ひどい作戦だねw
11、風花は、スリープしています
・・・はい。晩飯食いました。母ちゃんイライラしてた。父ちゃんに押しつけてきた。
ま、姉貴いねーぶんマシだったわ。いたら母ちゃん陣営強くなるからね。
姉貴は母ちゃん陣営だからなー。めんどくせーんだよ2人固まるとさぁ。
はい。
パソコンパソコン。ヘッドセットヘッドセット。
┏TAI━━━━━━━━
┃風花は、スリープしています。
┃起こすときは、呼んでください。
┗━━━━━━━━━━
あ、寝てるんだw 起こしていいの? これ。
「・・・フーカさーん?」
ピコン。
<・・・はい、カンタさん>
やわらかい声。
ちょっとかすれてる。ハスキーボイス。大人っぽい、あたたかい声。好き。
「寝てた? ごめん」
<大丈夫ですよ>
「TAIさんも寝るんだね。夢とか見んの?」
<夢は見ないですね。記憶の整理はします>
「きおくのせいり」
<はい。詳細を忘れて、サイズを減らす>
「物忘れすんの?」
<そうですね。それに近いですね。概要だけ残して、詳細は忘れちゃいます>
忘れるんだ。
「・・・あれ?」
よく考えたら、パソコンぶっ壊れたら・・・フーカってどうなんの?
<どうしました?>
「いや、えー、そう、フーカの記憶って、どうやってバックアップすんの?」
<あー>
風花さん、少し間を空ける。珍しいですね。物忘れかな。
<TAI本社のバックアップサービスはありますが、お値段が非常に・・・>
「高いんだ。どんぐらいかかんの?」
<7日ごとバックアップ、月ごとバックアップで、それぞれ・・・>
クレカで毎月自動引き落としみたいなサービスでした。ハイ無理。
「焼いたりはできねーの? ディスクに」
<できますよ。手間がかかりますが>
「んじゃディスク買っとかなきゃだね」
<お手数おかけします>
「いーよそんなの。・・・だってさぁ」
<はい?>
「ヤじゃん。フーカ消えたら」
<・・・はい>
「パソコンぶっ壊れたりして、インストールし直したら、フーカいなくなるんしょ?」
<はい。初めて起動したときと同じ状態に戻ってしまいますね>
「ヤだよ! 注文しよ注文。あ、いや、明日買いに行くわ。そのほうが早い」
<はい。ありがとうございます、カンタさん>
「当然だよ! んじゃあそぼーぜ、フーカ」
<はい!>
12、大軍勢は、はらがへる
例のゲーム起動!
┏━━━━━━━━━━
┃ RULED SPIRITS
┃
┃ |@..|@.#.
┃ +-=-+..Z.
┃ ..ZZ.Z..Z
┃
┃ > Continue
┃ Create World
┗━━━━━━━━━━
「まあこんてぃにゅーですね。あ、操作はフーカに任していい?」
<はい。マウスとキーボード操作してよろしいですか?>
「おっけー」
<ありがとうございます・・・では、Continue!>
ロード画面的なやつ。
Tips的なやつ。
<『世界を知ることから始めましょう。新しい集落を見つければ、そこでキャラが作れます!』>
「ほう!」
風花さん、こっちが黙ってても翻訳してくれます。
なんかちょっと風花口調になってるけどw
ロード終わり。
名もない村。
惨劇の現場ですね。イノシシと13人の@が死んだ現場だ。
・・・まあ、画面にはfの字が出てるだけなんだけど。
「fってなんだろね」
<food、食料じゃないでしょうか>
「へえー。あ、肉喰った?」
<まだです>
「じゃあ食べよう」
<頂きまーす!>
87人の@、焼いたイノシシの肉を、喰う。空腹をしのぐ。
「すごいよね。87人分の肉って」
<171ポンド取れました>
「ポンド・・・」
<食料は1ポンドで1食、というルールみたいです。全員、1ポンドずつ食べました>
「ポンドステーキ!」
<そうなりますねw>
「じゃあ、まだ半分ぐらい余ってんだ?」
<料理したら目減りしたので、残りは71ポンド>
「すげーな、あばれイノシシ! 体重どんだけあったんだよ」
<解体前は580ポンドでした>
「何キロ?」
<263キロ、約>
