ゴブリンシールズ、レイスをふうじる

65、ゴブ太郎、はっけんす


┏━━━━━━━━━━

┃ RULED SPIRITS

┃ □■W■■□□□X

┃ X■.@■XX□X

┃ X■..■XX□X

┃ > Continue

┃  Create World

┗━━━━━━━━━━


 土曜日、午後3時。

 俺とTAIさん、大軍勢ローグライクをプレイ中。


<カンタ司令! 何を持ち帰ります?>

「そーだね。とりあえず、お金が儲かる感じでお願いします。フーカ隊長!」

<了解!>


 ちょこまか。

 画面の中で、@が動き回る。

 人間キャラは全部@なんだよな、このゲーム。見分けがつかねー。


<金貨は当然として、スタックできるものを優先・・・鎧は後回しになるけど、いい?>

「うん、いいよ!」


 アイテムを拾い集める風花さん。

 路上に散らばるアイテムのところへ移動して・・・

 『拾う』、『金貨 x32』、『背負い袋に入れる』、『拾う』、『ライ麦のパン x1』、『背負い袋に入れる』・・・。


「・・・あいつ出て来ねーね?」

<レイスね。表には出て来ないのかな>

 

 ここは、亡霊の都。

 魔王に滅ぼされた、ハイエルフの王都である。

 路上にゾンビ。家に入れば、壁からレイス(亡霊)。オーガの戦士すら逃げ出す魔境なのだ!


「@オーガ太郎、逃げなくても良かったんじゃね?」

<@OgrTaroは経験点持ってるから、生きなきゃダメ>

「あ、はい」


 現状はこうである。


 @OgrTaro。オーガ太郎ね。前回無双したやつ。レイスの魔法喰らって瀕死。街の外まで逃げて待機してる。

 @FuGrKo。フガ子。オーガ♀。オーガ太郎と一緒に待機中。画面外の見えないとこにいる。


 @GobTaro。ゴブ太郎。ゴブリン♂。画面の中をウロチョロしてる。何してんの?

