第5話 カラメスカ村から

レノンとオルフェウスのメンバーは遅めの朝食を食堂で集まって食べていた。レノンはみんなが食事を食べ終わることを確認した後、店員さんに食器を片付けてもらう。その後、地図を広げて時間ができてしまったので今日の予定を確認した後、各々が自由に行動する形となった。


「それでは、1時間後に村の北門に集合でお願いします」


オルフェウスのメンバーは、その言葉を聞くとそれぞれが行動を始める。レノンは、今日二日酔いの人間がいないだけで、感動していた。特に率先して昨日の宴を盛り上げたダリウスは、かなり村人に飲ませ、飲まされのような状況にあったように見えていた。レノンは唯一机の近くに残っていた、ユウジンに話しかける。


「もし、予定がないなら出発まで手伝ってもらっていいかな?」

「ええ、構いませんよ。何をしたらいいですかね?」 

「先に来た門に馬車を持っていって、馬を少しは知らせてあげようかなと思ってね。その間、馬車の見張りをお願いしたいんだ。安いかもだけど、300ゴールドを報酬として」

「暇なので、行きますよ。お金も貰えるなら、万々歳です。自分の荷物を纏めたら、宿の入り口に集合でどうですか?」


レノンは彼に感謝を口にした。


「ありがとう、ユウジン。それじゃ、宿の入り口集合で」


その後2人は、宿の各々の部屋へと消えていった。暫らくした後、彼らは各々の部屋から宿の入口へと歩いていく。レノンが先に到着して、その1〜2分後にユウジンが入口に着く。レノンはユウジンに言った。


「それじゃあ、北門に行こうか」


彼らは、宿屋の横の建物から、馬車を走らせて北門へと移動していく。

道の途中で、リリスが大きな袋を両手で持っていたので、馬車の中に積んでもらい、一緒に北門へ向かった。リリスが2人に言った。


「まだかなり集合時間まで時間あるのに、お二人とも向かうのが早いですね」


レノンが言った。


「そうだね。少しだけ、ガラハドを走らせてあげようと思ってね。ユウジンにバイトをお願いしたんだ」

「納得なんですけど、それなら私もバイトしたいですね。何するんです?」

「馬車の見張りだよ。誰かに取られたら困るだろ?」

「レノンさん。私も監視します。どうです?」


レノンは、それを見て苦笑いしながら言った。


「どうです? って言われても。まあ、ユウジンにお金渡してるから、相談して決めてよ」


ユウジンがそれを聞いて言った。


「お金は渡さねーぞ。俺が貰ったんだからな」


リリスは泣き始める。


――暫らくすると、レノンは何とも言えない気持ちになった。

ガラハドは自主的に馬車を止める。そして、レノンは彼女に言った。


「立ち止まって泣かないで、門へ行こう。200ゴールド払うからさ。バイト頼むよ」


ユウジンはその一連の流れを見て、ため息をつく。


(リリスのやつ、こういうの時々やってるよな)


リリスはレノンからの言葉を聞いて、満面の笑みで言った。


「ありがとうございます、レノンさん」


レノンはその笑顔に少し困惑した。


(先ほどまで泣いていたはずじゃないのか)

 

その困惑した顔を見たユウジンは彼に言った。


「レノンさん騙されてますよ。いっつもやるんですよ、こいつ。レノンさんもいい勉強だと思って払ってください」


レノンは心の中で思った。


(なんで、もっと早く言わないんだ、ユウジンのやつ)


ユウジンは続けて言う。


「僕のことをもしかしたら恨んでるかもしれないですけど、騙したのはリリスですからね。それ、責任転嫁です」


ユウジンからしてみれば、表情で彼の内心は駄々洩れであった。レノンは渋々200ゴールドを彼女に渡して、北門へと向かう。


暫らくして、北門に到着すると、レノンは御者席から降りてガラハドを馬車から放した。

ガラハドは最近、物を持たずに走り回るといった行為をしていなかったので、声を出しながら、レノンとの一定の距離を保ちつつ走り回る。その間にユウジンとリリスは、御者席に座りながら、雑談をしていた。


