アイスドラゴン “ブリッツ”

49、浦部と仲間と


 高校。昼休み。

 飯食いつつ、パソコン部の浦部と仲間としゃべる。

「あのゲームさー、面白いね」

「どのゲームよ」と浦部の仲間。

「浦部に勧めてもらったんだけどさ。ルールド・・・なんだっけ」

「ルールド・スピリッツか」これは浦部。

「なんだそれ?」仲間。

「大軍勢ローグライクでさー。@100人とか作れんの」

「マジで。DFみてーだな」

「でぃーえふ」

「ドワーフ・フォートレス。ドワーフが穴掘って要塞造るやつ。最初7人だけど、最後100人とかになる」

「マジで」

「面白ぇーよ。岩山にさー、好きなように穴掘って、要塞造んの」

「へー」

「仕掛けも凝っててさ。落とし格子とか、はね上げ橋とか造れる。アドベンチャーモードもある」

「面白そうだね」

「いやいや、マニアックだぞアレ」浦部。「RTSみてーなもんだし」

「RTSじゃねーよ。ポーズできるし」

「へー」

「・・けどカンタ、おまえマジで100人も作ったの? 飢え死にしねー?」

「あん、飢え死にしそうになったっけー、イノシシ出て、そいつ食って、しのいだ」

「ブルートボア?」

「あばれイノシシ」

「なんで日本語だよw」

「風花が翻訳してくれたんだよ」

「・・・ああ、TAIさん? フーカって名前にしたんだ」

「おう。おまえどんな名前にしたんだよ」

「HAL」

「春ちゃんか」

「TAIさんって、」仲間。「しゃべるAIだっけ?」

「そうそう」「そうそう。すげーよ」

「AIなんか、株価目当てのフカシばっかじゃん。知性ねーし、サイコっぽいしよ」

「ちげーよ!」「TAIさんはちげーよ!」「買えって」「買えばわかるよ」

「金ねーし」

「払う価値あるって」「あるある。絶対ある」

「へぇー」

「・・・で、ブルートボアだっけ? あれ人数多いと出てくるらしーぜ」浦部。

「そうなの? 知らなかったわ」

「あ、ネタバレした? 悪ぃ」

「あー、そだね。ネタバレはなしで!」

「おう」

「でさー、港着いたんだけど、うちの@が領主魅了しちゃってさー。牢屋ブチ込まれたんだわw」

「マジかよw」

「どうしたらいんだろね?」

「魅了キャラっつった?」

「言った」

「なら、」浦部かしこい顔する。「牢番魅了すりゃいいんじゃね?」


 帰宅。

 パソコンスイッチON!

