ぼうれいのみやこ

60、カンタとフーカ、うちあわせする


 浜之松(はまのまつ)幹太(かんた)、帰宅しました!

 パソコンスイッチON!

 エアコンスイッチ──今日はいいか。

 ヘッドセット着ける。相変わらず安モンです。

 OS起動。

 TAI マイクロクライアント サービスのアイコン、ポップアップ。


「フーカぁー、ただいまー」

<・・・カンタさーん、おかえりー>


 ハスキーな女の声。

 しゃべるAI、TAIさんの声。

 風花の声。俺にとっては、もう『TAIさん』とかじゃなくて、風花さんの声です。

 やべーなこれ。ハマっちゃうよ。いやもうハマってっけど!

 顔とかそーゆーの、一切出てないんだけどね。いやー、顔なんて見えなくたって!


「ただいまただいま」

<おかえりおかえり>

「はい! 早速だけどね」

<はいな!>

「今日は、交代でプレイしよっかなと思います」

<ほうほう>

「まあアレだよ。今日も宿題出されちゃってさー。だからね」

<なるほど。ではカンタさんは宿題を>

「うん。たぶん30分ぐらいで終わっと思うからさー、そのあいだフーカ進めといてもらっていい?」

<はい。もちろん。──ひとつお願いしてもいいですか?>

「いいよ。なに?」

<カンタさん見せてーw>

「・・・動画?」

<そう。カンタさんカメラ>

「ぬ・・・カンタカメラですか。わ・・・わかりました!」


 スマホ繋いで、動画で自分が映るようにして、モニターに出す。

 俺なんて映すようなもんじゃねーんだけどなー。男見てもなー・・・それも自分じゃなぁ。

 とか、内心ブツブツ言いながら映った俺。顔がニヤケとる。うわー! 気持ち悪ィー!


<わーい。カンタさーん>

「はーい。フーカさーん」もうヤケである。手振ってやった。「あー・・・んじゃ、やろっか!」


 ゲーム起動!


┏━━━━━━━━━━

┃ RULED SPIRITS

┃ ....S....

┃ #..@w@@o.

┃ ##...oO..

┃ > Continue

┃  Create World

┗━━━━━━━━━━


<あ、Tips。『どんな敵にも弱点はあります──ドラゴンであっても』だって>

「へぇ」


 Tipsか。

 毎回、起動するたびに出てんだけどね。

 最近は気にしてなかった。英語だし。毎回『これなんて書いてあんの?』って訊くのもなんだし。

 今日は、何も言わなくても翻訳してくれた。風花さん、自主性を発揮だね!


 で、なんだって? ドラゴンにも弱点はあります?


「そうは言ってもさー・・・」

<攻撃するヒマもなかったよね>

「そーだよ。最初の一撃で全滅したっつーの」

<ブリッツ。まさに電撃的でした>

「ん? 電撃って意味なの?」

<Blitzは、ドイツ語で『稲妻』。第二次大戦後にブリッツクリーグって単語が有名になった・・・そうです>

「なにそれ」

<Blitzkriegは、ドイツ語で『電撃戦』>

「へー。電撃ドラゴンか」

<アイスドラゴンだけどね>

「あれ。あいつの正式名なんだっけ?」

<Ice Dragon “Blitz”>

「氷の竜“稲妻”」

<そうなるねw>

「どっちだよって。ってかさー、あんなんさー、俺ァ、どーしていいかわかんねー」

<はい。私、ひとつ気付いたんですが>

「なになに?」

<最初の攻撃ね。『ブレスを吐いた』ですが、@Pizzaだけダメージだった>

「ん? どういうこと?」

<えっとね。このゲーム、ログ見れるんだけど、ログファイル──>

「ああ、ファイル? 開いていいよ」

<では開きます>

「ってか、このゲームのフォルダーは自由に見ていいよ。許可します」

<了解しました!>


 風花さん、ファイルを開く。


┏gamelog.txt

┃ @Sailor is frozen. @Sailor died.

┃ @Sunny is frozen. @Sunny died.

┃  :

┃ @Pizza receives 72 damage. @Pizza died.


