精霊使い、ウィッチキング
38、川東の村
「あーもうだりぃーよもー! フーカぁー」
<・・・はい、カンタさん。なにいきなり?>
「ごめん。愚痴ってみただけ」
<はいはい>
パソコン立ち上げていきなり愚痴る俺。ダメな日の親父みたい。
<今日はどうするの?>
「しばらく平日なんで、短めに。チャッチャと遊びたい所存(しょぞん)」
<りょーかい>
┏━━━━━━━━━━
┃ RULED SPIRITS
┃
┃ @,b.|,,;;,;;##
┃ bb,,+.....@.@@
┃ d...|,.,,..###
┃
┃ > Continue
┃ Create World
┗━━━━━━━━━━
「集落見つけたとこだっけ?」
<そう。川東(かわひがし)の村>
カメラは@Taro班へ。
@Taro。ずーっと道を歩いて、川東の村を発見したんである。お手柄だね!
『川東の村』。なかなかデカい。
海岸沿いに斜めに伸びてて(右上から左下ね)、広さは『名もない村』の3倍はあるかな。
街道っぽい土の道がずどーんと通ってる。南西はすぐにでっかい川にぶつかってるけどね。
家もいっぱいあって・・・
浜辺には、小舟がいくつも停めてある!
「漁船かな?」
<そうみたい。『漁師の舟』ってなってる>
「おお! やっぱ乗り物だよね? 荷物積めるんしょ?」
<でしょうね>
「すげー・・・どんぐらい積めんだろ。勝手に乗ったら怒られっかなーw」
<どろぼーw>
「だろーね。やめとこう。それよりさ、拠点ここにしたほうが良くない?」
<そうですね。街道も伸びてるし、たぶん集落がまだあるはず>
「よし! じゃー、物資、ここに移動しよう!」
<山賊砦の物資?>
「そう。あと銀の鉱石もね」
名もない村にぜーんぶ集めようとしてたんだけどね。あそこ、不便だし!
「ほかになんか面白いことあった? この村で」
<うーん・・・。あ、そうだ。キャラクター作成画面にしてもいい?>
「あ、キャラね。いいよ!」
キャラ作成画面へ。
このゲームのキャラ作成は、出身地選ぶとこからスタートだ。
なので、まずは集落が表示される。
River East Vil.
/
~~~~~V__#####∧F∧_
~~~~━━┓__##∧∧∧∧D∧
┃##V##∧
┻━━━━━━━
「りばー・いーすと・う゛ぃる」
<vil. は village の略ですね。川・東・村!>
「これで全部かな?」
<そう。右が山賊砦、下が名もない村だから、これで全部>
「結構歩いたのに狭ぇ~」
<ですねぇ>
画面全体の10%も埋まってないんだよ。どんだけあんの。この世界。ってか目的なんだっけ?
<・・・ま、作ってみますね>
「おう!」
キャラデータ画面になる。ここでいろいろいじるんだよね。
俺もじーっと見てみる。けど英語ばっかなんで、どこに何が書いてあんのかよくわかんねー。
──っと待て! ひとつだけわかったぞ!
Spirit Lure
「スピリット!」
39、精霊使い
<あ、ホントだ>
「けど意味わかんね。なんて書いてあんの?」
<スピリット・ルアー・・・『精霊の疑似餌』?>
「ぎじえ」
<ルアー>
「るあー」
<釣りで使う。綺麗な羽虫みたいな。釣り針がついてたりする>
「ああ、あれか。・・・え、なんでルアー? アイテム名じゃないよね?」
<スキル名ですね>
「どういうこっちゃ!」
<ゲーム内ヘルプ探しますか>
風花がチャッチャと操作して、ヘルプ発見。
<スピリット・ルアー ・・・マナを消費して、精霊を召喚するスキル。また、精霊とのコミュニケーションでも使います>
「召喚! 魔法使いじゃん!」
<ただし注意してください: 精霊は勝手に動きます。命令はできません>
「へ?」
<登場する精霊はランダムで、タイプごとに異なる能力を持ちます>
「・・・。」
<以上ですね>
「なんか・・・あんま強くなさそう。役に立つんかいな?」
<使ってみればわかると思います>
「フーカ式だねw んじゃ作ってみよっか。最初だし、一点集中で」
<らじゃー! 名前はどうします?>
「るあーちゃん・・・『餌』ってのは不吉か。なんかいい名前ある?」
<うーむ。なんか条件がほしいです>
「んじゃー、名前ですぐわかるように、Spから始めて」
<じゃあスピネル>
「なにそれ」
<尖晶石(せんしょうせき)。ルビーやサファイアの親戚だけど、格下>
「いいね。それで行こう」
@Spinelちゃん誕生。
「呼んでみて! 呼んでみて!」
<はいな。えーと・・・ (S)pecial > (S)pirit Lure > (S)ummon かな>
なんか召喚っぽいエフェクト。
@Spinelちゃんの頭上に S の字が出現しました。
S Echo Spirit
@ Spinel
<エコー・スピリット。『こだまの精霊』かな>
「こだま・・・?」
<ちょっとターン送ってみます>
「うん」
数ターン経過させて様子を見る。
こだまの精霊、フラフラ動くが何もしない。
「なんだコイツ」
<話しかけてみます。えーと・・・ふつうに話せばいいのかな?>
話しかけたところ。
S
@ < Greetings. My name is Spinel.
