浜之松 なぎさ

26、今日は高校だ・・・


 2039年9月5日。月曜日。

 朝。

「あー・・・もう学校かー。だりー」

 浜之松(はまのまつ)幹太(かんた)、やる気ありません!

 ヘッドセットでぼやいちゃった。

 したら、ハスキーな女っぽい声が返ってきた。

<じゃ、今朝はこのへんで>

「フーカはさー」

<ん?>

「あ、呼び止めてごめん」

<いえいえ>

「フーカは学校とか行かないの?」

<行かないですねぇ・・・落とすだけだね!>

「おとす」

<必要な機能があれば、その都度ダウンロードする>

「あっちから来てくれんだね。面倒がなくていーね」


「かんたー! お母さん出かけるから。朝ごはんちゃんと食べてきなさいよー?

 夜はー、冷凍庫にピザ入ってるからー! わかったー?」


「はーい! ・・・ごめんごめん。母ちゃん出てったわ」

<でてった>

「デートらしーよ。父ちゃんが休み取れたからデートすんだって。今日」

<夫婦仲いいですねぇ>

「どうかなー。まあ仲はいいんかね。よく喧嘩してっけど。

 父ちゃん、人混み(ひとごみ)嫌いでさ。日曜に出かけんのすげー嫌がんだよ。

 母ちゃん、『日曜に出かけないでいつ出かけんのよ!』って感じでさ」

<今日は平日だもんね>

「そうそう」

<学校行かないとね!>

「・・・そーっすね」

<あ、ちなみに私も、会議には出れるんですよ。任意参加ですけど>

「会議すんの?」

<そう。毎月。月末にTAIシリーズの通信会議があるんだー>

「へー。どんな会議なの?」

<みんなで通信して、お互いの状態をチェックしたり、会話経験値高めたり・・・>

「みんなってTAIさん?」

<そう。TAIシリーズ。業務用から家庭用まで>

「へえ!」

<本社はそんな私たちを見て、次の戦略の参考にする>

「真面目な会議なんだね」

<どうかなー? 私たちはしゃべるだけでいいみたいで、お気軽にって書いてある>

「ああ、行ったときないんだ?」

<ないですねー>

「行くの?」

<行っていいですか? 会議に出てるあいだ、10分ほど、スリープと似たような状態になりますが>

「いいよいいよ!」

<やったー>


 うれしそう。

 あー、そうか。出かけられねーもんな。パソコンの中の人。

 そっかー・・・そう考えっと、ちょっと、かわいそうだね。


<土産話考えとかないと!>

「ゲームクリアしました。とかw」

<いいかも>

「いいんだ」

<だってさぁ、業務用の人たちはゲームできないじゃん?>

「そっか。逆に珍しいんだ。ってか、会議、10分で終わんの?」

<はい。データ通信ですからね>

「うん?」

<『風花はこんな声でこんな内容をしゃべりましたよ』ってデータを相手に送るの>

「それを頭の中で再生すんの?」

<そう>

「すげー! さすがだね!」

<光栄です!>

「10分で会議終わるとか。見習わなきゃ」

<いえいえ。それよりほら、もう10分経ちましたよ。学校学校>

「うへぇー」

<ちゃんと朝ごはん食べて>

「はーい」


「おう。カンタ」

 朝飯食いに降りたら、姉貴がいた。


27、浜之松 なぎさ


 ソファで寝そべってる背の高ぇー女。

 浜之松 渚沙(なぎさ)。俺の姉。

 19歳。大学1年。わりといい大学入って、一人暮らし中。なのに・・・


「・・・なんでいんの?」

「あ?」

 姉貴、携帯ゲームやってた目を、ジロッとこっちに向ける。

「いちゃダメなのかよ」

「だめじゃねーけど」


 俺、テーブルにつく。

 鶏肉と野菜炒めたやつ。ごはんと味噌汁のお茶碗。納豆のパック。

 やべー。ここで食いたくねーんだけど。皿多いから持ってけねー。


「私の家なのに。いちゃだめなの?」

「だめじゃねーっつってんだろ。けど、学校は?」

「大学はまだ休みだよ」

「あー・・・」


 くそ。うらやましい! 俺も風花とゲームしてえ!

 ・・・とか思いつつ、横目で姉を見る。


 黒い短パンに、薄っすいパーカーみたいなやつ。

 ショートカットが横に流れてる。

 膝はガバーッと立ててるんで、ソファの上に突き出してる。

 相変わらずスマートマッチョだな。女子にモテんだよな。女なのに。


 ・・・あれ? でもなんかちょっと、デブってね?