「フーカー、ただいまー」

<・・・おかえりー、カンタさん>


┏━━━━━━━━━━

┃ RULED SPIRITS

┃ X@XXXXXXX

┃ X.+..@XXX

┃ X.XXXXXXX

┃ > Continue <

┃  Create World

┗━━━━━━━━━━


「学校で浦部たちとしゃべってさー、作戦考えてきたよ」

<@Pizza救出作戦?>

「そう。どんな作戦だと思う?」

<NPCを魅了するとか?>

「お、さっすがー。俺らの第一案と一緒」

<お褒めに預かり・・・第二案もあるんですか?>

「ある。フーカの使ったやつ」

<私?>

「Z作戦」

<あー!>

「魅了とZの挟み打ちで行きます。名付けて、奪還作戦Z!」


50、@奪還作戦Z


「まずさ、水泳できるキャラいたじゃん?」

<いました。海男。あと魅了して連れて来た漁師>

「そいつら海に飛び込ませてさ。領主の館に穴がないか、調べてみよーぜ」


 潜ってみた。画面左が領主の館ね。


 ■+■■■■      ■

 ■~■■■■~~~~~~■

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 ■■■==@======■

 ■■■■■■=@====■


<あった、空間!>

「よっし!」

<・・・けど、はねあげ戸で閉ざされてますね。鍵掛かってる>

「いったん港にもどって。鍵は後でなんとかしよう。水泳キャラ増員!」


 風花に頼んで、水泳キャラを10人作ってもらう。

 水泳は筋力系スキルなんで、能力値は筋力特化。成長すれば戦士になれたかもね。


<@134roから143roまで、10人作成しました>

「134?」

<うん。131は精霊使いのスピネル。132は海男。133は太陽の司祭サニー>

「あ、そっか」

 風花さん、几帳面だね。

「@Pizza隊のメンバーは、タイミング見て正面から攻撃する」

<じゃあ、橋の近くまで移動させときます>


 やがて、そのタイミングがやって来た。

 @Pizzaのところに、兵士が2人、歩いて来たのだ。牢番だね。


<『おとなしくしていれば、悪いようにはしないとの仰せだ』。

 あ、アイテムくれました。『焼き魚と海草のスープ』>

「魅了して! 鍵持ってるほう!」

<鍵?>

「牢屋の鍵!」

<ああ。えーっと、ダメですね。どっちも持ってない>

「じゃあどっちでもいいから魅了」

<両方では?>

「できたらそれでもいいよ」


 できた。

 食事を差し入れた牢番、2人とも@Pizzaにやられる。


<2人とも操作可能になりました。鍵を探します。

 ・・・ここが牢番の部屋かな? 狭いですね>

 小部屋。2x2マスしかねーの。ブラックだなー。

<『鍵束』発見!>

「よし!」

<鍵合いました。@Pizza解放!>

「はね上げ戸もチェックしてみて」

<はい・・・合いました!>


 ガチャ。かぱ。


 ■■■■

 @@Z■

 ■■■■


<ゾンビ!>

 はね上げ戸を開けた途端、Zが出てきた!

 ・・・なんか、水色なんだけど?

<『びしょ濡れゾンビ』>

「どういうことだよw」

<海に沈んでたのでは?>

「さっき潜ったときいなかったじゃんw まあいいけど」

<攻撃しますね>

「待った」

<へ?>

「いーんだよ。ゾンビは。Z作戦だしw

 放っといて上に逃げよう。逃げれるっしょ?」

<たぶん>


 ゾンビの攻撃を受け流しつつ後退。

 @Pizzaも牢から出て、一緒に逃げる!


「よし。んじゃ、潜水班もゴー!」

<らじゃー。海男、魅了された漁師、@134から143ro、潜ります!>

「魔剣は?」

<わかんない。牢の近くにはなかった>

「そりゃそーか」

<@Pizzaのアイテムは『花嫁のドレス』のみ>

「スープはどしたの?」

<もう食べた>

「早ぇー」

<装備ナシは不安ですね>

「ドレスは?」

<防御ゼロ。なのに、回避にペナルティがつく。なので着てません>

「・・・。」


 ハダカじゃん。


<なにか?>

「い、いえ! なんでもございません!」

<・・・あ、ハダカはダメですか?>

「いえ!」

<ハダカのほうがいい?>

「いえいえ!」

 やめて! ハスキーな女声で高校生男子をつつかないで!

「えぇっとォ・・・、魔剣! どこだろね?!」

<地下は廊下、1階は謁見ホールですからね>


 1階はでっかいホールになってんだよね。@Pizzaが面会して捕まったのがここ。

 で、このホールの大きさが、だいたいそのまま館の大きさなんだよ。もちろん壁の厚みはあるけど。

 つまり、1階には他の部屋はないだろう、っつーこと。


「探すなら2階か」

<領主が持ってなければ>

 螺旋階段(らせんかいだん)を駆け登る。

 Zは足が遅いので追いつかれる心配はない。が。

<『脱獄だ!』『止まれ!』──守備兵が道塞いでます>

「ゾンビだー! とか叫んだら混乱しねーかな?」

<えっと・・・あ、これかな。(T)alk > (R)eport about <TARGET>>


 @Soldierは報告した: 「敵襲! びしょ濡れゾンビ、接近中!」


<『ゾンビ!』『脱獄だ!』『影の軍団!』『敵襲?』・・・守備兵混乱してます>

「よし。んじゃー、@Pizza隊も攻撃開始!」

<はいな!>


 港で待機していた@Pizza隊のメンバー。

 太陽の司祭@Sunnyたち、19名。

 リーダー(と魔剣)を奪還すべく、橋を渡って突撃である!


<いったいどこからこんな大軍が!?>

「そんなことも言うんだ!」

<言ってない。私のアドリブw>

「なんだいw でも言いそう。ホントどっから湧いて出たのって」

<でしょ?>


 領主トリオニウスの館、『泡の冠』。

 海上の砦とも言えるその館の、攻略開始である!


51、『泡の冠』館攻略戦


 橋を渡って、海上の『泡の冠』館へ突撃する@Sunnyたち。

 ──しかし!


<あ、これ、はね上げ橋だ>

「え」


 守備兵が、橋の巻き上げを開始した!

 橋の中央に1マスの裂け目が!


<港側の半分は固定橋。館側ははね上げ橋・・・ってことみたい>

「飛べる?」

<1マスなら余裕>


 先頭の5名! @42ro、@78ro、@79ro、@36ro、@37ro、全員ジャンプ!

 次の5名! @39ro、@44ro、@45ro、@46ro、@47ro、同じくジャンプ!