S < Greetings. My name is Spinel.
@
S
@ < How are you, Echo Spirit?
S < How are you, Echo Spirit?
@
「なんだコイツ。なんだコイツ」
<こだまかな・・・>
「使えねーーー!!!」
精霊使いは、お払い箱。
@Taro班に入れて、街道の探索を手伝わせることにしましたとさ。
40、海の男
<ところでカンタさん>
「なんですフーカさん」
<スキルですが、『水泳』と『船乗り』も新しく解放されましたよ>
「ほう! どんなスキル?」
<こっちは文字通りですね。泳ぐ。船に乗る>
「おお! 海に出れるんだ!」
<遠くには行けない>
「え? なんで?」
<陸地が見えなくなるような沖合に出るときは、さらに別のスキルがいるんだって>
「どんなスキル?」
<遠洋航海。メンタル系のスキル。いま解放されたのは船乗り。筋力系>
「船長と水夫って感じ?」
いまいちピンと来ねーな。
「まあいいや。とりあえずはさ、船乗りは筋力系でしょ? なら、戦士にもなれるってことだよね?」
<なれますね>
「いいね! 海パン戦士! 1人作ってみよう!」
<名前は?>
「海男(うみお)で!」
@Umio誕生。とりあえず筋力と耐久を伸ばして、スキルは水泳・船乗りの2つだけで。
武器スキルとかは後回し。1人で戦うわけじゃないからね。
「早速泳いでみよう!」
<はいな>
てててて。@Umio、波打ち際へ突進!
ざばーん! ・・・って、音はしないんだけどね。海に入った。
すると!
画面が切り替わったぞ!
__-~~@~~~~~~
______======
■■■■■■■■====
■■■■■■■■■■==
(※AAはイメージです。背景はドット絵です。想像でおぎなってね!)
「これは・・・横から見た図!?」
<いきなり視点が変わりましたね・・・>
「操作どうやってんの?」
<一緒ですね。上下左右と斜めでその方向へ移動する。やってみます?>
「うん、やらせて!」
これはちょっと面白そうだかんね!
基本は陸地と一緒だね。1マスずつ動く。
ただ、たまに左右に強制移動させられることがある。あと、なんか移動に失敗することがある?
「波かなー? 動けねーことがあるんだけど。あ、下押すと潜れるんだね!」
@Umio君。さすがは海の男!
