山賊砦にZをはやせ

18、@Pizza


 日曜日。チャリ乗って買い物行って、帰ってきた。

 パソコンスイッチON!

「フーカさーん」

<・・・はい、カンタさん。こんにちは>

「こんちは! 買ってきたよ。ディスク!」


 まずは、バックアップ作業です!

 っつっても俺はディスク買いに行って、書き込みツール起動して、あとは見てるだけ。

 風花さん、自分で自分のバックアップやっちゃいました。有能!


<バックアップ完了しました!>

「早っ」

<まだ若いですからね>

「わかい」

<私がね。目覚めてすぐですし>

「なるほど」

 言ってる意味はわかる・・・けどピンと来ねー。

「もうすぐお昼だけど、ちょっと遊ぼうかなーと思うんすけど」

<はーい。山賊討伐ですね!>

「そうです!」

 例のゲーム起動。


┏━━━━━━━━━━

┃ RULED SPIRITS

┃ ####XXXX##..

┃ ..@|;@@...@@

┃ ###|;.##..@.

┃ > Continue

┃  Create World

┗━━━━━━━━━━


「いま何人だっけ?」

<生き残り81名。プラス、@Pizza>

「ピザちゃんね。初の女キャラだったね」

<はい。いま村にいますけども?>

「まずはテストしてみよっか。スキルの。足跡追跡だっけ?」

<はい。らじゃー>


 @Pizzaちゃん、村の外へ。道沿いに少し進んで、長時間作業開始。


<足跡を発見しました>

「いきなり! なんの足跡?」

<『人間』『動物・大』『動物・中』の3種類>

「人間は俺たちだねw」

<だねw 大はあばれイノシシ>

「中を追跡ですな! あ、護衛つけてね。3人ぐらい」

<りょーかい。合流にちょっと時間かかりますが>

「いいよ。ついでにさー、部隊整理しちゃおう」

<整理>

「山登んのと、川で舟造んのと、山賊やっつけんのと。3つにまとめる。山賊が本隊ね」

<20人、20人、40人ぐらいで分けます?>

「そうしよう」

<@Taroたち3人は、そのまま道沿いに進むでいいですか?>

「あ、うん。そっちはどんどん進んじゃって。ああそれと、ピザちゃんに護衛3人つけて」

<はい>


 風花さん、カメラを忙しく切り替えて、@軍団に移動指示を出す。

 @Taroたち3人は、道に沿って旅行。

 @Pizzaちゃんは、足跡追跡のテスト。@軍団の3名が彼女の護衛に走る。

 @軍団の本隊・40名は、三叉路へ。残りは2手に分かれて、山と川へ。


<1名転落・・・もう1名転落。登山隊、残り15名。

 手斧が川に到着しました。伐採開始します。

 @Pizzaに護衛3人が追いつきました>

「いいねいいね!」

 着々と計画が実現していくのを聞いてるだけの身分!

 しかもゲームだから失敗しても誰も死なない。最高。

<シカ発見>

「お! やったね! 狩っちゃえ狩っちゃえ!」

<投石します! ・・・護衛3人、全員失敗。逃げられました>

「ありゃま」

<森の木で遮蔽がかかるみたいですね>

「しゃへい」

<うん。1発は単純にミス、2発は木に当たって弾かれました>

「あー・・・あれ? 4人いるよね?」

<ピザちゃんは非力なので、手ぶらで。石拾ってるあいだに逃げられました>

「そっか。これ、狩人用にちゃんとスキル上げないとダメなのかな?」

<初期45%から80%までは上げれるけど>

「すげーじゃん」

<うん。けど、遮蔽で3発のうち2発弾かれたらね? 実際には、26%しかヒットしない>

「そっか。遮蔽のないとこで、大人数で取り囲まねーと・・・」


 シカ狩り用に新規キャラ作るか?

 村の広場にシカを追い込んで、そこで投石とか。できそうではあるけど。

 それとも、他の策を試すか?