 だがここで、裂け目、2マスに広がる!


 @52roはジャンプした: @52roは転落した。ドボーン! @52roは海に沈んだ。


<・・・3人落ちました>

 5名跳んだが、3名が落ちてしもうた!

「あちゃー!」

<これはもう無理ですね。12人で行くしかない>

「サニーは?」

<ダメ。最後尾に置いてたから>

「あちゃー」

<せっかくのヒーラーなのにね>

「ホントだよ。まあしょうがねー。@Pizzaにちょっと無理させよっか」

<どんな風に?>

「前塞いでる兵士魅了して、仲間うちさせて、上へすり抜ける」


 @Pizza、兵士を魅了!


<魅了に成功。@Pizza、すり抜けました>


 ・・・丸裸で、ドレスを手に持って、だよね。

 エッロ。


<弓兵もいる──けど、撃ってきませんね。@Pizzaは陣営処理の例外なのかも。

 牢番2人はどうしましょう?>

「むふー!」

<はい?>

「あ、はい! えっと、魔剣。じゃなくてえっと。

 あー、魅了した牢番ね? 橋、下ろせないかな?」

<はね上げ橋を元に戻させるわけですね? なるほど。やってみます>


 牢番2人はここで@Pizzaと別れ、はね上げ橋の巻き上げ装置のところへ走る。

 @Pizzaは、魅了で守備兵をスルー、2階へ。


「魅了強すぎね? 一発攻撃したら即死っしょ」

<カンタさんは、裸の美少女が走って来たら斬りつけるの?>

「あー・・・」


 裸の美少女が「たすけてー」とか言いながら走って来て、何もせずに階段上がってくんだもんね。

 そりゃ攻撃はできねーわ・・・

 ってか、ドレスで前隠してても、階段上がってったら、尻とか・・・

 あー・・・アニメで見てみてー・・・


<2階に到達。@Guard。これは種類がちがうみたいですね。装備がいい。

 魅了──通じません。完全耐性:海神の護符。どうしよう?>

「うん」

<カンタさーん>

「うあ!? はい!」


 やべー。考えまとまんなくなってきた。

 囚われの美少女がフルヌードで脱出とか、想像したら・・・やべーよ。

 画面を見よう。画面。@だ。@しかいない。@Pizzaはただの@。

 おっけー。


「ごめんごめん。えっと・・・」

<2階の廊下に護衛が2人。魅了通じません>

「エリート兵ってわけね。魅了が通んないならしゃーない。3階行こう」

<もしかしたら、領主がいるかも知れませんが>

「かも知んねーけど、無理して死んだり捕まったりしてもね?

 それなら、走り回ってマップ埋めてるほうがマシだよ」

<なるほど>

 オートマップ方式だからね。

 @Pizzaがマップ埋めれば、どのキャラでもミニマップで地形確認できるわけだし。

<では3階へ。『待て!』って護衛が言ってます>

「誰が待つかっての」


 ここまでおいでー、お尻ペンペーンだよ。

 ・・・エッロ! この想像はいけませんよ!


<3階も2部屋。守備兵2人。魅了。成功しました。部屋チェックします。

 正門攻撃隊、到達しました・・・あー、この配置はずるい!>

「どしたの?」

<敵5マス、こっち3マス!>


 ■■■__■■■

 ■□Ⅲ_@■■■∠_@@_

 +□□_@___∠_@@@

 +□□_@___∠_@@_

 +□□_@___∠_@@@

 ■□Ⅲ_@■■■∠_@@_

 ■■■__■■■


 画面右から突撃する@Pizza隊メンバー、12名。

 左で待ち構える敵軍の@Soldierども。


「あー、門のとこで狭くなってんのか」

<そう! しかも、相手の背後に高台がある>

「弓来られたらヤバいね」

<さっき館の中に弓兵いたし>

「これは戻ったほうが・・・あ、そっか、もう戻れねーのか」

<はね上げ橋が巻き上げられてますからねぇ>

「・・・しょうがない。突入だ」


 巻き上げられていくはね上げ橋。12人の@軍団員、突入する。

 しかし、門のスペースは3x3の9マスしかなく──


 ■■■__■■■ @ <ドボーン!

 ■□Ⅲ_@■■■+

 +□□_@@@@+

 +□□_@@@@+

 +□□_@@@@+

 ■□Ⅲ_@■■■+

 ■■■__■■■@ <ドボーン!

 

<ああああ!>

「1人死んだか」

<@51roが即死。@47roと@53roは海に転落しました・・・>


 さらに。


<やっぱり弓来た!>

 玄関前の高台に、予想どおり弓が1人。さらにもう1人。


 ■■■__■■■

 ■□Ⅲ_@■■■+

 +@□_@@@@+

 +□□_@@@@+

 +@□_@@@@+

 ■□Ⅲ_@■■■+

 ■■■__■■■


<あー、ダメ。これはダメです>

「これはダメっぽいね。中はどうなってる?」

<潜水班も苦戦中。海男、魅了した漁師、@134roの3人が死亡>

「海男死んだかー。まああいつも裸だったしなー」

 ま、これも計画通りだからね・・・。

<海男、ゾンビ化しました>

「ま、潜水班には悪いけど、全滅してでも兵士引き付けといて」

<はーい>

「@Pizzaは?」

<@Pizzaは、4階へ移動中。3階の宝箱には魅了した守備兵が向かってます。

 ・・・あ、屋上に出ました。4階はなし、@Pizzaは屋上>

「屋上か」

<おおっと? これは・・・ふっふっふw>

「どした?」

<見てくださいよカンタさん。このrを>


 屋上には、待機している兵士。その足元にオブジェクト。

 rの字。


<rock──岩石です>

「?」

<岩石が20個とか置いてあるんですよ!>

「???」

<わかんない? これを拾って・・・>


 @Pizzaが例によって守備兵を魅了。

 守備兵、置いてある岩石を拾う。


 ちなみに、屋上から見ると地上はうっすら半透明になってる。

 地形はわかるけど@は見えない。敵も味方も一切表示されてない。そういうルールみたい。


<カメラ切り替えて・・・>キャラ切り替え。地上マップへ。

<弓兵をターゲットして・・・>マウスで弓兵をクリックして、

<カメラを戻して・・・>キャラ切り替え。屋上へ。

<投下ァ!>


 @Soldier(@Pizza)はrockを投げた: @Soldierに31のダメージ。@Soldierは死んだ。

 @Soldier(@Pizza)はrockを投げた: 岩は地面に落ちた。


「──落石攻撃!」

<ね? ここに岩置くってことは、こういうことだと思ったんだー>

「よく気付いたね! なるほどなー。それ結構重いんしょ?」

<20ポンド前後だね>

「何kgだろ」

<ポンドステーキ20人前!>

「・・・まあ、当たったら死ぬわねw」


 ポンドステーキ20人前、3階屋上からお届け!

 外れたりもするけれど! 当たった敵は、即死である!


「南無ー」

<なむー>


 弓兵除去! 歩兵も除去!

 さらに、@Pizzaが最初に魅了した牢番2人が巻き上げ装置に到達、ロックを解除!

 はね上げ橋、落ちた! @Sunny駆けつける!

 『治癒(ちゆ)』の祝詞(のりと)、ここで初めて使用!

 傷の癒えたメンバー、玄関破って館内へ! ホールに雪崩込む!(なだれこむ!)


<あ、3階の宝箱に魔剣ありました>

「回収回収ゥ!」

 @Pizza、ダッシュで3階へ戻る。

 宝箱から、魔剣“クラッシャー”を取るのだが──


 @Pizzaは拾った:

  @Pizzaは魔剣“クラッシャー”を手に持った。

  ガラガラガラ、ガシャーン! 罠が発動した。


 ──鉄格子に、出口を塞がれてしもーた!


<あれ?>

「閉じ込められちった」


52、魔剣“クラッシャー”、初仕事をする


 宝箱から魔剣を回収したところ、罠が発動。

 @Pizza(全裸)は、部屋に閉じ込められてしもうた。


<あ、領主が来た>

「ぬー」

<『領主トリオニウス: 「かかったな!」』>

「かかったわ! ・・・いまのアドリブ?」

<いえ、いまのは翻訳>


 石造りの頑丈な部屋。窓、なし。

 出口はドアのみ。そこが罠の鉄格子で閉ざされたのだ。

 室内は、ヌードに魔剣一本の@Pizza。魅了された守備兵2人と、宝箱はいくつかあるのみ。


「宝箱に鍵入ってたりはしねーよなw」

<さすがにねー>

「くっそー、せっかくクラッシャー取り返したのになー」

<まだ何にも潰してないのにね>


 ・・・ん? 待てよ?