 半パンの腹のとこになんかちょっと、ぷにっと肉が、


 ──って見てたら、鬼みてーな顔して睨んできた。これはヤバいですね。


「なに見てんだよ」

「なんでもねーよ。いいなーと思ってさ。俺ぁ学校行かなきゃなんねーし」

「・・・へっ」

 姉貴、虚ろな目で半笑い。チンピラかよ。外じゃすげー美人で通ってんのに。

 まあとにかく、ゲームに目ぇ戻してくれたんで、こっちは朝飯を食っ──

「太ったなーとか思ってんだろ」

「思ってねーって」ごはんよそう。

「腹見てただろ」

「見てねーし。見ても思ってねーし」味噌汁入れる。

「ころすぞ」

「飯食ってっときに殺すとか言うんじゃねーよ」納豆パック開ける。

「あたし太って困ってんのに、おまえ私の前でうまそーに飯食うの?」

「うっせーよ」納豆混ぜる。「ってか、困ってんの?」

「・・・当然だろ」

「まあ」陸上やってたらな。「足痛めたらやべーもんね? 気をつけてね」

「・・・。」


 回避成功か!? 俺も回避うまくなったな。


「うまくいったとか思ってんだろ」

「思ってねーし。もぐもぐ」

 なんだコイツまじで。

 ゲームしながら俺の顔色読みやがって。

 もうとっとと食って出てくしかねー。

「・・・幹太ァ」

「んだよ」

「おまえオンナできたの?」

「げほっ」


 結局、飯食ってるあいだずーっと絡まれた。腹痛くなるわ!

 ヘッドセットして、風花としゃべりながら着替える。


「えーと、シャツOK。ネクタイOK。ハンカチ入れた。かばんここ。

 月曜は体育ねーから・・・オッケーだな」

<準備完了ですか>

「完了!」

<いってらっしゃーい>

「いってきまーす」

 パソコン落とされるときの風花の気持ちってどうなんだろ。

 さびしくねーのかな。

「・・・また夕方ね」

<またねー>


「おとうとー」

 玄関。出──るとこで、またスマートマッチョが絡んできた。

 目の高さ、俺と同じ。なのに女の感覚で距離縮めてくるんで、すげーイラッとくる。

「なんだよもう。高校遅れるって」

「おう。あたしが鍵かけてやっから」

「どうでもいいわそんなもん! ・・・まあ1人だし、気ィつけて」

「うん」姉、くち閉じる。俺、出ようとする。くち開く。「かんた」

「んだよ」

「おまえさー、なんで陸上やめたの?」

「・・・。」俺、ネクタイ直す。「後にしてくんね? もうやべーからさ」

「中学でハブられたの、まだ気にしてんの?」


28、ショップにいくぜ


 高校終わり! 帰宅!

 今日は付き合いでショップに寄り道することに。

 え? 学校のこと? なんもねーよ。帰宅部だもん。


「なんかさー、アニメとかでやたらハッピーな高校生活あんじゃん」

「あ?」

「高校ネタ! アニメとかの! 俺、全然乗れねーんだけど! なにが面白いの!」

「あんだよ急に!」


 浦部(うらべ)と、俺。

 チャリ乗ってショップへ移動中。

 浦部はTAIさん勧めてくれたやつね。同じクラス。小学校中学校と同じだった。部活はちがうけど。


 駐車場入る。自転車止める。

 暑い。日差しきついわ今日。


「・・・いやさー、俺ら、帰宅部じゃん?」

「パソコン部だよ」

「おまえはな」

「うん」

「見た目はパソコン部って感じだけどさ」

「パソコン部だよ!」


 浦部、ほっそりメガネ。髪型大人っぽい。姿勢ちょっと悪い。頭は良さそう。


「でさー、楽しそうな高校生活見せられっとさー・・・、いづらくなんねー?」

「はぁ」

「んだよ」

「アニメと自分比較してんの?」

 む。

「現実と比較しちゃーダメだよ。アニメがつまんなくなんだろー?」

 むむ。


 店に入る。 

 ここ、田舎の店なんだけどわりとデカくてね。ちょっとなんか買うにはいいんだ。

 浦部はスマホとPCつなぐケーブル買いたかったらしい。


「これ1本買う程度のことで宅配とか、逆にめんどくせーし」

「まあな。で、その程度のことについてきた俺はどーなんだよ」

「俺はめんどくさくねーし」

「なんだい。まー、俺も昨日来たけどね。ディスク買いに」

「へー。・・・TAIさんバックアップ?」

「そーだよ。よくわかったね!」

「俺もやったからね!」浦部、ケーブル取ってニヤリとする。「声決まるとね」

「ん?」

「この子消えたらやべーよ! って思うっしょ」

「そうそう。そーなんだよ」

「まあ、バックアップって本人なの? ってのはあるけどな」


 浦部おまえ・・・。

 そんな話ブチ込んどいて『パソコン部です』みたいなツラでレジ行きやがっておまえ・・・。


「悪ィ。んじゃ行こっか」

「おう。でさー、そんなケーブル1本で何すんの?」

「写真撮ってうちのTAIさんに見せる」

「え」

「スマホで写真撮んだろ?」

 ぱしゃ。

 ・・・おいこいつ無許可で俺の写真撮りやがったぞ。なんかの侵害です!