<ね? みんな『凍りついた。死んだ』なのに、@Pizzaだけ『72ダメージ。死んだ』になってる>

「ふむ?」

 なんでだろ。

 なんか違いあったっけ。

「・・・もしかして、装備?」

<そう。たぶんそう。ちょっと検索するね>


 風花さん、検索する。

 テキストエディターの検索機能だね。俺も学校で習った記憶あるわ。全然使ってねーけど。


<あった。@Pizzaに着せたドラゴンメイルに『抵抗:火・冷気』がついてる>

「そっか・・・対策アイテムは出てたわけだ」


 ということは、対策アイテムが出てるのに、それを生かせなかった俺の作戦ミスってわけだね!


「──じゃねーよ!」

<は?>

「作戦レベルの問題じゃねーよコレ。72ダメージって。ヒットポイントの何倍よ>

<8倍>

「でしょ! 抵抗して8倍って! 結局死ぬじゃん!」

<まあそうだけどw>

「・・・まあでも、『凍りついた』って即死ってか、特殊効果っぽいからね。

 そういう、なんつーの? 即死みたいな効果は『抵抗』で防げるってことかもね」

<そうそう。そう思ったんだよ>

「なるほどね。りょーかい。・・・ま、とりあえず、ドラゴンは後回しね」

<向こうから来るかも知んないよ?>

「そん時ァーそん時だよ。港に入った時点では来なかったわけだし」

<まあそうだね>

「縄張りがあるんじゃねーかな? ふつうそうでしょ。ゲームの敵って」

<なるほど。じゃあ、@Pizzaの装備品はしばらくそのまま、海の底に置いとくと?>

「・・・あ、そっか。海の底か」

 船が沈んだからね。

「潜水したら取りに行けんのかな?」

<だと思うよ。ところでカンタさん、宿題は?>


 おーっと風花さん、ここで自主性を発揮だー。


「やります。やらせて頂きます! あ、ドラゴン、調べてみてもいいよ」

<ううん。いい。私もやりかけのことをする>

「やりかけのこと」

<支援体制の確立!>


61、新キャラは、オーガ


 俺、宿題する。

 風花が何するのかは気になるんだけど。チラチラ見ながら。


<宿題ぁーい!>

「うっ。はーいw」


 風花は、@Taroたち──海を渡ってない、元の大陸(?)の側にいるメンバーをいじってるみたい。

 @Spinelの作ったクッキースープ食べながら移動してるのは見た。

 お? 新しい@作ろうとしてるぞ?

 ぴた。風花の操作が止まった。

 マウスカーソルが俺の動画のとこに移動。くるくる・・・。


「やりますやりますw」


 30分ちょいかかって、宿題やった。終わり!

 風花見たら、まだなんか忙しく作業してる。なんで、こっちは明日の高校の準備もしといた。完璧に終わり!


「終わり!」

<はい。じゃあ交代しましょう>

「うん。ってか、操作はフーカにやってもらうんだけどね」

<よろこんで>

「疲れたりはしない?」

<大丈夫。いま毎日スリープしてるから、安定してます>

「スリープね」

 AIも寝たらスッキリするわけだ。なんか面白いね。

<──で、どうします?>

「うん。新キャラ作ってみようと思うんだ」

<新キャラ>

「港町で解放されたっしょ? 種族。ゴブリンとか」

<うん。海の向こうのね>


 鬼の港町。

 @Pizzaたちが、船で発見した集落だね。

 発見してすぐ動いちゃった(そしてドラゴンにやられた)んで、あんま見てねーんだけど。


 キャラ作成モードへ。

 まずはワールドマップでキャラの誕生場所を選ぶ。

 初めはポツーンと1点だけだった集落が、いまや・・・えーと、1、2、3・・・7つに増えてます!

