第18話 雨の影響

レノンがベッドに入った後、次第に雨音は強くなっていった。外から聞こえる異常な雨音で目を覚ました。


「なんだこの音、今までに聞いたことない音だ」


 彼は食堂にいけば誰かいると考えて、食堂へ向かう。

 そこでは、ノアに対してカイルとドレイクが冒険者についての話をしていた。

 一方でサラとミリアとミアは女子で固まって話していた。


 レノンは、男子組の方へ混ざろうと考えて、彼らのほうへ歩いていく。その時、ダニエルが慌てて、食堂へ入ってくる。そして、彼は子供たち二人の顔を確認して、安堵する。


「雨の量がやばいんだ。坂の下の方に住んでいる人をこちらに避難させないとやばいかもしれない」


 焦りからダニエルの言葉から、敬語が消えていた。


「確かに。今までこんな雨の音は聞いたことなかったけど....」


 ミリアが言った。そして、レノンは言う。


「雨がどのくらいやばいかわからないけど、家を回ろう。カイルお前はここに残って、みんなの指示を頼む。ドレイク、ダニエルさん、俺と一緒に来てくれ。村は基本的に舗装されるから、俺の馬車を使おう。子供や老人もそっちの方が移動しやすいはずだ」


 ――彼らは、三人で外に出る。


 そのとき、雨以外の音が一切聞こえない。村の舗装された道も雨によって大いに影響を受けていた。水たまりが道路のあちこちにでき、その中には小さな水流が流れるようになっていた。彼らは急いで、馬車の用意を行い、ダニエルが御者席に並んで乗り、ドレイクは荷台に乗り込む。


「ガラハド、頼むぞ」


 レノンが声をかけ、馬車は走り出す。


「先に下の家から上の家に行く形で家を回ろう。案内を頼みます、ダニエルさん」


 大きな雨滴は窓ガラスを叩き、屋根から流れる水が勢いよく地面に落ちていた。ダニエルが言った。


「一番下の区画は三軒で、それぞれの間隔が広いんだ。まずは、坂を下りたら左に行ってくれ」


 彼らは出発してから、10分ほどで最初の家に着く。ダニエルとドレイクは馬車から降りて、ドアの鐘を鳴らし、大きな声で呼びかける。


 ――雨はさらに強くなっていく


 すでに彼らの靴は、水の中にあった。二階の窓が開き、男性が口を動かす。

 しかし、家の下にいる彼らは、雨の音で何を言っているかわからない。


 そのため、彼らは全力で身振り手振りを行い、下りてくるようにと伝える。

 その男性の顔が引っ込み、すぐに玄関のドアが開き、男性、女性、男の子の三人が顔を出す。彼らに馬車に乗るように伝えて、馬車は次の家に向けて走り出す。


 ――次の家がぼんやりと見えてきた。


 その時ダニエルがレノンに言う。


「ここから先は舗装されていないから、馬車はここで待っててくれ」


 その言葉を聞いて、レノンはドレイクに言った。


「死ぬ気でここに土魔法で道を作ってくれ。マジックポーションを数本持ってる。お前の力が必要だ」


 ドレイクは頷き。彼の周りが輝く。水面の中から地面が隆起し道が現れ、その上を馬車が走る。


 ――そして、次の家に着く。


 先の家と同様に、ドレイクとダニエルが下りて、一回の鐘を鳴らす。暫らくすると、ドアが開き、高齢のおばあさんが出てくる。扉から見える一階はほとんど浸水していた。ダニエルがおばあさんをおんぶして、馬車の荷台へと連れていった。



 そして、彼らは最後の家に馬車で向かった。その家は、家の裏が山のようになっていて、一階の一部に崩れた土砂が流れ込んでいた。既に家の玄関に、三人の人影があり、ダニエルとドレイクが話をしにいく。