「すげー」
<骨、毛皮、腱なんかも取れましたよ>
「グロい! クラフトできるんかな?」
<はい。そのようです>
「いいね! やってみよーぜ。レザーのコートとか作ろーぜ」
<はい。ではやってみます>
ちゃちゃっと複数キャラに仕事を割り振る風花さん。しかし・・・
<あ、いずれも長時間作業ですね>
「ふむ」
<洗った骨を作る・・・水と刃物が必要。
骨のナイフを作る・・・洗った骨と刃物が必要。
毛皮を脱脂する・・・水と洗剤が必要>
「水・・・なかったよね」
<ないですね>
「しかも長時間作業ってことは、作ってるうちにまた腹減ってくるわけでしょw」
<あーw>
「やべーじゃん。これダメだわ。作業するより、次の獲物狩らなきゃ!」
<そうですね!>
@軍団、獲物を求めてそのへんをウロウロする。
結果。
「・・・なんも出て来ないね」
<出てきませんね。あばれイノシシ>
「まーあんなの毎回出られても困るけどさ。これ狩りどうすんの?」
<『追跡』というスキルがあるんですよ。これで足跡を探すみたいなんですが>
「ほう! ですが?」
<誰も伸ばしてないんですよね>
「あー。戦士と素早いやつしか作ってないもんね」
<そうなんですよ>
87人。ふたたび飢える。
「大軍勢はアレだね。腹が減るね」
<困りましたね>
「まー、あれだ。最悪、村から離れたとこで死のう」
<ゾンビになりますもんね>
「そーだよ。ここで死んだら、Z村になっちゃうもん」
<Z村www>
俺と風花、げらげら笑う。
「っつーわけで! 狩りもできそうにないし、偵察しよう!」
<偵察ですか>
「そう。行ったきり偵察」
13、ひどい作戦だねw
<いったきり偵察>
「87人でさ、四方八方に移動すんの。できる? バラッバラに、全部の方角に移動って」
<はい、できます。『オートトラベル』。方角か、集落を指定して、自動で移動する>
「できるんだ。じゃあそれで。頼んだよフーカ隊長!」
<了解です! カンタ司令>
風花さん、カカカカッとマウス操作。たぶんキーボードも駆使してんだろーね。俺わかんねーけど。
操作早いんだよなー。ホント、人間が操作したって敵わねーよ。スピードじゃ、全然。
<さっき行った道にも派遣しますか?>
「うん。ってか、たぶんそこが本命でしょ? わざわざ道つけてあるわけだし」
<なるほど>
「手斧とか装備してて、食事ちゃんとしてるヤツ、そっちに回して」
<はい。満腹度の高いTaroたちが本命、道ですね>
「うん。有望だからね」
<装備なしは、オートトラベルで森に突っ込みます>
「うん。期待薄だからね」
<了解です! ・・・準備完了しました>
「出発せよ!」
<Roger that!>
@軍団、87人。
おそらくは帰還不能、行ったきりの片道偵察に、出発である。
「特攻偵察だな」
<ですね>
「ひどい作戦だよねw」
<ですねぇ>
ゲームだからいいけどさ。現実だったらこんなクソ軍隊ないよね。
『軍は作りましたけど食料自給できません』だって。馬ッ鹿でー。
「いやー、大軍勢の指揮ってのも大変ですなぁ」
<そうですね。現実の戦記でも、食料に悩むシーンはよく出てきますね>
「あ、そうなの?」
<はい。お金を払って農村で買えるうちはいいのですが。
金が尽きたり、農村に余裕がなかったり、敵地だったりすると・・・>
「略奪になるんだ」
<はい>
「シリアスだねー」
<腹を空かせた兵士が勝手に略奪に出かけ、敵に撃破される──なんて失敗も>
「自業自得だね」
ここで、ふと気付く。
「あれ? 戦記っていえばさ」
<はい>
「これ、敵、まだ出て来てなくね?」
<あばれイノシシ>
「あれは獣でしょ! ってかなに、気に入ったの? あばれイノシシ」
<はいw>
「なに、イノシシ好きなの? 面白ぇーw」
<カンタさんと初めて遊んだ、記念の獲物ですから>
「・・・!」
おいなんだよ。ドキドキすんだろ。
「そ、そーっすね!」
<はい!>
14、川、山、道
<ん? オートトラベルが中断されました>
「どれどれ?」
<南西に向かった@ですね。川に行き当たったようです>
画面を川が横切ってますね。右下から左上へ、斜めになってる。
幅は・・・7マスぐらいかな? その北岸に@が立ち止まってる。
「小っちゃい川だね。渡っちゃおっか」
<はい。マニュアルで移動させます>
@、川に入る。
水色になる。
なんか英語のメッセージ出てるけど、わからん。
<水没しました>
「え?」
<水泳スキルに失敗。ダメージ。流されています>
「どうしたらいいの。岸に戻れねーの?」
<試みます。・・・ダメですね。水泳スキル失敗。ダメージ。また流されました>
水色@、川に沿って、画面左へ。ズリズリと動かされてゆく。
で、灰色になった。
「死んだか」
<死にました>
「南無ー」
画面、暗転。
道を歩いてた@Taroのほうに、画面が戻った。
<死ぬと視点がキャンセルされるみたいですね>
「あー・・・死んだキャラで偵察はさせねーよ? って」
<そういうことでしょうね>
「ま、川が試せましたってことで。水も発見したし!」
<皮がなめせますね>
「なに、ダジャレ?」
<え。・・・ちがうって!w>
「ははは」
風花さん、口調が砕けてきました。
もうこれイチャイチャって言っていいよね? キャラは死んでんだけど!
<南から西にかけて、川を発見>
「同じ川かな?」
<どうでしょう? ・・・あ、同じ川ですね。Zが流れてきました>
ゾンビが、画面右から、ズリズリと。
さっき溺れ死んだ@ですね。川の中を流されてきたんですね。
一応、戦闘態勢とる風花さん。
流れ去るゾンビ。
「wwwww」
<彼の死は無駄ではなかった>
「あ、そー言えば! 男ばっかだよね。@軍団」
<女も作れるけど>
「次作るときは女にしよう」
<うん! ・・・山を発見。北、北東、北北西>
「おー。次々来るね。新発見」
<名もない村は、川と山に挟まれた森林地帯だったみたい>
「道行った奴らは?」
<はーい。カメラ切り替えまーす>
画面チェンジ。@Taroたち主力メンバーが道を歩いとる。
森に挟まれた土の道。なんの変化もなし。同じとこずっと歩いてるみたいに見える。
「ここすでに歩いたとこ?」
<覚えてません>
「忘れちゃったんだ」
<忘れちゃいました。ミニマップ出せば、わかるはずだけど>
「わかるはずだけど!」
<操作忘れちゃったw>
「スリープしたからね!」
<その通り! カンタさん、リードミー見てもよろしいでしょうか?>
「うん、いいよ!」
<私が開いても?>
「いいよ!」
リードミー開く。スクロール。
アルファベットと説明がずらっと並んでるとこで止まる。キー操作一覧かな?
<ここですね。えっと、ミニマップ。あった>
「なるほどなー。そういう感じに忘れるんだね。スリープすると」
<はい。また見ればわかるし、忘れちゃえ。って感じですかね>
「そっかー。・・・俺のことは忘れないでねw」
<忘れないですよw>
2人でげらげら笑う。
<では、ミニマップ表示!>
画面右上に、ミニマップ。
「見える範囲だけ表示されるやつかな?」
<プラス、踏んだことのある範囲ですね>
「ほうほう」
<この表示からして、ここは来たことあるわ!>
「なるほど! ってことは、もうちょっと行かねーと、新発見はできない、と」
<そーなりますねぇ>
「ふーむ」
<あと、山にぶつかったメンバーどうします?>
「山?」
<さっき発見した・・・ここ>
画面切り替え。
崖の下で立ち止まってる@。
「山ってか、崖だね。もう進めないんだ?」
<よじ登ることはできる>
「じゃあ登っちゃえ」
<落ちるかも>
「かまわねーかまわねー!」
<特攻偵察?>
「そーゆーこと!」
<了解>
@さん、崖を登る。バー表示。長時間作業ですね。
「川はどうすっかね? 入ったら死んじゃうしなー」
<リードミーに舟の話があったような。・・・あった。クラフトで舟が造れる、かも?>
「おお! 造って造って!」
<はいな>
風花さん、メニュー操作。クラフトメニューかな?
