第17話 再会

そして翌日、レノンは前日同様に釣り竿と盾というアンバランスな装備に軽食用の食料と水を持ち、50キロ入る麻袋を一つだけ持って町の外へ出るために門へ向かった。昨日魚を渡したこともあって、少しだけ門番の間で噂になっていた。門番はレノンに話しかける。


「その釣り竿に盾、もしかして釣り人の商人の方ですか?」

「私ですかね? 昨日、確かに二匹ほど魚を渡しましたけど……そのように呼ばれたのは初めてなので、人違いじゃないですかね?」

「同僚がすごく喜んでいたんですよ。魚をタダでもらえたってね。今日も期待してますよ」

「ハハハッ、まぁその時の運もありますからね」

「それでは、行ってらっしゃい」


レノンは、森へ向かって歩き始めた。ルートは既に確認できているので、よほど間違いをしなければ大丈夫だと彼は考えていた。おととい自分が作った、藪の道を進んでいき、川のそばを歩く前に目印をつけて、滝から目的地の群生地へとスムーズに進んでいった。


「よし、順調に来ている」


そこでレノンは休憩を行うことなく、麻袋の中にシルバースポアムを詰めていく。時々周囲を確認し、周りに人や獣の気配などがないかを把握する。10分ほどで麻袋は満杯になる。時々、鳥の鳴き声が聞こえてきていたものの、目の前に何かが姿を現すことは無く、非常にスムーズに物事は進んでいた。そこから来た道を急いで引き返し、町の近くまで誰にも見つからずに到着することに成功する。


レノンは、昨日見つけた隠し場所へと麻袋を隠すため、道を進んでいく。前方から馬車の音が聞こえてきて、レノンは急いで道を外れて隠し場所へと進んでいった。木の近くまでくると周囲の確認を行い、誰にも見られていないことを認識した後、麻袋を丁寧に木の空洞の中へと置いた。彼は、今日の計画の成功を確信して、一度深呼吸をしてからアリバイをつくるために川へと釣りをしにいった。


休日ではない日のため、人がいないため彼はのんびり魚釣りを行う。途中で、軽食用に持ってきていた食料を食べながら、時間を潰していた。結局、魚を2匹ほど釣ることができ、町の中へ入る前に門番に一匹ほど魚を渡して、宿へ戻ると併設された食堂に釣ってきた魚の調理を頼んでから部屋へと戻る。そして、彼は食堂でご飯を食べるために席に着き、いくつかの料理を頼んで、少しの間明日のことを考えていた。



「レノン」


突然自分の名前を呼ばれて、そちらを見るとそこにはカイルが立っていた。


「どうした? カイル」


レノンは中々返事をしないカイルを見て、頭の中で最近やった行動が頭の中を駆け巡る。


「今日、麻袋を持ったお前を町の外で見かけたんだ。声はかけなかったけどな」

「……」


レノンは次の彼の言葉を無言で待っていた。再びカイルが彼に言う。


「お前が道のわきに消えて、お前の状況からして危ないと思ったから、少し後ろをついて行ったんだ。お前は周囲を警戒していたようだった。何というか、その時のお前は声を掛けづらかったんだ」

「人違いじゃないか?」


悲しそうな顔でカイルは彼に言う。


「お前が大きな樹の下から立ち去った後に、麻袋の中身を確認したんだ。そこにはシルバースポアムが入っていた。あれは、今は入れないはずのミストの森で採れる素材だ。それに門番に話を聞いたところ、お前は外出の記録が残ってる……」


レノンは、これは完全に自分の計画がばれているようだと感じた。ため息がでる。カイルはさらに言葉を続ける。


「お前がやっている行為はルール違反だ。冒険者ギルドには確認をとっていないが、もしお前がギルドを通して買っているなら、町の外なんて言うリスクがある場所に隠さないだろ?」

「そうだな」

「お前には色々な音があるから、今回のことは誰にも言わないよ。だけど、お前の行為は見逃せないし、友人が犯罪者になるのを見たいとは思わない。俺のパーティでお前をシルバーヘイブンまで連れていく。そこで、商人から引退してくれ」

「……」

「何も言わないのか……明日ここを出発するぞ。仲間には、事情はある程度伏せてやるから、準備しておけよ。適当な理由を考えておいてくれ」


カイルはそう言って、レノンの前から消えていった。レノンは、店員が持ってきた晩御飯を食べながら、後悔をしていた。


翌日、レノンは朝早くおきた。久しぶりに馬車の準備をしていると、そこに遠征のために食料を買ってきたカイルが一人でやってくる。


「行きと同じような予定で帰るぞ」

「分かった」

「皆には適当に会話して、話を合わせてろよ。知ってるのは俺だけだから」

「――――ああ」


レノンはカイルと共に馬車を走らせ、この街に入ってきた時に使った門まで行くとそこには、フォージャーズのメンバーがいる。


「久しぶりですね。レノンさん」

「3人とも久しぶり。よろしく頼むよ……」


サラは彼に言う。


「なんだか、少し距離を感じる言い方ですね」


カイルは皆に言う。


「とりあえず、進もう。話は動きながらでもできるから」


5人は、その言葉で動き始める。もちろん、検問でレノンが止められる理由はなく、スムーズにイリシウムを出発する。


イリシウムでの道の中で、お互いの近況がどんなものであったかという会話を行いながら、彼らは順調にシルバーヘイブンへと進んでいった。レノンはカイルに言われた通り、少し話を濁しながらも、最後になるかもしれない旅を楽しんでいた。彼らは管理ペースよく進んでいたので、三日目のスタートの段階で既にストームハウルとの戦闘をした場所の近くにいた。三日目彼らが道を進み始めると、ぽつぽつと雨が降り始める。


レノンはみんなに言う。


「この雨で道がぬかるむと馬車が進めなくなる。ここはコミエンソ村に行くのが賢明だとおもう。行こう」


彼らは一人も反論なくコミエンソ村へと進んでいった。そして彼らは、前に来た時と同様に宿へと向かった。この日は、受付にマヤがいてスムーズにチェックインすることができた。レノンは久しぶりのベッドだったので、昼過ぎくらいの時間ではあったが、眠ることにしたのだった。


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次回

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