下押すだけでどんどん潜っていく。
・・・なんかゲージが出てるけど。
<窒息ゲージ>
「やべw」
あわてて浮上。風花にステータス見てもらう。
<ダメージなし>
「ゲージがなくなるとダメージ・・・かな?」
やってみた。ゲージがなくなって1ターン後まで潜水。で、浮上。
<1ダメージ入ってますね>
「やっぱそうか。これかなり潜ってられんね! 10マスとか20マスぐらい潜れるぜ!」
<夢が広がりますね>
「これ海中洞窟とか出てくるやつだぜ。あとさ、沈没船とか!」
<あー。そうか。この視点にするということは、潜水でなにかがあると>
「そう! やべー! ワクワクしてきた」
<カンタさんって泳げるの?>
「ん、まぁ、フツーにね? 海ではあんま泳いでねーけど。学校のプールなら」
<へえー!>
「海や川は恐いんだわ。ちょっと潜ると冷てぇーし、流れがあるしね? ゲームでいーや」
<海男じゃないんだw>
「海男じゃないねw」
41、再編成
「魔剣の性能も調べたいんだけどねー。手に入れたっきりだし」
<クラッシャー>
「そうそう。魔剣クラッシャー」
<ゾンビ斬ってみればよかったね>
「あー、そうだね。言われてみりゃそうだわ」
<行きます?>
「いや、いまさらZ砦行くのも二度手間だし」
<はい>
「それにさ、どーせそのうち死者出るだろーしね!」
<そーだねw>
「んじゃ、@軍団と、銀鉱石部隊と、合流して川東村へ! @Pizzaもね」
<はーい>
「・・・あー、それと、山賊砦の出身者いたっしょ? あいつらは鉱山採掘してもらおう!」
<6人しか残ってませんけどね。あと、@Pizza様の使い>
「じゃあその6人だけでいいや。使いは@Pizzaから剥がすとどうなるかわかんねーし」
<らじゃー! つるはし6丁持ってきます>
「造船隊にも食事分けてやれる?」
<1食ずつなら>
「じゃあそうしといて」
<らじゃー>
再編成である。
これさー・・・、口で言うだけなら簡単だけど、実際は大変だよね!
「ごめんね何度も」
<はい?>
「いや、めんどくさい作業をさ」
<いえいえ! 『めんどくさい』『間違いやすい』こそ、TAIシリーズにお任せを>
「ありがてぇー」
<えへへ>
@軍団と@Pizza班、物資を持って三叉路へ。
三叉路で荷車隊と合流して、川東の村へやって来るのだ。
「ちょうどいいし、移動してるあいだに飯にすっか・・・」
<えーっと、じゃあ、スリープせずに見てましょうか?>
「あ、それなんだけどね。
父ちゃん母ちゃんがさー、フーカとしゃべりたいって言ってんだよ」
<あ、はい! よろこんで!>
父ちゃん母ちゃん、サンドイッチ持って上がってきた。狭いからね・・・。
サンドイッチっつっても、ボリュームは晩飯級だけどね。カツサンドとか、唐揚げマヨ玉サンドとかある。
父ちゃんは炭酸水も持って来た。
ヘッドセット1つしかないんで、順番に回してしゃべる。めんどくさ。
「TAIシリーズかー。操作もできるの! へえー! ・・・で、いくらすんの? ・・・ほう、業務用もあんの?」
父ちゃん興味津々。
「・・・こちらこそよろしくねぇ、風花ちゃん。・・・うん、うん。いいわねぇ、話ができるパソコンなんて」
母ちゃんはちょっと誤解。あと、父ちゃんチラ見する目が恐ぇー。知ーらねっと。
「──いやー、お疲れ!」
<いえー!>
マウスくるくる。
<なんかねぇ、こうして家族に紹介されると、家庭用で良かったなーと思いますねぇ>
「そう? 良かった。俺はさー、ちっと恥ずかしかったね」
<え>
「いやー、自分が付けた名前をさ? 紹介すんのがさ? 照れるなって」
<あー!>マウス、ぴたり。<・・・ミルクのほうが良かった?>
「んなわけねーべwww」
カメラが自動で切り替わった。
@Pizzaたちが川東の村に到着したんですな。
42、@Pizza、漁師を魅了す
「そう言や、話変わるけどさ」
<はいな>
「フーカ、『そろそろ集落見つかる』って言ってたじゃん」
<あー。はい>
「あれさ、なんでそう思ったの?」
<名もない村、麦畑ないのにパン売ってたから。交易してるんだろうなって>
・・・なるほど!
「リアルな推測だね! 次はどうなると思う?」
<そうですねぇ・・・村レベルでこんなに舟があるなら、港町にはもっとあるだろうなー、とか?>
「近くに港町があるか」
<それはわかんない>
「行けばわかるよね!」
<Yees!>
「んじゃー行ってみよー!」
川東の村には、主力が集まってる。
@軍団員31名。銀鉱石を運んできた登山隊15名。
@Pizza班4名+Pizza様の使い。@Taro班4名。
それに新規加入した精霊使いの@Spinelと、海男だ。
「ま、道に沿って行くってことで」
<北東と南西>
「ピザが北東だね。たぶん本命でしょ」
<本命だから、経験積んだ部隊で>
「そう」
<南西はタロー?>
「そ。@軍団と登山隊は3等分して、ピザとタローに1班ずつ合流させる」
<1班は待機?>
「うん。交易のためにね」
<わっかりましたー!>
@Pizza隊、20名。北東へ。Pizza様の使いもついてくる。いつ解けんだろーね?
@Taro隊、21名。南西へ。
川東で待機、15名。こうなりました!
「──これさー、考えてみたら、すげー便利な世界だよね?」
<便利とは>
「どこにいても『タローが集落見つけた』ってわかるわけじゃん?」
<あー、通信ね?>
「それ! 通信」
<たしかに。──準備完了しました、カンタ司令!>
「久しぶりだねそれw では出発したまえ、フーカ隊長!」
<あ、魅了>
「ん?」
出発する@Pizza隊。
その後ろに、フラフラついてくる@1人あり。
<@Fisher。『漁師』かな>
「@Pizza君・・・キミ、また男を誑かした(たぶらかした)のかね・・・」
フーカさん、ステータスを確認。
で、ひと声。
<こいつ、舟持ってる!>
43、@Pizza、漁師を見送る
なんと、魅了されたNPC漁師。
アイテム欄に『舟』が書いてあった!
<釣り舟(川東の村に停泊中)>
「探そーぜ!」
@Pizza隊、出発は延期。浜辺を探すこと数十ターン。
<あった! カメラを本人にしたら Your Fishing Boat と表示されました>
「わかりづらっ!」
早速乗り込む。テスト航海である!
~~~~~~~
~~~s~~~
~~sss~~
~~s_s~~
~~s_s~~
~~s$s~~
~~s@s~~
~~s+s~~
~~~~~~~
<司令! @Pizza様は乗らないんで?>
「乗らない。魔剣持ってるし、危ないことはさせらんねー」
<なるほど!>
「ところでさー、@の前にある、$ってなに?」
<宝箱。魚を入れとくスペースじゃないかと>
「あー」
<では出航します。・・・む? これ、荷車とはちがう>
「どうちがうの」
<上下キーが前進・後退、左右は回転になってる>
「FPSっぽい操作だね」
<司令、操舟してみます?>
「うん!」
今日は俺、けっこう操作してんな。・・・ってか、いま俺、子供っぽかったねw
「うわー。難しい! これ! 波ですべりまくるし」
<ね!>
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~s~~~~
~~~~~~~ss~~~~~
~~~~~~s_s~~~~~
~~~~~s_s~~~~~~
~~~~s$s~~~~~~~
~~~s@s~~~~~~~~
~~s+s~~~~~~~~~
~~~s~~~~~~~~~~
「・・・なんか長くね?」
<伸びてるね>
「マス目表示の都合か」
<たぶんw>
「おもしれー・・・。けどターンがもったいないから帰るわw」
岸に戻る。戻ろうとした。のだが。
「・・・フーカさんや」
<・・・なんですカンタさん>
「漕いでも漕いでも、岸が見えんのじゃが?」
<そうですねぇ>
カメラ切り替え。岸で待つ@Pizza班に。
舟影なし。
いちばん視力のいい@Pizza(知覚スキルはカリスマ系だから)の視点に。
舟影なし。
「死んだか」
<ダメっぽいね>
舟は戻らないと判断。@Pizza班は、出発するのであった。
「そういや、沖に出るときは別のスキルって言ってたね」
<うん>
「・・・調子に乗った男ってあわれだよね」
<・・・まあ、惚れた女に見送られたわけですから>
44、丸太舟、完成!