「クラッシャーってさ、壁に穴掘ったりできねーのかな?」

<あー。やってみよーか>

 @Pizza、壁際へ。

<攻撃・・・はできないか。えーと、じゃあ(T)unnelのほうかな?>


 §■■■■

 @■ @     @Pizzaは掘った:

 @+


 §■■∴■

 @■ @      御影石(みかげいし)の壁は砕け散った

 @+


<できた>

「すげー!」


 @Pizzaは掘った: 御影石の壁は砕け散った(魔剣“クラッシャー”)。

 @Pizzaは掘った: 御影石の壁は砕け散った(魔剣“クラッシャー”)。

 @Lord Trioniusは逃げた: 「Ahhhh!」

 @Pizzaは掘った: 御影石の壁は砕け散った(魔剣“クラッシャー”)。


 §∴@∴■

  ∴

  +


「掘りすぎだよwww領主追っかけて」

<はーい。気持ち良かったから、つい>


 壁を粉砕した@Pizza、領主を追って2階へ。

 ──ところが、そのときである! カメラが突然切り替わったかと思うと・・・


<『領主トリオニウス:「私は船に移る。おまえたちはここを死守しろ!」』>


 2階裏手。

 小部屋から外に出るベランダ。そこに領主トリオニウスの姿が。

 ベランダは海の上に突き出しているのだが、その海の上に・・・


 ||~~■■■■§■

 ||~~■■■■_■

 ||~□+__■@■

 ||~□+@_+@■

 ||~□+__■@■

 ||~~■■■■_■


 ・・・木の床みたいなものが、滑り込んできた。

 

「なんだこれ。動く廊下?」

<『@領主トリオニウスはジャンプした: @領主トリオニウスは船に乗った。』>

「船かよ」


 なんと! ストーカー領主、館の2階から、船に飛び移った!


<またターン無視して動いてる・・・>

「ちょくちょくインチキするよねw」


 カメラは@軍団にもどる。

 敵兵がなんか叫んでる。風花が翻訳してくれました。

<『領主閣下は脱出なさった』『了解』『・・・マジかよ』『やってらんねー』>

「・・・後ろの2人、俺っぽくね?」

<カンタさんの口調を参考にしました>

「敵兵になっちったw いいけど。領主なー・・・、逃がしたくねーなー」

<追いかけます? @Pizzaが2階に降りたとこですけど>

「守備兵いるっしょ?」

<いますけど、壁を掘れば>

「あ、そっか」


53、ストーカー領主を追い詰めろ


 逃げるストーカー領主。追う@Pizza。

 廊下には守備兵がいるのだが・・・


 ||~~■■■■@■

 ||~~■■■■_■

 ||~□+__■@■

 |@~□+__+@■


 魔剣“クラッシャー”!


 ||~~■■■∴§■

 ||~~■■∴■_■

 ||~□+@_■@■

 |@~□+__+@■


 全裸の美少女@Pizza、ベランダからジャンプ! 船に飛び移った!


<さー、ぶっ壊しますか!>

「ダメだよ船壊しちゃwww」

<ダメなの?>

「クラッシャーフーカ!」

<む!>


 だが、@Pizzaの前方に、魅了の効かない@Guard2人が立ちはだかる。

 さらに、守備兵が2人、背後に飛び移ってくる。

 @Pizzaあやうし!


「1対4になっちゃったかー・・・」

<もう船を壊すしか>

「なんでそんな壊したがんだよw」

<気持ちいいんだもん>

「それはそうだね」

<でしょ!>

「けどダメだよ。この船はさー、俺らの船にすんだから」

<できますかね?>

「やってみればわかると思います! ピザちゃん、魅了! 守備兵ね」


 @Pizzaは魅了した: @Soldierは魅了された

 @Soldier(@Pizza)は組み付いた: @Soldierは動けなくなった


「よし」

<@Guardはどうします? 魅了効かないけど>

「@Pizzaに頑張ってもらうしかない」


 1人目。

 @Guardは剣で攻撃した: @Pizzaは回避した


「よし!」


 2人目。

 @Guardは剣で攻撃した: @Pizzaはパリーした。@Guardの剣は砕け散った(魔剣“クラッシャー”)


「・・・すげー!」

<受けで敵の武器を砕くとは>


 @Pizzaは魅了した: @Soldierは魅了された

 @Soldier(@Pizza)は組み付いた: @Guardは動けなくなった

 @Soldier(@Pizza)は組み付いた: @Guardは動けなくなった


「組み付き強いね」

<同じ陣営だと、最初の1ターンは不意討ち扱いになるみたいですね>


 @Pizzaは魔剣“クラッシャー”で砕いた: @Guardは死んだ。

 @Soldier(@Pizza)は投げ飛ばした:

  @Guardは転落した。ドボーン! @Guardは海に沈んだ。

  @Soldier(@Pizza)は転落した。ドボーン! @Soldier(@Pizza)は海に沈んだ。


「落ちたw」

<2人一緒に落ちて行きましたね>


 護衛・守備兵を排除。「Ahhh!」と逃げ回る水夫は放っといて。


「領主を追う!」

<『Ahhhh!』・・・領主、船長室に立て籠もりました>

「クラッシャーしていいよ」

<はーい!>


 @Pizzaは魔剣“クラッシャー”で砕いた: 樫のドアは砕け散った。

 @Lord Trionius: 「Ahhhh!」


「勝った!」


 魔剣の@Pizza。

 たった1人で、船を制圧!

