第6.5話

 アナスタシアのいなくなった、アナスタシアとの思い出が残る静かな隠れ家で、僕は一人、考えていた。

魔女狩りのこと、すでに殺されてしまった哀しい魔女たちのこと、アナスタシアのこと……

考えるだけで、何も出来ない。

それが悔しかったし、自分自身に腹が立った。

ただ、最期の最後で、アナスタシアを抱きしめることができてよかった。

僕は、アナスタシアの体温を胸に刻み込んだ。

絶対に忘れない。

 僕は、あの日、アナスタシアに助けられてから一回も着ていなかった騎士服を手に取り、そして身に纏う。

因縁の再会なんだ。少しでも、相手に嫌な気持ちになって欲しい。

僕って案外、性格悪いかも。

最期になってそんなことに気付いた僕は、騎士服を着て姿見の前に立ちながら、思わずくす、と笑ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る