 @Happy。ハッピー。ハーフエルフ♀。ゴブ太をフォロー中。こいつは『知覚』で警戒担当だと思う。

 @148ro~@157ro。ヒューマンの男ども。アイテムを拾ってるのはこいつら。


 前回、@オーガ太郎がやられかけたんで、全員引き返そうかと思ったんだけど。

 風花が作戦の修正を提案してきたんだよね。


<@OgrTaroは経験点持ってますからね。逃げないとダメですが。それ以外はどうでもよくない?>

「死んでも?」

<死んでも>

「まあね」


 このゲーム、キャラ作成制限ない(っぽい)からね。

 作ったばっかの新兵なら、また作ればいいだけの話。・・・なんだけどね。


「それはそーなんだけど」

<なんか引っ掛かる?>

「うーん・・・なんかありそうな気がすんだよなー」

<ペナルティが?>

「そう。だってほら、魅了も強かったけどさ、罠あったじゃん。エロ領主」

<あー>

「お得だからって続けてると、どっかで落とし穴はまりそうな気がすんだよなー」

<そうかなぁ>

「ちょいネタバレなんだけどね、」

<はい>

「浦部は、少数精鋭でさっさとここまで来たっぽいんだよね。

 ──あ、浦部は攻略読んでプレイするタイプね」

<ハイエルフの王都まで?>

「うん。はっきり聞いたわけじゃねーけど。『船にはさっさと乗った』みたいなこと言ってたから。

 ってことはさー、逆に言えば、なんかあるってことじゃねーかなって」

<効率を考えたら、死なせないほうがいいと?>

「たぶんね」

<なるほど。・・・この都、滅びる前に乗り込めるんですかね?>

「わかんねー。そこまでは聞かなかった」

<そっか>

 ちゃかちゃか。アイテム拾う作業しながらスムーズな受け答えしてくれる風花さん。

<見てみたかったなー>

「んだね。栄えてるとこも見てみたかったよね」

<うん>

「まー、クリアして・・・それか、行き詰まったらね。攻略見てもいいんだけど」

<カンタさんの遊び方でいいよ>

「フーカはどんな風にプレイしたいの?」

<だから、カンタさんのやり方で>

「いやだからさ」

<いやだって、私は私のやり方に興味ないんだもん>

「む」


 出たよTAIさん。『自分で何かしたいとは思わない』のカード。

 これたぶん本音は『私には好みのプレイスタイルなんてない』だよね。

 ・・・まあ、無理にほじくり返してもしょうがないか。良くねーと思うんだけど、だからこそね。


「んじゃー、クリアするまでは俺のやり方で。クリアしたら、フーカのやり方を訊きます」

<私にやらせたらつまんないって!>

「いいよ。つまんねかったら、横から口出すしw」

<見ててくれるの?>

「見るっつーか、一緒にやる」

<ならいいよw>


 こいつめ。


 ・・・話がそれたけど。

 ま、風花に作戦任せたら、こうなったわけだ。

 @オーガ太郎は経験点稼いだから温存。危ないことはさせない。

 @ゴブ太郎たちは新兵なんで、危ないことはこいつらにやらせよう──ってね。

 なんか冷たい感じするけど。でも、これが発見に繋がったんだよね。


<あ、そうか>

「どったの?」

<いや、盾をね。両手に装備すればいいんだなって>

「両手に装備?」

<盾はねー、そこそこ値段するんだけど、重たいし、スタックしないんだよ>

「かさばるわけだね」

<そうそう。役に立つし、持って帰りたいんだけど、邪魔っていう。

 それで悩んでたんだけど、装備すれば1人で2張り持ち帰れるなーって>

「・・・左右の手に盾装備するってこと?」

<そう>


 ウロチョロしてた@ゴブ太郎。盾を拾って装備。もう一枚拾って装備。

 ・・・これ、小っちゃいゴブリンの男が、両手に盾持って構えてんだよな。

 それをメッチャクチャ可愛いハーフエルフの女が見守ってると。


「おもしれーw」

<面白い?>

「光景想像したら笑っちった」

 俺が笑ってると。

<あ、レイス>

 家の中に、Wが現れた・・・!


 Highelf Magus Wraith は唱えた: 『マナボール!』

  ガキーン! @GobTaroはシールドで受けた。

  @GobTaroに5ダメージ。@GobTaroの速度が2低下。


 ・・・あ、この戦闘の経過は風花さんの翻訳ね。日本語に変換して読み上げてくれてる。

 『ガキーン!』とかいうのは風花のアドリブかなw 英語の文章には見当たらないんだよなー。


「シールドで受けたっつった?」

<うん>

「受けれるんかい」

<みたいだね。これは発見ですよ>


 @GobTaroはシールドをかまえた:

 @Happyはバックラーで殴った: Highelf Magus Wraithに5ダメージ。

 Highelf Magus Wraith は唱えた: 『マナボール!』

  ガキーン! @GobTaroはシールドで受けた。


「2発目だと!?」

<1発目よりダメージが下がってるね。ノーダメになったよ>


 @GobTaroはシールドをかまえた:

 @Happyはバックラーで殴った: はずれ。

 Highelf Magus Wraithは触った: ライフドレイン。

  ヒョイ。@GobTaroは回避した。


「ここでドレインですか」

<明らかにマナボールのほうが痛いのにね。なんで撃たないんだろう?>


 意外な展開になった。

 役に立たんと思われた2人が・・・

 @オガ太さんでも苦戦したレイスを・・・


 @GobTaroはバックラーで殴った: Highelf Magus Wraithに5ダメージ。

 @Happyはバックラーで殴った: Highelf Magus Wraithに5ダメージ。

 Highelf Magus Wraithは触った: ライフドレイン。

  ヒョイ。@GobTaroは回避した。

 @GobTaroはバックラーで殴った: Highelf Magus Wraithに5ダメージ。

 @Happyはバックラーで殴った: Highelf Magus Wraithに5ダメージ。Highelf Magus Wraithは死んだ。


「倒しよったw」


 ・・・なんと、盾パンチだけで殴り殺してしまいよった!