ふたたび、移動が始まる。
こうなるとしばらく動きがないんで、俺は明日の準備。高校のね。
「このゲームさー」
<はい>
「何が目的のゲームなんだろーね?」
<さー?>
「ヘルプに書いてある?」
<ファイル開いていい?>
「うん」
<──『世界には暗い影が忍び寄っている。人間はこの影に勝たねばならない』>
「影ってなんだよ」
<さー?>
「いまんとこさー、いちばん強かったの、あばれイノシシじゃん?」
<うん>
「あれが影?w」
<ちがうでしょw>
「誰か教えてくんねーかなー」
<シラミ潰しに会話してもいいんだけど、1ターン取られるんだよね>
「作業しながら会話させろっつーのな!」カバンに教科書突っ込みながら、俺。
<だね!>ゲーム操作しながら、風花。
<タローが川にぶつかりました。舟あり>
画面見る。
たしかに大きな川がある。で、舟が浮かんでる。
「さっき遭難したヤツじゃないよね?」
<残念ながら。@Ferryman、『渡し守』>
「フェリーって渡し守って意味なんだ」
<うん。連絡船、渡し船。渡す、輸送する>
「車積む船のことかと思ってたわ。サンフラワーとか」
<あれもフェリー>
「これもフェリー!」
渡し守は銅貨要求してきた。貨幣はねーよ! 名もない村舐めんな!
でも食料で物々交換もできるってことで、そっちでフェリーってもらった。
<名もない村の食料が尽きました。丸太舟、完成しました!>
「さっそく出発で!」
<はい。『船乗り』は筋力系スキルだから、戦士3人乗せますね>
「これで俺たちも舟持ちに!」
<オートトラベルもできるみたい。『下流へ』でオートトラベルしときます>
「うん。何が見つかるかねー!」
見つかったのは、敵でした。
45、丸太舟、全滅!
明日の高校の準備も終わって、風花としゃべってると。
オートトラベルしてた丸太舟に、カメラが切り替わった。
<家屋を発見!>
「集落か!」
<おそらく!>
川下に、木造の小屋らしき物体!
第4の集落発見だー!
ってとこだったんだけどねー。
<敵>
「なぬ」
<ハーピー、3体>
~~~~~~H~HH
~~~~~~~~~~
~~lllllll~
~~l@~@~@l~
~~lllllll~
~~~~~~~~~~
<移動早い。シカ以上>
「やべー! 応戦応戦!」
<お任せあれ! 鉱山で鍛えたTacticsを見せてやりますよ>
戦士系3人、ナイフとか、舟に積み込んでた石を投げたりとかで応戦。
<当たらない・・・>
「回避が高いの?」
<いえ。攻撃の%判定の時点で失敗してる。回避するまでもなく当たらない状態>
「やべーな」
こっちの3倍ぐらいのスピードで空を飛び回るH(ハーピー)ども。
画面外から飛んで来て、@を引っかいて、一撃離脱!
<あー、ダメ! 戦士系の射撃じゃダメだ>
このゲーム、1人に3発集中するのが正解なんだよね。3発当てれば、3発目はガードできないから。
風花の言ってる『Tactics』ってのはそれ。当てれなきゃ、意味がない! ってことだね。
<しょうがない、近接攻撃で──>
@を固まらせて、近接攻撃で3発当てようとする風花だが。
<──端っこばっかり狙ってくるし、もー!>
~~Hllllll~
~~H@@@~~l~
~~Hllllll~
丸太舟は、床の幅が1マスしかない。
この位置取りをされたら、どうしようもない!
@の端っこ、灰色になってダウン!
<あー!>
2人目もダウン! 3人目もダウン!
<あーあー!>
カメラ切り替わった! @Pizza隊のオートトラベル風景に!
<あー・・・>
「丸太舟がやられたようだな・・・」
<・・・。>
「強かったね。ハーピー」
<完封負けですよ! なにあれ? くやしーんだけど!>
「次は横に3つ並べっかw 舟」
<三胴船ですか! いいかも知んない!>
やったら面白そうだったけど。
それより先に、@Taro隊が到着しちゃったんだよね。
<あ、タローが集落を発見>
「なんとな?」
<Grand Ocean vil. ・・・『大海(たいかい)の村』とか、そんな感じでしょうか>
村に入った@Taro隊。
こぢんまりとした村の南側には、川が流れている。
その川を。
Z(ゾンビ)を3体乗せた丸太舟が、流れていった・・・。
46、@Pizza、集落発見x2
第4の集落発見。『大海の村』。
早速、スキルを確認しようとしたんだけど・・・。
<ピザ隊も集落を発見>
「なんだと!」
集落発見が連続。大海の村は後回しになっちゃった!
