第22話 村からの依頼

――1週間後


レノンたちはコミエンソ村を出発した。この日の天気は非常に良い。

カイルが言った。


「道の凸凹具合がひどいな。車輪がはまりそうでひやひやする」


それに、レノンが言った。


「そん時は、ドレイクが何とかしてくれるさ」


ドレイクは土砂降りの日の気持ち悪さを思い出して、何とも言えない気持ちになった。

女子組は久しぶりの町に歓喜していた。

レノンは彼らに言った。


「今回は、ほとんど荷物が馬車に乗っていないから、急ぎ目で行こう」


彼らは、日が落ちてからも走り続けた。彼らは、その日のうちに何とか目的地に到着した。ほとんど休憩を取らなかったので、彼らは疲労困憊であった。町の門番が声をかける。


「こんな遅くに、珍しいですね」


レノンは「仕事なんです」と言って、商会の証明書を見せる。

門番はそれを確認して、レノンたちを通した。


村から一番近い町の中は、小規模だと言われていた通り、あまり大きくないことが窺える。しかし、彼らはかなり長い間、村の中にいたので、高揚感はすごかった。町に着くとレノンはフォージャーズのメンバーに言った。


「今日は宿をとって休もう。俺は明日仕事をするから、みんなは自由行動してくれ。カイルたちは俺が泊まる宿と別の宿に泊まるだろうから、明日の夜に俺の泊まる宿に来てくれ。そこで、出発時間と予定を話すよ」


レノンは彼らと別れて、商人用の宿に向かった。彼は疲労もほとんどピークだったので、ガラハドのブラッシングや、風呂といった、最低限のことのみをして、ベッドに横になった。



――翌日、彼は日が昇る前に目を覚ます。 


彼は今の自分の予定と所持金の確認を始めた。

①冬小麦の種の受け取り

②建築ギルドに風車の作成の依頼。(小麦を小麦粉にするため)



彼の所持金は出発の段階で、約100000ゴールド。


――窓の外から、日光が入ってきて、彼を照らす。


 彼は、急いで革のカバンにセバスから受け取った、ギルド宛の手紙などを詰め込んだ。そして、朝食を食べるために朝市のほうへ向かっていく。この町の木造の建物は雨の影響を感じさせるような、被害の後を残していた。多くの建物に足場が組まれ、現在も家の修復を行っていることが窺えた。


彼が朝市の場所に到着すると農業が盛んというだけあって、様々なものが並んでいるが、かなり量が少ないようにレノンは感じた。そして彼は、雨の影響が関係していると推測した。この市場の特徴としては、柑橘系の果物やオリーブオイル、それとブドウが少し珍しく感じた。店の主人に話をしてみると、ブドウ以外は別の地域から持ってきたものであった。ブドウに関しては、ワイン用ではなく、そのまま果物として食べる用らしい。大粒でとてもおいしそうだったので、彼は人房購入して、今日の夜にみんなで食べようと考えた。



 そして、ソーセージをパンに挟み、トマトからできたソースをかけたホットドッグという食べ物を彼は一つ購入し、店の近くにある椅子に座って食べる。そして、これは絶対にシルバーヘイブンでも売れると思った。一度帰ったら、再現してみようと考えてメモを取る。


その後、本来の目的である建築ギルドの方に手紙を渡してから、食料ギルドに向かった。そこで、手紙と貨幣の入っている麻袋を渡して、しばらく待っていると、二つの麻袋にパンパンに入った麦の種が渡される。


彼は、両手をいっぱいにしながら、宿に向かった。その途中で、ふと気になる看板を見かけた。彼は、何の店かわからないが、そこに入る。


 そこには、様々な小さなモンスターたちがいた。

 トカゲのようなモンスター。

 花のようなモンスター。

 小さな鳥のようなモンスターなど。

 店主が彼に近づいてくる。


「いらっしゃいませ。どうされましたか?」


 レノンは店主に言った。


「何の店か気になって、入ってきたんだ」


 店主が言った。


「なるほど。その両手の麻袋は何ですか?フェザライト がそれに集まっているように見えますね」


 レノンは答える。


「この麻袋ですか? 冬小麦の種だよ」


 店主は雑談を始める。


「なるほど、納得しました。もしかして農業をよくされたりするんですか?」


 レノンは彼に言う。


「いや、私自身は別にしないんだ。これはお使いのようなものですね」


 店主は、農業関係に従事していると考え、レノンにストンガルムという生物の説明を行った。


 以下ストンガルムに関するレノンのメモ

 ―――――――――――――――――――――――

 外見と特徴:

 ストンガルムは小型のトカゲのような生物で、一般的には全長が約20センチメートルほどです。

 彼らの体は地味な色合いで、大部分が茶色や灰色を基調としていますが、時折、背中に複数の小さな模様が見られることがあります。

 最も特徴的な点は、背中に存在する特殊な腺から分泌される液体です。この液体はカラカラとした乾燥状態で、外部の刺激に対応して液状に変化します。


 生態:

 ストンガルムは地下に生息し、特に乾燥した環境を好みます。彼らは主に地中で活動し、食事は土壌中の微生物や根っこから摂取します。

 また、夜行性であり、日中は地下の巣穴に隠れて休息します。彼らは巣穴の中で液体を分泌し、これを保持する特別なふくろを持っています。

 人間との共生ができる共生種に認定されています。


 用途:

 ストンガルムの特殊な液体には、2つの主要な用途があります。

 虫よけ効果: ストンガルムの分泌物には、虫よけ効果があります。農地や庭園で彼らを飼育し、その液体を散布することで、害虫を寄せつけないようにするのに役立ちます。これにより、農作物の害虫被害を軽減し、収穫を増やすことができます。

 植物の成長促進: ストンガルムの分泌物には、植物の成長を促進する栄養成分が含まれています。このため、植物の根元に少量の液体を添加することで、収穫量の向上や植物の健康維持に寄与します。


 ―――――――――――――――――――――――


 レノンはセールストークを聞いて言った。


「正直、信じられないというのが本音ですね。怪しすぎて、買おうとも思えないです」


 店主は平然としながら言う。


「そうですか、残念です。嘘じゃないんですけどね」


 レノンはすぐに店を後にして、宿に戻る。


 『もしあの言葉が本当なら、正直売れそうだな。価格はわからないが珍しいようだ。一度冒険者ギルドの図書館で調べよう』


 レノンは、昼から図書館の中でストンガルムを調べたものの、討伐対象になり得るモンスターの情報しか入手できなかった。


しかし、彼はあの魔物が気になっていたため、もう一度あの店に向かう。そうすると店主がレノンの顔を見て言った。


「私は来ると思ってましたよ。農業に従事している人以外で種を持っているのなんて、商人くらいでしょう。ストンガルムは買う価値がありますよ。土さえあれば、死なないですし、このモンスター自体がかなり固いです。踏まれた程度では死にません。価格は一匹20000ゴールド、どうです?」


 彼は買うべきかどうか迷っていた。店主の言葉はを信じるならば、買いである。一匹当たりの単価も高いので、かなりの利益を見込める。しかし、彼のセールストークはすべてが本当かわからない。レノンは葛藤する。


 かなりの時間彼は、目を閉じて考えていた。


 彼は、一つ質問する。


「一応聞いていいですか。なんでこいつは有用そうなのに売れてないんですか?」

「今日入荷したんですよ。それ以外の理由はありません」


「……とは言っても、俺みたいな反応をする人間がほとんどだと私は思うんです。そうなると、売れるとは限りませんよね。一匹20,000ゴールドを15,000ゴールドで売ってもらえませんか?」


 店主は、少し呆れながら言った。


「値段を下げることはありません。この地方では、そろそろブドウの収穫が終わりひと段落するでしょうから、その時に売り切れるのは見えている。今年の場合は復興作業をしている場所が多いので、例年より遅くなる可能性はありますが……といったところですかね」


 レノンは、彼の言葉を真摯に受け止め、この店主の言葉を信じてみる気になった。


「――ストンガルムを4匹買おうと思います。最後に名前だけ聞いても?」


「アクトです。今後ともよろしくお願いします」


そしてレノンは、ストンガルムを4匹買った。現在の所持金は20000ゴールド。村に戻ればこの依頼の成功報酬や魔物の討伐報酬をある程度受け取れる状態ではあるが、彼はこれに賭けてみることにした。


そして、彼はストンガルムが入った木箱を持って歩く。宿屋の自分の部屋に着くと、彼は箱の中を観察していた。このトカゲたちは、あまり壁を登れないらしく、ずっと地面を徘徊するか、石の陰に隠れている。


レノンは、いくらで売るかを考える。無難に20%上乗せと考えたが、それでは大した利益にならない。 一匹3万ゴールドぐらいで売れればなあと考えていた。


特に何もなく時間は過ぎて、夜ごはんの時間になり、宿に併設された食堂に彼らは集まっていた。カイルはレノンに訊く。


「それで、明日どうするよ」

「朝早くから出発して、急いで帰ろう。野宿は出来れば避けたい」


カイルたちは頷いた。彼らは、ご飯を食べながら雑談をしていた。レノンが、ストンガルムの話をすると満場一致で騙されたと言われていた。女子組は久しぶりに町で、ウィンドウショッピングを楽しみ、お菓子をたくさん買って、満喫した。サラは言った。 


「やはり町は外壁に囲まれてるのもあって、そこまで被害がないようですね。物流自体も侯爵の力で、ほとんど止まっていないそうですよ」


それを聞いてレノンが言った。


「やっぱり侯爵だからお金を持っているんだろうな」


カイルは昨日の夜、ビールをたくさん飲めただけで満足しており、ドレイクは、町の図書館で読書を楽しんだ。そして彼らは、解散して明日に備えて寝るのだった。



―――――――――――――――――――――――

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