<殴り勝ちましたねえ>

「いやー、よくやったわ! ってか、この2人見捨てる気なのかと思ったよ」

<見捨てる気でした>

「あ、やっぱり」

 誰も助けに行かなかったもんね・・・。

<金星(きんぼし)ですね。思わぬ発見もしてくれた>

「うむ! レイスは倒せるね!」


 と、戦果を上げたところで。

 アイテム回収はいったん切り上げて、港町まで戻ることにした。

 @ゴブ太郎、ダメージ喰らってるしね。


「ところでさー、フーカさん」

<なんです、カンタさん?>

「戦闘の翻訳って、アドリブしてる?」

<してる>

「やっぱりw」


 戦闘の翻訳ってのは『ガキーン! @GobTaroはシールドで受けた。』ってやつね。

 あれ、風花さんが翻訳してくれてんだ。日本語にして読み上げてくれてんの。

 エロ領主の館あたりからかな。やってくれるようになったの。


「だよなー! 『ガキーン!』とか、元の文章にねーよなーって思ってたんだ」

<うんw やめよっか?>

「いやいや! すっげー助かってっから。今後ともよろしく!」

<はーい>

「あとさ、@ゴブ太だけど」

<はいな>

「何してたの? レイス出る前。ウロチョロしてたけど」

<ウロチョロしてただけ>

「あ、やっぱそうなんだ」

<そう。レイスが出たとき、真っ先にやられる役>

「釣り餌かい」

<@オーガ太郎は死なせちゃダメでしょ? 回収班はアイテム持ってるでしょ?

 じゃあ、@ゴブ太と@ハッピーだなって。2人とも筋力低いし、新兵だし>

「そっか。・・・ま、これで2人も経験点入ったし、新兵卒業だね?」

<はい。これからは可愛がっていきますよ>


 新兵は可愛がらないんだ? 鬼軍曹フーカw


66、月の司祭、海の司祭


<司令官!>

「なにかねフーカ隊長」

<王都探索のため、亡霊退治のできる部隊の編成を提案します>

「うむ! そうですね!」

<で、その前になんですけどもね>

「はいな」

<月の司祭、海の司祭も、試しに作ってみていい?>

「・・・そんなのあったっけ?」

<うん。『伝承』『神殿:月』『神殿:海』。以上、まだ試しておりません>

「知らねー。いつ入ったの?」

<入り江の港町だね>

「あー・・・あそこ入ってから一気に進んだもんね」

<そう。こっちの港でも取れるから、ここでも試せるよ>

「じゃあこっちで試しましょう!」

<はいな>

「んでなんだっけ。『伝承』?」

<あ、それはね、@フガ子に経験点入ったら取らせるつもり。吟遊詩人の知識を表わすスキルだって>

「へー。ま、戦闘に関係ないなら後回しだね」

<そういうこと。なので、次行きます。『神殿:月』ね>


 月の祝詞(あと3つ選べます):

  祝福:剣、水の鏡、眠り、海をなだめる、リサイクル


「リサイクル?」

<ヘルプ見まーす>

「はいな」

<あ、これ蘇生だ>

「ええ!?」


『死んだ@を蘇らせます。──急いで! ゾンビになったら手遅れですよ!』


「蘇生あったんかい!」

<あったねー>

「@Pizza助かってたじゃん!」

<無理だねー>

「だねw あの状況じゃ」


 あの船に司祭乗ってても意味ねーわ。ってか乗ってたし。太陽の司祭いたし。@Sunny。ブレスで即死したわ。


「そっかー・・・ゾンビになったら手遅れ・・・そういうことか」

<はい?>

「いやー、ちょっと思ってたんだよ。なんでゾンビなの? って」

<どういうこと?>

「だってさ、このゲーム、ホラーものじゃねーじゃん」

<ジャンルがちがうって感じ?>

「そう。なんでゾンビゴリ押しすんのかなーって」

<弱いしねw>

「そーなんだよw けど『蘇生のタイムリミットですよ』って言われたらね?

 @は蘇生できる。Zはダメ。──なるほどスッキリ!」

<なるほど!>

「浜之松幹太、納得しました!」

<風花、納得しました!>

「──ってか、強ぇじゃん月の司祭! 蘇生って! もっと作ってもよくね?」

<けどこれ、メッチャクチャMp食うんですよ>

「そっか」

 蘇生だもんな。安くはないか。

「しかし・・・なんだ。リサイクルっつーと、ゴミの再利用ってイメージ・・・」

<まあねw 『再循環』って感じかな>

「『海をなだめる』は?」

<わかんない>

「わかんねーの?」

<ヘルプは『海をなだめます』>

「そのまんまじゃねーか!」

<太陽の『鳥をなだめる』もそう。『鳥をなだめます』>

「なんだその舐めた説明w ネタ呪文かな?」


 月の司祭、@Moony。ハーフエルフ♀。

 祝詞は、蘇生の『リサイクル』と、『祝福:剣』『水の鏡』にしました。


「ムーニー?」

<うん。ムーニー>

「オムツじゃん!」

<『月の』って意味だよw>

「そっか。まあいいや、次! 海の司祭ね」

<はいな>


 海の祝詞(あと3つ選べます):