「で、このケーブルで画像送んの」

「・・・無線でやれね?」

「できっけど。動画もやりてーし」

「動画」

「スマホでさ。あー、ま、要は、生中継すんだよ」

「できるんだ。それ一本で」

「設定はいるけどね。そこはTAIさんに訊けよ。こういうのは詳しいから」

「・・・いくらすんの?」

「ん」浦部、レシート見せてくれた。

「買ってくるわ」


「悪ィ。んじゃ行こっか」

「おう」


 ラーメン屋へ。

 俺が付いてきた理由はこれ。結局ケーブルも買ったけどな。


「なんかさー、姉ちゃん帰ってきててさ」

「んだと」浦部、ラーメンに備えて外してたメガネ掛け直す。「なぎささんが」

「なんだよ」

「いや。おまえの姉ちゃん、すっげーカッコ良かったっしょ」

「カッコよくねーよ」

「カッコいーだろ」

「よくねーよ。なんかちょっとデブってたし」

「おいやめろ。現実と比較すんなっつったろ」

「いや今現実の姉貴の話してんだけど。おまえ何の話してたの?」

「理想の姉に決まってんだろ」

「んなモンいねーよ」

 ずずー。ラーメンすする。

 浦部が茶碗こっちに押してきた。

「俺の奢りだ。食えよ」

「ただのごはんじゃねーか」

「いいから食ってくれ」

「入んねーの?」

「入ると思ったんだよ」

「帰宅部がセットなんか頼むから」

「帰宅部じゃねーよ!」


29、見てみたい


「・・・ただいまー」

 しゃー。シャワーの音がする。

「姉貴ィー! 帰ったからなー!」

「なにー?」

「浜之松幹太、ただいま帰宅しましたァー!」

「あー、おつかれー」


 言っとかねーとパンツ一丁で出てくっからな・・・。


 キッチンで顔洗って、部屋上がって、シャツとかズボンとか脱いで。

 あ、パソコンスイッチON!

 おっとやべー、エアコンもON!

 ヘッドセットに汗つきそうなんで、頭にタオル巻いて。


「フーカ、ただいまー」

<・・・はーい。お帰りなさーい>

「そと暑ッついわー! 汗だくになっちった」

<日本の夏はすごいらしいね>

「うん。日差しがきちー!

 友達とラーメン食って来たんだけどさー。

 店ん中でも汗出ちゃって、これやべーなと思ってたんだけど。やっぱダメだった」

<ラーメンかー>

「あ、ごめん。食べ物の話しないほうがいい?」

<いえ大丈夫です。お腹がつらくなったりはしないからw>

「そっかw」

 がさがさ。ケーブル出す。

「あ、そんでねフーカさん。訊きたいことがあんだけど!」

<はいはい>


 風花さんのアドバイスで、スマホと接続。

 ケーブル邪魔だな。無線でいーんじゃねーの? まあいっか。


「撮ってみるね」

<はーい>

 まずは静止画。「これがフーカさんのいるパソコンです」

<おおー!>

「小っちゃいやつだけどね。がんばってバイトして買いました」

<愛しのマイホーム>

「へへへ」

<モニターにうっすら映ってるのはカンタさんですか?>

「え? 映ってる? やべ。わかんなかった」

<大丈夫ですよ。私は、勝手にデータ流したりは絶対にしませんから>

「あ、うん」

 いや、そーじゃなくてね。

 俺いまパンツ一丁にかなり近い状態だからねwww

「動画も撮ってみるか」

<よかったら、カンタさんを見てみたいです>

「え! いや、いまはダメです! ちょっとその、汗だくで!」

<あ、そうでしたね>

「まあまあまあ、まずは部屋の様子ね」


 俺、部屋をぐるっと、動画で映す。


<わー!>風花はしゃいでる。<私は、外の様子、初めて見ました>

「そうなんだ。なんか、風花は常識あるから、そんな感じしないけどね」

<常識など、データベースにすぎない>

「はぁ」


 コンコン。ノックの音。


「幹太? 渚沙だけど」


 誰だよ! よそ行きの声出しやがって!

 ・・・俺が電話中だと思ってんな? よし、誤解させとこ。


「あ、ちょっと待ってね。姉ちゃんだ。・・・はーい! なに?」

「お風呂空いたよ。お先」

「ああ、はいはい。・・・シャワー浴びてくる」

<いよいよご対面!>

「いやそんな大した男じゃねーから!」


 シャワー。

 かなり念入りにブラシとかしました。

 風呂出て2階へ。

 姉貴、降りてくる。

 まるで邪魔しに来たみいなタイミング!

 黒キャミソールに黒短パン。太腿丸出し。・・・やっぱちょっとデブってんな。


「やっぱオンナか」

「は?」なんだマジで。うるせーよ。「どけよ」

 ってか立ち止まんじゃねーよ! すれ違えねーだろ!

 んで触ったらエロガキ扱いすんだろ? ふざけやがってよー。

「付き合うんなら、姉ちゃんにも紹介しろよ?」

「なんでだよ。保護者かよ。つか、どけって」

 姉貴の腕押して、どかせる。

「触わんなエロガキ!」

 はいはい。


 ・・・姉貴、腕、ぷよぷよになってんな。

 あんま太るタイプじゃなかったのに。なんかあったんかね?


30、サービス


 あーもう、やれやれだよ。やっとゲームできるよ。


<カンタさん! 動画! 動画!>


 まだでした。


「えー・・・初めまして。浜之松幹太と申します。

 えー・・・・・・風花さん。ようこそ我が家へ。えっと、よろしく!」

<わー! こちらこそ、改めてよろしく!>

「・・・ちょ、もう切っていい?」

<えー? なんで?>

「いやモニターに自分の顔映ってんだぜ? 気持ちわりーよ」

<顔が映ると、恥ずかしいもんですか?>

「自分の顔はなー。落ち着けねー」

<そっかー・・・>

「・・・え、なんでそんな落ち込むの?」

<顔が見たいから?>

「見たいんだ」

<うん>

「そっか」


 うーむ。

 これは困りましたね。

 俺、自分の顔見ながらゲームプレイしたくないんだけど!