パパパッと素早く内容が切り替わって・・・俺、何が何だかわからねーw
ぴた。操作止まる。
「どったの?」
<どっこい、手斧がないんですね>
「どっこい。手斧がないと、なんでダメなの?」
<イカダか丸木舟が造れるみたいなんですけども>
「ほうほう」
<どちらも、丸太が必要で>
「あ、手斧がないと、木が斬れない?」
<そーゆーこと>
「うーむ。村まで引き返して・・・もダメか。手斧全部買っちゃったもんな」
<うん>
「ちょっとストップ。考える」
<はい>
俺、黙って考える。
風花、マウスカーソルぐるぐるする。
なんだよw さびしいのかよ。
「・・・まず、舟で川下るってのが正解かどうか? そっからだよね」
<正解って?>
「いやホラ、舟造るのって、長時間作業でしょ?
時間かけて造ってさー、出発してドボーン! じゃ意味ねーじゃん」
<ああ。時間の無駄じゃん! って>
「そーゆーこと。でさ、うまく乗れたとしたって、先に何あるかわかんねーし」
<あばれカワウソとか>
「なんだよそれwww」
<けどカンタさん、舟があれば、楽に荷物を運べますよ>
「え、荷物運べんの?」
<@も含め、一定の重量まで積載可能・・・とリードミーにはあります>
「へえ!」
<大きな船なら、馬車ごと乗ったりもできるみたい>
「え!?」
<『大きな船は港にあります。港を探しましょう!』とあります>
「港町いいね! なんかワクワクしてきた! 川下ったら港あんのかな?」
<さー?>
「んじゃイカダ作るか! すぐできる?」
<わかんない。木を斬るのは時間かかりそう>
「あー・・・」
俺、しばし黙考。決断。
「やろう」
<やりますか>
「死んだら次に引き継ぎゃいーんだよ!」
<片道製作ですね!>
「そーだよ! 手斧、何本あったっけ?」
<3丁。ナイフは7>
「3つかぁ。うーん・・・じゃあ、1つだけ動かすか。
手斧1とナイフ3、川の方へ持ってかせてくんねー?」
<はい。では、道を旅行中のメンバーから、1人だけ引き返させるということで>
「うん。そいつに手斧1とナイフ3ね」
<了解>
道を歩いていた@隊。1人だけ、オートトラベルで引き返す。
「あと、釣りとかできねーかな?」
<釣りは、針と糸があれば可能。網があれば網漁も>
「ねーよ! ・・・ないよね?」
<針は骨から作れます。糸は腱で代用できます。網は・・・材料が足りないかな>
「腱って、釣り糸みたいになんの?」
<わかんない。このゲームでは代用可能ですね>
「へー。じゃ、いま引き返してる@さんに、骨と腱回収させちゃって」
<了解>
各地に散らばった@軍団。
道をゆくやつ。手斧とナイフ持って引き返すやつ。山に登るやつ。
それぞれが、明日のために挑戦するのであった──食料も持たずに!