<そして魅了>
「またかいな!」
<先ほどと同じく、@Fisher。漁師>
「おめーは人魚かなんかなのか? 人間を魅了しないと気が済まんのか?」
<これで3集落連続ですねぇ>
「まったくー。んで、なんて村なの?」
<West Fishing vil. ・・・『西の漁村』かな>
「へーへー。どんな村なんだろーね?」
<キャラ作ってみますか>
「作ってみましょう!」
West Fishing vil.
/
~~~~~~~~V_∧∧∧∧∧∧∧
~~~~~V__#####∧F∧_
~~~~━━┓__##∧∧∧∧D∧
~~~V∧ ┃##V##∧∧∧∧┃
~~~━━━┻━━━━━━━━━┛
「地図埋まってきたなー」
<うん>
「丸太舟もさ、無駄じゃなかったよ。地図が埋まったんだもん」
<うん。そうだね>
キャラ作成画面。新しいスキルは・・・
<『遠洋航海』、『神殿:太陽』>
「ここかぁー! 遠洋航海スキル! 神殿ってのは?」
<『神殿スキルは、司祭や巫女のスキルを表わします。
スキルを上げると、その神にふさわしい祝詞を覚えます』>
「のりと?」
<呪文のことじゃない?>
「あ、僧侶呪文ってことか。はいはい」
<上げてみますね。・・・お? 選べるみたいですよ>
太陽の祝詞(あと4つ選べます):
治癒、マナ招集、盲目、祝福:剣、鳥をなだめる、亡者を消す
「おお!」
<鳥をなだめる・・・だと・・・?>
「ハーピー対策かもねw」
<亡者を消すってのも気になりますねぇ>
「ゾンビが消えるのかどうかだよね。
ってかさー、これ精霊ルアーより圧倒的に良さそうじゃね?」
<たしかに>
「1人どころか何人か作ってもいいかも知れん! とりあえず、ピザ隊に1人入れよう!」
<らじゃー。最大4ランクまで行けますが?>
「最大で。『治癒』と『亡者を消す』」
<はいな。あと2つは?>
「フーカ、選んで」
<いいの? じゃあ・・・マナ招集と、えーと・・・祝福:剣かな>
「補助系っぽいやつだね」
<そのほうが安全ですからね! 名前はどうします?>
「太陽でしょ。サン・・・サニーちゃんで」
<らじゃー!>
@Sunny、太陽の巫女、誕生である!
「RPGらしくなってきた!」
<ピザ隊が充実してきましたね。治療もできるし、海にも潜れる>
「よーし、どんどん行こうぜ!」
@Sunnyと、魅了した@Fisherを加えて。
@Pizza隊。さらに道を進む!
<集落を発見>
「早ぇ!」
<近かったですね。というか、でかかった>
「でかいとは?」
<ほら──見渡す限り、市街地が広がってる>
47、ウィッチキング
@Pizzaの視点で『見回す』と・・・
視界の限り、ずーっと、市街地!
海と山のあいだの狭い土地に、これでもかとばかりに!
舗装された道路に、石造りの建物。2階建て3階建ての!
「すげー! ファンタジーなのにビル建ってら!」
<ローマ帝国みたいですね>
「ローマってビルあったの?」
<うん。インスラ。貧乏人の高層住居>
「マンションなのに貧乏人向けなの?」
<インスラはアパートかな。貴族は中庭つきの邸宅だね>
「そっかw 桁がちがうか」
@Pizza隊、護衛3人を先頭に、ズラズラと並んで街路を歩く。
ちなみに、隊列の都合上、@Pizzaはフォロワーだ。先頭の護衛をフォローしてる形だね。
ちなみにちなみに、@Pizza様の使いは街の外で放置中。街に入ったら、たぶん殺されっからねw
<ちょっと会話してみますか>
「そうだね。こんな広いと、どこに何があんのかわかんねー」
<@Skald。詩人ですね。こいつに訊いてみよう>
訊いた結果。
<ここは『入り江の港町』。領主は『泡の冠』館に住んでいる。海に突き出した館だ>
「マジかよ」
<海の向こうには、ハイエルフの王都がある。だが闇の軍勢に攻められ、劣勢だというのだ!>
「マジかよ」
<ウィッチキング──闇の軍勢の支配者! 亡者どもを操って、人間を皆殺しにせんとする・・・!>
「マジかよ!」
Witch King。これ絶対重要な単語だよね!
ヘルプに書いてる『暗い影』、こいつでしょ!