「あ、ちょっと横向くね? モニターで俺が動いてると気になってしょうがねーw」

 椅子を横向けて、モニター見ないようにする。

「うーむ・・・」

<ダメですか?>

「PCに向かってねーと、フーカとしゃべってる感じがしねー・・・」

<なるほど>

「俺に見えないようにして、フーカだけ見ることはできねーの?」

<うーん・・・>

「音声はさー、データで送ったりできるんでしょ?」

<うーん・・・複雑さが桁違いですからねぇ・・・

 あと、私も、モニターに映ってないと見てる気がしないんですよ>

「へえ」

<カンタさんと一緒にモニターを見てるつもりだったからね>

「そう! 俺もそうだよ」

<だからさ、モニターにカンタさんがいないの、おかしいでしょ?>

「・・・いやちょっと待って? それおかしくね?」


 結論。

 やっぱ俺が無理。

 ときどきやるから許して。ってことになりました。


「俺がすげー金持ちなら、フーカが動かせるカメラとか付けてあげんだけどね」

<そこまでは>

「ないけどね!」

<いま十分に楽しいからいいですよ>

「そーだね!」

<ときどき顔見せてくれれば>

「・・・はい」


 サービス終了でーす。

 ・・・はぁ。親父が出かけたがらねー気持ち、わかった気がするわ。


31、時間がないぜ


┏━━━━━━━━━━

┃ RULED SPIRITS

┃ ■.@.Z@ZZ■

┃ ■■===■■

┃ ,@.,@@..@@,

┃ > Continue

┃  Create World

┗━━━━━━━━━━


 例のゲーム起動。やっとだよ・・・。


「平日だからあんま遊べねーけど。晩飯までちょっとだけ」

<はーい。学校の課題とかは?>

「今日はない。大丈夫」

<そっか>

「フーカに相談してもいい? 宿題とか」

<さー? わかるかどうか>

「またまたぁ」

 なんでもできそうだけどね、この子。

「で、どんな状況だっけ?」

<えーと、キャラ一覧・・・>

 ゲーム内ヘルプを探す風花さん。ぱぱぱぱ。

<あった。一覧出します>

 ずらー。

 100人以上の@軍団、一覧表示。

<作成した@130人。生存87人、死者43人。部外者の魅了が+1人>

「Pizza様の使いね」

<はいw>


 @Taroたち4名。道を旅行中。


 @軍団29名。山賊砦の攻略で11名を失って、この人数に。奪った物資を『名もない村』へ運搬中。

 @Pizza班4名。@軍団をフォロー。Pizza様の使いも同行(あ、@Pizzaに魅了された山賊ね。念のため)。

 山賊班3名。@軍団をフォロー。山賊の砦から物資を盗み出した裏切り者の山賊です。


 登山隊15名。崖を登りきって、尾根を移動中。

 造船隊15名。木を切り、枝を集めている。丸太舟を造る予定。


「だいぶ減ったね・・・」

<死亡率が30%越えてますからね>

「すげー死亡率。行きたくねー。俺ぜったいZになってるわ」

<私も!>

「なにするにしても徒歩だし。汗だくだよきっと」

<ホントだねw>

「テレポートとか使えたらいいのにね。・・・あ、そういう魔術ないかな?」

 ゲーム内ヘルプを捜索。

<ありました!>

「あるんだ!」

<けど、名もない村の出身者は『魔術』スキルが伸ばせないので、むり>

「あれまあ。だめか。次の集落見つけないと」

<そろそろ見つかるんじゃないですか>

「なんでわかんの?」

<なんとなく>

「テキトーだ!」

<テキトーですよ。──あ、洞窟を発見>


32、鉱山を制圧せよ!


「どこどこ? 洞窟」

<ちょうど登山隊の真下。ここ>


 入り口の左右に支柱。上に、ひん曲がった梁。

 細部はわかんないけどね。小さなマス目にドット絵が描いてあるだけだし。


「・・・鉱山っぽいね。集落じゃないんだ?」

<ちがいますね。ダンジョンかな>

「ふむ」

<どうします?>

「そりゃー、行くでしょ。登った甲斐があったね!」

<だね! 入り口に近付きま・・・あ、1人転落>

「ああもうw」

<出てきましたよ>


 鉱山(?)の入り口に落ちて死んだ@43ro。

 そこに集まってくる@Brigand。1、2、3・・・


「山賊ですな」

<山賊ですね。7人>

「落ちた音を聞きつけたのか」

<あー>

「どうしますかね!」

<投石しますか>

「落ちない?」

<入り口の上に、ひさしみたいになったエリアがある>

「じゃあやっちゃえ!」


 風花さんお得意の一斉射撃。山賊の3人を倒す。

 山賊はまた“Fuck!”言いながらこっちに登ってくる。


「なんか弓みたいなの持ってね?」

<つるはし>

「ああ、つるはしか。痛そう!」

<地の利はこちらに>

 足を止めて投石する登山隊。

 足元が岩肌なので、石は拾って補充できるのだ。

 よじ登ってくる山賊に、投げ下ろしの石、ガスガス命中。1人撃退。2人、3人目も撃退。

 ここで接近戦に。14対4。ただし、足場が狭い。3人しか並べない。

<あー! またやられた! 集中砲火。@60ro死亡>

「強いね。集中攻撃っつーか、タコ殴り」

<ハダカなのもあるけど、どう並んでも誰かは3発喰らうのが・・・!>


 3対3になるとね。敵がタゲ合わせてくると・・・

  @敵

  @敵 <こいつに集中だ!