 その玄関にいる女の子は号泣しており、他の二人も呆然としているように見える。レノンはダニエルとドレイクが御者席に乗ったのを確認して、宿に行くための道に戻る。


 宿への坂道の入り口には、カイルがいて、レノンたちに言った。


「村長が既にここより上の家の人に避難を呼びかけ終わっている。だから後は、ここにいる人間だけだ。急いで戻ろう」


 レノンが言う。


「分かった。お前のも馬車に乗れ。後ろで頼む」


 カイルは乗り込んで、馬車の中から御者席に乗り込んだことを報告した。ガラハドは全力で、馬車を引っ張り、この宿へ続く道を進ませる。道は、ほとんどウォータースライダーのような状態になっており、必死にガラハドは進もうとするが、なかなか進むことはできなくなる。ダニエルは農家で仕事をしているので、馬車の心得があったので、レノンは彼に御者を任せ、馬車から降りた。そして、荷台の方へ周り、カイルとドレイクに下りて馬車を押すように声をかける。三人は馬車を後ろから必死で押す。足が滑る力が入りにくい状況だが、ドレイクが魔法で足場を上手く作ることで、少しずつ馬車を進ませていく。


彼らの足元は濁った水が流れており、足元が確認できず、時々足を滑らせる。馬車にいるすべての人間が緊張感を持っていた。レノンが必死で馬車を押していると、急に馬車が軽くなる。それは、坂の一番上の道に出たということを示していた。


 馬車は宿の前で止まり、カイルやドレイクがサポートする形で、馬車から人がおりて、宿の中へ避難していく。幸いにして、宿の周辺は薄く水が道の上を覆っている程度であった。馬車を横の建物に戻して、レノンはガラハドに労いの言葉を掛けた。その後、ガラハドのケアをしてから宿に戻った。


 食堂の中へ視線を向けると人でごった返している。屋根の一部が雨漏りによって傷つき、水しぶきが床に跳ね返ることを防ぐために、村人たちは傷ついた屋根の下にバケツを置いて雨漏りを受け止め、損害を最小限に留めようとした。宿の時計を確認すると、宿を出てから、かなりの時間が経過していた。レノンが状況をセバスから聞いたところ、現在は大浴場に入れ替わりで、入っているような状態らしい。早めにこの宿に来た人が、家から余分に服を持ってきたり、食料を持ち込んでいるため2日くらいなら何とかなるといった状態らしいとレノンはカイルからそう教えられた。 


 宿の部屋もたくさんあるわけではないため、レノン、カイル、ドレイクは部屋を子供や老人のために空にし、優先的に渡した。もう一度レノンは、馬車を確認しに行くと、馬車の車軸が曲がっており、よくここまでもったなと言いたくなった。また、魔道具から輝きが失われていた。そのことをロジャーに申し訳なく感じたが、馬車を有効的に使えたことに誇りを感じていた。


暫らくしてから、大浴場に入るために、レノンは宿の中に入っていく。大浴場の脱衣所で服を脱ぎ彼は、浴場に入る。そこには、10人を超える人間がいた。その中には、いかにも体調の悪そうなドレイクがいた。


「大丈夫か?」


 レノンが声をかける。


「魔法を使いすぎるとこうなるんだ。まじで、気持ち悪い。俺は体を洗い終わったから、もう上がる」


 彼はそう言って、浴場を後にする。レノンは、風呂につかりながら、今日の出来事を思い返していた。


「疲れた。でも、それは、俺だけじゃないか」


 彼が、風呂から上がると、食堂の机や椅子は隅の方へ寄せられていて、床には、掛け布団やシーツが引いてあった。成人男性たちが、ここに集まって、話したり、横になっていた。その中でドレイクは、掛け布団の上で爆睡していた。そんな中、雨の音はピーク時よりも弱くなってきていた。その中にいたとある男の子が言った。


「いつ、雨は止むんだろう」


 ―――――――――――――――――――――――

 次回


 レノン達は、復興の手伝いを行う

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