第9話 順調に進む旅②
――シルバーヘイブンを出発してから三日目の朝
フォージャーズは4人でローテーションを組んで、夜の間に見張りをしていた。最後の見張りを行っていたドレイクは起床したレノンに声をかける。
「おはよう。夜は特になにもなかったぞ」
レノンは彼に言う。
「ありがとう。朝は簡単なものを俺が作るよ」
レノンは一番に起きたので、朝ごはんを作ることにした。彼は、馬車の後ろからパンや肉などを取り出した。その後、焚火から火種をとって、丸く並べられた石の中の枯草の上に置く。そして、息を吹きかけ、火種が枯草に移ったのを確認して、その上から枯れ木を折りながら入れていく。火が大きくなったのを確認し、フライパンを石の上に置く。そして、ベーコンを適当に切ってフライパンに入れる。ベーコンの焼けるいい匂いを嗅いでドレイクが言った。
「正直今眠気がきてるけど、この匂いを嗅ぐと流石に腹が減ってくるな」
「自分も寝起きだけど、食欲がでてくるね。そうだ、皿を持ってきてくれ」
ドレイクは乾かしておいた皿をレノンの元へ運ぶ。その間にレノンは、適当に葉野菜を切り分けながら、フライパンの確認を行う。そして、皿にベーコンと野菜を適当に盛り付けていく。レノンはドレイクに訊く。
「俺はパン焼くつもりだけど、ドレイクはどうする?」
「どうせなら、焼いてもらおうかな」
レノンは2人分のパンを焼き始める。少し手持無沙汰なドレイクは、二つのコップに水を入れて持ってくる。パンが焼けると二人はご飯を食べ始めた。
2人がご飯を食べ始めてすぐに、他のメンバーも起きてくる。
彼らはお互いに挨拶をしてから、他のメンバーのベーコンをレノンがフライパンで焼き始める。レノンがカイルに言う。
「カイル、俺は飯食うから、適当に朝ごはん作ってくれ。ベーコンは焼き始めてる」
「ああ……」
カイルは目をこすりながら返事をする。そして朝ごはんが完成すると、三人も食べ始めた。レノンとドレイクは一足先にご飯を食べ終わり、急いでテントなどの片づけを行っていく。
ドレイクはレノンに言う。
「この感じなら、直ぐに出発できそうだな」
「まあ、みんながおきてくれたからな」
全員がご飯を食べ終えて、彼らは野営の片づけを行った。
――そして、彼らは準備を終えて出発する。
ドレイクは終始あくびをしていた。それを見たレノンは言った。
「ドレイク、馬車の中で寝てても大丈夫だぞ。今のところ、特に何も起きてないし。流石に寝不足は集中力に悪い影響が出そうだしな」
「本当か? 助かるよ。正直、眠気で頭がパッとしなくて」
ドレイクは、馬車の中に消えていった。
サラは言った。
「私は何回か商人の護衛依頼を受けたことありましたが、こんなタイプの商人は初めてですね。金払っている分しっかり働けよというタイプばかりでしたから」
カイルがそれに答える。
「元冒険者だからってのもあるが、レノンは昔から視野が広いんだよな」
レノンも言う。
「まあ、商人続けて言ったら、数年後にはそうなってるかもな。一応、最悪前衛なら俺が変われるってのもあるけどな」
この日も特段なにもなく、目的地に向かって進んでいた。何度かレノン達の様な馬車と素の護衛の横を彼らは追い抜いて、道を進んでいく。午前中に彼らはいつもより休憩を一回減らして歩いた。彼らは少し顔に疲れの色が見え始めてくる。レノンは再び、水分をとることを促した。一回目の休憩の後からドレイクが復帰してくる。
「休憩させてもらって助かった。ここからは任せてくれ」
「頼むよ。今日は結構ペースを速めて進んでるから、元気な人間がいるのは心強い」
二回目の休憩を終えた段階で、急に馬車が止まった。レノンは急いで、ガラハドに止まるように声をかけて、状況の確認を行うために馬車から降りる。サラが馬車の左の車輪を見て言った。
「車輪が溝にはまってますね」
その後、レノンは少し慌てながら、馬車から離れたカイルに声をかける。
「車輪が溝にはまってしまって、持ち上げるしかなさそうなんだ」
カイルはそれを聞いて立ち止まる。ドレイクがレノンに声をかける。
「俺に任せてくれ」
ドレイクが腰の剣を鞘から抜き、呪文を唱えると、車輪がはまっている溝が隆起し、車輪が動かせるような状態になる。ドレイクがレノンに言った。
「これで大丈夫だ。さあ、進もう」
「魔法が使えるから、中衛ってことになってたのか。助かったよ」
レノンは急いで、御者席に戻り、馬車を走らせる。そして、レノンはドレイクに訊く。
「剣と魔法どっちが得意なんだ?」
「ん〜。どっちかと言えば魔法の方が得意かもな。でも、剣が好きだから杖じゃなくて剣を使ってるんだ」
「斥候できるメンバーがいたら完璧だな」
サラはそれを聞いて言う。
「ほんとにそうなんですよね」
彼らは何度か馬車とすれ違いながらも道を進み、昼休憩を行う。
「今日は長めに昼休憩をとらずに行くよ。日差しは強くなってきてるけど、今日の目的地はそこまで遠くない。みんな頑張ろう」
レノンはそう言って、馬車に積んでる食料の中から、簡単に食べれそうなものをみんなに配る。皆がご飯を食べ終わってから少し時間が経過するとレノンは言った。
「少し休憩は短いかもしれないけど、先を進もう」
そして、予定した川の近くの野営ポイントに到着する。
「みんなお疲れ。まだまだ日は高いけど、野営の準備を始めよう。準備が終わり次第水浴びなどを交代でしようか」
女子のメンバーは水浴びに喜びの声を上げる。レノンは、いち早く馬車から鍋を下ろして、川の水を鍋に汲んで過熱を始める。そして、ガラハドに水をあげるために川へと連れて行った。設営が終わると女子組は水浴びに行き、レノン達は、日陰で彼女たちが戻ってくるのを待った。
彼女たちが戻ってくると、レノンは訊く。
「今日は誰か狩りにいくつもりはあるか?」
「私行きます」
ミリアは、元気よく手を挙げる。ドレイクは彼女に訊く。
「さっき水浴びしたのに行くのか?」
「また浴びればいいじゃない。じゃあ行ってくる」
ミリアは弓と矢を持ち飛び出していく。それを見て、カイルが後ろを追っていった。暫らくすると一羽ずつ鳥を持ちながら、ミリアとカイルが戻ってくる。
「50ゴールドを二つお願いします」
レノンは喋りながら、ポケットの袋から100ゴールドを渡す。
「後で、もう一度鍋使わせてもらうよ」
レノンは煮沸を終えた水の入った鍋を馬車の近くまで持っていき、水を入れている樽に入れた。その後、男性組は川で水浴びをした後、服などを川で洗ってから適当なひもを使って、乾かした。その後、ご飯を食べてから明日の予定を地図を見ながら共有する。周りが暗くなり、何もできることが無くなったので、見張りを一人残して、皆が横になった。この日は特に星空が輝いていた。
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次回
トラウマ
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