  祝福:三叉槍、素潜り、泡の冠、さかなをなだめる、子宝


「ん?」聞いたことある単語が。「泡の冠って・・・」

<@Pizzaが監禁された・・・>

「あー! エロ領主の館の名前!」

<そうそう>

「あいつ海の神の信者だったのかぁー。そう言や『海神の護符』とか持ってたわー」

<祝詞の『泡の冠』は、精神保護の効果。完全耐性:支配、抵抗:火、精神攻撃>

「これは大事っぽい。取っときましょー!」

<はいな>

「あとは・・・三叉槍はいらねーな。それ以外のは?」

<『素潜り』は、潜水時間を1時間伸ばす。水泳ボーナス>

「強ぇ!」

<『さかなをなだめる』は、『さかなをなだめます』>

「またコレ!」

<『子宝』は、集落の人口を増やす>

「・・・え?」

<私もわかんないけど。領主やるときに役に立つんじゃない?>

「あー、人口増えれば税金が増えるみたいな」

<たぶん>

「なるほど。イラネ」

<いらないよねw>

「『素潜り』と『さかな』にしとこっか。ネタ呪文っぽいけど」

<相性は良さそうだもんね>


 海の司祭、@Umino。ハーフエルフ♀。

 祝詞は『泡の冠』、『素潜り』、『さかなをなだめる』。


「名前は、うみの?」

<そう。海乃。@海男の妹って設定>

「出身地ちがうじゃん! でもいいねw 兄を探しに・・・あれ? 兄ちゃん生きてたっけ」

<死んだ。『泡の冠』館攻略戦で>


 海の神の司祭、@海乃。

 兄を探して旅立つ彼女は、やがて知ることになる──

 同じ海の神を信じる@領主トリオニウスが兄の死を引き起こしたという、残酷な現実を・・・


<ドラマチックでしょ?>

「海乃ちゃんカワイソー」


 ともあれ。

 海の神の司祭@海乃、誕生である!


<この娘は難破船探索ですかね>

「だね。@フガ子も水泳取ってたんだっけ?」

<うん>

「なら噛み合いそうだね! おっけーおっけー。

 残りのメンバーも決めちゃおっか。フーカ、編成のアイディアあるんでしょ?」

<うん、ある>

「聞こうじゃないか」

<はい。私が考えた亡霊退治チームは! その名も──>

「その名も?}

<ゴブリンシールズ!>


67、ゴブリンシールズ、けっせい


「ゴブリン・・・シールズ?」


 なんじゃその名前は。


<ゴブリンシールズは、ゴブリン、オーガ、太陽の司祭の3列からなる、戦闘チームです!>

「ふむ?」

<後列は、司祭。回復を担当します。太陽2人、月1人としましょう。

 中列は、オーガ。ダメージの大きい両手剣や槍を持って、レイスを叩きます>

「オーガが中列?」

<中列です>

「前列は?」

<ゴブリン>

「なんと」

<ゴブリンには、盾を両手に持たせ、レイスのマナボールを受けさせます。

 実はこのゲームには、攻撃を捨てて『盾を構える』選択がありまして、>

「あったんだ」

<あったんです! ふだんは無意味なので、やってませんでした!

 『盾を構え』れば、盾受け・武器受け・回避と、3回の防御判定が得られるのです。攻撃はできませんが!

 これをゴブリンシールズ戦術と名付けます! チームの名の由来であります!>

「ははあ」

<・・・ダメ?>

「いや、特殊部隊みてーな名前だなーと思ってね?」

<ああ>

「カッコいい名前なのに、盾2枚持ったゴブリンなんでしょ? おもしれーってw」

<・・・私は真面目に考えたんだけど>

「!」


 ──あ、これ、笑っちゃダメな気がすっぞ。


「うん、いや、真面目に答えっと、いい作戦だと思います!」

<作っていい?>

「もちろん!」


 キャラ作成画面へ。


<太陽の司祭を2人作るわけですが>

「うむ」

<なに取りますかね? 治癒は確定として・・・>


 太陽の祝詞(あと3つ選べます):