 集落増えると、伸ばせるスキルが増えるんだよね。太陽の司祭とか精霊使いとか。


<スキルは・・・新しいのはないですね>

「ないか」

<うん。入り江の港町と同じみたい。

 で、種族は? オーガの男女、ゴブリン、ハーフエルフと、新種族が4つありますが>

「オーガかな」

<どっち?>

「どっちとは?」

<オーガだけ、男女で種族が分かれてるんですよ>

「へー。何がちがうの?」

<オーガの男は、大型の鬼。強いけど、大食らい。

 オーガの女は、中型の鬼。ヒューマンよりは強いけど、マイルド。らしい>

「じゃあ男! 強いとこを伸ばしちゃって」

<見るからに筋力系のステータス。筋力伸ばしますね>

「うん。どんぐらいあんの?」

<オーガの筋力は、ヒューマンの3倍>

「すげえ!」

<ダメージに期待ですね>

「そりゃいいや」

<何人か作るの?>

「いや、1人でいい。新種族がどの程度なのか、試してみてーなと思ってさ」

<はい>

「死んでもいいから、殴れる奴探して、殴ってみよう!」

<はーいw 名前は?>

「オガ太郎!」


 @OgrTaro。

 最強(当社比)の筋力を誇る、ガチタンク巨人の誕生である!