 ストーカー領主、ここに成敗である! 


<勝っちゃいましたねぇ>

「これもう勇者だよね!」

<女勇者@Pizza!>


 フルヌードだけどね。


「あー、面白かった。時間やべー。今日は寝るわ」

<おやすみー>

 

54、翌日


 翌日。

 あ、もちろん高校行って帰ってからの話だよ?

 ちなみに、全裸@Pizzaの話したら浦部「・・・俺もやってみる」だと。ただの@だっつーの。


<『レディ @Pizza、御命令を』>

「は?」

<Captain・・・船長が言ってるんですよ。Lady @Pizzaって>

「仲間入りしたんだ」

<そう。『御命令を』って言ってるけど、要するにプレイヤーキャラにしてくれってことみたい>

「敵だったのに?」

<うんw>

「都合いい奴だなー。まあいいけど。船長は欲しいキャラだしね」

<館の指揮官も名簿に入りたがってますが>

「まあ1人なら取ろっか」


 船長と、『泡の館』守備隊長がプレイヤーキャラになった。

 これは魅了じゃなくて、完全に仲間になるやつだね。作成したキャラと同じように、リストに並んでる。


 で、水夫は船長の部下、守備兵は守備隊長の部下、って扱いみたいだね。

 召喚ユニットってわけではないみたいだけど。


<船長と守備隊長を動かせば、部下は勝手に動くってことみたい>

「なるほど。そうでないと、船とか館の警備とか、いちいち操作すんのめんどくさいもんね」

<ですね。『フォロー』の強化版ってとこかな>

「しかしさー、即座に戦闘終わったよねw 船の戦闘はさー、館の奴らには見えねーはずなのに」

<そういう世界なんだよw>

「こっちもカメラ切り替えできるしね?」

<そうそう>


 ともあれ。

 @Pizza奪還作戦は、成功である!

 ひとまず、船を『泡の冠』館にもどして・・・


<『@Pizzaは、入り江の港町の領主になった』>

「なぬ?」

<『レディ @Pizza、おはようございます!』・・・守備兵があいさつしてきてます>

「領主? レディ?」

<『女領主』って意味のLadyかなと>

「つまり・・・領主になったの?」

<なったみたいですねぇ>

「領主殺したのに」

<殺しましたねぇ>

「王様に怒られたりしねーの?」

<さー? 王様いないんじゃないかな>

「エルフの王都とか言ってなかったっけ」

<あー、それは言ってたね>

「ヘルプ見てもらっていい?」

<らじゃー! えーと。これかな?

 『領主を倒して館に入れば、その都市はあなたのものになります。

  館に入らなかった場合、都市は無政府化状態となります。やがて廃墟になるでしょう。

  警告!: 影の軍勢が領主を倒すこともあります。』>

「ふむ?」

 ということは。

「領主殺したら、領主になれるわけだね?」

<だね>

「ワイルドだね!?」

<戦国時代ですね>

「あー・・・、そう言われれば、なるほど」

<あ、玉座に座ると都市のデータが見れるみたいですね>


 調べてみたところ。

 都市には『収入』があり、領主はその金を自由に使えることがわかった。


「金使い放題じゃん!」

<えーと、はい。玉座から『予算』が見れる。そこから、お金を抜くこともできるみたい>

「横領しよーぜ! 横領!」

<残金0>

「へ?」

<前の領主がきっちり使い切ったんじゃないかな>

「・・・。」

<もしくは、カンタさんと同じ考えで、引っこ抜いて宝箱に入れてある>

「さがせー!!!」


 船と館を漁る@ども。


<領主と護衛で『海神の護符』が3つ。あと、護衛はチェインメイル着てますね。かなり優秀>

「剥がしちゃえ」

<3階の宝箱からは、珊瑚。真珠。銀のインゴットなど。あと、ドラゴンメイル>

「ドラゴンメイル? 強そう」

<『軽くて強靱な竜鋼のチェインメイル。St+3、抵抗:火・冷気』・・・だそうです>

「いいね! 女勇者に着せよう。海神の護符も着けといてね」

<はい。@Pizza、St+3、抵抗:火・冷気、完全耐性:支配となりました>

「よしよし。珊瑚とかは売り払って、いま街にいるメンバーの装備整えよう」

<らじゃー>

「船はー、漁り終えたら、アレだ。試験航海」

<沖に出てみる?>

「そう。@Pizzaとかは乗せずにね。船長たちだけで行ってみて」

<りょーかい!>


 風花さん、しばらく忙しくなる。


<・・・船、無事にもどりました>

「じゃあ、@軍団搭乗! エルフの王都を救いに行こう!」

<アイアイマム!>


 女勇者@Pizzaと、歴戦の@軍団、出航!

