第12話  死霊術師の強襲



「ふざけるなぁ! 可能性が低いだと!? ノブレスが死んで俺がどれだけ大損すると思ってるんだ!?」


「…分かっておるとも。まぁ落ち着くんだカルロ」


「これが落ち着いていられるか! 俺達は貴族なんかと繋がりがねえんだ! 人を攫って誰が貴族に捌けばいいんだ?あぁ!?」


「大丈夫だ。ノブレスの代わりは必ず見付ける。但し時間はそれなりにかかる」


「……ちっ、分かってるさ」


 

 カルロはリアムスを睨みながら、手にした酒瓶を呷って大きく息を吐く。



「だがな、俺が頭に来てるのはそれだけじゃねえ」


「……そうであったな」


「俺は死霊術師には大きな恨みがある。手下を半分以上失った3年前の事は忘れちゃいねえぞ」



 カルロは死霊術師には大きな恨みがあり、ノブレスとは切っても切れない繋がりがあった。


 その事からカルロは自分達を裏切っていないと、司教リアムスは考えていた。そして実際彼と話をする事でそれを確定付けたのだった。



 

───そんな時だった。


 リアムスやカルロのいる船室に、カルロの手下の男が取り乱して入って来た。



「お頭、…大変だ! ゾ、動屍ゾンビが出やがった!」


「あん? 動屍ゾンビだと? …見間違いじゃぁねえのか?」


「見間違いなんかじゃねえ、港でそいつらの仲間と殺し合ってるんだ!」



 リアムスとウォルグが顔を見合わせる。そしてアダムスがその場を動いた。



「司教、私が確認して参ります」

「…うむ。油断するなよアダムス」



 しかし、アダムスが船室を出ようとすると、カルロが彼を止めた。



「まぁ、待てよ兄弟。確認なら他の騎士でも出来るだろうが」


「…確認するだけだ。すぐ戻る」


「いいから、ここに座れよ兄弟」



 数秒の沈黙の後アダムスはカルロを一瞥すると、すぐに振り返ってその場を走り出した。それに対してカルロは、懐の短剣をアダムスの背中に投げ付ける。

 短剣はアダムスの背中を捉えたが、よろめきながらもアダムスは船室を飛び出ていった。



「──お前らそいつを逃がすな! 殺せ!」



 アダムスに海賊の手下が次々襲いかかるが、アダムスは小剣でそれを跳ね除け、甲板から海に飛び込んだのだった。



「あいつを逃がすな!」

「暗くて見えんぞ、誰か明かりを持って来い!海を照らすんだ!」



船内では海賊達の怒号が響き渡る。やがて炬火を持った海賊がアダムスの飛び込んだ方角を照らした。



「……血の跡があるぞ!あそこだ!」



 海賊達は血の跡の方に向かって、弓矢を弾こうとする。

 しかし、弓矢を弾こうとした海賊の背後から、叫び声がいくつも上がる。



「ゾ、動屍ゾンビだぁーっ! 船に上がってくるぞ!」

「…物凄い数だぞ!? 」



 海賊達が見た物は、桟橋から船へと繋がるタラップによじ登ろうとする、おぞましい動屍ゾンビの群れだった。



「──船を出せ、すぐに出航だ! グズグズするな!」



 カルロの野太い声が響き渡り、海賊達は大慌て碇を引き上げ、やっとの思いで海賊船を陸から離した。


 何匹か動屍ゾンビが船内まで辿り着いてしまったが、海賊と聖騎士団が次々とそれを屠っていった。


 最後の1匹をウォルグが仕留めると、船内にいた殆どの人間が安堵の溜息をついたのだった。


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