 ──ここで俺、悪巧みひらめく。


「よし。山賊で!」

<@Pizzaも、山賊討伐に?>

「うん。いやさー、俺、思いついたんだよね」

<なになに?>

「自分で狩らなくってもさー、山賊から奪えば良くね?」

<・・・山賊だぁーw>

「そーだよw 相手が山賊なら、こっちも山賊だよ!」

<弓、持ってましたしねぇ>

「そうそう。奪っちゃおう。食料も武器も。略奪だよ略奪」


 ここで「かんたー」と、母ちゃんの声。あー、12時回ってますな。


「はーい! ──ごめん、母ちゃんだ」

<お昼ですね。行ってらっしゃい>

「フーカどうする? やっとく?」

<カンタ司令帰ってくるまで、寝てます!>


┏TAI━━━━━━━━

┃風花は、スリープしています。


19、夜が来た


「昼飯終わり!」

<出撃しますか!>

「しましょう!」


 @Pizzaちゃんと護衛3人、三叉路へ移動。@軍団40人と合流。そのまま偵察として先行する。

 カリスマ娘だから、知覚スキルも高いんだよね。なんでカリスマなのかは、いまだにわかんないけどね。


<いよいよ山賊退治ですね!>

 というところで。

 画面の端のほうに、赤い靄(もや)みたいなのがかかってきた。

「・・・なにこれ。この赤いの」

<なんでしょう>

 風花さんが@軍団を止めて、カメラをあちこちに切り替える。

<どの@に切り替えても、同じような状態>

「なんのエフェクトだろ?」

<うーん? Lookってあったっけ。あった。

 ・・・あ、これ『夕闇』です>

「ゆうやみ」

<日が暮れてきたので、視界が狭まった・・・という表現みたい>

「なんだと! 明かりあったっけ?」

<ないですね>

「売ってなかったよね?」

<うん、なかった。クラフトに『松明』はあるけど>

「あるんだ!」

<けど、油がない。食べちゃった>

「食べた?」

<イノシシの脂身。焼いて食べちゃったw>

「あー! なるほどねw」

<どうしよう。引き返します?>

「いや。ここまで来たら行くしかねーっしょ。

 だいじょーぶだいじょーぶ。同じ人間だし。

 こっちが見えねーなら、あっちだって見えねーよ!」

<では進みます!>


 @Pizza偵察班、前回の敗北の現場に接近。


<ピザが足音を知覚。敵です>

「山賊だな。よし。おびき出そう」


20、@Pizza様の使いで来た


「ピザは下げて。護衛1人だけ残して、わざと音出してみて」

<了解>

 @Pizza班、後退。護衛の1人だけがその場に残り、石を投げつける。

 ガコン! 遮蔽に当たる。反応する山賊。

<『攻撃だ!』『ブッ殺せ!』>

「よっしゃ! 逃げて逃げて! 40人でフクロにしちゃえ」


 風花さん、40人の攻撃隊を道の左右に分けて森に隠す。遮蔽を取りましたね。

 @Pizza班は、そのまま道を駆け下りて逃げていく。


<山賊来ました。13人>

「かかったな! やっちまえ!」

<投石します!>

 道の左右に隠れていた40人、一斉に投石。

 山賊1人死亡。3人重傷。そして、乱戦スタートである!


 @軍団40名 vs 山賊13人。

 @軍団は、運悪く集中攻撃を喰らった1名が死亡。3名がHpマイナスの重傷、5名が軽傷。

 山賊は、12名が死亡。

 ──@軍団の勝利である! が、


<1人逃がした>

「どこ?」

 @だらけでよくわかんねー。風花さん操作早いしね!