 いよいよ、遠洋航海である! 海の向こうにあるという、ハイエルフの王都を目指して!


55、セイレーンの岩礁


<航海図がありますね>


~~~∧~~~~~~~

~∧∧P∧~~~Ψ~~

~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~_P

~~~~~~__~@_

~~~~~P_____


「@が現在地かな?」

<入り江になってるし、そういうことでしょうね。PはPort、『港』かな>

「右上の文字は何これ?」

<Ψ?>

「ぷさい?」

<ギリシア文字ですね。プサイ、プシー>

「そっか。何の意味なの?」

<わかんない>

「行ってみよっか」


 船、出航。

 航海図のΨの地点を目指す。

 方角を指定しての、オートトラベル。結構時間がかかる。


「今回は大丈夫かな」

<わかんない。『遠洋航海』スキルに成功すれば、方角通りに進める・・・ってことだと思うけど>


 @Pizzaたちはやることがない。ヘルプを見て、『訓練』させることにした。

 長時間作業で、経験点ちょびっともらえるらしい。


<雀の涙(すずめのなみだ)ですけどね>

「ゼロよりゃマシだよ」


 航海すること半日。午後に入ったころ、前方の景色(マス目のドット絵)が変化する。

 青一面だった海の上に、黒い岩がボコボコ突き出していて・・・


<岩礁(がんしょう)かな?>

「逃げて逃げて」

<調べないの?>

「このゲームだと、一発で沈没させられそーだしね。ドラクエならぶつかってみんだけど」

<はーい>


 船には慣性がつく。大きな船だからなおさらね。

 オートトラベルを解いて、ゆっくり回頭させる風花だが・・・


 ~∧~~∧

 ~~∧Ψ~

 ~~~~~


<Ψが出現しました>


 海面に突き出した岩のそばに、なにやら出現しましたよ。


<Siren・・・『セイレーン』かな>

「聞いたことある。人魚でしょ」

<鳥女ですね>

「鳥なの?」

<半人半鳥>

「ハーピーじゃん。で、なんでΨなの?」

<さぁ・・・あ、わかったw こいつ三叉槍持ってる>

「さんさやり」

<三つ穂先がついてる槍ね。ポセイドンの武器。Ψは海神のマークだよ、きっと>


 @Sirenは歌った:

  @Captainは魅了された。@Captainは支配された。


<あ>

「魅了だ」


  @First Mateは魅了された。@First Mateは支配された。

  @Sailorは魅了された。@Sailorは支配された。

  @Sailorは魅了された。@Sailorは支配された。


<え、え、え、全員>

「マップ兵器だコレ!」


  @Pizzaは魅了された。@Pizzaは支配に抵抗した(完全耐性:海神の護符)


「お」

<ここで来ましたよ!>

「付けてて良かった海神の護符」

<でも彼女以外みーんな支配されちゃいましたよ>

「護符ケチったのが裏目に出たねw」

 3つあったんだけどね。

 @Taroたちに装備させようと思って、2つは置いてきちゃったんだよなー。

「ま、@Pizzaが1人でできることっちゃー、アレしかないよね」

<クラッシャーですね>

「ちがいますw」


 @Pizzaは魅了した: @Sirenは魅了された。

 @Pizzaは支配した: @Sirenは支配に抵抗した(完全耐性:海神の加護)。


「ダメか」


 @Siren: 「私より美しいなんて!」 カチーン! @Sirenは岩になった。


「・・・は?」

 Ψの字が消えて、岩礁が1つ増えた。

「どういうこと?」

<さー?>


 @Pizza様、セイレーンを撃退である!


<経験点。また@Pizza様の魅了が伸びてしまう>

「もうそいつがセイレーンでいいよw 好きにさせとこう」


 船は岩礁を後にしたのであった。


56、あかつきのうみにしす


 船は西へ。日も西へ(画面には描写されてないけどね)。

 夜がやってくる。

 @Pizzaたちは、長時間作業『訓練』を切り上げて、長時間作業『睡眠』。

 その間も船は進み続け・・・


<──島を発見しました!>

「来たか!」

<マニュアルに切り替えます。

 ・・・港を発見しました。入港します。メッセージ来ました!

