第20話 形成逆転
「てめえら、ルリアに何してやがる! その汚ねえ手を放せぇ!!」
アレスは怒りに打ち震え、目の前の聖騎士たちに大剣を打ち込んでいった。その力強さに聖騎士たちは押され、後方へと後ずさっていく。
「──それ以上動くな! お前の大事な友達が死ぬ事になるぞ!」
ウォルグがアレスに叫んだ。ルリアはどうする事も出来ずにアレスとクリフを見ている。
「この外道が!それでも聖騎士団長か!?」
「何とでも言うがいい。私は自分が信じた理想郷の為なら、悪魔にでも魂を売るさ」
アレスはルリアを人質に取られ、どうする事も出来ずに、構えていた大剣を下ろした。
「クリフ、そしてアレスよ。君達の能力は素晴らしい。君達さえ大神殿の為に働いてくれるなら、彼女の命の保証は永久的に守ってやろう。…さあ、これはお願いではなく命令だ。2人とも理解出来るな?」
2人はリアムスを睨み沈黙したが、それを見たルリアが泣きながら叫んだ。
「アレス、クリフ! 私達の故郷の人達を殺したのは、そいつらなんでしょ!? 私はもういいから戦って、お願いだから、みんなの仇を取ってーっ!」
アレスは身構えるが、それ以上は何も出来ず、再び大剣を下ろしてしまった。
「アレス、どうして……!?」
「…ルリア、すまねえ。どうしても… お前を見殺しには出来ない」
リアムスはその言葉を聞いて、微笑を浮かべた。
───その時だった。
ルリアの両腕を掴んでいた聖騎士2人の胸に、
2人の聖騎士はそのまま仰向けに倒れ、ルリアはその隙に後方へと走り出した。
その場にいた全員が矢の飛んで来た方に視線を向けると、1人の男が長弓を構え2階の渡り廊下に立っていたのだった。
「き、貴様、アダムス!! …生きていたのかあぁぁー!」
男は死んだと思われていた6聖剣──アダムスだった。
ウォルグは烈火の如く怒りを顕わにし、アダムスを打つべく弓矢を持つ聖騎士に怒号のような指示を出す。
聖騎士は矢を放つが、アダムスは容易くそれをかわし、ルリアに向かって鞘に入った小剣を放り投げた。
「娘よ、それを使うがいい」
ルリアはアダムスから小剣を受け取ると、それを両手に握って身構えた。
「──これで形勢逆転ね」
「よし、ルリア! ここは俺に任せて、クリフを助けてくれ!」
「分かったわ!」
アレスはルリアの無事を確認すると、怒涛の如く大剣を振りぬいていったのだった。
そして1人、2人と聖騎士達が血を噴き上げながら倒れていく。
「ええい、司祭共は一体何をやっておるのだ!? 法力でもっとあいつを抑え込め……!?」
ウォルグが2階の渡り廊下に陣取った司祭達を見て命令を下したが、アレスを法力で抑え込んでいた司祭達は、全てその場に倒れて動かなくなっていた。
「…ふん、弱過ぎて相手にならんな。だから日頃から、司祭も戦闘訓練が必要だと言って来たのだ」
司祭達が倒れている場所に、武装した男──ゴードンが立っていた。
「…ゴ、ゴードン、……まさか、貴様もアダムスの仲間か!?」
「まぁ、そんな所だ。3年前から潜入捜査をさせてもらった」
「な、何だと!? ……まさか!?」
「そのまさかだ。我々は国王の命で動いているのだよ。…もう観念するんだなウォルグ、そしてリアムスよ」
ゴードンの言葉に、その場にいた聖騎士達が愕然とし戦意を削がれていく。
その隙にルリアはクリフの元に走り、そして彼を助けてアレスの後方へと連れて来る事が出来た。
「お前ら何をやっている!国王が何だ!? この場にいる奴らを全員殺せば、証拠は無くなるんだ!」
ウォルグが部下に激を飛ばし、自らが猛烈な勢いでアレスに突っ込んで来た。
「外道の大将のお出ましか、相手になってやるぜ!」
「…小僧舐めるなよ、お前に6聖剣最強の力を見せてやる!」
2人の大剣は正面からぶつかり合い、凄まじい斬撃の音を周囲に響かせるのだった。
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