「ってかさー、姉ちゃんはさー」

「・・・なんだよ」

「いや、自分がちゃんとしろよって。酒なんか呑んで、俺に絡んで来ねーでさー」

「ふふんw だよなー・・・」


 父ちゃん、またロボいじり。たぶん軽量化してんな。『重いから止まれねーんだ』ってとこだろーな。


「・・・父ちゃんのビール呑みやがってよー」

「まだ根に持ってんのかよ」

「だっておめー、あれ、わざわざ冷蔵庫の奥のやつをよー・・・。

 渚沙ァ・・・俺の好きな銘柄、ちゃんと知ってるクセによー・・・」

「あー。そりゃ姉ちゃんが悪ィわ」

「だろ?」

「かんたあんたー。ごはんごはーん!」

 母ちゃんがお呼びです。

「へーい」


 晩飯。

 骨つき鶏モモの、でっかいの。皮パリパリに焼いたやつ。リボンつき。

「豪華だね」

「誕生日でしょ」と母ちゃん。

「昨日だけどね」

「うっさい。ほら座った座った」

 昨日もケーキ出たんだけど。

 まあいいけどね。鶏肉大好きだし。

「頂きまーす」

「マテ!」

「あ?」

「プレゼントあるから、」母ちゃんジロッとリビングを見る。「ちょっと!」

「すぐ行く」

「すぐ行くっつってなんでそっちいんのよ!」

「いまセーブしてんだよ・・・」

 父ちゃんブツブツ言いながら立ち上がる。子供かよ。

「すまんすまん。お待たせ」

 で、父ちゃんの席にかけてあった大きな袋から、箱を出す。


 箱。リボンつき。見るからにプレゼントである。


「なにこれ?」

「母ちゃんと2人で選んだんだよ。先週な。渚沙来た日な。出かけてたろ」

「あー」

 父ちゃんたちデートしてた日ね。

「開けてみな」これは母ちゃん。

「うん」


 開けてみた。


 化粧箱の中に、焦げ茶色の革の・・・財布かな? が2つ入ってる。

 あ、財布とスマホケース!

 それと、缶とスポンジ。ミンクオイル? とか、そんな名前が書いてある。


「なにこのスポンジ」

「手入れ用具だよ」

「本革なの? これ」

「そうよ」

「おおー!」本物持つのは初めてだわ。「ありがとー」

「自分で手入れすんのよ」

「うん」

「うむ」父ちゃん満足げ。んで振り向いて、また袋に手突っ込む。「あとな、もひとつあんだよ」

「マジで」

「おう。これ追加しようと思ってさ、1日遅れちまったんだよ。悪ィーね。はい」


 もひとつプレゼント。

 やっぱ箱。リボンつき。

 受け取ったとき、中でガタッって音がした。


 開けてみた。


┌────────────

│ 四輪ロボット 工作キット

│ Programmable Robot Vehicle

│ 

│ プログラムで

│ 自分だけのロボットカーを造ろう!

│   6=.◎=θ センサー付き

│  // //

│ 6⊂∂⊃Θ

│   し~~~≡ ケーブル付属

│ 

│ ※このロボットは有線です。

└──────────


「なんだこれ!」

「父ちゃんがねぇ? 急に『ロボット買うわ』とか言い出してねー?」

「お、おう」父ちゃん、ちょいビビりつつ。「いや、風花ちゃんにいいかと思ってよ」

「フーカに?」

「これさー、パソコンに繋げれんだよ。

 自分でプログラムしてさ? 動作制御できるらしーんだわ」

「へえ・・・」


 俺プログラムできねーんだけど。

 俺はね。


「・・・フーカにプログラムさせてみろってこと?」

「いや、おまえへのプレゼントなんだけどね?」

 父ちゃんニヤニヤしとる。

「いやー、実はさ? 父ちゃんも買おうかと思ってな。調べたんだよ。TAIシリーズ」

「あー、うん」

「そしたらさ、家庭用の──つまり、おめーんとこの風花ちゃんな? あの子もプログラム能力あるってわかってよ」

「あー・・・できそうだね、うん」

「したらよー、こーゆーロボットあったら、風花ちゃんも歩き回れんじゃねーか? って思ってよ」

「!」


 父ちゃん!


「なるほど! ありがと!」

「おう」

「はい。じゃ、汚れっちゃうから、プレゼントこっち置いときな」

「へーい。母ちゃんもありがと」

「はいはい」

「頂きまーす!」


 食事。

 うまかった!

 2階へ。


「・・・あー、食った食った。フーカさーん?」

<はいな>

「あ、スリープしてなかったんだ」

<うん起きてた>

「そっか。あのさ。ちょっとさ。父ちゃんが面白いもんくれたんだけど!」

<なになに?>

「ちょっと待っててね。いまカメラ繋ぐから」

<はーい>


 スマホ接続。動画モードにして、プレゼント見せる。


<・・・なにこれ!>

「四輪ロボット工作キット! だそーです」

<ふむふむ・・・? パソコンから繋げるの?>

「らしーよ」

 箱の表、側面、裏、と順番にスマホで映して、風花に見せてやる。

「プログラムで動かしたりできるんだって」

<ふむふむ!>

「フーカって、プログラムできる?」

<初歩的なものなら、はい、できますよ>

「じゃあさ、これプログラムしてみねー?」

<・・・私に触らせてくれるの?>

「うん」

 箱置いて。

 スマホもスタンドに置いて。

 苦手なんだけど、ちゃんとスマホのほう向いて。

「うまく行ったらさー。これ、フーカのボディにしねー?」

<!>

「父ちゃんが思いついたんだよ。『フーカちゃんこれで歩き回れるだろ』ってさ」

<・・・ありがとうございます!>

「はいはい!」

<お父さんにも>

「はいはい。はいはい。ちょっと呼んでくるね。たぶん喜ぶし」

<はい!>


 ┌────────────

 │┏━━━━━━━━━━━

 │┃ 幹太さん

 │┃  誕生日おめでとう!

 │┃ ☆。.\ヽ16歳 //。☆.

 │┃ .。+.ヽ(・∇・)ノ。+

 │┗━━━━━━━━━━━

 └────────────

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