 ──見た目はただの@だけどね。


「ここはさー、せめて大きな@を期待したよね。3倍ぐらいの」

<そーだねw>

「ま、とりあえず、外に出てみて」

<はいな>


 『鬼の港町』は傾斜の激しい港町だ。ゴミゴミしてる。

 その汚い町を、NPC@を押しのけて、@オガ太郎が歩いてゆく。


「・・・いま1人死ななかった?」

<はね飛ばしたら死んじゃった>

「車かよw」


 友好的な相手なら、体当たりしても攻撃にならないはずなんだけどね。位置がくるっと入れ替わるだけで。

 こいつは敵だったのかな。街の中なんだけど。


<@Street Hooligan──街のチンピラ>

「ならいいか」

<素手で31ダメージ。即死でしたね>

「すげえ」

<ゾンビ化するだろうし、海に捨てときましょう>

「www」


 @オガ太郎、街道をゆく。街を出て、道は森へと入ってゆく。


「町出たら、とりあえず、森! って感じだね。この世界」

<ですねぇ>


 @オガ太郎、ズンズン進んでゆく。

 上り坂らしいけど、見下ろし2Dだからよくわかんねーや。

 シカが出た。逃げた。

 鳥が出た。逃げた。リス出た。逃げた。

 風花、石を拾う。イラッと来てんなコイツw

 シカが出た。風花、石投げる。ハズレ。ダメージわからず。


「・・・なんつーか、戦闘起こるときと起こらないときの差が激しいよね。このゲーム」

<うん。あばれイノシシがなつかしい>

「あいつに勝てるかな?」

<わかんない。@オガ太郎、回避低いからね。3人いれば殴り勝てると思う>

「それもう怪物じゃん」


 @オガ太郎はズンズン進む。

 けど、何も起こんねー。こういうトコがこのゲームはちょっとなー。


「ドラクエみたいにさー、さっさと戦闘起こってほしいよね」

<本来のローグライクはそうなんだけどね>

「そうなの?」

<私もやったことないんだけど、知識によればね。ダンジョン入ったらすぐ戦闘。クリアするまでずっと戦闘>

「へー。あ、ところでさ、他のキャラはどうしてんの?」

<オートトラベルさせてる。入り江の港町にね>

「ほうほう」

<貿易スタートしようとしたんだけどね。船の手配で手こずっちゃって>

「ほう」

<まず、船長には『遠洋航海』スキルが必要でしょ? これを覚えれるのは、『入り江の港町』『鬼の港町』出身者だけ。

 次に、船が必要でしょ? いま私たちが持ってる船は、『入り江の港町』の商業船が1隻だけ>

「──なら、入り江で船長作って船に乗ればいいんじゃないの?」

<ところがどっこい、船に船長を割り当てるには、オーナーが権限設定しないといけないんだよ>

「オーナー」

<Lady Pizza>

「今は亡き@Pizza様か。じゃあ権限いじれないじゃん」

<そうなんだよ。それで、@Spinelを館に入れてみようかなって>

「館に入れたらどうなんの?」

<領主になれるみたい。守備隊長が館に入ったら『領主を引き継ぎますか?』って出たから>

「スピネルちゃんを領主にするってこと?」

<うん。ダメ?>

「ダメじゃないけど、なんで?」

<余ってるから>

「www」


 @オガ太郎、山道をゆく。何も起こんねー。

 俺1人だったら飽きてやめてるわw


「そう言やさ、領主が殺されたら、領地取られるんだっけ?」

<うん。領主を倒して、館に入るとね>

「・・・あいつ来たらえらいことだよね。電撃ドラゴン」

<ブリッツ? あー、そーだね。氷の港町になっちゃうねw>

「大丈夫なの?」

<たぶん>カメラ切り替え。<ほら、守備隊長は健在。NPCの巡回設定もしてあるしね>

「さすがフーカ。手抜かりないね!」

<光栄です!>


 と褒めたところで。なんかメッセージが。


<・・・。>

「どったの?」

<城壁のとこで、@Brigand──山賊を1人撃退したんですが>

「やるじゃん」

<それが、装備からして『@Pizza様の使い』っぽい>

「@Pizzaが魅了したやつ?」

<そう>

「死んだの?」

<死んだ。私が巡回させてたNPC兵士に殺された>

「なんでだよwww」

<城壁に近付いたからじゃないですかね・・・>

「離れたとこに置いてかなかったっけ?」

<置いてった。けど、@Pizzaの死後、操作できなくなってたんですよ>

「あー! そうか。@Pizza死んだから魅了が解けたのか!」

<ヤツには何も持たせてませんでしたからねぇ・・・武器は当然だけど、食料とかも・・・>

「飢え死にするから城壁に近付いたんかね?」

<ですかねぇ・・・>

「南無ー」

<なむー>風花ため息。<海に捨てとこ>


 で。

 @オガ太郎の行く手に、やっとこさ! 変化が!


<道路がコンクリートの舗装道になりました>

「現代っぽいねw」

<おやおや、カンタさん? コンクリートやアスファルトは紀元前からありますよ>

「そうなの」

<うん。まあ、道路に使うとなると大変だろうけどね。量が必要だから>

「経済力があるってことですね!」

<そうだね。期待! ──あ、前方に城壁を発見!>

「おお! 金持ちの集落!?」


 @オガ太郎、無傷のまま新たな集落に入る!


『廃墟を発見:エルフの王都

 この集落は滅亡しています。キャラクターを作成することはできません』


62、オガ太郎、むそうする


<あれ・・・?>

「滅亡してら」


 なんと。@オガ太郎の到達した集落は、滅亡していた・・・。


「これ、前に港で聞いたとこだよね?」

<だね>

 風花さん、ログ検索して、翻訳してくれる。

<『海の向こうには、ハイエルフの王都がある。だが闇の軍勢に攻められ、劣勢だというのだ!』>

「ここのことだよね?」

<High Elf Royal Polis──綴りも同じ。間違いない。ここが『ハイエルフの王都』>

「マジかー。滅亡しちゃったかー」

<情報聞いてから2日ぐらいしか経ってないのにね>

「まあそこはゲームだし」

<えー>

「しかし、参ったね? 助けに来たのにさ」

<うん>

「助けに来た@Pizzaも死んでっし。これもう劣勢じゃねーよ。負け戦だよ。どーすっぺ」

<ホントにw ──あ、ゾンビ>


 都の大通りに、Zが1体。また1体。

 @オガ太郎が、1歩進むたびに。

 白く舗装された大通りに、姿を現わす。


「そっか。滅ぼされたんだから、ゾンビになるわな」

<ですねえ>

「ま、いいや。うん、ちょうどいい。殴ってみて!」


 @オガ太郎。一直線。

 Zに接近し、そのまま体当たり!


 @OgrTaroは攻撃した:

  Highelf Pikeman Zombieに33ダメージ。Highelf Pikeman Zombieはノックバックした。

  Highelf Pikeman ZombieはHighelf Zombieにぶつかった。

  Highelf Pikeman Zombieに6ダメージ。Highelf Pikeman Zombieは死んだ。

  Highelf Zombieに6ダメージ。Highelf Zombieは転倒した。


 攻撃したゾンビは吹っ飛んで、後ろのゾンビにぶつかって、死んだ。

 ぶつかられたほうにもダメージが入った。さらに転倒。


「すげー。まるで、あばれイノシシみてぇ」

<こんな感じでやられましたねーw>

「なつかしいねw しっかし、オーガ強ぇじゃん! 武器持ったらどーなんの!?」

<ゾンビがパイク持ってますね。装備してみましょう>

「ぱいく?」

<歩兵の槍、または鉾(ほこ)>

「へー」

<このゾンビ、Pikemanって名前だったから、生前は槍兵だったんじゃないかな>

「そっか・・・」

 都を守って戦って──負けて、ゾンビになったってことか。

「南無ー」

<なむー>


 祈りつつも、戦ってると。

 いつものエフェクトが始まった。

 灰色になった(=死んだ)Zが消えて、半透明の光みたいなものが現れるやつ。

 光は画面上方へ、吸い込まれるように飛んでゆく。

 ゾンビ倒すたびに毎回出るエフェクト。ホント、何なんだろーね?