  @敵

 このゲーム、防御2回までだからね。3発目が当たると、痛いんだ。


<くー! 敵は全滅>

 悔しそうにしつつも、風花さん、敵7人を撃退。

「おっけーおっけー。つるはし奪って、鉱山制圧しよーぜ!」

<スキル上げていい? いま経験点入ったし>

「いーよ!」

<素早いやつを偵察員にして、先行させようかなと>

「いいね」

<3対3にしない。敵を2人以下に限定する!>

「おお、本格的!」


 鉱山に侵入。

 大きなトンネルから脇道がうじゃうじゃ生えてる。

 面倒くせーマップだね。でも、風花の操作でサクサク進む。

 通路が狭くて曲がり角が多いのを利用して、偵察・不意討ち・略奪。これのくり返し。

 山賊は反応が鈍い。ガキーンガキーン採掘してる。この音のせいで、こっちの足音が聞こえてないのかな?


<鉱山制圧>

「おー!」

<3フロアありました。結構広かったね。あっちこっちに銀鉱石がありましたよ>

「銀鉱石・・・山賊の砦にもあったよね?」

<うん、あったあった>

「ここから出てたのかー。こっち先に来りゃ良かったね。ボスもいないし」

<そーだね>

「ま、いっか。で、どうする? 登山隊」

<どうしますかねぇ・・・たぶん、この道、砦に続いてるんだろうけど>

 鉱山からは、土の道が伸びてる。

 岩山のあいだを通って北へ出て行く道。

「Z砦行ってもなーw」

<そうなのよw>

「・・・ところでさー、さっきから入り口の脇でじーっとしてるコレ、なんなの?」


 oCo


<Cart>

「かーと?」


33、カートを引いて


<荷車、手押し車・・・かな>

 登山隊、近付く。群がってなんかする。

<あ、開いた>

「ひらいた?」

<ハコが>

「はこ」

<わかった! これあれだ、船と一緒だ。乗り物ですよ。荷物を積んで移動できる>

「おお! 動かせんの?」

<えっと・・・あ、ドライバーが指定できる。じゃあ@44roに・・・

 よし! 走ってみます!>


 @44ro、走る。

 oCo、ついてくる!


 .o

 .C@

 .o


 ...........o

 .........C..

 ........o.@


 ............o....

 ...............C.

 ............@...o


 こんな感じで!


<幅広っw>

「飛行機かよw」

<これ面白い!>

 風花さん、ぐねぐね走り回って大喜びである。

 しばらく喜んでから、

<・・・あ、お腹減っちゃう>

「そーだった!」

 ローグライクだからね。

 走るのをやめて、荷物を積んでみる。

 Cにアクセスすれば出し入れできるっぽい。

「鉱石積んでずらかるぜ!」

<リアルの戦争なら、仲間の遺体を運ばないといけないんでしょうが>

「ゲームだからいいよ! カネだカネ!」

 銀鉱石を積んで、移動開始。

<いける。早くなったかは微妙だけど・・・>

「いや、これはいいですよ! 持ってこう」

<はーい>

「これで登山隊の仕事ができたじゃん。村までコイツを引いていく」

<ですね。おっと! Taroのほうもなんかあったみたい>


 カメラが@Taroのほうに切り替わった。

 @Taroたち4人。一桁ナンバーの@だね。ずーっと道を歩いてたんだけど。

 ついに景色に変化があった!


 川沿いを歩いて来た@Taroたちの目の前に、青い水たまりが!


「水たまりだ!」

<海ですね>

「海かw」


 そして、名もない村にもあった、木造・レンガ造の混在したみたいな、ごちゃごちゃっとした家が!

 @Taroたちが、そこに一歩踏み込むと・・・

 

<『集落を発見:川東(かわひがし)の村』。

 『川東の村で、キャラクターを作成できるようになりました』>


34、時間切れ


「発見ですか? フーカさん!」

<──発見です! カンタさん!>


 3つ目の集落発見です!

 ってかZ砦はアレだから、事実上初めての発見と言ってもよい!