20分程度経過したとき、馬車の周りには、オルフェウスのメンバーが集合した。ひと段落したガラハドを連れたレノンは、それを確認すると、馬車の方へ戻った。


「2人ともありがとう。おかげさまで、ガラハドもある程度は満足したらしい」


レノンがそう言うと、肯定するかのようにガラハドも声を出した。そして、レノンはガラハドを馬車に繋ぎなおして、皆に言った。


「ここから三日で、次の町です。気を引き締めて行きましょう。よろしくお願いします」


そして、レノンは馬車を走らせる。いつもの陣形をオルフェウスは作るため、ユウジンは馬車から離れて、前方に位置した 彼らは、出発前に何を買ったのかという話をしながら、進んでいった。その中で、ザラが買ったクッキーをみんなに渡し、それを食べた人は非常に高評価をしていた。


この日の予定は、元々3日かかる予定だった距離を2日半で行かなければならないため、休憩時間を通常よりも短縮し、行軍の速度を上げなければならなかった。


彼らは、魔物や野生動物との接触がなかったものの、太陽が沈む寸前に、予定していた小さな川のそばの野営地に到着することができた。そこで、彼らは休憩する間もなく、急いで野営の準備を行う。野営が終わると、レノンはユウジンと共に休憩がてら、魚釣りをしにいった。ユウジンが突然レノンの肩を叩いて、川の上流を指さす。


「あそこに熊がいます。小さめですが、万が一に備えて、皆のところに戻りましう」


レノンはそれを視界に入れると彼に言った。


「そうだな。向こうに気づかれないようにゆっくり戻ろうか」


2人はここまでで釣ることのできた3匹の魚を持って、野営地へと戻ったのだった。



レノンは翌日に目を覚ました。テントの外は雨の音が聞こえていた。テントから外へ出ると、見張りをしていたラーラが彼をみる。レノンは雨が降っていることを確認した後、焚火の上に簡易的な雨除けが作成されていることを確認した。


「おはよう。雨が降ってきたから、今日の移動は難しいかもね」


ラーラがレノンに言った。


「この時期は時々雨が降るから仕方ないな。天気ばっかりはどうしようも無いから」

「朝食作るから、ちょっと待ってて」


彼女はそう言って、レノンにお茶を渡す。彼は焚火の前で、お茶を飲み始めた。フライパンの上で肉が焼ける音がする。彼女は、手際よく野菜やパンを切り分け、皿に盛る。暫らくして、焼いた肉を切り分けると、彼女は完成した朝食を渡す。


「ありがとう」


レノンは、朝食を受け取ってから、食べ始める。


「美味いよ、ラーラ」

「気分いいね、感謝されるのは」


彼女はそう言って、自分の朝ごはんを作り始める。2人が静かな朝を過ごしていると、テントから一人ずつ人が出てくるその都度彼らは、挨拶を交わし、朝ごはんを食べ終えたのだった。みんなが集まったところで、彼らは今日の予定を話すことになった。レノンが彼らに言った。


「少し道を歩いてみて、状況の確認をしてから判断をしたいから、ドレイクとユウジンは一緒に来てくれ。テントの解体とかは、やらなくても大丈夫。現時点では、今日は勧めないと踏んでいるから」

「「分かった」」

「準備が終わったら、教えてくれ」


三人は準備を終えると、今日進む予定だった道を20分程度、状況を確認しながら歩いていた。レノンは二人に言った。


「靴に泥がつくくらいには、道の状況が悪いな」


同様に、ユウジンも呟く。


「雨のせいで、周りの音も拾いにくいところも嫌ですね」


ダリウスも2人に言う。


「視界もそこまで良くないな。晴れても、場合によっては霧ができるかもしれないから、明日に期待しようぜ」


レノンが彼らに言った。


「そうですね。今日は止めましょう」

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