第2話 依頼の詳細

レノンが冒険者ギルドの建物前に到着すると、パッと見た感じソフィアを見つけることはできなかった。寒さもあり、彼はギルドの中へと入ることにした。彼が建物の中に入ると、ソフィアを見つける。


「やっぱり先に来てたのか。待たせてしまって、申し訳ないな」

「やっと来た。まあ、そんな待ってないから気にしないでいいよ」


「それはありがたい。どこへ行くか決めてるのか?」

「もちろん、普通の食堂だけどね。ついてきて」

「分かった」


レノンはソフィアについて行く形で彼女の選んだお店へと向かっていった。


「あの日からほぼ1年が経つのか」

「そう言われるとすごく長い時間な気がするわ」

「それで最近どうなんだ?」

「解散してからかなり早いタイミングで今所属しているパーティーに拾われて、そこからずっと変わらず活動を続けてる。うちは討伐依頼をメインに受けているから、収入は素材の売却が主だね」

「最近だとどういう魔物を相手にしたりしたんだ」


「タランタシオね。と言っても、他のパーティーと合同で戦ったんだけどね」

「すごいな。竜種じゃないか」

「私だけの力じゃないから。参加したみんなの力のおかげよ」

「それにしてもすごいよ」

「照れるね。そう言われると」


2人は雑談をしながら、目的の食堂へ到着する。


「到着したわ。ここよ」


彼女はその店の扉を開けて中へと入っていく。それに従う形でレノンも入る。店員が彼女のところに近づいてくる。


「何名様でしょうか」

「えっと。先に1人来てるのよね。1人で来た女性客はいなかった?」

「それでしたら、1人だけ。ローブに杖を持った女性の方でした」

「きっとそれだわ。案内してもらってもいい」

「分かりました」


レノンは2人の会話を聞きながら、3人目の存在がほのめかされたことで、頭の中では疑問が浮かぶ。店員について行く形で2人は、席に案内される。その席には、レノンも見知った顔の女性が座っていた。


「エリザじゃないか、久しぶり」


席に座っている女性は、茶髪のポニーテールで青い瞳を持っていた。


「久しぶり、レノン。もうほとんど1年ぶりね」

「そうだな。エリザもソフィアに誘われたのか?」

「そうよ。私はもう冒険者をやめているから、基本的にこの町の中でしか生活してないからね」

「今はこの町の魔法学院で学生をしてるって聞いたよ」

「そうそう。2人とも早く座りなよ」


2人はエリザに促される形で、席に座り、いくつかの注文を店員にした。三人は約一年ぶりの再会を楽しんだのだった。


――翌日


現在彼は、このグレースエッジ商会のシルバーヘイブン支店に馬車を運んでいた。この日の目的は積み荷を積むことと冒険者との顔合わせや依頼の詳細を確認するためであった。彼は、これまでもよく通っている大通りから脇道へ入り、支店の倉庫へとたどり着くと倉庫の入り口付近の男がレノンに訊いた。


「こんにちは、貴方がレノンさんですか?」

「そうです。私はレノンと言います。ロジャーさんの紹介で依頼の品を受け取りに来ました」

「自己紹介ありがとうございます。私はこの支店の副支店長をしています、アイザック・ミュラーと言います。貴族の三男ですが、過度の敬語は無しでお願いします」


 アイザックはレノンを倉庫の方へ案内していく。


「道を占領するわけにいかないですから。レノンさん、倉庫の方へ連れて行くので、私についてきてください」


 倉庫の中に馬車を停め終わるとアイザックが今日の予定をレノンに言う。


「まず初めに護衛の冒険者の方たちと顔合わせをしてもらいます。その後に、馬車に積み込みをして頂くといった流れを予定しています。本日はよろしくお願いします」



レノンは倉庫に馬車を置き、商会の従業員にガラハドを任せて、アイザックの後ろをついて、建物の中を進んでいく。そして、彼らは三階のとある部屋の中に入る。アイザックが扉を開けると中には、5人の冒険者がいた。3人の男性と2人の女性が机を取り囲むように並んだ椅子に座っていた。彼らは、アイザックに気づくと静かになるとレノンに言う。


「レノンさん開いたお席のどちらかにお座りください」 


レノンはその言葉を聞いて、空いた席に座った。その後、残りの席にアイザックが座り、再びアイザックが口を開く。


「オルフェウスの皆さん、この方がレノンさんです。今回の依頼を一緒に行っていただく商人の方です。そして、貴方たちの護衛対象になる方です。とりあえず自己紹介の方からよろしくお願いします」


 最初に、身長が高く、気の強そうな女性が口を開いた。


「私はラーラ、このパーティ・オルフェウスのリーダーで近接戦闘を担当している。またパーティの指揮も基本的に私が行っている。今回の依頼を共に成功させよう。よろしく頼む」


 彼女に続いて、非常に大きく強靭な体を持っている男が言う。


「俺はダリウス。ラーラと同じ近接専門だ。攻撃の場合は斧を使うが、遠距離が有効な場合は、盾を使って前線を張るのが俺の役目だ。よろしくな」


 三人目は、少し細めの男性であった。椅子に杖を立てかけており、魔法使いの雰囲気を漂わせている。


「初めまして、レノンさん。私は魔法使いのエルシャンです。このパーティの火力担当ですかね。よろしくお願いします」


 次にもう一人の女性が言った。


「あたしはリリス。このパーティでは回復役よ。よろしくね、レノンさん」


 最後に、非常に愛想のよさそうな男が自己紹介を行う。


「初めまして。自分はユウジンと言います。基本的に斥候のようなポジションをしています。周囲の警戒は任せてください」


 オルフェウスの一同の自己紹介が終わると次はレノンが自己紹介を行う。


「初めまして、先ほど簡単に紹介していただきましたが、レノンと言います。駆け出しの商人です。よろしくお願いします」


 自己紹介が一通り終わると、アイザックの方から今回の依頼の説明があった。

今回の依頼は、北東へ9日ほど行った都市モンテルビオへのナイフの運搬である。一本約100gのナイフで3,000本を予定している。出発は明日か明後日かとのことだったが、話し合いの結果、明後日の朝に出発することが決定した。

出発地:シルバーヘイブン

2日目:ヘイズ(町)

5日目:カラメスカ(村)

7日目:ソレアド(町)

9日目:モンテルビオ(目的地)

食料は町や村に着くたびに買ってもらうという旨を伝えられた。


その後彼らは説明を受け終わると、馬車への積み込みを行うために倉庫に向かった。そして、彼らは予定されていたナイフを入れた木箱を馬車へ積み込んだ。アイザックは彼らの積み込んだ積み荷の確認を従業員に確認させると、レノンに予定された経路を記した地図と食費の入った麻袋を手渡した。その後、彼はレノンに言った。


「地図はシルバーヘイブンからモンテルビオへの簡易的な地図です。この地図をあげるので、好きなように書き込んでもらっても大丈夫です。また、明後日の出発までに4日分の食料を積んでおくので、食料に関しては心配しないでください。馬車の受け取りの際は、従業員が倉庫の近くにいるので、声をかけてくださいね。それではよろしくお願いします」


レノンは丁寧に「ありがとうございます。」とお礼を言った後、オルフェウスのメンバーに明日の出発時間と場所を決めた。そして、ダリウスがレノンに言った。


「おい、レノン。この後、俺らと飯食べないか?」


それを訊いて、レノンは彼に言う。


「予定もないし、一緒に行かせてもらうよ。何時にどこに集合にする?」

「冒険者のギルドに19時集合で頼む」


レノンは彼らと別れた後、比較的出発が早くなってしまったので、塾の終わりの時間を見計らって、フレッドに会いに行き、作成が終わっている地図を2週間に一回ほどギルドの方へ渡す作業を依頼する形になった。遠征時に頼れるのは基本的にフレッドのみのため、売上の半額を彼に渡す形で話はついていた。万が一の場合に備えて、レノンは彼に5000ゴールドほど預けた。


その後、約束の時間にレノンは冒険者ギルドへ迎い、オルフェウスのメンバーと遠征の成功を祝して、酒場でお酒をたくさん飲んだのだった。翌日は、二日酔いになりながらも小屋に篭ってひたすら地図の作成に時間を使い、翌日の遠征出発に備えて早めに寝たのだった。


―――――――――――――――――

次回

出発

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