<ピザのほうに1人抜けちゃった>

「そりゃまずいですよフーカさん」

<仕留めます>

 カメラ切り替え。

 @Pizzaと3人の護衛のとこ。

 山賊が1人だけ逃げて来た。護衛3人が(素手で)迎え撃とうとする。


 おや? 山賊@の様子が・・・


<Charmed>

「はい?」

 山賊@が、ピンク色に輝き出した。

<『魅了された』かな? あ、動かせるようになってる>

「はい???」

<プレイヤー操作可能になりました>

「どういうこっちゃ!」

<リードミー見ていいですか?>

「どーぞどーぞ!」

<・・・書いてない>

「あらら」

<ゲーム内ヘルプかな・・・あ、こっちのほうが詳しいみたい>


 風花さんがゲーム内のヘルプ開いて調べた結果。


<『魅了』スキルが高いと、NPCの@を魅了することがある・・・らしいです>

「えぬぴーしーってなに」

<Non Player Character。プレイヤーキャラじゃないやつ>

「はあ」

<つまりこの山賊@は、@Pizzaちゃんに惚れた>

「馬鹿め死ねぃ!」

<やっちゃいますか>

「あ、待って。偵察に使えるかも」

<・・・ああ、死んでも困りませんもんね>

「装備は剥がしといてねw」

 チャームド状態の山賊、装備は全部、@Pizzaちゃんにプレゼント。

「いつまで有効なんだろ。魅了って」

<さー・・・?>

 チャームド山賊。

 藪と丸太のバリケードを超えて、山賊の領域へ。

 @軍団の3名が殺された場所。死体はすでにない。山賊が片づけた?

 さらに奥へ登ると、カーブの向こうに山頂が見えてきた。

 砦がある!

 で、道がまたふさがれてる。今度は『尖った木の柵』。

 山賊@が3人、見張りをしていた。

<『おい、どうした?』──おっと、選択肢!>


┏━━━

┃→1、道に迷った。一晩泊めてくれ

┃ 2、@Pizza様の使いで来た

┃ 3、(山賊の合い言葉を答える)

┗━━━


「3でしょwww @Pizza様の使いっておめー、バラしてどーすんだよ!」

<だよねー。3!>


“May W.K. reign us.”

“OK.”


 山賊の見張りは、逆茂木(さかもぎ)を、開けてくれた!


<『W.K.よ、我らを支配したまえ』『OK』>

「なんか重要ワードっぽいぞ! 人の名前かな?」

<かな? このまま砦に入れそう>

「いいね! @Pizza様々じゃん!」

<ですねぇ>

「しかし見張りさー、気付けよって。『おまえなんでハダカなの!?』って」

<あー>

「合い言葉聞いてる場合かよってw」

<たしかにw>

「フーカが操ってたら言いそうなのにね!」

<・・・山賊を?>

「山賊ってか、相手全部フーカが操ってたらさ。すげー手強そうじゃん」

<あー、できますよ。ゲームマスター>

「げーむますたー?」

<古いRPGでは、いまカンタさんが言った役割を『ゲームマスター』と呼ぶらしいです>

「へー」

<アメリカでは、TAIクライアントにゲームマスターさせるユーザーも結構いて。

 追加機能ダウンロードしてもらえば、私も対応できますよ>

「有料?」

<うん>

「じゃ、また今度ねw 今日はディスク買ったし」

<はーい。・・・砦に入りました>


 魅了された山賊@、ずんずん砦へ迫ってゆく。

 こっちのコントロールだからか、ふつーにカメラがついていく。

 偵察し放題じゃん! と喜んでいると、ファンファーレが鳴った!


<『集落を発見:山賊の砦』>

「お?」

<『山賊の砦で、キャラクターを作成できるようになりました』>

「おお!?」

 これは・・・

「山賊キャラ作れるってこと?」

<みたい>

「よっしゃストップストップ! 作ってみよー!」


21、山賊@誕生


 @Pizzaが魅了した山賊@、山賊砦に侵入(帰還)。

『集落を発見した』ことで、キャラ作成が可能になった!


<名前はどうします?>

「番号+roでいーんじゃね?」

<では@102roで>


 作ってみた。

 102人目の@、山賊砦に誕生である!


「ふつうに動ける?」

<動けますね>

「やっべぇwww やりたい放題じゃん。物資とか持ち出せる?」

<探しますか>

「うん。

 ・・・あ、待って!

 どーせだからさ、8人ぐらい作ってウロチョロさせよーぜw」

<工作員ですねw>


 追加で7人作成。

 @102roから109roまで、全員、筋力一本振りである。物資運び出すのが任務だからね。

 手分けして山賊砦をウロつく。あちこちに食料や水が置いてあった──ってか、落ちてた。

 取り上げても誰も何も言わねーの。管理甘ぇー。

 ただ1カ所。

 砦の中央にある倉だけは、様子がちがった。

 @107roが近付いただけで、容赦なくぶちのめされ、殺されてしまった!