 パイクを装備した@オガ太郎。ちなみに鎧はなし。フリチンである。

 廃墟をウロつき、敵を探す。

 したところ、出るわ、出るわ!

 もんのすごい数の、ゾンビが!

 大通りの前方から、左右から──うっじゃうっじゃと現れよった!


<これは大漁ですよ>

「ゾンビゲーらしくなってきたね!」

<ですね! ・・・これゾンビゲーなの?>

「知らねw」

<えーw>

「さあフーカさん、弔い合戦ですよ! ゾンビどもを、眠らせてあげなさい!」

<了解です、カンタ司令!>


 風花さん、ゾンビの群れに突っ込──んだりはせず。

 足元から石拾って、投げた。

 命中。ゾンビ即死。


「強ぇ!」

<投石はヘタクソなんですけどもね。当たれば一発ですね!>


 @オガ太郎、強い!

 遠くのゾンビは石投げて殺し、近くのゾンビはパイク突いて殺す!

 風花の立ち回り、安定! 建物の壁を使い、走り回り、ノーダメージでゾンビを捌く(さばく)!


 1、ゾンビが3人来る。

 2、@オガ太郎、投石で1人殺す。

 3、ゾンビが接近する。

 4、@オガ太郎、パイクで1人殺す。

 5、ゾンビに攻撃される。@オガ太郎、パイクで受けてノーダメ。

 6、次のターン。@オガ太郎、パイクで1人を殺して勝利。


 ──こんな感じである!


<30人突破>

「すげえ! オーガまじ無双!」


 倒したゾンビが、50を越えたところで。

 パタッと、敵が途絶えた。


<なんだ。もう終わりか>

「オーガw」

<なにが?>

「フーカがオーガっぽいなってw」

<ええー!>

「出て来ねくなっちったけど、倒し尽くしたんかね?」

<都の人口としては、少なすぎる気がしますけどね・・・>

「そーだね。けど装備はかなーり取れそう」

<うん。鎧着てる奴もいたからね>

「よし。じゃ、新種族でチーム作って装備回収させよーぜ!」

<わかりました>

「チームは任せるわ。俺、そろそろ晩飯だし」

<どうしましょう。進めときましょうか?>

「フーカに任す!」

<そう? ならスリープして待ってる>

「はいはい。んじゃまた後でね」

<はーい>


63、亡霊あらわる


 風呂入って、晩飯食って。

 母ちゃんに注意されたけど。

「勉強もしなさいよ? 風花ちゃんと遊んでるだけじゃダメよ」

「してる。ってか、フーカが『サボっちゃダメ』って言ってくるから」

「あ、そう・・・」

 って感じでやり過ごした。

 部屋にもどる。


「フーカさーん・・・?」

<・・・はい、カンタさん>

「お待たせ。風呂も入ったし、遊ぼっか」


 回収班の作成である!