  治癒、マナ招集、盲目、祝福:剣、鳥をなだめる、亡者を消す


「@Sunnyはどれ取ったんだっけ?」

<えっと・・・スリープしたから忘れちゃったw>


 風花さん、キャラ一覧を開く。

 @Sunny。ドラゴンのせいで鬼籍に入った彼女だけど、データは見れるみたいだね。


<治癒、マナ招集、祝福:剣、亡者を消す・・・の4つだね>

「ん? 4つ?」

<あ、うん。@サニーは初期のポイントを全部『神殿:太陽』に突っ込んだの。

 けど、それだとMpが厳しかった。だから、今回は『お祈り』にポイント回したんだ>

「そっか。『お祈り』ってのは?」

<司祭のMpスキルだね>

「なるほどね。おっけーおっけー。使ったことあんのは『治癒』だけだっけ?」

<うん>

「『亡者を消す』は試してみたいよね」

<だね。Mp消費が大きいんだけど>

「『マナ招集』は?」

<誰でも使えるマナを呼び集める>

「なんのこっちゃ」

<私もわかんない。Mpを支援するんだと思うけど>

「なら、それも取るか。・・・これで終わりじゃん」

<2人いるから、分担させてもいいんじゃないかな>

「あ、そっか。んじゃー『盲目』はどう? 1人は『死者を消す』。も1人が『盲目』」

<らじゃー!>


 太陽の司祭。

 @Sunday。ハーフエルフ♀。祝詞は『治癒』『マナ招集』『亡者を消す』。

 @Daily。ハーフエルフ♀。祝詞は『治癒』『マナ招集』『盲目』。


「サンデーとデイリーねw」

<カンタさん方式だからね?>

「はいはい」

<ゴブリンシールズ、誕生です!>


 ゴブリンシールズ

  前列 ・・・@GobTaro、@GobJiro、@Gob3ro。ゴブリン♂。両手に盾。

  中列 ・・・@OgrTaro、@OgrJiro、@Ogr3ro。オーガ♂。武器はパイク、グレートソード、グレートソード。

  後列 ・・・@Sunday、@Daily、@Moony。ハーフエルフ♀司祭。左手に盾、右手には石(投石用)。


「ぱちぱち」拍手しとく。「・・・司祭、投石するの?」

<1ダメージ入るだけで結果が変わることもあります>

「たしかに!」

<回収班の@148ro以下10人はこっちにつけますね。経験点吸わない程度についていきます>

「うん。@フガ子のほうは?」

<万が一のために、ゴブリン2人付けときましょうか>

「そうだね。こっちは『クラッシャー捜索班』とでも呼ぶか」


 クラッシャー捜索班

  @FuGrKo。オーガ♀。水泳と遠洋航海ができる。つまり船長候補。

  @Happy。ハーフエルフ♀。魅了と知覚ができるカリスマガール。

  @Umino。ハーフエルフ♀。海の司祭だね。さっき作った子。素潜り女神。

  @Gob4ro、@Gob5ro。ゴブリン♂。護衛 兼 荷物持ち 兼 いざというときの捨て駒。


<ショートソード、盾、レザーアーマーで統一しておきます>

「ハイエルフの王都で回収したやつね?」

<そう。陸路の予想はつかないので、無難な装備で>

「集落なかったもんなー」


 『鬼の港町』から北、海岸沿いの様子はわかってんだ。『何にもない』って。

 @Pizzaが船で通ったルートだからね。


<でも、崖の上はわかんないよ>

「まーそうだね」

 視線が通ってないとこは見えないゲームだからね。

<@フガ子、@海乃、@ゴブ四郎・五郎は水泳取ったし、@ハッピーは経験点あるから、いざとなったらその場で覚えれる>

「水陸両用班だね! 少数精鋭だ」

<あんまり大勢で行くと、ドラゴンが反応するかも知れないしね>

「・・・あー、そっか! それあるわ!」

<どうしたの?>

「これも浦部情報なんだけどね。『ブルートボアは人数多いと出てくる』って」

<あ、やっぱりあるんだ、人数条件>

「知ってたの?」

<いや知ってはないけど。

 あばれイノシシ、序盤のボスとしては強すぎるでしょ? 条件あるんじゃないかとは思ってた>

「かしこいね」

<いえいえ>

「そっか・・・」


 人数多いと、あばれイノシシが出る。

 少ないと、鹿とか鳥とか・・・


「・・・あれ? 意外と親切な設定だね」

<なにが?>

「人数少なければ出て来ないってことでしょ? あばれイノシシ」

<たぶん>

「人数多いと出て来るけど、倒せば肉になるわけじゃん?」

<なるほど>

「クソゲーとか叫んでごめんなさい」

<あははw>

「ドラゴンはクソゲーだったけどな!」

<叩いてみないとわかんないよ>

「無理だよ!」

<オーガで囲んで叩けば倒せるかも知んないよ>

「・・・その発想はなかったわ」

<司祭もいるし>

「使えそうな呪文もあるしね。──あれ? 勝てそう?」

<でしょ?>

 風花さん、なにやら得意気である。

<私が@オガ太郎死なせたくなかった理由、わかった?>

「はい! わかりました! @オガ太君は大事に育てましょう!」


 ・・・などと、先々の話もしながら。


 編成完了!