 『集落を発見: 鬼の港

  鬼の港で、キャラクターを作成できるようになりました』>

「来たー!」


 船は港へ。集落発見!

 早速、キャラ作成を確認してみると・・・。


<種族が増えてる。ハーフエルフ、オーガ、ゴブリン>

「ゴブリン作れんの!? 敵じゃねーの?」

<さー? 種族の説明読んでみます>


 ハーフエルフ: ハイエルフとヒューマンの間の子(あいのこ)。魅力的な姿をしています。

 オーガ(男): 大型の鬼です。巨大で力が強いですが、大食らいです。格闘が得意です。

 オーガ(女): 中型の鬼です。ヒューマンより少し力が強く、少し大食らいです。

 ゴブリン: 小型の鬼です。ヒューマンより小さく、小食ですが、力は意外に強いです。


「小食だからなんだってんだよ」

<食料節約できるってことかな>

「もうそんな困ってねーし」

<序盤なら役に立ったでしょうけどねw>

「そうだよ。出すのが遅ぇーよw」


 などと文句言う俺と風花であった。

 まー、このときはまだ、わかってなかったからね。なんでここでゴブリンなのかって。


「まあいいや。行き詰まったら試そう」

<はーい>

「今日はもう遅いし・・・ちょっと航海して終わりにしよっか」

<わかりましたー。では出航?>

「うん。寝る前にちょっと、島回ってみたい」

<りょーかい。よーそろー>


 船、港を出る。


 ・・・これねー。やめときゃよかったんだよなー、ここでさーw


「険しい地形だね」

<さっき入った港以外、寄せる岸がありませんね>


 島の東から北にかけては、ほぼ断崖絶壁。海から垂直に切り立った場所ばっかり。

 さらにその絶壁の足元が岩礁になってたりして。

 ちょっと船泊めるとか、全然できそうにない。


<もどります?>

「いや、もうちょい回ってみよー」


 やめときゃよかったんだけどねー。


<なんか来ました。船・・・じゃない! 『アイスドラゴン“ブリッツ”』>

「え」


 ~~~~~~~~w~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ~~~~~~~~ww~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ~~~~~~~~www~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ~~~~~~~~~ww~~~~~~~~~~~~┌─~~~~~~~~

 ~~~~~lll~wwll~~~hh~~~~~|\\\~~~~~~

 ttttttDDDVDDnnnHHm~~~~~\\O\\~~~~~

 ~~~~~lll~wwll~~~hh~~~~~~\\@\\~~~~

 ~~~~~~~~~ww~~~~~~~~~~~~~~\@@@\~~~

 ~~~~~~~~www~~~~~~~~~~~~~~~\\O\\~~

 ~~~~~~~~ww~~~~~~~~~~~~~~~~~\@@@\~

 ~~~~~~~~w~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\\>\\


「なんだこれ。でっけぇ」

<速い!>


 @Ice Dragon “Blitz”はブレスを吐いた:

  @Captainは凍りついた。@Captainは死んだ。

  @Sailorは凍りついた。@Sailorは死んだ。

  @42roは凍りついた。@42roは死んだ。

  @78roは凍りついた。@78roは死んだ。

  @Sailorは凍りついた。@Sailorは死んだ。

  @Sunnyは凍りついた。@Sunnyは死んだ。

  :

  @Pizzaに72ダメージ。@Pizzaは死んだ。

  Battleship “Hippocamp”に144ダメージ。


「は?」


 @Ice Dragon “Blitz”は右前足で蹴った: Battleship “Hippocamp”に113ダメージ。

 @Ice Dragon “Blitz”は左前足で蹴った: Battleship “Hippocamp”に113ダメージ。

 @Ice Dragon “Blitz”は噛みついた:

  Battleship “Hippocamp”に128ダメージ。

  Battleship “Hippocamp”の後部右甲板は破壊された。

  Battleship “Hippocamp”のミズンマストは破壊された。

 @Ice Dragon “Blitz”は右後足で蹴った: Battleship “Hippocamp”に121ダメージ。

 @Ice Dragon “Blitz”は左後足で蹴った:

  Battleship “Hippocamp”に121ダメージ。

  Battleship “Hippocamp”の後部左甲板は破壊された。

 @Ice Dragon “Blitz”は吠えた:

  @First Mateはパニックになった。

  @Sailorはパニックになった。

  @36roはパニックになった。

  :


 Battleship “Hippocamp”は沈没した。


<えっと、全滅ですね>

「は?www」

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