第15話 お願い

 「まさか生きていたとは……あの日、死んだと思ったんだがな……二コラ=ローレン」

「相変わらずだね、エドアルド……やっぱりあの日、死ねばいいと思ってたんだね」

「ああ、勿論だ。お前は目障りだからな」

 何度目かも分からない因縁の再会に憎まれ口を叩いて笑いあった僕らだけど、笑い声が止んだ後、気味の悪いものを見るような目でエドアルドは言った。

「それで……お前は、何しに来たんだ」

「そうそう、僕さ、お前に頼みがあって」

「頼み……?」

「そう。あのさ、エドアルド。……僕を、殺してくれないかな」


 「は……?」

僕の突然の頼みに、エドアルドは意味が理解できない、と言うように首を傾げた。

「民衆の目の前で、派手に」

「何故だ……?お前、助けられて見逃されて、次は自ら死を望むのか……?」

俺が言うのもおかしな話だが……とエドアルドは困惑したように言った。

「僕、もう疲れたんだよね。アナスタシアはもういないし、お前に腕を貫かれてから本調子は出ないし。何より、祖国に見捨てられたあの日からずっと気持ち悪くて」

「だからあの日、やっと死ねると思ったけど……アナスタシアが、来ちゃったしね」

エドアルドは何も言わない。

「だからさ、殺してほしいんだ」

「……俺は、お前が嫌いだ」

「うん、知ってる」

「だから、殺してやってもいい」

「……だが……その真意は何だ?」

「……どういう意味?」

「死ぬなら、一人でもできるだろう。それに、わざわざ俺じゃなくても、殺してくれる奴は他にもいる」

「お前は一体何を考えているんだ、何が狙いなんだ……?」

ああ、そういうことか。

僕は笑って答えた。


 「別に。魔女を二度も殺せるなんて、そんな名誉なことはないだろう?最期くらい、大嫌いな君に花を持たせてやろうと思ってね」

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