「うわ、厳しいな」

<ダメージ大きめのゲームだから、集中攻撃されるとすぐ死んじゃう>

「なんか重要なモンが置いてあんだろーな・・・。

 まあしょうがない。持ち出せるものだけ持ち出しちゃって」

<はーい>


 @107roを失ったものの、残りは脱出に成功。

 作戦は成功である。


<@102roから109roの7人、およびPizza様の使い、軍団に合流>

「なにが手に入った?」

<ナイフ、手斧、ロープ、毛皮、干し肉、水筒、火打ち石、銀鉱石>

「ほうほう! ・・・銀行せき?」

<銀の鉱石ね。『不純物の混ざった鉱石』だって>

「なんでそんなもんが? ここ鉱山なの?」

<さー?>

「まーいいや。装備は軍団に渡して。

 銀鉱石は雑貨屋で売ってみて。あ、村行くのは、なるべく少ない人数ね」

<りょーかい!>


 ホクホクで村へ運び込んだところ。


<『山賊め!』──雑貨屋に攻撃されました。@102ro、死亡>

「はぇ?」


22、ファクション


「なんで攻撃されんの? なんかした?」

<してない。雑貨屋に入った途端、一方的に攻撃された>

「なんでじゃ!」


 凍りつくゲーム画面!

 ──ま、ローグライクだからね。風花が止まったら画面も止まるわな。


「・・・もしかして、山賊だから?」

<あー! 陣営!>

 風花が声を上げて、ステータスをチェック。

<@Pizzaたちは『名もない村』。

 山賊砦出身の@は『山賊の砦』。

 これだ。陣営が敵対してるんだ、たぶん>

「なんだよー。@Pizza様の使いで来たのによォー」


 雑貨屋の店主を殺すわけに行かない。村で唯一の店だし。逃げるしかねー。


<雑貨屋がシャウト。村人、援軍3人>

「軍団員で助けに行くか?」

<いや大丈夫。たぶん。遠いし。・・・逃げ切った>

「くそー」

<失敗した。負傷した軍団員を帰還させとけばよかった>

「あー、そうだね」

<これじゃ村に入れませんね>

「うん。どうしよ? 寒さに震えてるわけでしょ?」

<うん>

「死んだらゾンビになるわけでしょ?」

<うん>

「邪魔だよねw」

<・・・あ!>

「なに?」

<いいこと思いついた。言っていい?>

「いいよいいよ!」

<山賊砦で、死なす>


23、山賊砦にZをはやせ


<@130roまで、作成完了>

「よし、作戦開始!」


 夜の山賊砦に、新たに生まれた山賊、21名。

 @110roから、@130ro。

 風花のコントロールする山賊@は──


 NPCの山賊@に、襲いかかった。


<『ファック! 何しやがる!』『裏切りだ! 裏切りだ!』『ブッ殺せ!』>

「わーおwww」


 山賊同士の、殺し合いである。


「内部分裂だー!」

<山賊にふさわしい末路ですな、司令官>

「うむ。かまわん。フーカさん、やっちゃいなさい」

<はい! 山賊砦にZを生やせ!>


 バッタバタ倒れる山賊ども。

 @110roたちは、不意討ちだけはうまくやった。

 NPCを囲んでから、一斉に攻撃! 拾った石で殴りかかる!

 6~8人ずつで1人のNPCを囲んでからの不意討ち。これで4人を仕留めた。

 けど、その後はグダグダ。こっちはマッパだからね。敵7人倒したところで、@110toたちは全滅。


「ま、死んでも痛くないしw」

<そこがこの作戦のミソですよ>

 画面には、@130ro。

 1人だけ生き残って、砦を歩き回っている。

 彼は、不意討ちに加わらなかったのだ。

 全員死んじゃうと、カメラがキャンセルされちゃうからね!

<山賊、出撃する様子はなし>

「よし。@軍団は予定どおり前進!」

<らじゃー>


 @軍団、前進。

 藪と丸太のバリケードを越え、見張りのいる逆茂木の門の近くまで。

 カーブに身を潜める。@130roからの情報を待つのだ(笑)。

 そうして時間を使っていると・・・


<あ、まずい>

「どしたん?」

 画面を見ると。

 山賊どもが、長時間作業してる。

「なにやってんの?」

<『@Brigandは、穴を掘った』『@Brigandは、@110roを穴に入れた』>

「埋めてるの?」

<うん。死体を埋葬してる>

「ゾンビ対策か!」

<私の作戦が・・・>

「もう少し増員すっか?」

<しちゃう? ──あ、いや来た! ゾンビ来た!>


 穴に落とされた、@110roが。

 @から、Zになった。

 自分を埋めようとする山賊に、掴みかかる。

“Ahhh!”