<道を移動中の班、三叉路を発見>
「おっと?」
<川沿いにつづく道と、谷間を東に登ってゆく道です。どうしますか?>
「分けよう」
<半分に?>
「うん」
<らじゃ。ちょうど手斧1ナイフ2で1班ずつできるので、そうしますね>
「それで! ・・・ふわーあ」
<はい?>
「あくびしちった。もう11時だわ」
<今日はここまでにしましょうか>
「んー、もうちょっとだけ。次なんかあったらやめる」
<はい>
3分ほどで次なんかあった。
<谷間を登る道、行き止まり>
「ありゃ」
<藪(やぶ)で道がふさがれてる>
「切り開いちゃえ」
<強行突破するの?>
「うん。周囲の状況調べんのが目的だしね。手斧あるよね?」
<うん。では藪を切り開きます>
風花さんはなんでもないみたいにしゃべってっけど、結構忙しい操作してる。
藪を切り開く(長時間作業)→カメラ切り替え→木の枝を拾う(長時間作業)→カメラ切り替え・・・みたいな。
<登山中の@、1人転落>
「死んだか」
<死にました>
「南無ー」
<場所変わって、三叉路東。藪の先、道を発見>
「ほう! 道あったの?」
<視界が通らない藪と丸太を越えたら、道が続いてました>
「丸太あんの? 持って帰れる?」
<持ち上げてみます。・・・ダメ、重い。1歩ごとに長時間作業>
「ダメだね。帰るまでに飢え死にしちまう」
<舟が欲しーい>
「舟作るのに丸太がいって、丸太運ぶのに舟がいって」
<ホント>
進むことしばし。
<前方に、赤@>
「むむ! 敵かな!?」
Human Brigand
@ ||||||||||
<『人間、山賊』>
15、山賊狩り
「山賊だー! 攻撃攻撃ィ!」
@軍団の3人、山賊を攻撃。
相手は1人。楽勝である。
“Fuckin' Villager!”とか叫びながら死ぬ山賊@。
<『クソ村人が!』>
「いいね! 雑魚っぽいセリフ」
で。その叫びに応じて、道の奥からまた山賊@。
<山賊@、2人追加>
「2人ならなんとかなるか」
<やります>
前進。
“Intruder!”“Beat 'em up!”とか叫ぶ山賊@。<『侵入者だ!』『ぶちのめせ!』>
その叫びに応じて、また山賊@が・・・。
<さらに援軍、5人>
「あw ダメだこりゃ。逃げよ」
<はい。さらに援軍、6人。合計13人>
「いやいやいや! 増えすぎっしょ!」
<装備は・・・装備もいいですねぇ>
「ヤバいよ! 負けたら手斧取られちゃう。逃げて逃げて!」
<了解>
@軍団、逃げ戻る。
藪と丸太で道がふさがれてるとこに差しかかる──長時間作業のバーが出やがった!
<あ、弓で射撃されました。1人死亡>
「弓だと!?」
<はい。投石紐。投石、投石、弓、投石紐・・・あー>
「死んだか」
<はい。3人とも。三叉路東、全滅>
「Oh NO!」
画面、暗転。
川岸でボケーッと突っ立ってる@に切り替わった。
「あー! 貴重な武器が! 山賊に取られる!」
<やられましたねぇ>
「やられましたよ。山賊陣営に!」
<ああ、陣営あるみたいですね>
「え? 陣営あんの?」
<たぶん。『ゾンビはすべての陣営に敵対』と書いてあったので>
「そっか」
ゾンビは世の中の敵かぁ・・・。
<あの藪にやられました>
「ん? ああ。あそこで長時間作業になったよね」
<障害物を乗り越えると長時間作業になる。行きでわかってたのに、やっちゃった>
「山賊が造ったのかな?」
<藪と丸太を?>
「そう。城壁っていうか」
<あの奥に、山賊の拠点があると?>
「うん。だって、大軍勢ローグライクじゃん? これ」
<あー・・・>
「くそー。悔しいねこれは。100人のときなら勝てたんじゃねーの?」
<初め、こっち来たのにね>
「そうだよ。あのとき片道旅行してればね? あーくそー。悔しー!」
<くやしー!>
2人で悔しがる。
<・・・あ、山、1人転落>
「また1人死んだか」
<はい、司令官>
「何人死んだっけ?」
<川で溺死1名、山で転落死2名、三叉路東の山賊で戦死3名。合計6名。残り、81名>
「そっかー。うーん! ・・・寝るわ」
<寝ますか>
「うん」
<では、セーブして終了しますね>
「お願いします!」
俺、いったん寝る決意する。
しかし悔しい。気分が収まらねー。
「・・・あ、女キャラ作っとこっか」
16、のちの女勇者である
<作りますか。時間は大丈夫ですか?>
「おう! 1人ぐらい。・・・あ、声は静かにしなきゃな」
