第7話 監視者

「嘘だ。俺は信じないぞ」


 空燕がそうぶつぶつ呟いていると、真叶が呆れたように言った。


『信じても信じなくても、私は実体を持った。それが結論じゃない?』


「……ただの剣だったじゃないか。俺が魔や霊を見ることが出来るようになっただけじゃないのか?何故虎が出てくるんだ!?」


『鎮魔師が魔や霊を感じ取れるようになることで、それらの物は実体を持つようになるのよ。感じることが出来なければ、ただの勘違いで済むこともあるのにね。だから、鎮魔師は魔や霊を感じないように、掟で自らを縛るのよ』


「嘘だろ。誰も教えてくれなかったぞ!」


『教えた所で誰も掟を守りはしなかったからでしょう。先代も先々代も破ったわよ』


「でも、俺は鎮魔司でお前を見たことはない」


『この姿でも?』


 虎が問うとその姿が黄金の光に包まれて、光が小さくなったかと思えばそこに現れたのは、丸っとした金茶色の猫だった。


「あっー!!」


 その猫は時々、先代に餌をせびりに来ていた猫だ。先代が死んでからはぴたりと来なくなっていたのに。


「……先代が死んだから、実体を失っていたのか?」


 猫はようやく分かったかと頷いた。


『私の役目は魔や霊を感じるようになった鎮魔師が魔に魅入られないように監視すること。もし魔に取り込まれて、鎮魔の役目を果たさないようなことがあれば……』


「あれば?」


『貴方を食べちゃうわよ?』


 猫はペロリと舌を出した。

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