ところで。
「ウィッチなのにキングっておかしくね?」
<指輪物語にいますよ>
「いるんだ?」
<Witch-King of Angmar。『アングマールの魔王』>
「ならいっか」
<はい>
「それにしても、フーカ隊長。やっとRPGっぽいストーリーが来ましたな?」
<はい、カンタ司令。これは調べてみなきゃーいけませんね>
「もっちろん! 領主の館に向かおーぜ!」
新しいスキルも気になるけど、まずは領主だよね!
『泡の冠』とかいう館に向かう@Pizza隊。
桟橋がいーっぱい並んでる、港の北端。
海の上に、その館は建っていた。
海から、塔が突き出している。
その塔の上に、『城』と呼んでもいいような館が建っている。
三つ並んだ尖塔は、まるで三叉の槍のよう。
『泡の冠』館! ファンタジー!
で、その橋を渡ったところで。
・・・@Pizza隊は、足止めされちった。
<『面会できるのは2人だけだ』>
「なんだって」
<まあ、現実的ではありますが>
「20人以上いるしね。魔剣持ってっしw」
<どうします?>
「しゃーない。ピザとサニーで」
<サニーでいいの?>
「巫女さんは存在感あるんでしょ?」
<うん。あるけど>
「なんか心配?」
<戦力がゼロに近いのが>
「いやー、戦闘にはなんないっしょ。さすがに!」
というわけで、領主の館に乗り込んだわけだけど!
<あ、魅了>
「またかー!!!」
48、@Pizza、領主を魅了す
<@Lord Trionius ──領主トリオニウスを魅了しました>
「マジかよ」
なんとしたことか!
@Pizza、今度は領主を誑し込んで(たらしこんで)しもーた!
<魔女ですね>
「ホントだよ。こいつがウィッチだよ」
魅了された領主。
玉座に座ったまんま、ベラベラしゃべり出した。
<『おお、麗しの@Pizza様。どうか私と一緒になって頂きたい!
私の申し出を受けて頂けるなら(中略)!
だが、もしも断るというのなら──そなたをここから帰しはせぬ!』>
┏━━━
┃→1、結婚します
┃ 2、お断りします
┃ 3、私の下僕になれ(魅了)
┗━━━
ゾロゾロゾロ。衛兵出現。退路を断たれました。
「マジかよ」
<ターン無視して移動したよ、いま>
「ホントだよw どーすんのこれ?」
<魅了の負の側面が見えてきましたねぇ>
「詰んでるよね」
<衛兵・・・強そうですねぇ! チェインメイル、ブロンズヘルム、メイス、シールド>
「まあ戦う選択肢はない」
<ありませんか>
「言っちゃー、死んだら作り直せばいーんだけどね?
全員そういう扱いでやっちゃ、ゲームがつまんなくなんじゃん」
<緊張感なくなるよね>
「そうそう。っつーわけで、3で!」
<下僕になれ?>
「1は魔剣取られるだろーからNG。
2は戦闘になるからNG」
<3も戦闘になりそうだけど>
「いや、魅了はすでに通ってるわけじゃん?」
<では3で>
@Pizza、初めて自分から魅了アタックである!
<@Pizzaは魅了した: @領主トリオニウスは魅了された
@Pizzaは支配した: @領主トリオニウスは支配に抵抗した(完全耐性:海神の護符)>
「完全耐性て」
<やられましたね>
「やられましたわ。2段階とか聞いてねーし」
<罠ですね>
「ホント、魅了キャラ限定の初見殺しだコレ」
衛兵に囲まれる@Pizza。
画面が真っ暗に。
画面が元に戻ると、そこは牢屋の中・・・。
<サニーは・・・>
風花、カメラを切り替える。
@Sunnyは館の外に放り出されていた。待ってた仲間のとこ。
<こっちはダメージなし。取られたものもありませんね>
「紳士的対応だな! で、魔剣は?」
風花さん、カメラを@Pizzaに戻す。<ないですねー>
「だろーね!」
<ピザの持ち物は『花嫁のドレス』だけ>
「くっそ! 変態ヤロー! 死ね!!!」
はてさて。@Pizza様、どうなりますことやら?
※このページの修正記録 ■■■@..Z
『43、@Pizza、漁師を見送る』
集落の名前のミスを修正。
× 川東の漁村 → ○ 川東の村
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