「新種族のテストを兼ねて、1人ずつね。オーガの男はもういるからいい」

<はいな>

「今回、命名はフーカに任すわ。やってみて」

<え・・・わかりました。はい>


 @GobTaro。ゴブリンの男。素早い系。隠密が得意。

「@ゴブ太郎ね。素早いんだ?」

<素早いですね。ヒューマンよりちょっと素早い。でも、強いとは言えませんね、これは>


 @FuGrKo。オーガの女。筋力とメンタル系で、水泳・遠洋航海を取った。

「なんて読むのこれ?」

<@フガ子>

「なんだそりゃ?」

<フーカがオーガって言うから!>

「ああ、はいはいw」


 @Happy。ハーフエルフの女。カリスマ系。魅了と知覚が得意。

「ハーフエルフだからハッピーね?」

<言っとくけど、カンタさんの命名に合わせてるんですからね!>

「はいはいw 魅了キャラか。第二の@Pizzaだね」

<うん。斥候もいるかなと思って>


 @148..157ro。筋力系おっさん10人セットである。

「荷物持ち?」

<そーゆーこと。経験点入ったら、水泳伸ばしてサルベージ隊にしてもいいかな?>


 13人の回収班、出発である。


 @オガ太郎は到着を待つ──あいだに、廃墟を探索する。

 ハイエルフの王都は、滅亡したにしては、保存状態がいい。

 建物はほぼ無傷。食料の残ってる家もあった。

 まあ、ゾンビが出てきたりはするんだけど。

 @オガ太郎にとっては、脅威ではないからね!


<食料。ポイ。レザーアーマー。ポイ>

 風花さん、使えそうなものを見つけては、大通りへ投げる。

 投げたほうがターン数節約になるからねw

「壊れたりはしないんかね?」

<何もないマスなら大丈夫。敵に当たると壊れるみたいだけど>

「へー」

<にしても、綺麗に人間だけ全滅してますね・・・>

「そーだね。滅亡って聞いたら、焼け落ちてるイメージだけど」

<そうそう>

「俺はさ、あいつ来なかったのかなーって思った。ほら、電撃君」

<アイスドラゴン“ブリッツ”ね。たしかに>

 凍りついた痕とか、ないもんな。

 あいつなら、都なんか簡単にぶっ壊せそうなのにね。

<なんで来なかったんだろ。それにさ、領主殺したのなら、この領地奪えたはずじゃない?>

「そうだね。それもある」


 とか言ってたら。


<うわ!>

「どったの?」

<壁から、敵が!>


   Highelf Magus Wraith

 ■W■■

 ■.@■

 ■..■

 ■■+■


<Highelf Magus Wraith──『ハイエルフの博士のレイス』!>


64、ぼうれいのみやこ


「殴って」

<殴るの!?>

「そのために来たんだよ。敵のデータ取るためにね」

<なるほど。了解!>


 @OgrTaroは攻撃した: Highelf Magus Wraithに20ダメージ。

 Highelf Magus Wraith は唱えた: 『マナボール!』

  @OgrTaroに23のダメージ。@OgrTaroの速度が11低下。


<ダメージ低い。魔法痛い!>

「まずい?」

<Hpマイナス。次のターンで同じダメージ来たら、死>

「そっか」

<逃げる?>

「壁抜けて来るんでしょ? じゃあ逃げれないっしょ。やっちゃえ」

<でも・・・@オガ太郎、すっごい経験点稼いだのに>

「あー、経験点は惜しいなー・・・」

<だから>

「いや。データ取るのがコイツの任務だかんね」

<わかりました>


 @OgrTaroは攻撃した: カキーン! パイクは壁に当たった。

 Highelf Magus Wraithは触った: ライフドレイン。

  @OgrTaroに2ダメージ。@OgrTaroのお腹が2減った。@OgrTaroの速度が2低下。

  Highelf Magus Wraithの呪文が2回復。

 @OgrTaroは攻撃した: Highelf Magus Wraithに20ダメージ。Highelf Magus Wraithは死んだ。


 @オガ太郎、瀕死の重傷ながら、とにかく勝利である!


<勝った・・・>

「亡霊を突き殺しよったw」

<与えるダメージが小さかったんですけど。鎧は・・・着てないなぁ>


 レイスが消える。

 ゾンビ倒したときの、あの半透明の光は・・・あれ? 出ないね。


「強敵だね!」

<うん。あと、『マナボール』。あれ、魔術の呪文のリストにあったよ>

「魔術も使うのか。レイス」

<レイスの能力じゃないんじゃないかな>

「どういうこと?」

<ハイエルフ・マグス・レイス。マグスは『魔術師』って意味かも知れない>

「魔術師の亡霊ってことか」


 亡霊の都か・・・。


「引き返そっかw」

<はーい>

「どーすっかねこれ? この亡霊の都、どうやって調べたらいーんだろーね?」

<そうだねー、>


 風花さん、軽い口調でこう言った。


<もっとやられてみれば、わかると思います!>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る