第24話 親友



 6聖剣2人の首が大聖堂の祭壇に置かれて、7日が過ぎた。


 3年前の事件の首謀者であるリアムスは捕えられ、全ての計画は明るみになった。


 リアムスの共犯者である海賊首領カルロ。彼の役割は、貧しい地域の人々を攫う事にあった。

 攫った人間は貴族達の奴隷となるのだが、その橋渡しをしていたのが、大富豪のノブレスだった。



 6聖剣ラディとトマスは、アンデッド討伐以外に、海賊による犯罪行為を取り締まる任務があったが、カルロの海賊団だけはその対象外であった。



「──なるほど。つまり三者は蜜月の関係だった訳ですね」

「そういう事だ。そしてラディとトマスが死んだ時、リアムスは誰かが裏切ったと思ったんだろう」

「頭数が減れば、大神殿巡礼による莫大な献金の配当金が増えますからね」



 フィリーとウェスは、大聖堂の大きな吹き抜けにある、慈愛母神マレイヤが描かれたステンドグラスを背にして、事件の真相を振り返っていた。



「……それにしてもよ、アダムスとゴードンが王国から来た人間だとはな」

「まったくですね。おそらくその名前も偽名でしょう」

「最後まで国王に応援を求めなかったのは、王国騎士団と聖騎士団とで内戦にさせない為か」

「へぇ、フィリーさんも以外と頭が回るんですね」



 ウェスはいつものように、フィリーから力強い拳骨げんこつをお見舞いされたのだった。




──



 ゴードンとアダムスは、長い任務を終えて国王の元に帰る事となった。

 2人は王都へと向かう馬車に乗り込む前に、見送りに来たクリフとルリアにに別れの挨拶をしていた。



「ゴードンさん、アダムスさん、協力本当にありがとうございました」

「…ああ、クリフ、お前もよく頑張ったな。オルソンも天国で褒めているに違いない」

「そうですね。父さんはきっと褒めてくれていると思います」



 ルリアはあれからずっと不機嫌が続いている。



「…まったく、私だけ何も教えないで色々計画していたなんて!」

「ごめんルリア、君を巻き込みたくなかったんだ」

「まぁいいけど。…それにしても、ゴードン司祭とオルソンさんが旧知の仲だったなんてね」





───時は5年前に遡る。


 オルソンは武功を立てる度に国王に招かれ、城内には色々と知り合いが出来ていた。

 その中の1人が司祭ゴードンであった。

 ゴードンは古くから死霊術師の研究にのめり込み、周囲からはかなり異質な存在とされ、誰も関わりを持とうとはしなかった。


 しかし死霊術師を研究するゴードンに興味を持ったオルソンは、そんな彼に幾度となく会いに行くようになり、次第に両者は打ち解けて何でも話すような間柄になっていた。



「オルソン、死霊術師とは善良なる人々を殺戮する存在、…だとは思っていないか?」

「…違うのか?」

「それは間違っていない。だがな、約50年前、さらには80年前の文献に、迫りくる敵から動屍ゾンビを使って人々を守った、とされる記述もあるのだよ」

「……それは本当か? だとしたら興味深いな」



 ゴードンは死霊術師とは単なる「悪」ではない、という強い主張を城内でも繰り返していた。


 

 そしてその2年後。

 「司教リアムスに謀反の疑いあり」そのように国王に進言していたのは、他でも無くオルソンであった。

 オルソンはその疑惑をゴードンにも相談し、どのように対処していくべきか話していた。


 そんな最中、軍事演習の指揮をしていたオルソンに異変が起きた。

 オルソンが馬を走らせようとした時、突然その手綱が切れたのだった。オルソンは落馬してしまうが、どうにか受け身を取り大事には至らなかった。


 しかしオルソンが切れた手綱を注意深く見てみると、誰かが手綱に細工したような形跡があったのだった。



 自分の命が狙われていると知ったオルソンは、息子のクリフを呼び出し、こう伝えた。



「クリフよ、数日後大神殿にゴードンという司祭がやって来る。…私に万が一の事があったら彼を頼りなさい。彼は死霊術師にも理解がある唯一の人間であり、そして私の親友だ」



 そしてその時が来ると、クリフは父の言葉を信じゴードン司祭を頼った。彼らと共にリアムス達の陰謀を阻止する計画を練ったのだった。



 

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