覗き見るもの
目に違和感を覚えたのは先月のことだった。最初は
それだけではとどまらず、左目の半分ほども右目と同様に謎の影に
眼になんらかの問題が見つかるわけでもなく、症状を抑えるために処方された点眼薬もこれといって効果を示さない。
失明の二文字が頭をよぎるばかりで、焦燥感に襲われていたある日――スーパーで買い物をした帰り道に近所のお寺の前を横切ると、境内の方向から声をかけられた。
振り返ると僅かに視力が残る左目に箒を手にした作務衣姿の坊主が映り込んだ。
「そこのあんた。もしかして目に問題を抱えたりしてないかい」
「ちょっと待ってください。なんで俺の目の病気の事を知ってるんですか?」
すると坊主は、溜息を深く吐くと箒の柄の先を俺の目に向けてこう言った。
「病気なんかじゃないよ。あんたの目を覗き込むように、女性の霊が背中にしがみついてんだ。そりゃあ眼も見えなくなるわけさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます