第13話 死霊術師の協力者



 死霊術死ネクロマンサーの協力者は、6聖剣アダムス。

 その事実に、リアムスとウォルグは驚きを隠せなかった。



「バカ野郎が、俺を疑う前にどうしてアイツを疑わなかったんだ!?」

「……すまん、カルロ。完全に我々の落ち度だ」



 ウォルグはカルロに詫びた。リアムスは無言のまま思考を巡らせている。



 ウォルグは、司教がアダムスを仲間に引き入れようとしている事には、当初反対していた。

 だが仲間であるラディとトマスが死んで、ノブレスやカルロが裏切った可能性がある以上、腕の立つ人間が1人欲しかった。その為にアダムスの事は、彼も強く反対が出来なかったのだった。



「賭博の借金も、潜入する為の撒き餌か。手の込んだ事しやがる」



 そう言いながら、カルロは酒を一気に飲み干した。



「…おのれ、ノブレスの事も今日の事も、全て筒抜けだったという事か」

「そういう事になるな。……問題はアダムスが一体何者で、どこから情報が漏れたのか、という事だが」



 リアムスは長い年月をかけて作り上げた計画を妨害され、はらわたが煮えくり返りそうな思いであったが、焦燥感に駆られ重要な焦点を見失わないよう、己を律していた。





───




 翌朝、6聖剣アダムスと20人の聖騎士が動屍ゾンビに襲われ死亡したという事件は、聖騎士団長ウォルグから大神殿に集った司祭や聖騎士らに報告された。


 大神殿はさらなる激震が走り、1日中大聖堂で跪いて慈愛母神マレイヤにすがる者もいれば、許可なく故郷に戻る者も続出し、大神殿中が大混乱となった。


 

 そんな最中、6聖剣フィリーとウェスは変わらずアンデッド討伐の為に遠征を繰り返していた。

 そして討伐の任務が早めに終わった今日も、3年前に悲劇のあったオルソンの故郷を訪れていたのだった。



「フィリーさん、やはりこの村は情報統制されていますね」

「間違いねぇな。3年前の事件の事を聞くと、誰もがダンマリになっちまう」


「ええ、何かに怯えている様にも見えました。…これ以上、この村での聞き込みは厳しいかもですね」


「まぁな。…でもよ、この間来た時、妙に気になる男を遠目で見たんだ」

「…気になる男?」



 ウェスは不思議そうにフィリーの顔を見て尋ねた。



「ああ、その時は思い出せなかったが、家に帰ってから思い出したんだ。…あいつはラディの部隊にいた聖騎士かもしれない」


「…え、本当ですかフィリーさん!?」


「いや、今回は自信が無いんだ。何せそいつは3年前のアンデッド襲撃事件で、オルソンさんと共に死んでいるはずだからな」


「他人のそら似でしょうか?」

「…分からん。でも今日はその事を確認しておきたいんだ」



 フィリーとウェスは、前回の訪問で立ち寄った集落まで馬を走らせた。そして2人は馬から降りると、古びて今にも朽ちそうな民家のドアを叩いた。



「誰かいるか? 俺は大神殿、聖騎士団副団長のフィリーだ。少し話がしたい」



 2人が民家の入口で家の主の返答を待つと、数分後に若い女が恐る恐る顔を出した。



「……せ、聖騎士様、こんなボロ屋に何の御用でしょうか?」

「急に悪いな。実はこの家の前で少し気になる男の姿を見たんだ。知らないか?」

「…し、知りません。この家には私1人で住んでおりますので…」



 何かに怯えたようにそう話す女を見ていたウェスは、何かを感じ取り無言のまま女を押しのけると、そのまま家の奥に歩いて行ってしまった。



「…聖騎士様、お待ち下さい!」女が慌ててウェスを止める。

「おいウェス、失礼だろうが」



 フィリーも止めるが、ウェスはお構いなしに辺りを見て回った。



「その人、絶対何か隠してるでしょ。……おっと、やっぱり男の人がいましたよ」



 ウェスは、奥の部屋の壁の影に隠れていた1人の男を見たのだった。



 

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