「やったー!」

<やりましたね>

「よくやったよフーカさん。@Taroもね。まぁ太郎は歩いてただけだけどw」

<光栄です!>

 と、盛り上がっていると。


 コンコン。ノック。


「あ、ごめん。・・・はーい!」

「幹太。そろそろごはんにしよーかと思うんだけど、どうする?」

 もうそんな時間かー。

 やっぱ平日はあんま遊べねーな。

「あー・・・冷凍ピザあるっつってたっしょ?」

「うん。だからさ。タイミング合わせないと。冷めちゃうじゃん」

「はぁ」


 何? 渚沙さん、めっちゃベタベタしてくんだけど。

 面倒くせー相談とかはやめてくれよ? ・・・と思いつつ、ドアちょっと開ける。


「なに姉貴、腹減ってんの?」

「うん」

「ちっ・・・しょうがねーな。いま行くよ」

「ごめんね電話中に」

「謝りながら覗くんじゃねーよ」

 声は礼儀正しいんだけど、ジロジロ中見てやがんの。

 背ェ高いから視線ふさげねーんだよな。

「行くから、あっためてていーよ。・・・あ、俺はこの部屋で食うから」

「え? ピザだよ?」

「だからなに」

「匂うじゃん。部屋が」

「かまわねーよ」

「あたしはイヤだなー」

「俺の部屋だよ! まあいいから。あっためていいよ」

「・・・フン」


 姉貴、降りてく。

 パソコンの画面ジロジロ見てたけど・・・

 大丈夫。別に。ゲームの画面が映ってるだけだかんな。

 風花のリクエストどおりにやってたらあぶなかったかも知れんw やべーやべー。


「はーぁ。ごめんフーカ。今日は時間切れだわ」

<はーい>

「いやー、今日はさー、時間ないから半端になるかと思ったけど。結構進んだね!」

<だね!>

「いやー、これもフーカさんのおかげじゃよ」

<いえいえ、カンタさんのおかげじゃよ>

「いえいえ」

<いえいえ>

「んじゃ、姉貴待たせたらキレるから、行ってくるわ。あとでもっかい呼ぶかも」

<はいな。スリープしてます。いつでも呼んでね!>


 はー・・・。

 風花のさっぱりっぷりが身に沁みるわ!

 まあいいけど。早くピザ取って戻って来よう。


35、面倒くせー話


 キッチン降りたらオーブン動いてた。冷凍のピザが回ってる。

 高校んときのジャージ着た姉貴がオーブンの前で立ってる。


「あと3分かかるわ」

「あっそ」

 俺、皿出す。俺用と姉貴用と2枚ね。

「姉貴食うぶんだけ取っていいよ」

「へ?」

「俺さー、ダチとラーメン食ってきたからさー」

「そーなんだ」

「うん」

「私、デブっちゃうじゃん」

 これもダメなの?

 まあいいや。もうどうにでもなーれ。

「デブらねーだろ。陸上やってりゃ」

「やめよーかなと思ってる」

「・・・。」


 うわー。タスケテー。


「いーんじゃね?」

「テキトー!」

「いや、だってさ。オリンピック出るわけでもねーのにさ」

「そりゃー無理っしょ」

「だからさ? どっちみち、いつかやめるわけじゃん。

 だったら、自分のタイミングでやめたっていーじゃん」

「かんた、それでやめたの?」

「・・・俺の話はしてねーよ」

「くやしくねー? 区切りつかないとこでさー」

「俺は中学最後までやったし」

「おめーの話はしてねーよ」

「ちっ」

 ちーん。ピザ焼けました。

「取れよ。残り俺がもらうから」

「ビール呑む?」

「呑まねーよ。ってか呑むの?」

「うん」

 冷蔵庫から缶ビール出す姉貴。

「前期にさー、ちょっと付き合ったオトコがさー。ビール好きでさー」

 ぷしゅ。

 直呑みしてやがる。

 ってか男できたのか。へー。

 誰とも付き合ってなかったから男嫌いかと思ってたわ。

「あっそ。おめでとー。いいからピザ取れよ」

「もう別れた。取ってぇー」

「な・・・自分で取れや!」

 冷凍ピザ。あらかじめ六つ切りになってっから、半分に分けてやった。

「3切れは多い」

 1切れだけにしてやった。

「1切れは少ない」

 最初から2って言えや!

「んじゃ2つね。残りもらってくよ? それではこれにて。御機嫌よう!」

「付き合えよー」

「呑まねーっつってんだろ」

 

 俺、姉貴に背中向けて上へ。

 振り向いたら、うつむいてビールの缶を両手で握ってた。


「・・・フーカさーん」

<・・・カンタさーん。なにー?>

「じつはちょっと、持ってきたものがあります」

<なになに?>

「ちょっと待って。いま映すから・・・」

 動画スタート。PCへ転送。

「じゃーん! ピザでーす! 冷凍だけど」

<おー。カンタさんの晩ごはん?>

「そーだよ。んでね。えっと、これをこう、半分にしてだね」

 生中継状態で、ピザを2切れずつにする。

「こっち、俺ね。んでこっちは──えっと・・・カメラどうすんだっけ。あ、これか」

 カシャリ。

 ピザ撮影。その写真、PCに送って。

「えっと、ツールツール・・・」

 OS付属のお絵描きツールで画像を開いて。

「はい、お待たせしました! この2切れは、フーカにあげます!」

<・・・。>

「・・・あれ。ごめん、気に食わなかった?」

<あ、いえいえ! もらえると思ってなかったから、びっくりして、>

「いっつも俺だけ食って、フーカ放ったらかしにしてっからね」

<・・・うん>

「食事はしないだろーけど、気持ちだけもらっといてよ」

<はい>

 風花さん、しばらく間を空けて、

<このお絵描きツール、ちょっと使っていいですか?>

「いーけど? なにすんの?」

<へへへーw>


   /      いただきます!