 ゴブリンシールズとクラッシャー捜索班は、出撃したのであった!


68、ゴブリンシールズ、レイスをふうじる


「レイス出た!」

<おっけー、経験点にしてやりますよ!>


 ところは再びハイエルフの王都。亡霊の都である!

 大通りから、石造りのマンション(推定4階建て)に突入したゴブリンシールズ。

 早速、レイスの出迎えを受けた。

 敵は──ハイエルフのレイス2体、ゾンビ7体!

 いきなりの激戦かと思われたが・・・?


<壁さえあれば!>


 風花さん、壁を曲がって後退。

 壁を抜けてくるレイスだけを、突出させた!


 レイスのマナボール。@ゴブ太郎、瀕死の大ダメージ。即座に@サンデー・@デイリーの治癒が飛ぶ。

 2ラウンド目、マナボールは1発だけ。

 3ラウンド目、マナボール、なし!

 風花は@オガ太郎たちを前進させる。

 スマッシュ! レイス1を@オガ太郎・次郎が、レイス2は@オガ三郎・ゴブリンシールズが倒した!

 4ラウンド目、ゾンビが追いついて来るが・・・

 

<ゾンビなど、恐るるに足らず!(おそるるにたらず!)>


 狭い通路を利用して、ゾンビを2体ずつ引き出して倒す。

 たとえゾンビでも、3体から集中攻撃されると危ないからね。


 ──風花さん、見事、ゾンビを完封である!


 飛んでゆく7つの光を眺めながら、@ゴブ太郎の傷を回復する。


<しかしMpが尽きてしまった>

「もう? 一戦しかしてないのに」

<Mpがすごく厳しいんですよ、このゲーム>

「へー・・・」なるほどね。呪文は強いけど、弾数が厳しいと。「・・・レイスもそうなのかな?」

<え?>

「いや、ほら。レイス、攻撃パターン切り替わるじゃん。あれってMp切れかなって」

<・・・あ、そうか。そうかもね>

「Mp回復ポーションとか欲しいところだよねw」

<ですねぇ>

 と、会話したのがきっかけで。

<あ! もしかして・・・>


 太陽の司祭@サンデー、祝詞を開始。

 『マナ招集』である。

 彼女のいるマスに、半透明の光のようなものが集まってきた。


「ゾンビ死んだとき出るやつじゃん」

<ホントだね>

「ゾンビの魂じゃねーの? これ」

<ちがうと思うw>

「飛んでったりしねーのかな」

<どうだろ? えーと・・・これ・・・どうすんだろ? このまま使えばいいのかな? 『マナ招集』・・・>


 なんか風花さんがテストしてる。

 @サンデーのステータスを確認して、『マナ招集』して、またステータスを見て・・・


<わかった! カンタさん、これだよ!>

「なになに?」

<『マナ招集』! これ貯めてから呪文使えってことだよ!>

「うん?」

<あのね、このゾンビの光みたいなやつ、Mpなんだよ>

「ほう」

<この光に触れた状態で、なんか唱えるでしょ?

 そしたら、本人のMpじゃなくて、この光のほうが消えるわけ>

「・・・Mp消費しなくていいってこと?」

<そう! これ、Mpのプールなんだよ!>


 @サンデーさん、半透明の光の中で『マナ招集』を唱えてる。

 ただの@なんだけど、なーんか嬉しそうに見えてくるから不思議だよね。


「・・・これ、どんどんマナが貯まってんの?」

<そう! 『マナ招集』で使うMpより、集まってくるほうが多いから、少しずつ増えてくの>

「永久機関じゃねーか!」

<だねw>

「じゃあ、戦闘に入る前に『マナ招集』でメッチャクチャMp貯めとけば・・・」

<そうなるね。ただ、動かせるかどうかは・・・あー、ダメだ。動かすのは無理みたい>

「Mpのプールが作れる。けど、作ったプールは動かせないってこと?」

<うん>

「なるほど・・・」


 ってことはだよ?


「・・・敵を釣って来ればいいわけだね?」

<釣り。そうか。こっちが動けないなら──>

「相手を動かす! もしくは──」

<戦士だけで出撃して、ダメージを受けたらマナ招集地点に帰ればいい!>

「そう」

 俺、うなずく。風花には見えてねーのになw


「つまり、これはさ──基地ができたってことだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る