 山賊、ゾンビと一緒に、穴へ転落。


「パニック映画だこれ!」

<カンタ司令! 作戦は成功です!>

「よっしゃ。@軍団、攻略開始」


 逆茂木の門への攻撃開始。

 まずは、物資を盗み出した、山賊@103roたち6人(+Pizza様の使い)が前進。

 シレッとした顔で見張りに合い言葉を返して、門の中へ。

 入ってから──


<攻撃開始!>


 ──またしても、不意討ちである!


<『ファック!』『裏切り者を殺せ』『Ahhh!』>

 @103roたちに背後から殴られた見張り、即座に反撃する。

 だが、ここは7対3。しかも@103roたちはナイフとか装備させてある。

 ・・・あ、Pizza様の使いは素手だけどね。いつ元に戻るかわかんねーし。ってかいつ戻んだよw

<門を制圧>パーフェクト勝利である。<前進します>


 @軍団39名、開いた門から、雪崩込む!

 山賊どもから奪ったナイフや弓、奪い返した手斧を持って!

 干し肉もちょっとかじって、パワーアップした39人が、突撃である!


<中庭に突入。

 中庭制圧。山賊@・Zともに駆逐完了。玄関に向かいます。

 玄関を破壊。建物に突入します。

 砦の1階を制圧>

「いいね! いいね!」

 風花さんの報告を聞きながら画面見てるだけのお仕事です!

<あれ>

「どったの?」

<Namedがいない>

「ねーむど?」

<名前付きの山賊が1人いたはず。そいつが見つからない>

「手分けして・・・いや待って。全員で固まって」

<はい>

「山賊@を前に出して、@Pizza様がその後ろをついてく。遮蔽取ってね」

<らじゃー!>


 死屍累々。

 いたるところ、灰色になった山賊@とZだらけ。

 Zが、消え始めた。例の人魂みたいなやつが、画面上へ吸い込まれていく。


<やっぱり、いない>

「あの倉庫見に行こうぜ。警戒厳しかったとこ」

<ああ>

 @107roが問答無用で殺された、あの倉へ。

 両開きの扉に近付く@103ro。

 突然、彼の姿が消えた。

<『@103roは、落とし穴に落ちた。17ダメージ』

 『槍の罠は、@103roを突いた。21ダメージ。@103roは死んだ』>

「落とし穴?」

<うん。穴の底に槍が据えつけてあるみたい>

「えげつねー」

<『@Pizzaは、足音を聞いた』。倉の中に誰かいますね>

「なんかもう超能力者みてーだなw」

<倉の扉は『閂は外れている』状態。たぶん開けれると思うんですが>

「でも落とし穴あんだよね?」

<うん。@Pizza様に調べてもらいます?>

「だめだめ。引っ掛かるかも知んねーじゃん」

<だめか>

「山賊は罠の場所知ってんだろーけどなー」

<そーだね。まじめに作ってあるゲームなら、自分の仕掛けた罠は避けて歩くかも>

「そうだよ。ちゃんと避けて歩・・・あ、それだ」

<はい?>

「足跡追跡してみて」


 @Pizza様、足跡を追跡。

 不自然に曲がりくねって歩く『人間』の足跡を発見。

 そこを山賊@に歩かせる。すると!


<罠なし。扉の前に到着>

「やったか!」

<やりましたね。しかし、安全な道はわかったけど、危険なマス目がわからない>

「いーよ。開けちゃえ」

<らじゃー。扉開きます。あ、敵。あ、死んだ>


 中に隠れていた山賊@の攻撃。

 @130roに命中。即死。


<『山賊Premosは、魔剣“クラッシャー”で@130roを砕いた。@130roは死んだ』>

「ぷれもす!」

<ここにいたか、プレモス!>


 不意討ちしてきた山賊。

 名はPremos。

 武器はWitch Weapon“Crusher”。


「ウィッチ・ウェポン?」

<直訳すると『魔女の武器“破砕機”』>

「そっか。まー、魔剣でいいや」

<カンタさん、いまダメージ表示がなかったよ>

「マジで」

<マジで>

「序盤のボスなのに、即死攻撃かよ」

<まー、あばれイノシシの出る世界ですから>

「そうだった!」

 俺、腕を組む。

 これさぁ。

 下手したら、@Pizza様とか即死しちゃうんじゃね?