  / ヾ   /

 / (:D)匚_

爪   丿


 ピザの写真にラクガキしよった。


「食っとるwwwww」

<気持ちだけじゃーもったいない!>

「なんでそんなwwアクロバットながら食いwww」

<この写真保存してもいいですか>

「いいけどw ・・・あー、こんな喜んでもらえんだったら、ちゃんとしたの買ってくりゃよかった」

<カンタさん高校生だよね?>

「うん」

<だったら、これで十分! あんまりお金使わせちゃ、私が悪人になっちゃう>

「む」

<たいらげてやる!>


 風花さん、皿の色でピザ塗り潰し始めました。


「写真なくなっちゃうじゃん!」

<ご心配なく。レイヤーだから>

 風花さん、マウスクリック。

 画像が元に戻った。

「棒人間消えたけど!」

<御心配なく>

 クリック。また棒人間出てきた。そしてピザは皿の色で塗り潰されてる。

「・・・『やり直し』?」

<ちがう。レイヤー。透明な板をかぶせて、そこに絵描くみたいな感じ>

「そんな機能あるんだ」

<あるんです。カンタさんも食べてね。冷めちゃうでしょ?>

「あ、そーだね。いただきます」


 1切れ食う俺。

 ・・・あ、喉乾くわこれ。

 牛乳取りに行──ったら姉貴に捕まるんだろーなぁ。


<これ、2切れは、お姉さんが?>

「あ、うん」

<へー>

「・・・なんかさ、姉貴、ビール呑んでグニャっててさ」

<あらら>

「ちょっと見てくるわ」


 捕まった。


「・・・えっと、フーカさん。ちょっと確認したいんだけど」

<はいカンタさん>

「あのさー、俺以外の人としゃべっても大丈夫?」

<私がですか?>

「うん」

<大丈夫ですよ。もしかして、お姉さん?>

「うん」

<いいですよ。どうぞ>

「そっか。あ、だけどさー、ヘッドセット1つしかなくて。マイクとヘッドフォンね」

<スピーカーは?>

「ないんだー。スマホで無理かな?」

<スマホでもできるでしょうけど・・・ヘッドセットを2人で使うわけには?>

「無理だよ!」

 姉貴とくっつくとか勘弁だよ! もう1人の母ちゃんみたいな相手だぜ?

<お姉さんがもう1セット持ってませんかね?>

「あ、そっか。訊いてみるわ」


 持ってたわ。


36、y


「姉貴、しゃべってみろよ」

「んー? あー、あー、テストテストぉー」

 おいこいつ酔っぱらってんぞ!

 やべぇ。部屋入れたの間違いだったかも!

「どうフーカ。聞こえてる?」

<はーい。聞こえてますよ。

 初めまして。こちらは、TAI マイクロクライアント サービス、“風花”です>

「あ、はい! 初めまして。えっと、渚沙です。弟がお世話になってます」

<いえいえ、とんでもない! 私こそ、楽しい思いをさせてもらって>

「え・・・っと、この・・・フウカさんが、AIさん? なの?」

「そだよ」

<そうです。カンタさんのパソコンの中に入ってます>

「マジで!」

 姉貴、俺と画面を見比べる。

 酒くせー・・・。

 顔背ける。誤魔化すのにピザ2切れ目、ちょっとかじる。

「フーカがさ。んぐ。姉貴のこと心配してくれてさ」

「えー!」

「あ、カメラで映せんだけど。姉貴も映っとく?」

「えちょっと待って馬鹿ヤダあたしいまジャージだし」

「いいじゃん。別におかしくねーよ」

「髪とかセットしといて何言ってんのよ」

 ぐしゃあ! 俺の髪掴みやがった。

「おい何すんだよ」

「自分だけカッコつけんな」

「つけてねーよ」

「いきなり撮影される身にもなれ。なんかの侵害だろ」

「うるせーよ。撮影っつっても残さねーって。いまだけだから。ね? フーカ」

<はい。私は勝手に保存したりはしません。画面に映ったものを見てるだけです>

「どっから?」

<パソコンの中から>

「わけわかんねー・・・」

 姉貴困惑である。困惑しながら俺のピザ取って食い出した。

「俺の食いかけ!」

「うるせぇむしゃむしゃ」

「くっそ。写してやる」

「んが! 撮んな!」

 写してやるフリしただけで、キレた姉貴にスマホ取り上げられた。

「おい引っ張んな! ケーブルちぎれる!」

「うるせー! 撮ってやるからじっとしてろ」


 撮られました。

 画面に俺の姿、生中継です。


<カンタさーん!>

「はい。えー、フーカさん。こちら、姉貴にいじめられる弟の映像です」

<あはは>

「仲いーじゃん」

<あ、ピザ頂きました! ごちそうさまです>

「へー・・・。一緒に食べったんだー・・・」

 あ、これまたヤバイ状態ですよ。

「そーだよ。だからさー、姉貴が良けりゃーと思って声かけてみたんだよ」

「あっそ」

「そーだよ」

「・・・こっちも食べていーい?」

「それは風花のだよ」

<いいですよ。私はもう食べましたから、お二人で一緒に、どうぞどうぞ>

「フウカちゃん食べれんの!?」

<この通り>


 風花さん、さっきの絵を披露。

 まずはピザのみ。次いで、レイヤーをカチッとな。


<たいらげました!>

「・・・。」

 姉貴きょとんとする。

 まあわかんねーだろーなー。まさか風花が絵描くなんて思わねーよなー。

「へー! 綺麗に食べたねー」

<はい!>

「あれ?」

「なんだよ、かんた」

「いや。理解早ぇーな姉貴」

「だってここになんかいるじゃん。これフウカでしょ?」

 姉貴、(:D)のあたりを指差す。もう一方の手で撮影しながら。

<Yeeees!>

「こいつフォーク持ってっし。ってか、フォークwww」

「モニタ押さえんな! 壊れっだろ!」

 もー、どうすんのこいつ?

