第8話 3人目の犠牲者
ルリアとクリフがゴードン司祭の私室に忍び込んでいると、見張り役をしていたアレスは2人の衛兵が部屋に近づいているのに気が付いた。
慌ててアレスもゴードンの私室に入り、素早く2人に注意を促したのだった。
「ちょっとどういう事よクリフ! もう衛兵の巡回は終わったはずでしょ!?」
「ぼ、僕にも分からない。いつもは明け方まで無いんだよ!」
「2人共静かにしろって! おそらくこの部屋には入らないはずだ!」
──しかしアレスの希望は打ち砕かれ、2人の衛兵らしき人間が鍵を開けて中に入って来たのだった。
本棚の影に隠れた3人は息を殺して、見付からないという望みの薄い可能性にかけるしかなかった。
「…ん、やけに本棚が荒れているな」
1人の衛兵が、ルリアの荒らした本棚を不思議そうに眺めている。
「確かに。ゴードン司祭はあれでいて几帳面だからな…」
「まぁ、そんな事はどうでもいい。頼まれた古代書とやらを探すぞ」
「まったく深夜だというのに、人使いが荒い人だぜ」
クリフの心臓の鼓動はどんどん早くなり、視線だけ動かしてルリアの顔をそっと見る。するとルリアは、まるで獲物を狙う野生動物のような目をしているのが分かった。
彼女がすでに戦闘態勢に入っているのを感じたクリフは、急速にその顔が青褪めていく。
──そんな時だった。突然大聖堂の方向から、大きな叫び声が聞こえて来た。
その大きな叫び声の後、就寝していた宿舎の人間も次々に各部屋から飛び出し、徐々に騒ぎが大きくなっていった。
「なんだ、何かあったのか!?」
「…大聖堂の方だ、すぐ行くぞ!」
ゴードンの部屋に来ていた衛兵の2人もすぐに部屋を出て、大聖堂の方へと走り出した。宿舎の人間達もその殆が慌てて同じ方向へと駆けて行く。
クリフはアレスと目を合わせ、安堵のため息を吐いた。
しかしルリアは叫び声が気になったようで、もうすでに大聖堂の方へと走り出している。
「ルリア待てよ! お前が行ったらまずいだろうが!」
「──大丈夫よ、これだけの騒ぎなんだから!」
走り出してもう姿が小さくなっているルリアを、アレスとクリフは必死で追いかけた。
──大聖堂。
もうすでに多くの人集りが出来て、3人はやっとの思いで人混みを掻き分けその中心に来た。
祭壇前には多くの聖騎士と司祭が集まっている。
人集りを聖騎士が制止して、祭壇前にはもういけないようになっているが、大聖堂中に嫌な血の匂いが立ち込めているのがクリフ達には分かった。
「…首、人の首の様な物が、祭壇にあったわ…!!」
「だ、誰の首だ!? …また6聖剣の物なのか!?」
修道女や司祭達が、あちらこちらで騒ぎ出している。
「──静かにしなさい! まだ犯人がこの大神殿内にいるはずだ! 皆その場に座って動くな!」
後から駆け付けた聖騎士団長ウォルグが、その場を取り仕切る。そしてウォルグに指示された聖騎士達が、大神殿の様々な方向へと向かってそれぞれが駆けて行った。
「少しでも怪しいと思った人物は全員捕まえろ! 司祭であっても構わんぞ!」
「「──は!」」
こうして大聖堂の祭壇には、3人目の犠牲者の首が置かれてしまったのであった。
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