「うーむ。どうしよ」

<石投げたらいいんじゃないかな>


24、魔剣“クラッシャー”の所有者


 @軍団員、一斉射撃。

 Premos死亡。

 @軍団の勝利である!


「死によったwww」

<プレモス君の工夫は認めよう>


 そうなんだよ。プレモス君、工夫はしてたんだよ。

 ジグザグに走って倉の奥まで逃げ込んで、宝箱とかを障害物にして、魔剣かまえてさー。

 けどね。


<飛び道具ないのに奥へ逃げたら、ただの的ですよ>


 じゃ、こっち位置調整していいッスか? って感じで。

 風花さん、@軍団を配置。一斉射撃。終わり。


「フーカかしこい!!!」

<光栄です>

「これは苦戦しそうだなーとか思ってたのに」

<このゲーム、防御回数の制限がきついんですよ>

「防御回数?」

<うん。攻撃・回避・受けの3種で1セット・・・1ラウンドかな?>

「はあ」

<1ラウンドに3回攻撃されると、3発目は防げないの。ノーガードで喰らっちゃう>

「なるほど・・・」

 俺、Premos君の死体を見る。

「それを教えるボスだったのかも知んないね」

<身をもって教えてくれましたね>

「ホント。南無ー」

<なむー>

「さ、Zになる前に装備剥がなきゃw」

<はいな>

「っとっと! 初めは、山賊@が1人で行ってね。残りは射撃準備」

<・・・魔剣取った奴が暴れ出したら、射殺?>

「そうw」

<ひどいw そうします>

 @Pizza様の使いが魔剣拾いに行く。ってかオマエ、生き残ってたんかい。

<魔剣拾いました。装備します。装備しました。・・・変化ないですね>

「問題なし?」

<たぶん>

「じゃー、@Pizza様にプレゼントねw」


 @Pizza様、魔剣“クラッシャー”の所有者となる!


<軍団員もPizza様も、経験点かなり入ってます>

「おお! 成長は・・・任せる!」

<はい。じゃあ、作成時の方向性のまま、戦士系・素早い系の2タイプで伸ばしますね>

「うん、それで」

<@Pizza様はどうします?>

「そうだなー・・・」

 すっかり重要人物だもんね。

「カリスマ、すげー使えるってわかったけどさ。一気に重要人物になったけど」

<うん>

「こうなると、ピザちゃんをどう守るかだよね」

<そうだね>

「本人もちょっと鍛えとくか」

<剣、アップしますか>

「剣上げんの?」

<攻撃と受けは1つのスキルなんですよ>

「そっか! じゃあ剣もちょっとずつ上げて行こう。

 優先はカリスマ系ね。魅了も上げてこっか。強ぇし」

<らじゃー!>

「ついでに魔剣見せて」

<はーい、どうぞ>


 っつっても、“Crusher”って名前ぐらいしかわかんねーけど。

 性能は大したことない。攻撃%とか、軍団員の手斧の%に負けてる。


<それは@Pizzaが弱いからですね。手斧よりは格段に強いですよ>

「そっか。しかし、魔剣だかんね。どーなるんだろ?」

<さー?>

「わかんねーか」

<クリアすれば、わかると思います!>

「だね!」


25、Z砦


「いやー、勝った勝った」

<山賊討伐、成功だね!>

「うん。フーカおつかれ! ・・・Z砦にしちったけどw」


 @Pizzaたちを成長させて。

 宝箱開けて(金貨と宝石が入ってた)。山賊の装備を回収して・・・

 ・・・死んだ@がZになり始めたので、退散しました! 砦は、放置!


<30体は生えたかなー>

「うん」

<勝てなくはないけど>

「そだね。でも、いらねーし」

<キャラ作っても、村に入れないんではねぇ・・・>

「そこなんだよ。んだからさー、Zにあげちゃおう!」

<Zにあげる>

「そうだよ。Z軍団だよ」

<Z管理区域>

「維持費、タダ」

<安くていいねw>

「でしょ?」


 今日のゲーム、これにて終了である!

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