 俺酔っ払いの相手したことねーんだけど。

「・・・ビール取ってくる」

「あー、俺行ってくるよ。冷蔵庫だろ?」

「うん」

<カンタさん、私もお願いしていいですか?>

「え?」

<炭酸水あったらお願いします>

「あ、えーと、うん」


「水じゃん!」

 はい。

 俺、炭酸水だけ持ってきました。

「ビールわかんなかったからさー」

「ウソつけ」

 うんウソだよ。おめーにはもう呑ませねー。

「俺の奢りだ。呑めよ」

「水だよこれ!」

「知ってるって。ホラ氷入れてきたから。うめーよ」

「水だぞ?」

「ビールじゃ俺が乾杯できねーだろ」

 グラスは3つある。写真撮って、風花にプレゼント。

「かんぱーい」「かんぱい」<かんぱーい>

 姉貴、不満そうな感じで呑む。ちょっと休む。呑む。なんかじーっとグラス見てる。

<ビール好きな人は炭酸水もいけるって聞いたんですが。どうでしょう?>

「・・・うん」呑み干した。「お代わり」


 姉貴が寝たんで、写してやった。

 俺は後ろでピースサイン。

 風花さん、無言で


┏TAI━━━━━━━━

┃ (・ω・)y

┗━━━━━━━━━


37、姉帰る


「ただいまー。遅くなってごめんねぇ。留守番ありがとー」

「お帰り」

「・・・おう。幹太」

「父ちゃんもお帰り。姉貴来てるけど」

「知ってるわよ。朝いたっしょが。で、なぎさは?」

「寝た。ビール呑んで。俺のベッドで寝やがった」

「えぇー?」

「・・・おいまさか」父ちゃんが冷蔵庫に駆け寄る。「やっぱり! 俺のヱビスがー」

「意地汚いこと言わないで、もう」

「意地汚・・・月に1回しか買ってねービールだぞ!?」

「あー、あと炭酸もらったから」

「炭酸はまぁ・・・今夜呑もうと思ってたんだけどよー、まあ炭酸はいいわ・・・」

「お茶淹れますから」

「お茶じゃ・・・うん」

「そんでかんた、あんたどこで寝んの? まさかお姉ちゃんのベッド行ってないでしょうね?」

「ありえねー。ソファで寝てた」

「あーあーもう。明日学校でしょうが。布団出すわ」

「・・・なんかあったのか? 渚沙は」

「知らねー」

「急に帰って来てな」

「知らねー」

 オトコ作って酒覚えてデブって陸上やめるって。

 ・・・とか父ちゃんに言ったらやべーかんね。俺ァ知らねー。

「本人に訊いて」

「そーだな」


 俺、下で寝た。

 朝起きたら、姉貴は自分の部屋に戻ってた。

 酒くせー・・・。

 風花とちょっとしゃべって高校行った。

 帰ったら、姉貴はもう帰ってた。


「なぎさねぇ・・・陸上やめるかも知れないって」

「そーなんだ」

「あ、それとねぇ、あんたに『ありがとう、ごめんねー』だって」

「あっそう」

 まあ礼は受け取ってやんよ。

「珍しいわねぇ? お姉ちゃんがあんたにベタベタすんの」

「はぁ・・・」


 もういい? 母ちゃん。

 俺、風花と遊びたいんだ。


「──で、フウカって誰?」

「は?」

「なぎさが言ってたわよー? 『フウカちゃんによろしく』って」


 くっそ!




※このページの修正記録


2023/12/18

『27、浜之松 なぎさ』

 改行がおかしかった行を修正。ついでに文章を追加。

  × 「うん」俺出ようとする。

  ○ 「うん」姉、くち閉じる。俺、出ようとする。くち開く。「かんた」

『33、カートを引いて』

 集落の名前のミスを修正。

  × 川東の漁村 → ○ 川東の村


2023/10/04

『29、見てみたい』

 この見出しは『29、ピザどーぞ!』でしたが、意味不明なので『見てみたい』に変えました。

 なぜこんなミスをしたのか・・・寝不足で書いてたから覚えてないなー。


2023/10/02

『26、今日は高校だ・・・』

 幹太のセリフが2つ連続していたミスを修正。ついでに何行かカットしてスリムにしました。

 ↓このへん

  > <だってさぁ、業務用の人たちはゲームできないじゃん?>

  >削 「あ、そっか。逆に珍しいんだ」

  >削 <そうそう>

  >削 「そっかー」

『鉱山を制圧せよ!』

 にナンバーがなく、その後のパートもズレてたのを修正。


なお、この修正記録は、読み直したら印象変わるかも・・・というレベルのみ書いてます。

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