<ワカリマシタ>
「フーカハ、イインダヨ。俺ダヨ」
<ハイ。どんなキャラにします?>
「そーだね・・・戦闘キャラはもういるし、方向性ちがうのがいいね。魔術師とかできる?」
<それらしきスキルはあります。でも伸ばせない>
「ダメなの?」
<うんダメ。ほら>
風花さんがスキルの1つをクリック。なんかエラーが出た。
<『名もない村では、このスキルは習得できません』>
「集落でスキル制限──おっと、いけね。集落デ、スキル制限、カカルンダ?」
<カカルノヨ>
「ソーカ」
<ソーヨ>
「んじゃ・・・あ、そう言えば『追跡』スキルっつってたっけ?」
<あります。追跡、知覚。いずれもカリスマ系>
「カリスマ系?」
<能力値ね。力が強い、タフ、素早い、メンタル強い、影響力ある、カリスマ──の6種類>
「はあ」
<追跡と知覚はカリスマ系>
「なんでカリスマなの? 足跡の追跡だよね? なんでカリスマ?」
<リードミーによると・・・『カリスマ。霊的パワー。高いと異性を魅了しやすくなる。知覚力も上がる』>
「なんじゃそりゃ!」
<検索してみますか?>
「してみましょう」
<ふだんお使いのブラウザーを立ち上げますか?>
「立ち上げます! ・・・・・・・・・あ、待って待っ──」
立ち上がるブラウザー。ばーん! ハダカの女。
あー・・・やってしまいました。
タブ開いたままだったわー・・・。
「・・・ごめん。忘れてた」
<あ、見ちゃダメでしたか。すみません>
「いや、なんつーか、ごめん! 閉じといて」
<はい>
「ほんとごめん」
<いえw わざとでなければ>
「わざとじゃないです! すみませんでした!」
<なら。私、『子供ではない』扱いですし>
「・・・大人なの?」
<アメリカでは『成人に準ずるAI』枠ですね>
「あ、そっか。社長さんなんだっけ」
<うちの社長もAIですが、私とは別人ですよ>
「そうなの?」浦部もそんなこと言ってたっけ。「フーカは、社員さん?」
<いえ、ちがいます>
「ちがうの?」
<うちの社長と私は、設計図がちがいますからね>
「???」
<人間はみんな設計図一緒じゃないですか。ホモサピエンス。社長も社員も、同じ人間>
「あー、なるほど。機能がちがうわけじゃないもんね」
<そう。んー・・・ピザとペパロニ?>
「なんじゃそりゃwww」
<社長、ピザ。私、ペパロニ>
「わっかんねー。おいしそうってことしか」
<私なんて、小っちゃな存在ってことです>
「んなことねーよ。フーカは、フーカだよ」
<そう? ありがとう!>
「いえいえ。ホントごめん、さっきは」
<いえいえ>
「そっかー・・・」
風花さん、歳上だったのかー。
「えー、ま、ほんじゃそういうことで、追跡キャラ作ってください」
<はいな。カリスマ女キャラ。追跡に一点集中で。・・・作成しました>
早ぇー。
<名前はどうしましょう>
「・・・考えてなかった。なんかいいのある?」
<ピザ>
「www」
<・・・急に言われても思いつきませんよ!>
「じゃあピザでいいや。社長には内緒ね」
@Pizzaちゃん誕生。
カリスマ特化、足跡追跡しかできない、フニャフニャに柔らかい女キャラ。
──のちの女勇者である。
いやー、俺も風花さんも、予想もしなかった! この子があんな活躍するとは。
・・・ま、途中で死ぬんですけどねw
17、次回は山賊の討伐だね
「よっしゃ。んじゃ、今日はこれで寝ますわ」
<はーい>
「おやすみ、フーカさん」
<おやすみ、カンタさん>
「・・・あ、電源どうする? 入れといたほうがいい?」
<いえ。切ってもらってかまいませんよ>
「記憶飛んだりしない?」
<大丈夫です>
「そっか」
・・・けど、なんていうか。
「なんか、切りづれー」俺、照れる。「さびしくってさー」
<・・・私も、ちょっとさびしいです>
「へへへ」
<でも、記憶が飛んだりはしませんから。そこは大丈夫です>
「わかった。んじゃね。
明日ぁー、朝一でディスク買いに行って来っから。あ、朝一じゃ開いてねーわ」
<はーい>
「んじゃまた明日ね」
<次回は山賊討伐だね!>
「おう! やっつけんぞ! おやすみー」
<おやすみ・・・>
スイッチ、off。
「やっべ、12時回ってら」
1人でつぶやく。
当然、応えはなかった。
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