第14話 何度目かの再会
この数年の間にも、魔女狩りは続いた。
何人もの魔女が殺され、その情報は僕の耳にも何度か届いた。
アナスタシアが死んでしまった悲しみから、彼女と親交のあった別の国の魔女がこの国の王に使い魔を送って怪我をさせたらしい。
それに恐れを成した王が、この国に住む魔女を片っ端から殺したそうだ。
もちろん、全ての魔女が消えたわけでは無い。彼女たちは自らの身を隠す魔法を心得ているから、今生き残っている魔女は皆姿を隠してひっそりと生きているけれど、それでもこの国の魔女は、半分以上も殺されてしまった。
そうして人間の前に魔女という存在が姿を表すことが無くなった今だからこそ、この格好で外に出ることには大きな意味がある。
現に今も、好奇の目を向けられている。
アナスタシアの格好は、あまりにも『魔女』過ぎたしね。
「ねえ、あれって……」
「ど、どうして生きているの……?」
「私見たわよ……あの人が処刑されるところ」
「魔女だわ……エドアルド様に復讐をしに来たんだわ」
ひそひそと、恐れ戦く声色。
処刑されるところを見たのなら、何故違う人間だと気がつかないのか。
僕とアナスタシアの髪色は、全く違うと言うのに。
まぁ、それも仕方ない。
時の流れは、記憶を劣化、風化させる。
「……着いた」
久しぶりに見た王宮、城は相変わらず都心に鎮座ましましていた。
門を守っていた門番に「こんにちは」と声をかけて微笑むと、すぐに気付いたみたいで、怯えながら門を通してくれた。
勿論、向かうのはエドアルドの元だ。
城を歩いている間にも、多くの騎士とすれ違ったが、ほとんどの騎士が僕を見て怯えた。
アナスタシアが生き返ったとでも思っているんだろう。
それこそ、復讐をしに来たとでも。
でも今日は、復讐に来たわけではない。
ただ、今日はその前に、寄りたい場所があった。
辿り着いた部屋の前で思案する。
扉に書いてある役職は、この騎士団で、上から二番目だ。
「すごいなぁ……本当に出世したんだな」
なんだか自分のことのように嬉しく思いながら、扉を叩く。
すぐに「入っていいよ」と仕事モードな返事があったので、扉を開けた。
本を読んでいたらしい彼は、眼鏡を取りながら僕の姿を見据え、目が落ちるんじゃないかってくらいに目を丸くした。
「あ……二コラ……」
「久しぶりだね、ルイ」
「ほ、本当に二コラなのか……?本当に……?」
そう言いながら、優しい親友はまた涙を零した。
「もう、泣かないでよ。本当に僕だよ」
「よかった……今度こそ、死んじゃったんじゃないかって……」
「大袈裟だなぁ。大丈夫、この通り元気だよ」
僕らは熱い抱擁を交わした。
「それにしても、その格好、アナスタシアそっくりだね」
「そう?……なんだか僕は、違和感しかないんだけどさ」
「そんなことないよ、よく似合ってる」
それから僕は、今日ここにきた理由を話した。
「そうか……」
ルイは悲しそうな顔をしていたけれど、「でも、それが君の選んだ道なら俺は止めないよ」と言った。
「ありがとう」
「でも、また君に出会えてよかった」
「うん、僕も。……じゃあ、そろそろ行くね」
「もう行くのか……?」
「うん、日没も近いし」
「そうか……わかった。元気でな」
「うん。ルイも、頑張ってね」
また熱い抱擁を交わして、僕は部屋を後にした。
「ここかな?」
またしばらく歩き、部屋の前で足を止めた。
扉に書いてある名前を確認して、ノックする。
すぐに返事があった。
ガチャリ。
奥にある椅子に座ってどうやら事務仕事をしていたらしいエドアルドは、僕の姿を見て戦慄した。
「お……お前は……」
「お久しぶりです。〝あの時〟はお世話になりました」
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